骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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今回はサブタイトル詐欺ではありません!よっし!!

46話『姫と騎士』の一文を変更しました。とある感想文の一言を使いたかったので使わせていただきました。
鉄塊さんご許可を頂きありがとうございます。


ぼっち=オリ主
アルカード=ぼっち
マイン=ぼっちの弟子
レイル=鍛冶屋
モミ=第11階層守護者
ステラ=モミの妹・騎士
ハイネ=ステラの兄・モミの弟・軍師
ザーバ=神父
ポルックス=無口な生産者・カストルの妹
カストル=ポルックスの兄





第077話 「王家と六大貴族とぼっちの関係」

 何度目だろう。『何故こうなったし』と思ったのは…

 王が座る玉座の間にてレイブン候を除く六大貴族と第一王子に絶賛睨まれ中なのだがどうしてだと思う?ぼっち悪いことしてないよ。…多分。

 『俺は悪くねぇっ!』

 いいえ、君が悪いです。ってそれは置いといてどうするか。デミえもーん!助けてぇー!!

 それよりぼっちの叫びの方こそ置いといて王の前には二つの列が出来ている。王から見て左の列には第一王子を先頭にレイブン候を除く六大貴族。右側には第二王子を先頭にしてレイブン候にラナー王女。そしてアルカード伯爵ことぼっちが並んでいた。ぼっちと六大貴族以外の貴族達はその二組より離れた後方に並んでいた。

 ぼっちは睨んでいると感じたが実際は見定めようと見ているだけで別段睨んでいる訳ではない。緊張している為にそう感じ他だけである。

 あのラナーちゃんとのお茶会(?)からもう一週間が経った。あの後、城で保管してあった詳しい地図や国民の住民票などの書類を探し出して何処が誰の土地かを調べて、街の構造をまとめた書類を提出。足りなかった人出はボランティアや家を失った者の中から元気そうな人達に任意で荷物運びなどの簡単な仕事を片付けてもらった。専門職を持った人達はヘルシング内部やいろんな所から雇って確保し、街造りに必要な物資は今もかき集めている。ようやく一息つけるかなと思った矢先に王様からの呼び出しだよ。知ってるよ。アレだろ?最近調子に乗った新人を大勢で苛めるんだろ?

 玉座に腰掛けるランポッサⅢ世は辺りをゆっくり見渡すとぼっちを見つめた。

 

 「アルカード・ブラウニー伯爵。前へ」

 「ハッ!」

 

 名を呼ばれた事で微笑んでいた(内心引き攣っていた)表情を引き締める。一歩、二歩と踏み締め王へと向き直り、片膝を付こうとすると「そのままで良い」と制される。

 枯れた枝のような腕にほつれた白髪、さらに顔色は悪くとても王の責務をこなせるようには見えない。それもこれも王自らが王位を継げる者が居ないと思っているからだ。

 

 「此度は本当によくやってくれたな。心より感謝する」

 「勿体無きお言葉。恐悦至極に存じます(こんな回答で良いんだろうか?むー…いつもの皆はどう言ってたかな?)」

 「悪魔の討伐から王都の民の支援の数々。どれ程感謝しても足りないくらいだ」

 「お待ちください王よ。それではこの者が今回の功労者のように聞こえますな?」

 

 王の言葉を遮ったのは貴族と言うより歴戦の将軍と言われた方が納得できる六大貴族の一人であるボウロロープ侯爵であった。兵力は王を凌ぎ、5000を超える精鋭部隊はかの帝国騎士に勝るとも劣らないと言われている軍事力では無視できない存在である。王は思う。彼が王派閥であればどれ程心強かったと…

 ボウロロープ候は王を支えるのではなく出来れば消えて欲しいと願っているのだ。彼は反王派閥である貴族派閥の盟主であり、第一王子からみると嫁の父、つまり義父である。とっとと消えてくれれば第一王子が王位につける。さすがに行動に出ることは無いが…

 

 「アルカード伯にはいろいろと悪い噂があると聞いたが?」

 「悪い噂?」

 「いろいろとお聞きしましたよ。まるで悪魔達が来る事を想定していた様な物資の搬送。絵に書いた英雄劇は仕組まれたものなどなど黒い噂はあとを耐えませんが…王はそんな事も耳にしてないと」

 

 控える事無く王を卑下した話し方をするボウロロープ候に王の後ろで控えていたガゼフが血が出るほど拳を握り締める。何か言い返したかった。しかし自分が言った所で王を攻撃する要員を作りかねない。ここは耐えるしか…

 

 「少し宜しいでしょうか?」

 

 派閥同士が険悪な雰囲気を漂わせる中、ぼっちが優しげに声を発した。

 

 「王に対していささか態度が大き過ぎませんかボロロープ公」

 「ボロロープではない!私はボウロロープだ」

 「失礼、噛みました。話を戻しますが一介の貴族の態度ではないと感じますが?」

 「貴様なんと言った!!」

 

 場が凍り付いた。

 ぼっちは派閥の事など知らず、ただ単に王に仕える貴族にしては態度がでかいなぁと思い注意しただけなのだ。付け加えると目の前の男が六大貴族であるとか、軍事力最大の貴族であるとか、ボウロロープ候の候が侯爵の事とか、侯爵が伯爵より上なのだとか知らないのだ。ちなみに侯爵ではなく公爵と勘違いしている。(伯爵→侯爵→公爵。知っていれば一番上の爵位である)

 周りにしては新参者の伯爵の商人風情が貴族派閥の長であるボウロロープ候に真正面より喧嘩を売っているのである。しかもそれを悪びれる様子など無く笑いかけている。

 馬鹿にされていると感じたボウロロープ候は顔を真っ赤にしてぼっちに詰め寄る。

 

 「商人如きが貴族になれたぐらいでいい気になるなよ!!」

 「では貴方が言われる『たかが商人如き』に言われるような態度を取らないで頂きたい。ボウロープ公」

 「ボウロロープだ!!貴様わざとやっておるな」

 

 きょとんとした表情で首を傾げるぼっちにさらに顔を赤くする。

 ガゼフはこの一触即発の事態ではあるがとても清々しい心境にあった。強い軍事力と発言力に誰もが抗えなかったボウロロープ候に堂々と言い放ち、翻弄するアルカード伯に痛快で晴れ晴れとした気持ちになる。

 その光景をコホンと王が咳払いした事で一旦収束した。ボウロロープ候が元居た立ち居地に戻ると今度はラナー王女が前に出た。

 

 「失礼ですが先程ボウロロープ候が仰られた噂はどなたからお聞きになったので?」

 「誰からなど覚えている筈もあるまい」

 「私もアルカード伯とご一緒に復興のお仕事の為に現場に行きましたがそのような噂を耳にしたことはありませんが」

 「何?街はその噂で持ち切りの筈だ」

 「このような事は申したくありませんがアルカード伯のご活躍に嫉妬して貶める為の嘘ではございませんか?」

 「何を馬鹿なことを!!」

 「では何方からお聞きになったのでしょう?他にお聞きになった方はいらっしゃいませんか?」

 

 この場に居る全員に向けられた質問に対して一人だけ手を挙げた。

 反国王派閥の大貴族であるリットン伯であった。歪んだ笑みを浮かべたまま口を開いた。

 

 「私もボウロロープ候と一緒にその噂を聞きました」

 「そら見たことか!これで嘘ではなかったと解っただろう?」

 「今『聞きました』と言いましたが何方がお二人に伝えたのでしょう?」 

 「フン、往生際の悪い。確かココレット子爵であったな」

 「ええ、その場にはエルドラン男爵にメイティオ子爵も居りましたな」

 

 皆の視線が後ろに控えていた貴族の列に居た三人に視線が向けられる。

 

 「そうなのですかココレット子爵」

 

 オドオドしている子爵は侯爵の視線にびびるがラナーと視線が合うと顔が青ざめる。別におかしな表情はしていない。震えながらもゆっくりと口を開く。

 

 「わ、わ、私はそのような噂存じ上げません!!」

 「なぁに!?貴様何を言って居るか!!」

 「ひぃぃ!!」

 「そうですよココレット子爵。貴方が私達に伝えて…ですよねエルドラン男爵?」

 「我輩そのような噂は聞いた事ございませんなぁ」

 「わたくしも右に同じでございます」

 

 ガタイがよく戦士のような風格漂わせるエルドラン男爵もまるで女性のように線が細く長髪のメイティオ子爵も関与を否定した。ボウロロープ候もリットン伯も意味が解らなかった。彼らは同じく反王派閥の貴族達である。同志といっても良い程度の関係は築いていたはずだった。

 ぼっちも知らない事だがあの噂はラナー王女がココレット子爵達にボウロロープ候達だけに流させた噂だったのだ。すでに三人はラナーの言う事を聞くただの人形である。今まで八本指関連の資料や情報を集めていたラナーは彼らが八本指と繋がっていた証拠を握っていたのだ。それを数日前にチラつかせてこちら側に引き込んだのだ。何にせよ思い描いた状況になった。これから彼女がアルカードに対して抱いた疑問を誰かが抱こうとも『それはとある貴族が流したデマだから』と誰もが思うだろう。周りの王派閥の貴族達が堰を切ったように口々にボウロロープ候に罵倒を浴びせる。形勢不利と見た反王派閥の他の貴族は口を閉ざし嵐が過ぎるのを待つ。表情では真剣、心ではほくそ笑んでいたラナーは待っていた。この状況を理解して行動するであろう人物を。

 

 「静粛に」

 

 ひとつの張りのある声が玉座の間に響いた。それは王の物でもボウロロープ候の物でもなかった。アルカード伯である。

 

 「皆さんもそんなにボウロロープ公を攻めないで頂きたい」

 「何故ですかアルカード伯。彼は貴方を貶めようとしたのですぞ!!」

 「ええ、分かっています。だからこそ私は彼を許します」

 

 許すの一言に周りは黙り、静寂が訪れる。少し間を開けて再び喋りだした。

 

 「彼は貶める為に嘘を付きました。しかしラナー王女や皆様方の発言により私は何の被害も被りませんでした。まずこの事に感謝いたします。

 被害が無かったからと言って彼を許すわけではありません。憎しみは憎しみを、暴力は暴力を生むだけなんですよ。だから私は彼を恨むのではなく許します。願わくばいがみ合うのではなく共に歩んで行ける事を願って」

 

 アルカード伯の優しさ、寛大さ、器の大きさに触れた王派閥も反王派閥も関係無しに感嘆の声を上げた。もちろん貶めようとしたとされる二人を除いてだがおおよそラナー王女の望んだ形になった。

 難しそうな事を長く述べたがぼっち的には『兎に角許すからとっとと帰りたい』という事で言った言葉であって優しさ、寛大さ、器の大きさなんて要素は本人の考えには微塵も無かった。

 さてボウロロープ候が黙ったのは良いとして王はさっきから待ちっぱなしなのを忘れていた。ぼっちは焦るが王自身は少しほっとしたように微笑んでいた。

 

 「有らぬ疑いが晴れたところでアルカード伯には何か褒美を与えたいのだが…生憎と財を蓄えていた倉庫を狙われたゆえにそれが出来ぬ。せめて爵位を一つ上げようと思う。どうかなアルカード伯?いや、アルカード侯」

 

 これは異例である。一商人だった男がいきなり伯爵の爵位を受け貴族入りしてからまだ一年も経ってないと言うに侯爵の爵位を授けられようとしている。こんな事は帝国など周辺国すべての資料を調べてもいないであろう。これは名誉であり歴史に残ることである。しかしぼっちは首を横に振るう。

 

 「ありがたい申し出ですが辞退させて頂きます」

 「爵位だけでは不服であったか?」

 「そうではございません。貴族が民を助けるのは当たり前でございます。それに私は『伯爵』という爵位が好きなのですよ(だってあのアーカードと同じ爵位なんですよ!それを考えるだけでも嬉し過ぎるじゃないですか!!……ん?さっき爵位を上げると言って『アルカード公爵』って言ったよな…え!もしかしてボウロロープ公…ええい、長い!!ボロ公はぼっちより偉い人だったのでは!?まっず)」

 

 えー…礼儀正しい態度で優しげな物言いで断りながら内心焦りっぱなしのぼっちは置いといて王としては感謝の気持ちとして何かを渡したくて気がすまないのだろう。そこでニヤリと頬を歪ませたボロ公…コホン。ボウロロープ候が笑顔で近寄る。

 

 「先程は突っ掛かってしまい申し訳なかったなアルカード伯」

 「いえいえ、私はもう気にしておりませんので…(急に態度が変わったんだが何があったし?)」

 「爵位が駄目なら領地は如何でしょうか?確かアルカード伯は領地の権利を得ましたが何処かと言うのはまだ決まってなかった筈ではありませんか?」

 

 そう言えばいつだったか領地を与えるって言われた事が有ったような気がする。言われるまで微か過ぎて覚えてなかったけど貰えるもんなら欲しいな。

 

 「ええ、確かに決まってはいませんね」

 「緑が多く、近くは山々が聳え立つ良い土地があるのですがそこには現在誰も領地としていなかった土地があるのですよ。エ・レエブルとリ・ブルムラシュールと二つの都市に挟まれており税をかければそれだけでもかなりの得を…」

 「エ・レエブルとリ・ブルムラシュール?…まさか!!ボウロロープ候それはっ」

 「良いですね。税の話は置いておくとしても緑豊かで聳え立つ山々…良いですね」

 「どうでしょう王様。アルカード伯もこう言っておられます。かの地を彼の領土にされては?」

 「うーむ。しかし…アルカード伯は本当に良いのか?」

 「ええ」

 「ではアルカード伯にエ・レエブルとリ・ブルムラシュールの間に広がる土地を領地としよう」

 

 これで玉座の間での話は終了した。ラナーはいつもと変わらぬ笑顔で「親切にどうも」と礼を言うアルカード伯と謙虚に出るボウロロープ候を見つめていた。

 うそは言ってない。緑も豊かで近くは山々が聳え立っている。しかし『誰も領地としていなかった土地』とはものは言いようだ。『していなかった』ではなく『出来なかった』が正しい。地図で見ると上にはリ・ブルムラシュール、下にはエ・レエブルの都市がある。なら左右は?山々に囲まれているのだ。しかも右側の山々を越えれば帝国に繋がり、得た領土にはトブの大森林も重なっている。近くにはトードマンが住まう地域もある。問題の尽きない地域である。しかもそこに住まう民達は嘆願書などを出しても一蹴されており、貴族や王族への恨みは強い…

 どうやって手助けをするか悩んでいると目が合った。笑っていた。その表情を目にしたらもう考えるのをやめた。彼にはそれらを逆手に取って自分の利へと変換する策をもう考えているのだろう。

 恐ろしい…

 あのような人が紛れていても気付きもしない貴族達には呆れを通り越して哀れに思う。だけどそれで良いのだ。無能な者達が気付かないうちに確固たる彼との関係を蓄積しなければ…これもクライムとの幸せの為に!

 ぼっちの笑みを受け取ったラナー王女の瞳には強い決意が秘められていた。

 

 皆様はお気づきだと思いますがそんな思惑はぼっちには無いです。笑ったのはただ単に目が合ったからでありそれ以上でもそれ以下の理由もない。

 どんな感じの土地かな?農地はあるんだろうか?出来ればブドウ畑とかしてワインでも作って売ろうかな?だったらあのアイテム達を部屋から引っ張り出してこないといけないかな?あ!作ったら一番にナザリックの皆で乾杯するのも良いかもしれないな。だったらパーティでも開いて盛り上がろうかな。ああ、楽しみだなぁ。

 ただただ見ぬ土地に希望を寄せるぼっちであった…




 関係…
 王様:いろいろ感謝された――信用された。
 ラナー王女:幸せの為に――信用された。
 レイブン候:考え中――中立
 ボウロロープ候:気にくわない――敵対
 半王派閥:敵対or中立
 ぼっち:皆仲良くしようよ!!

 次回予告無し!!まだ考えてない!!どうしよ…
 ああ!!今回登場した三人の貴族はオリキャラです。

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