骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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おはようございます。連休一弾目投稿したチェリオです。
ちょっと戦いの前準備なんですよね。


第066話 「巻き込まれた至高の御方々」

 月が輝く深夜…

 王都へ進出する為の前準備をやっとの事で済ませたぼっちは先ほど屋敷に帰り、睡眠をとっていた。

 一階にはマインを含め数十人の使用人が詰めている。

 布団を頭まで被って爆睡していたのだが突如飛び起きた。

 自身の索敵に多数の悪魔が引っ掛かったのだ。レベル的に問題はないのだがこの世界の住人は別だ。

 多分その事でだろう。誰かが屋敷に飛び込み、一階で騒ぎになっている。とりあえず慌てることなく真っ赤な上着を着て一階に降りる。

 蝋燭の明かりを頼りに降りてみると不安げな表情で皆が途惑っていた。

 

 「アルカード様!」

 

 ひとりの使用人が気付いて名を呼んだ。同時に皆が振り向く。

 人目が集まるのはイヤなのだが正直に今は助かる。精神の安定化が起こって喋りやすくなる。

 

 「何があったのです?」

 

 分かっておきながら聞いてまーす。ここで『悪魔が大量に発生している』なんて言っても上で寝てた人間が言ったらおかしすぎるし。

 一人が前に出る。衣類は乱れて汗だくになっている事から飛び込んできた男だと判断する。

 

 「悪魔が!無数の悪魔が現れました!!」

 

 慌てふためく事無く話を聞く。解りきっていることだが彼らから聞くのと俺が感じた事に差がある事を実感する。俺からしたら小さな小火程度に感じていたが彼らにとっては国が崩壊するレベルだと理解する。

 今更ながら人間だった頃の感覚が狂ってきてるなぁ…

 

 「アルカード様、避難を!」

 「その提案は却下する」

 

 ゆっくりと皆の中心へと向かって歩き出す。

 そんな大変な事なら逃げ出すわけにもいかない。まだ寝てたいんだけどね…

 

 「マイン!」

 「は、はい!ここに居ます」

 「この街にいるヘルシング兵力を連れて王宮へ。ラナー王女に指示を仰いで最善の行動をせよ」

 「ハッ!行って来ます」

 「馬に乗れる者は近くの街々にあるヘルシング系列の店に向かい、兵力やら食料をかき集めてくれ。大至急」

 「はい。了解いたしました」

 「君はニ…ルークを探して来てくれ。そして鍛冶屋に来るようと」

 「承知しました」

 「君たちは王都に集めた物資をいつでも出せるようにしといてくれ。食料は後で振舞うことになると思うから」

 「は、はい!早速…」

 「残りの者達は一般人の避難に当たれ。行動開始!!」

 

 矢継ぎ早に指示を出してぼっち以外いなくなった屋敷で一人ぐったりとした。

 きっつい!精神的には楽なんだけど喉が死ぬる!!あ゛―…何故こんな目に…

 ため息をつきながら立ち上がり鍛冶屋に向かう。するとメッセージが届いた。

 

 『ぼっち様。ステラです』

 「・・・どうした?」

 『…姉からの伝言なのですが…宜しいですか?』

 「ああ・・・」

 

 宜しくないよ実際。嫌な予感しかしないよ。不安要素しかない。しかし大事な用件かもしれない。とりあえず聞いてみよう…

 

 

 

 アインズ…いやモモンは理解出来ていなかった。

 とある貴族の依頼で王都に出稼ぎに行く事になったのは良い。

 報酬も他の仕事より高額で貴族とのパイプも作れると二重で美味しい仕事と思っていた。用意された魔法詠唱者により空中を移動していたら何やら戦闘らしき物が見えて降下した。

 どゆこと?

 降り立った先で戦っていたのは仮面を被った少女…そんな者はどうでも良いのだがそれと対峙していたのが仮面を被ったデミウルゴスだったのだ。

 何してんの?ってかどうなってるのこれ?そして一緒に降りたナーベにものすっごい殺気を向けているのは何故に?

 

 「漆黒の英雄!私は蒼の薔薇のイビルアイ。同じアダマンタイト冒険者として協力してくれ!!」

 「承知した」

 

 アダマンタイト級に顔を売っておくのは悪くないだろう。それにアダマンタイト級を助けたとなれば今以上に名も売れるし。

 

 「これはよくいらっしゃいました。名を伺っても?私はヤルダバオトと申します」

 「アダマンタイト級冒険者のモモンだ」

 「それでここにいらっしゃった理由を聞いても?」

 「依頼だ。とある貴族より大きな仕事を請けてきたのだが……そちらの目的を聞こうか」

 「私の目的はこの都市に流れた私達を召喚・使役する強大なアイテムの回収になっております」

 「それを差し出せば引いてくれるのか?」

 「それは無理でございます」

 「ならばやる事はひとつだな?」

 「ええ、そういうことになりますね」

 

 大剣を両手に持ち、デミウルゴスと交える。パーフェクトウォリアーでレベル100の戦士になっているが元が魔法職なので実質レベル30程度なのだが、手加減してくれている為に今でも互角に戦っているように見える。さすがデミウルゴス。こっちの都合を理解してくれる。が…問題はこっちが理解出来ていない事だ。後でぼっちさんにでも聞いてみるか。

 悪魔の腕と大剣が火花を散らしながら接触し続ける。力強くも決して到達することのない激戦を目の当たりにして唖然とする。

 

 「凄い…」 

 「凄いってかあのモモンって奴、半分人間辞めてねえか?」

 

 隙あらば援護ぐらいは出来るだろうと思っていたガガーランとティアはあまりの戦いに入る事が出来ないでいた。憧れなどの感情より戦いに魅入っている瞳の中で一人だけ違う事にナーベは気付いた。

 

 「がんばれモモン様」

 

 恋する乙女が持つ独特の雰囲気を出している仮面を着けたイビルアイだ。

 それよりも気になることが一つ…何故あのような殺気を向けられたのか理解できない点である。

 その後はモモンが範囲攻撃からイビルアイ達を守り、デミウルゴスが撤退したことから一時的にだが戦いは終了した。

 

 

 

 ぼっちは鍛冶屋につくと頭を深々と下げるニグンと手を頭の後ろで組んで楽しげな笑みを浮かべるクレマンティーヌと合流した。

 

 「ぼっち様ご命令を。この命に代えてもやり遂げて見せます」

 「固いよね~ニグンちゃんは」

 「・・・あ」

 

 喋ろうとしてある事に気づいた。この大事件に人々は非難したり、建物の中に隠れている為に人気がないのだ。そもそも深夜の時点で人気は少ないのだが。

 精神の安定化が発動しない…こんな時に…悪態をつきたいがそれよりも少しでも早く伝えないと!

 

 「・・・ルーク」

 「ハッ!何でございましょう」

 「・・・指揮を」

 「畏まりました。話は大方伝令より聞いております。現場での指示はお任せを」

 

 え?これだけで通じるの?どんだけ優秀なんだよ。まぁ助かるけど。助かるけど!すんごくありがたいので二回言った。で、クレマンティーヌはどうするか…

 

 「・・・好きにしろ」

 「~♪さっすがぁアルカード様。話が分かる~♪」

 

 短剣をひとなめしたクレマンティーヌは駆け出し闇夜に消えていった。対してため息を漏らしたものの礼儀正しく礼をして歩き出すニグン。ほんと正反対な二人だよな。

 そんな事を思っていると店内より荷物を担いだレイル・ロックベルが出てきた。

 

 「あんれ?何でここにいんの?」

 「・・・武器を取りに」

 「へぇ~…逃げ出さないんだ。少し好感度アップ」

 「・・・」

 

 好感度アップって今はどれくらいなんだろう。いや!底辺だったら心にダメージが

 

 「ま、もともと高いけどね」

 

 よっし!やった!

 ガッツポーズをとりたい衝動を抑えつつ店内へ向かう。店内では従業員が必要最低限の荷物を持ち避難の準備をしていた。挨拶もなしに奥へと進み、棚の奥へと押し込まれた物と長い桐箱に手をかける。

 

 「その出来損ないと売れ残りを持っていくんだ?」

 

 荷物を置いてぼっちの後をついて来たレイルが面白そうに呟いた。

 

 「・・・刀を」

 「置いて行く奴から選んでおくよ」

 「・・・頼む」

 

 持って行くには多過ぎるために店内に置いて行く刀をレイルに取りに行かせる。桐箱を少し開けて中の槍を見つめる。

 

 「行こうか・・・蜻蛉切」

 

 これから戦いに赴くのだが何故こんな事になってしまったのだろう?と二人のプレイヤーは首を傾げる。




 降り立った漆黒の英雄・貴族になったぼっち 『何故こんな事に?』
 さて予告どおり本編の後は特別変

 次回『ぼっちの怖い物』
 いっぱいあるよね。視線とか視線とかね。
 お楽しみに

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