骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

80 / 233
 もう少しで王都での戦いが終わる。
 そろそろ本編でのほほんとした物が書きたい…


第070話 「アルカードVSシャルティア」

 ぼっちはシャルティアと対峙したまま膠着していた。

 あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

 俺は指揮所の前に来るちょっと強いアンデットを倒してとステラを通してモミに言われたんだ。しかもレベル制限30で!『楽な頼み事だなぁ』だと思ったらレベル100のシャルティアが立っていた。

 な…何を言っているのかわからねーと思うが俺は何でこうなったのか分からなかった…

 ダレカタスケテー

 『チョットマテテー』

 周りに見えないようにため息を付くと近くに居たニニャが弱々しく近づいてきた。

 

 「危ないですよアルカードさん」

 「ニニャさんですか。これを預かっておいて貰えますか?」

 

 返事をは待たずにニニャに真っ赤なコートと黒いスーツを渡す。白いカッターシャツの上に腰や肩へと黒いベルトが伸びていた。レイルが後ろから何本もの刀を手渡していく。腰の後ろに交差するように4本、両腰の横にはそれぞれ3本、柄が上になるように背中にも交差するように4本の刀がベルトに固定されていく。最後に一本ずつを持つ。合計16本もの刀を装備したぼっちはゆっくりと進む。

 周りには見えないようにため息を付く。

 悪い予感はしたんだ。だってあのモミからの頼みなんだよ?疑うでしょ。けれど俺は簡単な頼みだと勝手に思っちゃったんだよな…まぁ『人間』として良い勝負をしましょうか。

 現在ぼっちはいつもの装備を外している。それどころか種族属性などを消す為の装備をしている。レベルも低レベルプレイヤーに高レベルプレイヤーが合わせるシステムを使っている。低レベルにガゼフやラキュース、クレマンティーヌを設定しているからレベルも三十前後なのだ。

 刀を握り締める。レイルが打った名刀と言えどもいつもの武器にしたら頼りなさ過ぎる。すぐに折れてしまいそうなので替えを持って行く事に。今付けているベルト刀を何本も装備出来るのを特徴として売りに出したのだが不評で売れなかったのだ。

 歩みながら両手に持っている刀を振り、鞘をそこらへんに投げ飛ばす。

 

 「君はどうしたら帰ってもらえるんだろうか?(出来るなら今すぐ帰ってください。お願いします)」

 「そうでありんすね…満足できれば。でありんしょうね(ぼっち様が)」

 「そうですか(どんな条件だよ!楽しませろってレベル30がどうしたら良いんだよ!?)」

 「で、貴方様は私と戦うのでありんすか?(戦えばモミがぼっち様は喜ばれるっと言ってたのは本当なのでありんすよね?)」

 「・・・(戦わないといけないんだよな。他の誰も勝てなさそ…勝てない?そうだ。俺でもレベル的に勝てないんだ。だったら)」

 「どうしたでありんすか?(不快…だったのでありんすか!?)」

 「ああ…お互い本気で戦おう」

 

 ぼっちはにやりと嗤った。それは後ろに居る者達には見えず、シャルティアのみが見ることが出来た。ぞくっと背筋が震えた。

 

 「ではお言葉に甘え…っ!?」

 

 相手は至高の御方。と言ってもレベル100対レベル30では勝負は見えてる。モミはぼっち様と良い勝負を行なったのちに撤退せよとの任務を与えたのだ。なるべく失礼のないように手加減しなければと思っていた。そんなシャルティアの考えは消し飛んだ。

 クレマンティーヌほど爆発的加速は無かったものの、かなりの速度で迫ってくる。足首は直角で固定して、足全体の力で地面を押すようにして前に進んでくる。迎撃の為に片手を振るうとぼっちも対するように刀を振るう。

 

 「《不落要塞》」

 

 武技を使って強化するがもろに当たれば刀が折れるのは必須。ならば防御を上げて丈夫さを上げて振るう。当たる直前に手首を返してシャルティアの手に流れに合わせて流す。手が振り抜かれると同時に合わせて動かした刀の刃を返しシャルティアに向かって振りぬける。驚きつつも首を出来るだけ逸らして刃を避ける。

 頬をかすった。血が流れるほどは斬られなかったが刃が頬を撫でたのだ。前言撤回。鎧やスキル、スポイトランスは使わない現状で本気を出さなければならない。

 

 「かわせ」

 

 近場に居ても聞き取れるか微妙な音が聞こえた気がした。あまりに小さすぎて普通なら何かの音適度で済ませていただろう。しかし聞こえた。そして聞き逃すわけがない。今のお声はぼっち様のお声だった。では何をかわせと言うのだろう。人間の関節を考えれば振られた刀は…

 そこで思い出した。今のぼっちは二刀流。振られた右手だけでなく左手にも刀を持っているのだ。

 足に力を入れ、腰、左肩、左腕のいたる所の力を総動員させて後ろから前へと突き出す。

 

 「牙突・零式!!」

 「ぐっ!?」

 

 突き出され刀は腹部に直撃した。服は破れる事なかったがあまりの衝撃に後ろへと飛び退かされてしまった。周りから驚きの喚声が上げられる中、ぼっちは刀を見ていた。刀は衝撃に耐え切れず鍔より上が砕けてしまったのだ。柄と鍔だけになった刀を投げ捨てて背負っている刀を抜いた。

 

 「油断大敵と言った所でありんしょうか。さすがはb…コホン」

 「喋っている間があるのか…もっと早くか…《超回避》《能力向上》《能力超向上》」

 「では参るでありんす」

 「こちらも行く!!」

 

 再び距離を詰めた二人は斬り合う。ぼっちは己の反射神経を全開で発揮して攻撃をかわし、受け流しては斬りかかる。シャルティアは現状出せる全力で迎撃する。しかし一撃一撃を振るう度に至高の御方に刃を向けている事を考え手が甘くなる。その気持ちを何とか持ち直し攻撃を続ける。

 

 「凄いなブラウニー殿は…」

 「すげぇってもんじゃないだろう。俺達が束になっても相手にならなかった相手にああも戦えてるんだからな」

 「でも、このままじゃあ負けてしまうわ」

 「相手は一撃が決まれば終わりだがアルカードのおっさんには決め手がない」

 「それに刀を折れては捨てている。持っている刀にも限度がありますからね」

 

 先に戦った皆が口を開く。時間を稼げてもアルカードは勝てないのだ。言われた通りに決め手がない上に武器は刀のみ。その刀も著しく減っていく。他には力は相手に及ばず、体力の限界だって先のはずだ。どこかで仕掛けなければ確実に死ぬ。

 ガゼフ達から離れたところでクレマンティーヌは首を傾げる。以前、一度だけ手合わせをしたことがあるのだ。手合わせと言ってもこちらの本気の一撃を受けただけだったがそれでもあの時の実力は今戦っている程度ではなかったと思う。

 

 「大丈夫でしょうか」

 

 横に来たニニャがクレマンティーヌに聞く。聞くというか助けて欲しいという懇願にも聞こえたが助ける気など毛頭ない。あの間に入ることさえ無理であるだろうがそれよりもあんなに楽しげに笑っている伯爵の邪魔をしたほうが怖いことになりそうなのだ。

 

 「しっかし私の武技を使いこなすなんてほんと化け物染みてるね。あの人は…」

 「そんな事よりも援護ぐらいしないと」

 「手、出さないほうが良いよ」

 

 声をかけたのはレイル・ロックベルだった。クレマンティーヌとの面識はなかったがニニャとは鍛冶屋で見かけており、つい視界に入ったから寄って来たのだ。

 

 「でも…」

 「邪魔になるだけだと思うよ。それよりそこのお姉さん」

 「ん~?あたしのことかな」

 「ん、そうだよ。ちょっと頼みがあるんだけど」

 

 レイルはニヤケながら桐箱を見えるように抱える。

 そんな話の最中も刀を振り続けた結果、刀は残るところ両腰の6本だけとなった。

 余裕の顔(内心冷や汗)でシャルティアはぼっちを見つめる。モミの言った意味を理解する。あの方は武人なのだ。本気を出して戦う相手を求めていたのだろう。だからレベル70差もあるこの状況であんなに楽しそうに笑っているんだ。今のぼっち様は心の底から喜ばれている。少しほっとしながら語りかける。

 

 「中々やるでありんすね?でも残り6本ほど…ここらで決着をつけると言うのはどうでありんしょう?」

 「・・・六爪流」

 

 指と指に力だけで柄を握り片手だけで三本の刀を抜いた。両手で合計で6本の刀を同時に抜いて走り出す。

 この技を使いこなすキャラは物凄い速さ振り回し猛攻をかけていた事を思い出す。確かに攻撃範囲が広がった事と同時に三つの刀が襲い掛かるのだ。攻撃力は凄まじい物であろう。しかし約1.5キロもある刀を片手で人間が振り回すことが出来るだろうか?無理だとぼっちは抜いてから理解した。

 仕方ないからそれでも斬りつける。いくらか武技で肉体を強化しているからと言っても速度が落ちる。シャルティアは思いっきり手を振り下ろして右手に持っていた刀三本を真ん中から叩き折る。

 「ですよねー」と言いたいのを我慢して残りの三本を投げつける。簡単にあしらわれた。でもそれでよかった。少し痛いかもしれないが行くことにする。

 

 「《疾風走破》」 

 

 武技を使い元々近かった距離を一気に詰める。それも顔と顔が触れそうな程。

 目の前に至高の御方の顔が接近したことで頭は真っ白になって顔は真っ赤になった。可愛らしいといつもなら思うのであるがそんな余裕は皆無であった。

 『心を乱すな。自分はつねに未熟なのだ』

 その通りだなと心の中で幻聴に頷く。

 

 「虚刀流最終奥義『七花八裂・改』!!」

 「カハッ!?」

 

 腹部に下から持ち上げようとする重い一撃が決まる。衝撃が背中から抜けるのが分かった。シャルティアにもその一撃は効いた。それだけの一撃を放ったと言うのに手を休めることはなかった。素早く引いた拳を今度は持ち上げる用にではなく垂直に己が今出来る最速の速度で打ち込む。突き出した手を引き戻すと両手を合わせるようにして同じ位置へ突き出す。そして三連撃によって怯んだ隙に跳び上がり、空中で回転する事により勢いをつけた一撃。かかと落としを頭に直撃させる。着地すると同時に左足を踏ん張り、膝蹴りを入れて浮かせる。浮いた状態から着地する時にあわせ振り上げた両手を両肩に落とす。最後に最初のような打撃を入れるための一撃ではなく相手を貫き通す勢いで突いた。

 浮き上がり苦悶の表情を浮かべるシャルティアを見たすべての兵士が声を上げる。

 あの化け物が一瞬でもいいようにやられているのだ。それに表情を見るにかなりのダメージを負っている。

 勝てる!!

 わずかに生まれた希望がそれぞれの胸の中で広がる。

 そんな淡すぎる希望はすぐに掻き消された。

 

 ゴキャア!!

 

 重く鈍い音が響いた。

 最後の一撃を入れられたシャルティアが手を払ったのだ。掠っただけだったのだが現在人間と強度が変わらないぼっちの腕が肘と手首の真ん中から90度曲がったのだ。

 皆の顔はもちろんシャルティアの顔も青ざめる。あまりの痛みに表情を乱すが強がって笑い抜く。

 

 「鬼の店主様!!」

 「受け取ってよ!!」

 

 レイルの声が響き、振り返るとクレマンティーヌが桐箱の中に収めていた槍『蜻蛉切』をぼっちに向かって投げてきた。どう考えても届かない距離を届かすには能力向上系の武技を使ったのだろう。ぎりぎりで届いた蜻蛉切を左手で掴んで構える。

 この『蜻蛉切』はどこか普通の槍とは見た目が違った。通常は木を使っている筈の持ち手も黒い鉄らしき物で作られており、刃先と持ち手の間には白をベースとしたまたも鉄系の板が取り付けられていた。その板と刃には何やら模様が描かれている。

 

 「まだ戦う気でありんすの!?」

 「・・・これが最後の一撃!!」

 

 見ているだけで痛々しいのだがそれを表情に出すのを堪えて受け止めれるように構える。槍であるからは突撃技、もしくは大降りに振るうかどちらかをしてくると判断したからだ。シャルティアの身体能力ならいとも簡単に行える物だからそれは正しいのであろう。普通の槍であるならば…

 

 「結べ!蜻蛉切!!」

 

 叫ぶと同時に刃ではなく面を向けられた。その面が光ると同時に光の刃がシャルティアに放たれたのだ。ガードも出来ずに深く斬りつけられて血が飛び散る。スキルで戻そうかと思ったが治さず、ふらふらと足元が覚束ないような弱った演技をしながら後ずさる。

 あの技には覚えがあった。第10位階《リアリティ・スラッシュ》

 ぼっちが使った蜻蛉切はナザリックでこの世界の鉄鉱石で作った模造品。それにナイフ・バットの応用とアインズに魔法を封印してもらうことで作った武器なのだ。最初は商品化すれば売れると思ったのだが発言する前にアインズに釘を刺されてとりあえずヘルシングの宝具として仕舞っていたのだ。しかしこの模造品は出来損ないであった。

 第十位階の魔法を応用で封じ込める事は出来ても放った瞬間強度不足で粉々と言うか粒子まで帰ってしまうのだ。それだけではすまずに放ったぼっちの左手には無数の傷が出来て血が滝のように流れ出ている。

 任務は達成したと判断して空高く飛び上がる。

 

 「この借りはいつか倍にして返すでありんす!!」

 

 叫ぶとすぐさまその場を後にする。

 シャルティアを見送ったはぼっちは痛すぎて声も出せずにその場に膝を付きそうになった。

 『拳王は決して膝など地につかぬ!』

 うるせえ!!途中良い事言ったと思った俺が馬鹿だったよ!!てか痛すぎてそんな余裕ないわ馬鹿者が!!

 膝を付くどころか倒れかけたところを急ぎ駆け寄ってきたニニャが支えた。皆から歓声が浴びせられる。いつの間にか周りの悪魔も居なくなっており余裕も出来たのだ。

 そんな事より誰かポーションをくれよ!!こっちは痛みを必死に耐えてんだよ!!

 ぼっちの思いはすぐに叶えられ師弟揃って治療を受けることに…あとはアインズさんの活躍を祈って休むのであった。




 戦闘で手を抜けないと言うか抜いてたら死んでいたぼっちさん。
 後はこの王都でヤルダバオトと決戦をしているモモンさんのみ
 
 次回「漆黒の英雄VS強大な悪魔」
 お楽しみに

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。