今更ながら誤字報告機能を使い誤字を教えてくれました…
きっゃまだ様・a092476601様・ザンギ@様・トードリオン様・ab様・Ca様・九尾様・矢沢様
感謝いたします。
そしてここに名前を載せられなかった方々には謝罪いたします。申し訳ありませんでした。
2月4日以前の誤字報告が適応した瞬間一覧より消えており、お名前が残ってなかったんです。
本当にすみません…
感想文で誤字報告してくださった方々にも返信で書いていますが、ここでも感謝申し上げます。
ありがとうございました。
これからもどうか『骸骨と共にぼっちが行く』を宜しくお願いいたします。
時刻は午前8時。まだ朝の寒さが強く残る中、王都大通りに店を構えるカフェのオープンテラスでザーバ・クンスラァはゆっくりと過ごしていた。
左手でゆっくりとページをめくり、右手でコーヒーカップを口元まで運ぶ。その動作だけで道行く女性たちはついつい魅入ってしまっている。
視線に気付き、軽く手を振ると顔を赤らめて手を振ってくれる。優しそうな笑顔の裏では染めるのは血のほうが良いのだがなど考えているとは誰も分かるまい。
「相席しても?」
「ええ、構いませんよ」
目もくれず相席を許可する。相手は背を伸ばした姿勢のまま向かいの席に座る。
店員が注文を聞きに来ると悩む素振りを見せつつコーヒーを頼んだ。注文を聞いた店員が奥に引っ込むとカップを机の上に置き、口を開く。
「貴方が私と相席するとは思いもよらなかったですね」
「少し前までは私もそう思っておりました」
向かいに座ったのは紛れもないセバス・チャン本人だった。彼は自分を嫌っている。ザーバとしてはあまり信じられない光景である。まぁそれでも表情を崩すことはないが…
「ツアレの事…本当にありがとうございました」
「何もそこまで感謝されなくても良いですよ。神の使いとして当然の事をしたまでのことですよ」
「……」
「その疑わしい目線を向けられるほうが良いでしょう…私は貴方にとって悪なのですから(ボソッ)」
頭を下げたセバスはゆっくりと上げると懐から黄色い薔薇を取り出した。
見覚えがあった。アレは私が渡した薔薇だ。
「この薔薇の花言葉をぼっち様から聞きました。貴方は何を思って私にこれを?」
ぼっち様なら知っているだろう。私に薔薇の花言葉を教えてくれたのはあの人なのだから。しおりを挟んで本を閉じる。
「そうですね…嫉妬ですかね?」
「嫉妬?貴方が私に?」
「悪は正義を嫌い、正義は悪を憎む。それらの理由には嫉妬、妬みなどの感情を含む事があります。自分に出来ない事、想えない事を反対側の相手は簡単に行なえるのですから」
「だから嫉妬の意を込めたと?」
「しかし今は愛情の薄れの方が正しいですかね」
「それは…あ、ありがとうございます」
店員からコーヒーを受け取り微笑むセバスに対して店員は頬を染めながら小走りで戻って行く。
「タッチ様ならどうしたのでしょうね」
「…あの方なら迷わず助けていたでしょうね」
「あなたはどうでしたか?正義の行いを行なえましたか?」
「私は…」
「あまり失望させないでくださいね」
「やっぱりここに居られましたか」
遠くからザーバに向かって小走りで近寄ってくるシスター服の少女が視界に入った。セバスは軽く礼をして席を立つ。少女はすれ違いながら不思議そうな視線を向ける。
「あれ?お話中でしたか。悪いことをしてしまいました」
「ところでどうしたのですかシスターエイナ?」
あ!と声を挙げて用件を思い出したエイナはムッとした表情で向き直る。
「朝のお祈りがすむとどうして姿を消したんですか?おかげでシスター総出で探しているんですから」
「おや?今日の午前中には何も予定は入っていなかった筈ですが」
「なくても何も言わずに居なくなったら心配するじゃないですか…兄様だって急に居なくなってしまったんですから…」
「…すみませんでしたね。軽率な行動でした。今後は控えることにしましょう」
「…はい」
会計を済ませて二人並んで教会へと帰る。
エイナ・ポルグレッサ
ある事件で兄を亡くした元貴族令嬢である。突然、兄と両親を失った彼女は絶望の淵に叩き落された。その後は彼女がポルグレッサ家当主になったがまだ若い彼女にハイエナのように金目当ての親族が群がったのだ。追い討ちをかけられた彼女は精神崩壊の一歩手前まで追い込まれた。
そんな彼女を救ったのは神父で交流があったスカーレット・ベルローズが救ったのである。精神面を助け、群がる親族をすべて追い払ったのである。
立ち直った彼女は財産のすべてを寄付してスカーレットと一緒に教会で勤めている。彼こそが兄たちを失うように後押しした存在だと知らずに…
スカーレット教会。通称『赤薔薇園』。18歳以下の孤児286名、心に傷を負った人・匿っている娼婦&奴隷77名、シスター24名、神父32名、警備67名の大所帯である。
『赤薔薇園』は王国でも最大級の教会である。狭い敷地に詰め込むように暮らしているのではなく、まだまだ余裕があるぐらい大きい施設なのである。大聖堂や皆が住まう為の建物、広い庭園に畑を持っている。
この施設は二人の元貴族令嬢の多大すぎる寄付で出来上がっている。だがすでに資金は尽きており寄付金により運営している。と言っても代表であるスカーレット神父は貴族令嬢や夫人からの人気が高く途切れることはないのだが…
それでも野菜などを畑で作り、庭園で育てている赤い薔薇を売ったり、代表自ら手品を披露して資金を得たりと自分達でも何とかしようと動いても居る。
門を潜り、二人で歩いていると多くの子供たちが手を振ってくる。
「ふふふ」
「どうしました?」
「いえ、本当にスカーレット様は人気者だなっと思いまして」
「それは良かった」
二人揃って微笑んでいるとドタドタと駆けて来る足音が響いてきた。
「ベルローズ様ぁ~!」
通路の端から走ってきたキャロルをザーバは抱きしめるように受け止める。
隣に居るエイナは頬を膨らませる。
「心配したんですよ!何処にも居なくて!!」
「すみませんね。先ほどシスターエイナにも怒られました」
「本当に心配したんですからね…にしても良いにおいしますねぇ~」
「もう、キャロ!いつまで抱きついてるんですか。私の神父様から離れてください!!」
「『私の』?(ニヤリ)」
「はわ///!?」
「『私の』ねぇ?」
「違うんです!そういう意味じゃないんです///!」
「落ち着きなってエイナ」
「うー///」
「それより他のシスターたちに神父が帰ってきた事を伝えなくて良いの?」
「はぅ…忘れてました。伝えてきますけど…」
「エイナ『の』神父様には手を出さないって」
「~っ///行って来ます!!」
小走りで去って行くエイナをキャロルが笑いながら見送っていく。
キャロル・ヴィルシー。
元々は商人の家だったが貴族間で上り詰めた家の出だ。没落したけれどもその資産は貴族並みにあった。彼女もエイナ同様に兄を亡くしたが彼女ほど深刻ではなかった。あまり気にする事もなかったのだがついでにハイエナ共を追い払ったらエイナと共に全財産を寄付して教会に来たのである。
「で、今日はどうするんですか?」
「そうですね…」
顎に手を当てて悩む。
いつもなら子供達と遊んだり、お祈りをしたり、薔薇の手入れなどあるのだが今日はそんな気は起きない。たまにあるパーティは無く、手品を披露し稼ぐことも予定してない。ゆっくり読書でも良いのだが…
「夕刻に少し出かけます」
「護衛は?」
「いりませんよ」
「…分かりました」
不安そうな表情をするキャロルを余所にザーバは嬉しそうな笑みを浮かべた。
お祝いとして私が薔薇の花束とワインを持っていったらどんな顔するでしょうかね?
「ワインと言えば…」
「?」
「良いワインが手に入ったのですが」
「まだ午前中ですよ?」
「どうです?ご一緒に」
「是非!!」
この後、帰ってきたエイナにばれて説教される二人を皆が目撃したと言う…
不安は無かった。うん。無かった……ですよねぇ?
チェリオ的には無かったと信じて予告行きます。
不安要素回を二回経て、王都も未だ平和であります。ならばツアレと平和を謳歌しても良いよね?
次回『老執事と少女の行方と問い』
あれ!?今回より不安臭がするのはどして?
お楽しみに