骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 前回のお話でマインがぼっちより授かった刀がボロボロになったの?と質問がありました。
 すみませんでした!!チェリオの中では刀は仕舞っている設定にしていたのですが書き忘れました。すみません。という訳で後から付け足しました。
 

 この話はグロテスクな表現が含まれております。苦手な方は突入した辺りから半分まで一気に飛ばすか、最初っから半分まで飛ばす。かされる事をおすすめいたします。



第058話 「老執事と襲撃」

 セバスはクライムとブレイン、そしてスカーレットことザーバはツアレが働かされていた娼館の裏に来ていた。やる事は簡単なことである。ばれないうちにスタッファンという男とサキュロントの排除とここで扱き使われている女性達の救出である。本来なら難しい部類に入るのだが腕が確かな者が二人にこの世界では最強の人物がいるのだ。何の問題もないだろう。

 クライムとブレインが店の入り口を見張っているのを確認してセバスはザーバに声をかけた。

 

 「ご協力感謝いたします」

 「ふふ。感謝など…今も疑っているのでしょ?」

 「そんな事は…」

 「分かっていますよ」

 

 今回の作戦で重要なのは救出した女性達を誰に保護してもらうかにある。話し合いをしているときはクライムの主人に相談と言う事になったのだがセバス的にはそれでは時間がかかる。そこで貴族ともパイプがあり保護した後の面倒を見れるザーバが女性達の保護を受け持つことになったのだ。ちなみに捜索はするが戦力としては加わらないとの事。聖職者がどうのこうのと言っていたが単に興味がないのだ。

 

 「ところで気になる事が一つ」

 「なんでしょう?」

 「あの時の者達はどうされたのですか?まさかとは思いますが」

 

 あの時の者達とはセバスがクライムとブレインと会話している時になにやら殺気立った者達が近づいてくる気配があったのだ。それがザーバが現れる直前に気配が急に弱々しい物へと変わったのだ。

 

 「お優しいですね。あのような者達にも慈悲の心をかけられるとは」

 「そういうわけではありません。貴方の任務に支障が出ないかどうかと心配しています」

 「あの者達なら何が起きたかも分かりますまい。一応殺してもいませんし、日常生活にも何の支障もありますまい」

 「…そうですか」

 

 本当かどうかは別として彼の任務に支障がないのであれば別に良い。話が一区切りついたところでブレインより合図があった。突入の合図である。セバスは単独で表より裏口より三人が突入する。

 

 「さて多少の時間は稼げるでしょうか」

 

 正面入り口に立ったセバスは気軽にノックをする感じでドアに裏拳を喰らわす。軽い動作に関わらず木材で出来ていた扉は大きな音と共に木っ端微塵に飛び散った。

 音に驚き多くの従業員が慌てて駆けつけた。その全員が目の前の老執事ではなくどうやったらそこまで粉々に出来るのか分からない扉だった物を見て唖然とする。

 

 「では始めますか」

 

 その表情にはいつもの慈悲深さは一ミリたりとも存在しなかった。走ることなどせずゆっくりと歩き出す。呆けた一人の男の前に立つと片手を振り上げた。パァンと乾いた音が響く。単なる平手打ちである。

 

 「なんだあいつ!!」

 「ば…化け物…」

 

 他にも呆けていた男達が危険を理解して騒ぎ出した。

 セバスにとっては普通に平手打ちしたのだが受けた男が悪かった。脆すぎたのだ。首は音を立てて回り360度回転してしまった。非現実的な光景を見て悲鳴を上げながら逃げていくがさすがに逃がすわけにもいかないし許すわけにもいかない。

 粉々に砕けた中で比較的大きな破片を爪先で蹴り上げる。視界まで上がると拳で打ち跳ばした。

 

 「ピギャ!」

 「ワラバ!」

 

 先頭を走っていた男達に命中して頭が、胸部が弾けた。またも非現実的な光景を見た男達には絶望しかなかった。

 逃げれない。 

 逃げたらこうなる。 

 ではどうする?

 

 「た、戦え!」

 

 ナイフを構えた者が叫ぶ。震えながらだが化け物と比喩されたセバスに対峙していた。

 

 「戦え!戦わないと死ぬぞ。死にたくない奴は手伝え!!」

 

 震えながらも生にしがみ付こうと各々が近くの武器、もしくは拳を握る。こんな光景をぼっちが見ていたなら喜んで拍手のひとつでもして『かかって来い人間共。そして魅せてみろ私に』と興奮して叫んでいただろう。しかし相手はセバス。彼の心は何も揺らがない。あの少女『ツアレ』に、ツアレにではなくても多くの人間に非道の限りを尽くし、協力した彼らを許す事は出来ない。良かったと言えば立ち向かってくれることで追わずに済むぐらいだろうか。

 叫びながら突撃してくる男達に対してセバスも駆け出す。

 振り下ろされた武器を軽く手で払い、肘打ちを顔面に当てる。後頭部が背中にくっ付いた。

 左前から殴りかかってきた。身を捻って避けると掌底を相手の胸部に放つ。背中から赤い飛沫が起こった。

 棍棒を振りかぶって突っ込んできたが振り下ろされる前に顔を掴み、地面へと叩きつける。肩より上が地面の中へと消えていった。

 槍を構えて突撃してきた者には先端を蹴りで押し返した。腹部を貫通した槍が後方に控えていた男に突き刺さった。

 

 「後は貴方達だけですか?」

 

 襲い掛かろうとしてきた者達は残り二人。目が合うと同時に武器を捨てて両手を高く上げて降伏のポーズをとる。

 

 「少し聞きたいのですがスタッファンさんはどちらに居ますでしょうか?教えていただければ助けるかも知れませんよ」

 

 助かりたい一心で喋りだす二人に対してセバスの表情は先ほどと変わってなかったことに気付いていなかった。

 

 

 

 「おっと」

 

 斬りかかって来た男の一撃を避けて足を引っ掛ける。すると面白いようにバランスを崩して階段を転げ落ちていった。その光景を見ながらまた一人を斬り捨てたブレインがやるなと意味を込めて口笛を吹く。

 

 「本当に戦うの苦手なのか?」

 「ええ、争い事はどうも苦手でして」

 「まったくそうは見えませんが」

 「まあまあ、じゃあ入り口を頼む」

 「はい。ではお気をつけて」 

 

 入り口で待機するために戻るクライムを見つめつつ何となくだが一方的に神父を嫌っているのがまだ3分も経たない内に理解出来た。逆に神父はそんなクライムを良しと思っているのか楽しんでいるのかよく分からない感じだ。

 と、考え事をしているとまた隠れていたであろう男が襲い掛かってくる。一歩下がるだけで振り下ろされた剣を避け、首根っこを掴んでそのまま柱へとぶつけた。歯が砕け悲鳴にもならぬ声を上げながら転がる男を興味なさげなに見た瞬間、顎に強烈な蹴りを喰らわせて意識を刈り取った。

 

 「さっき争う事は苦手って言ってなかったか?」

 「苦手ではありますが不得意と言う訳ではありませんので」

 「さいですか」

 

 良い笑顔で答えた神父に適当に返事をして先に進む。

 

 「…そうですか。彼の方に…」

 「何か言ったか?」

 「いえ、なにも」

 

 ザーバは笑って答える。クライムのほうに彼より格上相手が向かう気配を感じ取った。これは良い鍛錬になるだろう。なに、失敗したとしても命を落とすだけである。問題ないでしょうと嗤いながら歩いて行く。

 

 

 

 裏口付近で待機していたクライムは妙な音を耳にした。足音である。一応隠れていた為に相手に気付かれていない。その位置から足音の鳴った方向を睨むが誰も居ないのである。不思議に思い睨むように見ていると何もなかった所から二人の男が現れた。

 

 「まったく誰かしらね。奇襲なんて」

 「しっ!!」

 「何よ?さっさと行きましょ」

 「そこに誰か居るな?」

 「!?」

 

 あっさりと隠れている事を看破されては奇襲も何もない。ゆっくりとだが姿を表す。その姿をみたオネエ言葉を話す男『コッコドール』はあら!と声を漏らした。

 

 「知り合いか?」

 「うふ、そんなところね」

 「前に手を出したお相手とか言うんじゃないだろうな」

 「違うわよ。まぁ少しは可愛い坊やとは思ったけど」

 

 熱っぽい視線を感じて背筋に悪寒、肌には鳥肌が立った。

 そういう趣味か!

 別の意味で身の危険を感じながら剣を構える。

 

 「私の嫌いな女の部下よ」

 「へぇ…これがね」

 「持って帰りたいんだけど?」

 「……」

 「違うわよ。あの坊やが居れば交渉事に使えるじゃない」

 「使えなかったら?」

 「もちろん私が使うだけよ」

 「別料金を貰いますよ。という訳で大人しくしてもらうぞ」

 

 二重の意味で身の危険が迫っていたがそんな事はすでにどうでも良かった。今ここで自分が捕まれば『ラナー様に迷惑がかかる上にご恩を返せない』事の方が何倍も重要だった。すぅーと息を吸い込み叫んだ。助けてくださいと。これでブレインさんかセバス様が来てくださるだろう。その事に気がついたもう一人の男『サキュロント』だ忌々しそうに舌打ちをした。

 

 「持って帰るのは難しくなりましたね」

 「何でよ!貴方『六腕』の一人なんでしょ。あんな坊や…」

 「すぐに奴の仲間が来ます。早々に決めないと不味い」

 「なら首。首から上だけ持って帰るわ。飾ってからあの王女に届けてあげるんだから!!」

 「ここは死守させてもらう!!」

 

 黒いフードを被った猛禽類のような視線を向けるサキュロントはゆっくりと動き出す。クライムはサキュロントと対峙しながらコッコドールを狙う。それに気付いたサキュロントが間に割り込む。

 手が揺らめいた。そう思った瞬間クライムは一撃を喰らって床を転がった。痛みが身体中を襲う中、さっき見たものを思考する。何かしらの武技、もしくは幻術。

 

 「幻術ですか…」

 

 立ち上がり再び剣を構えながら表情を観察する。目が反応した。どうやら幻術で間違いないようだ。気付かれた事に気づいておりさすがに同じ手と言うのも味気無い。

 

 「《マルチブルビジョン》」

 

 複数に分身をしたサキュロントが襲い掛かる。その内の一体に斬りつけるが手ごたえは無く、剣はただ通り抜けた。同時に喉元がちりちりと熱を持ったような感覚が走った。慌てて左手で喉元を守るようにすると痛みと同時に鮮血が飛び散った。目に映る分身は二体。二分の一の確立で正面から迫る一体に斬りかかるがさっきの奴と同じで通り抜けるだけだった。勝利を確信した本物は左側から襲い掛かるが攻撃が届くことは無かった。

 

 「カハッ!!」

 

 短く言葉を吐くと痛みと衝撃を受けた体が後ろへと倒れた。そのまま一回転するようにして立ち上がった。こちらへと伸びきった足を見て自分が何をされたのか理解した。

 

 「てめぇ…蹴りだと。剣士の戦い方じゃねえな。だが」

 

 最初の一撃に戦闘不能になった左手。痛みと戦いから来る疲労ですでに弱っていた。それでも諦める様子は無かったが。

 

 「もう!さっさと終わらしちゃってよ」

 「そうはいかねえな」

 「ブレインさん!」

 

 現れたのはクライムを守るように立ったブレインだった。

 

 「よくがんばったな。あとは任せろ」

 「ブレイン?…まさかブレイン・アングラウスか!?」

 「嘘よ!そんな相手が来るなんて!!」

 

 ブレインは喚いている相手の声など聞こえていなかった。見えるのは敵対する相手よりも背後で負傷している仲間。俺が負ければ後ろのクライムもやられてしまうだろう。絶対に負けられない。いつもより力が入る。

 そうか。これが何かを背負って戦う感覚か。悪くないな。

 刀を鞘に納めたまま構える。

 

 「来いよ。一撃でしとめてやる」

 「!?舐めやがって!!」

 

 馬鹿にされたと怒ったサキュロントは《マルチブルビジョン》を使用し複数体となって襲い掛かる。が、このとき知らなかったのだろう。どれだけその行為が無意味であったかを。

 武技《領域》により半径3m以内のすべてが手に取るように分かる為に幻術魔法などなんの意味も無かったのである。本体が分かっているのならそこに神速で刀を抜く抜刀系武技《神閃》がサキュロントの腹部にヒットした。力なく崩れ去るのを見たコッコドールは何の抵抗もすること無く捕まった。

 

 

 

 離れた所から見ていたザーバはなにやら楽しそうであった。

 

 「意外でしたね」

 

 背後から声をかけたのはスタッファンの処分を済ましたセバスだった。

 

 「彼らがですか?」

 「いいえ。貴方がです」

 「何かしましたかね」

 「探すのを自分に任せてブレイン君を救援に向かわせましたね。私は見捨てると思っていたのですが」

 「一緒に仕事をしている者を気遣うのは当たり前などと言う言葉では信じてもらえませんね」

 

 言わなくても分かる疑いを自ら指摘し答える。

 

 「彼は私のお気に入りなんですよ。彼を狂愛する乙女。いや道化ですかね。彼の為に他人を思いやり、彼の為に費用を費やし、彼の為に仮面を被り続け、彼の為に理想の姫を演じ続ける。そんな狂った道化の前であの玩具をゆっくりと、あっけなく壊す事を想像するのが私の最近の楽しみでしてね」

 

 少しでも彼に良心があることに期待した自分が愚かだった。彼に対して憎しみに近い感情が自分より這い出てくる。

 

 「ご安心を。別に実行しようと言うわけではありませんので」

 「…そうでございますか」

 「ふふふ。やはり貴方は優しすぎますね。任務の妨げになったスタッファンを頬を複数回ビンタし、腹部に一撃入れて内臓破裂させて殺すなど…今度ご教授しましょうか?」

 「結構です」

 

 即答の答えに満足したのか背中を見せて歩き出す。

 

 「では私は彼女達を連れて帰るとしますか。Good Luck!悪の中の善なる執事君」

 

 姿を消した彼を見送るとセバスはクライムとブレインに合流した。これで任務の妨げは何とかなったと思い込んで…

 

 




 原作よりきれているセバスを書きたかった。と言うかチェリオの怒りもプラスした。
 ま、それは良いとして次回…

 『緊急事態発生。緊急事態発生。ナザリック内で問題発生。範囲内のメイド達は速やかに非難してください。これよりこの階層は閉鎖いたします。繰り返します。緊急事態発生。これは演習ではない。これは演習ではない』

 …ぼっちもアインズも居ないナザリックでいったい何が起こったのか?
 次回『最悪の事態』
 お楽しみに

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