骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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やっとナザリックに帰ってこれた。
さてコキュートスの敗北の結果どうなるか?リザードマン達への対応は?モミの行動の理由などいろいろ書きます。


第045話 「一時帰宅」

 現在ナザリック大墳墓にはセバス、ソリュシャン、ザーバを除く者が集結していた。

 リザードマン討伐のために離れていたコキュートスもデミウルゴス、ぼっちも帰還したのだ。

 今回はこれからの事と私の事をどうするかの話がメインとなるだろうとモミは皆が集まっているであろう玉座の間に向かっている。

 玉座の間に入るとすでに階層守護者全員が揃っていた。アインズとぼっちはまだ来てないのだろう。いや、ぼっち様は居るのかも知れないが分からないというのが正解だろう。

 コキュートスの周りにデミウルゴスとアウラが集まっていた。 

 

 「はい。コキュートス」

 「ン?コレハ…」

 「コーヒーだよ」

 「前にぼっち様が仰っていたのを思い出したんだ。『勝利には美酒が相応しいが敗北にはコーヒーのほろ苦さが似合う』とね」 

 「ソウナノカ…」

 「私が淹れようかと思ったのだが私よりアウラの方が上手だからね。ぼっち様直伝だからね」

 

 うーわー(棒)デミデミ羨ましさ満開で言ったね。と言うかあの人は何を言ってるんだろうか。

 コーヒーを味わいながら飲んでいるコキュートスの辺りにシャルティアとマーレも集まった。

 

 「むー…もういいでしょ!?って言うかデミウルゴスは何でそんなにぼっち様とお話してる訳?」

 「フム…確カニボッチ様トヨク話ヲシテイルト言ウ事ヲ耳ニスルナ」

 「羨ましいでありんす!ずるいでありんす!!」

 「ぼ、僕もぼっち様と二人っきりでお話したいです」

 「確かにぼっち様と二人っきりでお話しすることはありますが貴方方のように添い寝をした事はありませんよ」

 「添い寝はあたし達だけの特権だからね。ねー」

 「そうでありんすね」

 「何故コウイウ時ダケ仲ガ良イノダ?」

 「あはは…」

 「添い寝と言えば…マーレ!あんた毎晩ぼっち様と添い寝してるってシズから聞いたけどほんとなの!?」

 「ふぇ!?なんでそれを…じゃなかった」

 「毎日!?毎日でありんすか!!」

 「マーレ…君はぼっち様もお仕事があるというのに…」

 「ふぇぇぇ、ごめんなさい」

 

 いつも通りの会話をしている皆の元に私も混ざりたいのだがそう言う訳にもいかなかった。ここに来てからアルベドの刺す様な視線が向けられているからだ。多分私がリザードマンに協力したことはアルベド、もしくはデミウルゴスにも知れ渡っているのだろう。

 仲良さげに会話していた皆が急に姿勢を正して整列する。この気配はアインズ様が来たのであろう。思ったとおりにアインズ様と気配を消したままのぼっちが並んで玉座付近に現れた。肩には天使の輪と枯れたような翼を持つ全長1メートルほどの胚子のような姿の第八階層階層守護者のヴィクティムが乗っていた。

 アインズが玉座に深く腰掛けるとぼっちは近くの柱を背もたれに腕を組んで待機した。

 

 「よく集まってくれたな。早速だが今回のコキュートスの件について話そう」

 「お待ちくださいアインズ様」

 

 これから話し出そうとしたアインズに待ったをかけたのはアルベドだった。

 

 「コキュートスの話をする前にアインズ様の意向に背いた愚か者の処罰の方が先だと思います」

 「?どういうことでありんすか?」

 「貴方は分かっているわよね…モミ?」

 

 その言葉と共に鋭さを増し殺気のこもった視線へと変貌していった。

 

 「貴方はリザードマン達に手を貸し、あろう事かぼっち様を利用してコキュートスの指揮する軍勢を壊滅させた。これは明らかに至高なる御方を陥れる事と同時に謀反である事に他なりません」

 

 罪状が述べられると同時に皆の視線が鋭くなり集まってくる。ただぼっちさんとアインズ様、コキュートスはそんなことはしなかった。

 

 「そのことだが私は咎めるつもりはない」

 「!?今なんと仰られましたかアインズ様!」

 「咎めるつもりはないと言ったのだ」

 「彼女の謀反をお許しになるというのですか!?」

 「落ち着け!…皆は彼女がどのような者なのかを覚えているな?」

 

 私がどのような者というのは『ナザリックの理を第一に考える守護者』と言う設定の事だろうが何故今ここでそれを出すし?

 

 「今回、モミの策によってコキュートスは敗北したがただの敗北ではなく得る物の大きい敗北だったのではないか?」

 「ハイ。アインズ様ノ仰ラレルトオリ得ル物ノ大キナ敗北デシタ」

 「この得る物を得たコキュートスはもっと先へ進めるだろう。彼女はそれを得させる為に動いたのだ」

 

 ぽかーん…え、そなの?私ってそんなこと考えて行動してたんだ。ふーん…違うけどね。

 

 「しかし次は私かぼっちさんに一言言ってからにしてくれ。良いな?」

 「…了解しました」

 「では、コキュートスの件だが得た物を自分の糧とするならば私は罰する気はない。相手が相手だしな」

 「ハ!」

 「・・・・・・(そっぽを向く)」

 「それでだ。戦ったリザードマンを殲滅する為に再びコキュートスに軍勢を任せようと思うのだが異議があるものは居るか?」

 「!?アインズ様、リザードマン達ヲ皆殺シニスルノハ反対デス。ドウカ御慈悲ヲ」

 「・・・私も反対する」

 

 コキュートスを見つめていたアインズはまさか発言するとは思っても見なかったぼっちへと振り返る。そして何かに気がついたようにこちらを見て一度頷く。

 

 「モミはどう思う?」

 「………あのリザードマン達はこの世界の中では中々使える。その上、他の種族とも交流がほとんどないリザードマンはいろんなモデルケースとして扱いやすい。……試しに忠義心を持った部下に出来るか実験してみては良いかと思う…」

 「ふむ…そうか、いいだろう。ではモミが言った実験を…コキュートスに任せる。補佐としてデミウルゴスとモミで行なうこととしよう」

 

 決定が下ると解散する事になった。アインズとぼっちが去った後、コキュートスはデミウルゴスと共に、アウラにマーレにシャルティアはヴィクティムと何か話している。私と言うと鋭い視線のままのアルベドが迫ってきていた。

 

 「…何?リザードマン達の事?」

 「違うわ…確かにその事もあるけども何故貴方だけ聞かれたのかしら」

 「?…どゆこと」

 「何故貴方だけ意見を求められたのかってことよ」

 「ああ…『ナザリックの理を第一に考える守護者』だからじゃない?」

 「だとしても守護者統括である私に聞いて下さっても良いのに…」

 「そんな事は置いといて…」

 「置いといてって何よ!大事なことよ!!」

 「それよりアインズ様とのお子はまだなん?」

 「///!?ななな、何を言ってるのよ!?」

 「むふふふ♪バレンタインの時も協力してあげたんだから上手くしなさいよ。私もぼっちさんも応援してるんだから」

 「ぼ、ぼっち様も!!至高の御方からも応援されているなんて…」

 

 いつも通り妄想の世界にトリップしたアルベドを放置して私は第11階層に戻る。指輪を使うとすぐに家の前に出ることが出来た。目の前には愛しの我が家と笑顔の後ろに鬼のようなオーラを放っているステラが…

 

 「姉さん。話はコキュートスさんから聞きました。マスターを利用したらしいですね。詳しく話を聞きましょうか?」

 「いや…今日は遅いし…明日で」

 「駄目です。コキュートスさんは知らずとは言え、マスターと手合わせ出来た事は心底嬉しがっていましたが…」

 「…なら」

 「私は怒り心頭です」

 「………はい」

 

 ステラの説教はいつもより長めとなり心身ともにくたくたとなりベットへと倒れこむ。

 ここ数日のことを思い出す。

 歯を食い縛り唸り声を上げる。

 失敗した…

 

 『・・・友達の為だったのだろう?』

 『得る物を得たコキュートスはもっと先へ進めるだろう。彼女はそれを得させる為に動いたのだ』

 

 何が至高なる御方だ。まったく考えが明後日の方向だ。

 友達の為?そんな物ナザリックの為とならば斬り捨てなければならぬのにそれらを助けるメリットが見当たらない。……心的には別かもしれないが…

 コキュートスが敗北して何かを得る為?ならばもっと徹底的に行なう自信がある。それも第11階層の総力を持ってでも。

 そもそもコキュートスを敗北させようと言うのが間違っているのだ。私が敗北させようとしたのは私を創造したぼっちなのだから…

 

 ナザリック地下大墳墓の至高なる御方の一人に数えられるぼっちは立ち位置的に邪魔なのだ。

 支配者は一人で十分なのだ。二人も居ればそれは後々の問題以外何者でもない。害悪ともいえる。

 実際ナザリックを運営しているのはアインズだがぼっちはアインズの下でもなければ上でもない。同等だと思われている節もあるぐらいだ。

 知恵があり、執務をきちんとこなし、何かを斬り捨てられるアインズと気紛れで、自分勝手で、フラフラとするぼっち。どちらがナザリックを支配するかと言えばどう考えても前者のアインズである。が、ぼっちはアインズと違い親しみやすく多くの支持を得ているのも確かである。

 もしもアインズとぼっちが対立した際にぼっちには間違いなくシャルティアとアウラ、マーレが付くだろう。あの双子はぼっちに可愛がられている事が多いし、シャルティアはぼっちが暴走した件を自分のせいだと悔やみ続けている。同じ理由でプレアデスのシズを筆頭に半分はつくだろう。アインズにはアルベドに理を話せばデミウルゴスにコキュートス、そして私も付くだろう。

 それでは駄目なのだ。戦力が拮抗してしまえば対立し戦う際には両者が消耗してしまい勝者が勝者でありながら何も得ないばかりかマイナス面が大きくなってしまう。

 接近戦面の戦闘力最強で皆と親しみやすく、今回の件で軍略も行なえると知れたぼっちの株はまた上がったであろう。少しでも落として拮抗を減らせたらと思ったのだが…こうなれば最悪の事態が起こらないように目を光らせるだけだ。

 新たな目標を立てたモミは何か心の中で軽くなったのを感じ首を傾げる。




さてと次はリザードマン達の集落へ行くところですがその前に特別編を入れようと思います。

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