骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 ナザリックに帰ってきましたあああああ!!アインズ様が。
 ぼっちさんは王都で仕事中ですがナザリックはナザリックでしなければならないんですよね


ぼっち=オリ主
アルカード=ぼっち
マイン=ぼっちの弟子
レイル=鍛冶屋
モミ=第11階層守護者
ステラ=モミの妹・騎士
ハイネ=ステラの兄・モミの弟・軍師
ザーバ=神父
ポルックス=無口な生産者・カストルの妹
カストル=ポルックスの兄





第075話 「報告会」

 ナザリック地下大墳墓 玉座の間

 この玉座の間には至高の御方々に仕えし配下の者達が集まっていた。先頭を守護者統括であるアルベドが、次に各階層守護者が、さらに各階層別に高レベル順でモンスター達が並んでいる。階層守護者が並んでいる所で一人震えるものが居た。

 第一から第三階層までの守護を任されているシャルティア・ブラッドフォールンである。

 元から白い肌が青白くなっており、表情からは怯えが見て取れる。

 理由は多々ある。

 一つ目。前の任務で取り逃がした人間が王都にいた事が判明した事。しかも自分の名前を覚えて。

 二つ目。王都…と言うか王国側に自分の名前と顔が知れ渡ってしまった件。

 三つ目。作戦とは言えぼっち様と戦闘した結果、大怪我を負わせてしまった。

 などこの三点である。どれも自分の失態。名誉挽回どころか汚名の上書きである。これで何度目の失敗であろうか。もしその事を攻められれば自分はどうなるのだろうか?失望される…

 絶望にもにた感情に襲われていると扉が開かれる音が玉座の間に響き渡った。失礼の無いように頭を下げて至高の御方が玉座に座られ『面を上げよ』の一言がかけられるまで頭を下げ続ける。

 

 「面を上げよ」

 

 至高の御方であるアインズからの許可を頂き、顔を上げる。驚きの声が上がりそうになるのを皆が必死に堪える。

 玉座に腰掛けるアインズ様の右側斜め後ろにローブに金色の杖を装備したモミが立っていたのだ。

 アルベドに至っては表情こそは笑顔のままだが殺気や怒気が溢れ出ている。

 

 「今日集まってもらったのは他でもない。デミウルゴスが立案したゲヘナの結果を皆にも知ってもらう為である。だがその前に紹介しておく者がいる。ツアレ、前に出よ」

 「は、はい」

 

 オドオドとした返事の後にセバスに連れられてツアレが前に出る。

 

 「今日よりこの者、ツアレはナザリック地下大墳墓の管理下に入った。この件は私だけではなくぼっちさんも関わっている。異論のある者は前に出よ」

 「至高の御方々がお決めになった事に意義を申し出るものなどおりません」

 

 凛とした態度のアルベドの返事に満足そうに頷くとデミウルゴスを見据えた。

 

 「ではまずはデミウルゴス」

 「ハッ!」

 

 呼ばれたデミウルゴスは頭を下げ、アルベドより前に出る。

 

 「さすがだなデミウルゴス。財宝面での物資の回収し王国の弱体化。王国を影で操る組織の掌握。冒険者モモンの名を高めるなどよくやったな」

 「いえいえ、私などアインズ様の足元にも及びません。今後、ご期待に答えれるよう精進して参る所存であります」

 「うむ。期待しているぞ」

 「ハッ!」

 「マーレにプレアデス達もよくやってくれたな」

 「そ、そんなお礼なんて…」

 「私たちには勿体無く存じます」

 「謙遜するな。特にナーベとの戦いはなかなかの迫力であったぞ」

 

 ナーベラルを除くプレアデスの面々は顔には出さないように我慢してはいるものの隠し切れてはいなかった。ナーベラルだけ青白くなっていたが…

 

 「次にシャルティアだが…」

 

 自分の名前が呼ばれたことに酷く驚いた。まさに心臓が飛び出るような勢いだった。どんな事を言い渡されるのか不安でいっぱいだった。だがかけられた言葉は正反対の物だった。

 

 「見事であったぞ」

 

 予想外すぎて危うく『え?』と疑問系で返すところであった。何かの冗談や皮肉の類かと思ったがどうみてもその表情は微笑んでいた。冗談の類では無さそうだ。

 

 「ぼっちさんとの戦闘でぼっちさんの実力は王都でも評判になった。それに『ヤルダバオトより弱い』と宣言した事でモモンの強さがどれだけのものか王国の者達に分かり易く伝わっただろう」

 「も、勿体無いお言葉でありんす」

 「私もヤルダバオトとの戦いをアダマンタイト級冒険者に見せ付けたが一人の人間が伝えれる事には限界がある。よくぞ考え抜いてくれたものだ」

 

 アインズ様のお言葉は嬉しく心地良いものだったがその言い方ではまるで自分の考えで行なったように聞こえたので訂正するべく口を開こうとした。だが、それよりも先にアインズ様の口が開かれた為に口を閉じる。

 

 「王国側に名が知れてしまったのを逆手にとっての行動…知られてしまったのは失態ではあったが後の功績と副産物を鑑みてプラスであったと判断しよう」

 「あの…アインズ様。それではまるで私が考えたように聞こえるでありんすが?」

 「ん?シャルティアが考えて行動したとモミから聞いたのだが違ったのか?」

 「それは…」

 「アインズさ――ま。シャルティアは今まで失敗続きだったから謙遜しているだけだと」

 「ふむ。謙遜などしなくて良いのだぞ。それだけの働きをしたのだから」 

 「いえ、そんな…」

 「それとコキュートス」

 「!?ハ、ハッ!ナンデゴザイマショウカ?」

 「受け取ったこの報告書。よく気が付いたな」

 「?ドウイウコトデショウカ?」

 「お前も謙遜するのか?モミに偵察隊を頼み、この戦闘時の王都の動きと対処法を記したのだろう」

 「イ、イエソレ「皆謙遜しすぎじゃない?至高の御方のお褒めの言葉を無碍にすんの?」!!…アリガタキ幸セ」

 

 多分コキュートスも分かってない。私もどうしてこうなっているのかが分からない。モミがアインズ様に伝えたとされた案件はすべてモミの指示、もしくは行なった物である。何故それを私達の功績のように振舞うのかが理解できない。

 言う事を言い終わるとアインズは退席して各守護者達は自分の配下の者達を先に帰らせる。モミは配下の者を連れてなかった為にそのまま自分が帰ろうとしていた。

 

 「待つでありなんし!」

 「んあ?」

 

 シャルティアの言葉に対して抜けた返事で返す。づかづかづか、と詰め寄る。

 

 「どうしてあんな事を言ったでありんすか!?」

 「…あんな事?」

 「さっきの私とコキュートスの事でありんす。私はモミの指示に従っただけで判断はしてなかったでありんす」

 「私モ資料ノ手伝イヲシタダケデ頼ンダナドノ話ハ無カッタ筈ダ」

 「ま、そんな事どっちでもいいじゃん」

 「良くないでありんす!!あれを考えたのはモミ。貴方でありんす!!」

 「他人ノ功績ヲ自分ノ物ニシヨウトハ思ワン」

 

 詰め寄る二人に対して深いため息をしたモミは呆れ顔をした。何故そんな顔をされなければならないのか。

 

 「…この作戦のもうひとつの狙いを忘れたのん?」

 「もうひとつの狙い?」

 「それは私が言った事だね?」

 

 少しはなれた所で話を聞いてきたデミウルゴスが割り込んでくる。そこで二人はデミウルゴスがゲヘナについて説明した時の事を思い返してみるものの思い当たるのはアインズ様が仰った三つの事柄以外何かあっただろうか。

 二人が頭にクエスチョンマークにデミウルゴスまで呆れ顔を向ける。

 

 「私があの時に言った失敗を挽回しなければいけないとの事ですね?」

 「オー、イエース」

 「でもだからと言ってモミが評価されないのは良いのでありんすか!?」

 「構わないよ?極端に言えば嫌われようとも構わないしね。二人の評価が上がって守護者各員の信頼が上がった方が私には良い」

 

 モミの言葉に皆が黙る。反論したいところだがシャルティアもコキュートス、デミウルゴスでさえ口を開かなくなった。今までナザリック内で異質や変わり者としか見て来なかったが初めて彼女のことを知ったような気がした。同時に悲しみが支配した…

 そんな時に口を開いたのはアルベドだった。

 

 「貴方の考えは分かったわ。それとは別なのだけど何故貴方がアインズ様の隣に居たのか説明してもらえるかしら?」

 

 さすがにこの状況でよく言えたなとシャルティアでも思い振り向くと笑顔だが額をヒクヒクさせるアルベドに皆が呆れ顔を向けていた。

 

 「…別に。ただの気まぐれ?」

 「…そう。別に意味は無いのね」

 「…フヒ。どう?アインズ様の隣を盗られた感想は?教えて、教えて…フヒヒ♪」

 

 挑発するように言うとモミは全速力で駆け出した。「待ちなさい!!」と鬼の形相で追い掛けられながら…

 さっきまで悲しく思っていたのだがいつも通りの彼女を見てアホらしくなった。

 デミウルゴスが眼鏡を上げながら横に並ぶ。

 

 「分かっていると思うが彼女がアインズ様の隣に立ったのは意味がある」

 「ドウイウコトダデミウルゴス?」

 「彼女は君達に説明しても反論されると考えたのだろう。ならば先ほどのように打ち合わせ無しでやるしかない。しかし当然状況を理解できない君達は疑問を口にする。それを止める為には列から声を発するのではなく隣の方がいろいろ便利なのだよ」

 「ではさっきのは…」

 「理由を誤魔化したかっただけだろうね」

 「そうでありんしたか…」

 「ナラバ我々ダケハモミノ評価ヲ忘レナイヨウニセネバナ」

 

 頷き未だに追いかけられ続ける彼女を見る。

 飄々としているようで悲しみを抱かせた彼女を…

 

 

 

 

 おまけ

 

 守護者各員も帰ろうとしていた時にユリはナーベラルに声をかけた。

 

 「ナーベラル。ぼっち様は何と?」

 「『すべてを許す』と…」

 「そうですか…ならば私達から何かを言う事はありませんね」

 

 ユリ達の反応を見てほっとするナーベラルは頭を下げた後、その場から離れようと出入り口へと足を向ける。が、その歩みを止めたのはソリュシャンだった。

 

 「あら?ナーベラル。貴方、人でも食べたのかしら?」

 「?私は人は食べませんが」

 「おかしいわね。確かに血のにおいがするのだけれど…」

 「ナーちゃん怪我でもしたっすか?」

 

 『血』と言う単語で何の事を言われているのか分かったナーベラルの顔色が途端に悪くなる。兎に角何か言わなければ。

 

 「お、王都での戦闘で付いた返り血が付いていたのでしょう」

 「なら早く洗った方がいいっすよ」

 「ええ、すぐに洗って来るわ」

 

 ほっと安堵して急ぎ足でその場を…

 

 「ちょっと待つでありんす」

 

 離れられなかった。一番気付かれたくない人が近づき、クンクンと匂いを嗅がれる。悩ましげな顔をしていたのがいきなり目を見開き驚きの表情へと変化した。

 

 「この血!この匂いはぼっち様の!!」

 「「「「「「なに!?」」」」」」

 「しかも服だけでなく身体の至る所からするでありんす!!」

 「わ、私はこれで…」

 「話す事があるのではなくて?」

 「話すっすよナーちゃん」

 「話なさいナーベラル」

 「…………はい」

 

 守護者各員とプレアデスに捕まったナーベラルはそのまま連行されていくのだった…




 深夜二時までまで打ち続けていたので眠い…
 前の失敗と今回の成功でシャルティア・コキュートスの評価はプラス気味かな?
 さてぼっちの行動と存在を怪しげと疑っている彼女がとうとう動き出す!!

 次回『王女と伯爵』
 お楽しみに

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