「~♪」
アウラは鼻歌交じりにぼっちの部屋へと向かいつつスキップしていた。
今日はアウラの休日なのである。マーレには悪いがぼっち様とゆっくりするつもりである。
「というかマーレやシャルティアの方がぼっち様と関わってる気がするし…」
口から出たことを払うように頭を振り、立ち止まり深呼吸をする。目的のぼっちの部屋へと辿り着いたのである。
ポケットから出した手鏡で髪形などを確認して行く。何も問題はないと思いドアをノックする。
「失礼致しますぼっち様。アウラです」
はっきりと中まで聞こえるように声を出した。
………………………あれ?
まったくと言っていいほど返事がなかった。失礼と知りつつドアノブへ手を伸ばす。
「…ぼっち様ぁ~…」
ゆっくりとドアを開け中の覗き見るとそこには誰も居なかった。アインズ様のところかな?と引き返そうとした時、奥の方から物音がした。
気になり確かめに入っていくとそこには扉があった。
以前至高の御方の部屋がどうなっているのか見せてもらった事があった。個人のベットや浴室など豪華な作りになっていて何処の部屋も同じ作りになっているとアルベドが教えてくれた。…最近は入れてもくれないけど…だが、この扉は無かったはずだ。というかこの扉は隣の部屋の方向に空いてる気が…
「ん?・・・アウラ?」
扉から突然ぼっち様が現れた。いや、突然でもないか。ここはぼっち様のお部屋なのだから居て当然なのだ。
「あ!?ぼっち様。勝手に入ってしまい申し訳ございません!!」
深々と頭を下げて謝罪する。そんなこと気にするような素振りを見せずに頭を撫でられた。
「別にかまわない・・・」
「♪」
許されたことと頭を撫でてもらった事でアウラは満面の笑みを浮かべていた。
急に撫でられるのを止められたぼっち様は再び奥に入っていこうとした。
「あのぼっち様?その部屋は一体…」
「ああ・・・この部屋は・・・」
ゆっくりと扉のことを教えてもらった。
この扉は隣の空き部屋に繋がっているそうだ。理由は集めた品々を保管する場所が無く隣を使う事になった。けれど部屋に行く度に廊下に出てだと不便な為に隣の部屋と繋げたそうだ。ちなみに廊下に繋がる扉は開かない様になっているらしい。
そして今は整理中だという…ならばと
「あたしも手伝っても良いですか?」
「・・・休日なのだろう?」
「駄目ですか…」
「!?・・・いや・・・頼もうか」
「はい!一生懸命がんばります」
勢い良く返事したあたしはぼっち様に続いてぼっち様の《宝物殿》に入って行った。
足の踏み場が無かった…散らかっていると言ってもここまでとは思わなかった。片付けのしがいがあると思い、足元の品に手を伸ばす。
…本?しかも古く薄汚れた本であった…
「?この本はなんでしょうか?」
一瞬首をかしげながら振り返り本を見た。
「・・・ドラゴンの召喚書」
「ドラゴンですか!?」
「?ああ・・・確か宝石種の・・・」
「宝石種ってエメラルドドラゴンとかですか!?」
宝石種ドラゴンとは体中がルビーやサファイヤなど単体の宝石で作られたドラゴンである。ドラゴンとしては中の下クラスのモンスターである。中の下と言ってもドラゴンのレベルでだから他の種族と比べると圧倒的な強さを誇っていた。そのドラゴンを飼いならす魔道書をこのように扱えるぼっち様に尊敬の眼差しで見つめる。
そう思うと他の物も気になり手にとって聞く。
「この刀はなんですか?」
「・・・村正」
「このお酒の数々は?」
「ネクタルにアムリタにソーマだな・・・」
「この弓は?」
「エロスの欲望の弓矢・・・」
「ではこの笛は?」
「ハーメルンの笛・・・」
「ならこれは?」
「それは・・・」
あれから一時間が経ち部屋は綺麗に整頓されていた。
アウラはその整頓された部屋の中央に置かれた金で出来たテーブル席に俯きながら座っていた。
中には超レアアイテムからゴッズ級武器まで様々な品々が転がっていた。その中で自分はどうしていた?
興奮して品々をぼっち様に質問。と言うより質問攻めにして落ち着いたときには自分が何をしに部屋に入ったか忘れていた上、ぼっち様一人働かせていたことに気付き落ち込みつつお宝の品々を緊張しつつ運び、お礼でお茶でもと言う事になったのだが…
本当に良いのだろうか…これデミウルゴス辺りにばれたら何を言われるか分かったもんじゃない…
「どうした・・・疲れたのか?」
「いいえ、疲れたなんて…」
「・・・そうか・・・」
今ぼっち様はコーヒーを入れて下さっている。
先ほど手動のミルで中細挽きしたコーヒー豆をペーパーフィルターを取り付けたドリッパーに入れ湯を優しく注ぐ。
これらの器具はあの部屋にあった物だ。
しかし気になったのがそんなに湯を入れていないのだ。
「あまり注がないのですね?」
先ほど質問攻めしておいてまたしてしまったと後悔するが優しげに答えてくれた。
「蒸してる・・・」
「蒸らす…ですか?」
「ああ・・・コーヒーは最初に湯を全体にかけて蒸すんだ・・・」
「へぇ~そうなんですか」
「(コクン)・・・・・・」
「ちなみに他には何かするんですか?」
「他にはか・・・まずはドリッパーやサーバ、カップ・・・あとはスプーンなどを温めておく事。湯は95度・・・沸騰して火を止めて沸騰が静まったらそれぐらい・・・が蒸すときは20ccの湯を全体に優しく注ぎ20秒待つ・・・」
ポッドを持ちゆっくりと回しながらドリッパーに注いでいく。
「ゆっくりと『の』の字を書くように注いでいく・・・最初は小さく徐々に大きく・・・この時注ぐ湯がコーヒーの面から90度になるようにする」
久しぶりに長々と話すボッチ様に魅入ってしまう。部屋内と言うことでシルクハットとコートは着ておらずいつもと違うスーツ姿に新鮮さを感じる。これが執事服だったらなど妄想してしまう…このゆっくりとした時間が続けばいいのだが…
サーバーとコーヒーカップ、茶菓子としてガトーショコラをトレイに乗せ席に戻ってきた。
「・・・どうぞ」
「頂きます」
差し出されたコーヒーをゆっくりと口へと運ぶ。
おいしい…
砂糖もミルクも入れずに飲んだのだがこんなに美味しいものと実感できるとは思わなかった。
ちらっとぼっちを見つめる。
当たり前だ。あのぼっち様自らが入れてくださったのだ。美味しくないはずがないのだ。
ふと、気になった事があった。目の前に出されたガトーショコラに何の付与効果が無かったのだ。大体ナザリックで出される料理には多くの付与効果がある。その付与が無い料理にアウラはひとつだけ心当たりがあった。
「もしかしてぼっち様の手作りですか?」
「・・・口に合うといいが・・・」
「大丈夫です!合わせて見せます!!」
「お、おおう・・・」
幸せで胸がいっぱいになった。
その後は他愛の無い話をするばかり…アウラが一方的であったが…で時間が過ぎていった。
名残惜しいがそろそろ部屋を後にしようとした時ある物が目にはいった。
「あの…ぼっち様?」
「・・・?」
「もし良ければアレ頂けませんか?」
アウラが指差したのはコーヒーを入れる際に使ったドリッパーなどであった。あの部屋には2セットあったのだ。だからと言ってただで頂くわけにもいかない。
「何でも致しますんで…」
わがままだ。こんな事守護者としては有るまじき行為とマーレでも言ってくるに違いない。でも今日の思い出…ぼっちとの繋がりを持った品が欲しかったのだ。
ぼっちは口元を隠すように悩む素振りを見せ奥の部屋へと入って行った。すぐに戻ってきたぼっちの手にはあるアイテムが握られていた。
ベルセルクの腕輪…ワールドアイテムでぼっち様があたし達と戦う事となった物…
それをアウラに差し出す。
「これをアインズさんに渡して欲しい・・・これはナザリックの宝物殿で管理・・・いや、封印した方がいい物だ・・・」
「あたしが…これを…」
「・・・アウラに頼んだ。褒美としてアレを与えよう・・・どうかな?」
ふっ、とぼっちは笑った。顔が赤くなったのが分かった。
「分かりました。このアウラ・ベラ・フィオーラが責任を持ってアインズ様にお届けいたします!」
「ああ・・・行っておいで・・・」
「はい!」
アウラはぼっちの部屋を後にした。今までで一番良い笑顔をして…
ちなみにその表情をしてぼっちの部屋から出て来たことを一般メイドに目撃されており、守護者達がアウラを質問攻めにするのはそれから3時間後であったという…
チェリオ「……もっといちゃいちゃさせたかったのだけど今は思いつかなかった」
モミ 「ちなみに一杯12gぐらいで160cc注ぎ、140ccが一杯分だったはず…」
前回のステラの補正
何かを殺すのにわざわざ楽しむような者を嫌うのでデミウルゴス&ソリュシャンを嫌っている。
虫が苦手のためエントマを嫌っている。コキュートスは別枠らしい
まだ会ったことはないがニューロニスト、恐怖公なども嫌うだろうな。
ちなみに第十一階層にまだ登場していないがザーバという者がいてその者も嫌っている。