骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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外伝06話:仲間を求めて:続

 ハロー、ぼっちです。

 今日はスレイン君お休みです。なんでも用事が出来たとかどうとか…。あ!皐月ちゃんも休みです。怪しいなぁ(ニヤニヤ)。

 と言う事で現在は索敵担当のミイと新人のスサノオとエスデス、そしてみのりこと共にとある山奥まで来ています。

 毒沼や枯れきった木々で覆われた山は黒く淀んだエフェクトが発生していた。モンスターはスケルトンなど下級の奴しか出てこない。ぼっち一行はレベリングやモンスター討伐でここに赴いている訳ではない。掲示板にはいろんな情報がありその中には誰々を倒して欲しいとか言う依頼もある。これはやり過ぎるプレイヤーキルや初心者狩りなどを行なっていると判定された者のみを対象に出来る。

 『ウルブス』

 グリードというプレイヤーを頭に置くPK専門チーム。初心者だろうが生産系ギルドだろうがお構い無しに襲い掛かる為にハイエナとも呼ばれる。ただ弱い虐めを行なっている訳ではなく奇襲や伏兵などの戦術を用いて大手ギルドにすら挑む。そんな彼らは今まで殲滅された事は一度もない。どうせ仲間にするならそれぐらいの奴らが良いですよねと昨日の勧誘終了時にスレインが呟きぼっちが実行に移したのだ。

 

 「ミイさん」

 「どうしたのかにゃ?」

 「何故ぼっちさんは自分達と離れているのでしょうか?」

 

 スサノオが言ったとおり、ぼっちは新人達と15メートルほど距離を開けていた。ちょうどその中間を歩くミイは腰に手を当て、胸を張って答える。

 

 「それはここが敵の勢力圏内だからにゃ」

 「…?」

 「そうだったのですかぁ~?」

 「貴様らは…しかしそれならぼっちさんも一緒に居た方が良いのでは?」

 「索敵担当としてミイはまだまだ未熟なんだにゃ。広範囲に目を向ける事になれてないからぼっちさんが前方を担当してミイを気遣ってくれてるのにゃ。それにぼっちさんは襲われても対処するどころか返り討ちにするなんて朝飯前だにゃよ」

 「それは~凄いです~」

 

 期待の眼差しを背中に浴びせられた事とあまり知らない新人と一緒に居る気持ち悪さから吐き気を催しそうになりながら何とか耐えていた。

 その期待の眼差し止めて!ミイも違うからね!?新人との距離をあけたかっただけなのになんでそうなるの?それに俺は索敵能力無いから敵が来た時の盾にしかなれないよ。

 道なき道を歩き始めてやっと『ウルブス』の拠点とされる洞窟が見え始めそうな時に人影が視線を過ぎった。

 

 「・・・来た」

 

 速度からして人間の速度ではない。速度がある種族でなおかつ速度上昇系の魔法かスキルを使用しているのだろう。慌てる事無く腰に差している『村正』と『菊一文字』を抜き放つ。

 

 「スキル・・・《重鈍なる楔》」

 

 短剣らしき武器で斬りかかって来る二人の攻撃を刀で受け流しつつ、通過する瞬間に斬りつける。斬りつけられたエフェクトが発生した後から傷跡に三角形の楔を体内へ入り込んでいるのが見えた。

 後から襲い掛かってきた奴にぼっちが斬りかかろうとする為に距離を取ろうと跳ぼうとするが速度が急に落ちて刀の間合いから抜け出せずに何度も斬られて消滅した。

 

 「なんだこれは!?」

 

 生き残っている襲い掛かった奴は自分の体内に打ち込まれている楔に驚きつつ短剣を構える。

 立ち止まったおかげで相手が狼人であることが分かった。

 《重鈍なる楔》は斬り付けた相手に速度低下させるというもので斬れば斬るほど速度が低下するのだ。中々使えるスキルなのだが問題はある。一日に一度しか使えないことと…

 

 「・・・発動から30秒しか・・・持たない」

 「ケッ!!そんな欠陥スキルなんて…」

 「・・・十分」

 

 ぼっちの意図を理解してかスサノオとエスデスが背後より襲い掛かる。

 

 「《零度の軌跡》」

 「《二の太刀要らず》」

 

 氷の粒子を残しながら一気に距離を詰めてレイピアで連続突きを決めたエスデスごと斬る勢いで攻撃力を二倍にしたスサノオが大剣を振るう。間一髪でエスデスが回避したがもう少しで当たる所だった。

 ちょっとそこの二人!相手のHP見てよ!!恐ろしいスピードで減って行ってるよ!?これオーバーキルじゃねえ?それに《零度の軌跡》も《二の太刀要らず》も一日一回のスキルじゃなかった?

 自身と武器の速度を特上昇させて動いた後に氷の粒子のエフェクトを発生させる《零度の軌跡》も自身の防御力を半分にして攻撃力を二倍にする《二の太刀要らず》もぼっちの言う通り一日一回のみのスキルである。すでにぼっちの一撃にスキルを無駄と言っても良いほど使用しただけで彼は倒せたのだがこれで終わらなかった。

 

 「《煉獄の火柱》ぁ~♪」

 

 もう少しでHPバーがゼロになる筈だった狼人は黒紫色の火柱に飲み込まれた。皆の視線は自然と魔法を使用したみのりこに集まった。先程一緒に斬られかけて怒ろうとしていたエスデスまでも驚いたように見ていた。

 

 「うふふ、やっぱりぃ火は良いですよねぇ~♪」

 

 怖っ!!なにこの子!?うわー…なんか不安が残るわ。てか、もう少しでスサノオとエスデス巻き込みそうだったぞ。

 「うーわー…」と呟いていたミイが慌てて辺りを見渡す。同じように辺りを見渡すと16名もの狼人に囲まれていた。それぞれが武器を手にしていた。新人達やミイはぼっちに背を預けるように円陣を組んだ。

 その中で一人だけ前に出た。肘や膝より下が毛皮に覆われ、腰骨から生えているふさふさの尻尾や肩まで伸ばした髪に狼耳までも白銀の狼人だった。防具は白いライトアーマーで武器は狼の紋章が入った薙刀。出る前に見た掲示板に書いてあった『ウルブス』のリーダーのグリードの特徴と一致した。

 

 「ようもやりよったな人間種」

 

 忌々しくもめんどくさそうに言い放ったグリードにぼっち達もウルブスの面々も注目する。

 

 「・・・仕掛けてきたのは・・・そっちだが?」

 「まぁ…そうだろうな。で、お前らは何しにきやがった?」

 「貴殿・・・グリードを仲間にしたくて」

 「…はぁ?は…はは…は…あははははははは」

 

 正直に答えると大声で笑われているのはなんでだろう?もう、早く帰りたいのだが…。これだけの人数に見られてるし、すぐ近くには新人達も居るから落ち着かない上に本気で気持ち悪くなって来た。

 

 「ははは、すまねえな。今まで俺に敵対する者ばっかりだったが仲間にと言われたのは初めてだ。それもこの状況にびびってって訳でも無さそうだ」

 

 手を挙げて仲間に合図を送った。ウルブスのメンバーは武器を納めた。多分手出し無用の合図だったのだろう。

 

 「良いぜ。ただ条件がある」

 「・・・何かな?」

 「俺とあんたの決闘だ。あんた自身の技量を知りたいからスキルの使用は禁止な。俺が負けたら仲間になる。で、あんたが負けたらあんたが俺の仲間になる。どうだ?」

 「・・・(コクン)」

 

 二本の刀を握ったまま前に出るとグリードも薙刀を構える。自分の武器より長物を相手にする場合は相手より数段上の腕がないと勝てないみたいなことを前に聞いたな…警戒しつつ構えているとクスリと笑った声が聞こえた。

 

 「来ないなら行くぞ?」

 

 薙刀を軽々と振り回しつつ斬りかかる。間合いが違いすぎて相手には斬り込めないが何とか凌ぐ。と言うか何とか凌ぐ事しか出来ない。絶賛吐きそう…

 周りから見たら異様な攻撃だった。薙刀を持ち直して左から攻めたり、急に回したり、柄で突いてきたりと型にはまった攻撃ではなく奇襲的な攻撃である。それを深手は浴びてないとは言えダメージを受けながら何とか耐えていた。

 猛攻を続けていたグリードは休む事無くまだ攻め続ける。

 

 「はっはー!!どうした、どうした!手も足も出てないぞ」

 「・・・」

 「このままじゃあ、ただ俺に負けるぞ?」

 「・・・リズム」

 「なんだってぇ?」

 「・・・解った」

 

 右手で回した薙刀を首に向けて横に振ったが避けられたがそのまま右手は振りぬけたが薙刀は左手で持ち再び襲い掛かる。が…

 金属音の甲高い音が響き渡った。

 薙刀の刃と菊一文字の刃がぶつかり合って弾かれた。両者の獲物が弾かれてお互いがバランスを崩した。弾かれた薙刀を何とか前に構えるが…

 

 「――っ!?」

 「・・・牙突零式」

 

 眼前まで近付いたニッコリと笑っている表情をした金髪神父に背筋が凍りそうになる。体勢が整わない菊一文字ではなく村正を後ろから前へと腕の稼動域をうまく使って突きを繰り出す。腹部に大きな一撃を受けて後退しながら再び薙刀を振るうが、またも弾かれ斬りつけられる。

 

 「ハッ!!嘘だろ…。どうやって…」

 「・・・?」

 「こいつは…こんの!!」

 

 先程の戦い方を忘れたように大降りで斬りかかる。が、軽く避けられてそのまま後ろを取られる。刀が振られると思ったのだが振られる事は無かった。刀を構えたままぼっちは固まっていた。

 距離を取って大きく息を付いて落ち着く。

 

 「何で斬らなかった?今斬れば勝ってただろうに…」

 「・・・」

 「後ろからは斬らないって事か…」

 

 頭を振るって冷静になろうと考えをめぐらす。

 

 「甘い…甘すぎるぜ。そんなんじゃあいつか痛い目を見るぜ?」

 「・・・」

 「沈黙は肯定…てか」

 

 ぼっちは何も答えずただ見つめている。短く息を付いて薙刀を納める。

 

 「だけどそれも悪くねぇ。

  俺の負けだな。良いぜ、あんたの仲間になってやるよ」

 カラカラ笑いながら宣言した。これでvは大きな戦力を得た訳だが戦った本人は首を傾げていた。

 別に後ろを向けているから刀を止めた訳ではなく。正直に言うと吐いてました。刀を振りぬこうとしていたのではなく胃の中の物をオートリバースしていたのだ。何とか音が漏れないように耐えていたらいつの間にか仲間になってくれるって!やったね!!おぅぇ…まだ吐きそう…

 こんな事もあろうかと口元にナイロン袋を用意しといたのさ!!

 この『こんな事もあろうかと』ってヤマトの真田さんが元ネタだっけ?記憶が曖昧だな…

 そんな事を思いつつぼっちはグリードを仲間へと迎え入れるのであった。


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