骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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これはモミがぼっちのお世話をする前後に起きた不幸に見舞われたデミウルゴスの話であーる。


第029話 「デミウルゴスの厄日」

 至高の御方々の住まう階層をデミウルゴスは急ぎつつも乱れぬ様に早足で歩いていた。

 先ほどアインズ様よりぼっち様が寝込んでいると聞き、お見舞いにと行かねばと急いでいるのである。

 デミウルゴスの頭の中では後悔が渦巻いていた。

 つい先日に休みを取っていた為に朝から付きっ切りで付けなかった事を悔やんでいるのだ。あの事件、ぼっちが暴走した事件の翌日は精神的に仕事にならず休みを取ったのだ。それはほとんどの者に言えたことであるが…

 あとはお見舞いの品を用意できなかった事であった。

 正直ぼっち様の好むものを知らないのだ。あえて言うなら日本刀を好んでいるぐらいである。食事などの好物も知らないし、何かを集めているなどの話も聞かない。だからと言って自分は日本刀を所持していないし持っていたとしてもぼっち様がお持ちの物より良い物などあるはずがなく手ぶらで来る結果となってしまったのだ。

 分からないなら聞けば良いと思い至ったのは休憩時間になる直前のことであった。何かを欲しているのならば全身全霊を持って集め、もし血をお求めなら…

 

 「~!?」

 

 身を悶えるような感情が襲って来た。深く深呼吸することで心を落ち着かせドアをノックする。

 

 「ぼっち様。デミウルゴスです」

 「・・・・・・どうぞ」

 「失礼致しますぼっち様。…ん?セバスも来ていたのですか?」

 

 ドアを開けた先に居たのはセバスであった。セバスは何やらメモをとっているようであった。

 

 「これはデミウルゴス様。ぼっち様のお見舞いですか?」

 「ええ。ぼっち様お加減はいかがでしょうか?」

 「問題ない・・・心配かけた・・・」

 「いえ。そういえば何故アイテムを使われないのでしょうか?使えば…」

 「・・・・・・」

 「…『痛みがある方が、生きている気がする』」

 

 ぼっちが答える前に答えたのは何故かぼっちのベットに突っ伏しているシャルティアだった。

 

 「やっぱり同じことを聞きんすね…私にぼっち様はそう答えんした…」

 「そうなのですか…………ところでぼっち様の布団に突っ伏して何をしているのかね?」

 「私が来た時にぼっち様に血を吸われておりましたので疲れているのではと…」

 「そうなのでありんす…あ、ちゃんとぼっち様よりこのまま休む許可は頂いたでありんす」

 「ふむ…それならば良いのですが先ほどから君は休むというより嗅いでないかい?」

 「//////ななななななななな、にゃにを言ってるでありんすか!?そんなこと…」

 「それだけ動けるならばもう問題ないようだね?」

 「あう!?」

 

 悪魔の罠に引っ掛かり勢い良く立ち上がったシャルティアは名残惜しそうにベットから離れる。

 当のぼっちは自分の腕を顔まで持ち上げて嗅いでいた。

 

 「・・・・・・臭いか?」

 「!?そんなことありんせん!とてもいい匂いが…ハッ!?////」

 

 素直に答えて墓穴を掘ったシャルティアの顔が赤く染まっていく。

 

 「ぼぼぼ、ぼっち様!し、失礼するでありんす」

 「では私もこれで」

 

 飛び出すように駆け出したシャルティアの後を追うようにセバスも部屋を後にしようとする。

 ふと、セバスが持ってたメモが気になったデミウルゴスは素直に問うてみた。

 

 「セバス…そのメモは?」

 「これでございますか?これはぼっち様に依頼された品でございます」

 「ぼっち様の…何を欲されたのですか?」

 「・・・・・・銃」

 「そうでしたか…」

 「?では、失礼します」

 

 今度こそ出て行ったセバスとシャルティアをデミウルゴスは心の中で羨んだ。自分が聞こうとしていた事が先に行なわれていたのだ。ぼっち様がどのような物を頼まれたのか知りたかった。ぼっち様に血を吸われるなどそんなご褒美…羨ましすぎる!!

 ハッと我に戻り邪念を振り払う。

 私はぼっち様の見舞いに来たのだ。なのに何を考えているのだ!!

 再びぼっちに向き直り口を開こうとした瞬間、

 

 「トゥットゥルー♪呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン♪」

 

 至高の御方の部屋なのに騒がしく、礼儀知らずに突入してきた者など一人しか知らない。

 振り向いたデミウルゴスは眉間にしわを寄せた。

 最も会いたくない者が目の前に立っている。

 

 「…どったのデミデミ?」

 

 モミ・シュバリエ。ナザリックを第一に考える我々とは違う守護者。至高の御方に対する馴れ馴れしくも無礼な態度を取る為にあまり好かれていない者でもある。が、信頼は別である。彼女のナザリックを考える気持ちは純粋な物で分かりやすく道理は通っている。そして我々と違う視点から見てより正しい選択をするのだ。

 ここまで彼女の事を話したから分かると思うがデミウルゴスが会いたくない人物はモミではない。その後ろに立っている人物である。

 

 「姉さんお静かに。マスターは寝込んでおられるのですから」

 

 目線があう。彼女、ステラ・シュバリエこそが会いたくない人物である。ナザリック内で同じく働く仲間を嫌う者など一人の例外を除いて居ないだろう。

 目が合った一瞬でステラは殺気を放ってきた。ため息を漏らしつつ注意をする。

 

 「まったく、いきなり殺気を飛ばしてくるとは穏やかではありませんね」

 「黙れ外道。私はマスターに用があるのだ」

 

 これである。彼女は聖騎士をイメージされ生み出された者である。ゆえに私に良い感情を持っていない。持っていない所か敵意しかない。それは私の性格と行いを聖騎士である彼女が許せないという現れである。

 私だけ仲が悪いわけではない。一番は私だがソリュシャンとエントマもあまり好いていないという。後は特に仲の良い者を除いて普通に仲が良いのである。

 特に仲の良い者は家族とマスターと呼ばれるぼっち様、至高の御方の総括であるアインズ様を除けばセバスとユリである。セバスに対しては憧れすら持っている。ぼっち様がイメージする聖騎士とはたっち・みー様の事であり、その御方の面影を強く残すゆえに憧れを持っているのである。

 

 「私も君に用があって来たわけではない。ぼっち様のお見舞いに来たのだよ」

 「悪魔がお見舞いなど縁起でもない。そうそうに立ち去るがいい」

 

 すでに臨戦態勢を取りつつある彼女に苛立ちが募っていく。

 会う度に向けられる敵意以上に許しがたい物があった。それは彼女が今も腰に下げている物だった。

 『聖剣使い』

 これは姉であるモミが付けた名で、多くの聖剣を所有することから付いたのだ。その聖剣はすべてぼっち様に与えられた物である。それだけ至高の御方より信頼されていると言う事なのだろう。

 

 「先に来ていたのは私なのですが…礼儀知らずにはきついお仕置きが必要なようですね?」

 「ほう?良いだろう。相手になってやる!ディランダル!!」

 

 ステラは腰より剣を抜き私は構えるがお互いの攻撃が交わることは無かった。

 

 「何をしてるのあんた達は!?」

 

 同じく見舞いに来たアウラとマーレだった。ちなみにモミは端っこに退避して見物する気満々であった。

 

 「ぼっち様が寝込んでるって言うのに暴れて!」

 「ぼ、僕、アインズ様呼んでくる!」

 

 大慌てで駆け出すマーレを止める事も出来ず二人は固まった。

 この後マーレに話を聞いたアインズが来て二人揃って怒られたのであった。

 

 

 

 就業後、デミウルゴスは再びぼっちの部屋に向かっていた。

 今日は散々であった。会いたくない者と出会い、ぼっち様に迷惑をかけてしまい、アインズ様に怒られるという始末…

 ため息をつきつつ曲がり角を曲がると再びステラと出会った。が、今回は敵意など無かった。二人とも疲れたような表情でもはや争う気力すらないのだ。

 ちょうど二人の中間でドアが開いた。ぼっちの部屋から出てきたのはモミであった。

 

 「姉さん?何故マスターの部屋に…」

 「ん?…またお見舞い?でも残念。もう寝てるよ」

 「そうでしたか…ではまた今度にでも」

 

 去ろうとした瞬間、袖を引っ張られた。何かと振り返ると黒い笑みを浮かべるモミが…

 

 「…元気ないね?どったの」

 「いえ、お気になさらずに…」

 「元気の出る物見せてあげようか」

 

 懐から出された一枚の写真に目が止まった。

 

 「それは!?ぼっち様の写真!」

 「なっ!?マスターのですか!!」

 「ふっふーん♪いいでしょ?」

 「どうやって、というかまさか貴方は寝ている間に!?」

 「………逃げよう」

 

 走り去っていくモミを二人は見つめた。

 

 「おい外道…」

 「その呼び方はどうかと思いますがなんでしょうか」

 「一時休戦と行かないか?」

 「たまにはいいでしょう」

 

 モミが走った後を聖騎士と悪魔は駆ける。

 またその後であるが至高の御方の住まいである階層を走り回るとは何事ですか!!と言い訳できぬ正論で今度はモミを含めた三人はセバスに怒られたと言う…

 




感想にて
>ボッチさんって非力なんですよね?それが三倍等した程度で防御特化を破れるとは思えないんですが…。

モミ  「?…そんなに非力なの?」
チェリオ「アウラやマーレに腕相撲を挑んだら全敗する程度に」
モミ  「弱っ!?」
チェリオ「感想で書きましたが攻撃した時三倍されたのは武器の攻撃力なので何の問題も無く吹き飛ばせたのだ」
モミ  「じゃなかったら?」
チェリオ「もちろん返り討ちにあってますよ♪」
モミ  「…その笑みはなに…」

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