よくよく思い出すとぼっちとモミの絡みってほとんど無かったような気が…
「・・・・・・」
ぼっちは部屋で寝込んでいた。
アンデットである吸血鬼種族を持つ為、風邪などの病気は引くことは無い。
これは前回のセバスとソリュシャンとの会話が原因であった。
間を空けずに連続で喋った結果、オーバーロード(過負荷)してしまったのである。ならアイテムを使えばいいのだがセバスに言った手前使えないのであった。
俺が寝込んだ情報を知った皆の反応は凄かった。休憩時間の合間合間に守護者から一般メイドまで駆けつけて来るのだ。寝込んでいるのだから静かにして欲しいのだが…まぁそれは嬉しい事でもあるから良しとしよう。
唯一この事を知っていたモモンガさんが皆にばらした事も良しとしよう。
ステラとデミウルゴスが本気でケンカしそうになったことも……良しとしよう。
問題は……
「……ん?なぁに…」
この俺が寝ている布団の上に座ってるモミ・シュバリエである。
ステラと一緒に一度来たはずなのだが何故か戻って来て居座っている。
「・・・仕事・・・しなくていいのか?」
「……押し付けてきた…」
「・・・そうか」
「……そうだよ…」
・・・・・・・・・・・・
会話が続かん!何だこの空気!?シズでもここまでの空気にしたこと無いぞ!!
少し頭を抑えながら首を傾げるモミを見つめる。
モミ・シュバリエはモモンガさんをモデルに製作したNPCだ。なのだが分からん。設定ではナザリックを第一に考える守護者なのだが仕事は隙有らばサボり、ステラに追い回される…俺の事は忠義を尽くす相手とは見ておらず友達?ぐらいに思っているのだろう。あと何故か二次元ネタをしっていやがる。この前なんて…
『ナザリックよ!私は帰ってきた!!』
いやナザリックじゃなくてソロモンだろうが!?って突っ込みする前に無断で外に出たことでデミウルゴスとステラの説教コース直行してた。
話が逸れてしまったか…兎も角この状態を何とかしたいのだが如何せん理解できていない為にどうしようもないのだが…
「…あ、もう十二時」
お、帰るのか?やっと静かにぼっちになれる!…ぼっちになれるって…
布団から飛び降りたモミはよたよたと歩いていく。その姿は部屋の奥にあるキッチンに消えていった。・・・・・・消えていった?
「・・・・・・何をしてる」
嫌な予感がして頭を過ぎった疑問を口にしていた。振り返ったモミはいつも通りニヤリと笑い答えた。
「…昼食作ってあげる…」
はい?…こいつ料理できるの?そんなスキル持たせたっけ?
「ヒヒ…ヒヒヒ……ヒヒ」
包丁で食材を切る音や何かを炒める音は綺麗な音を発しているのに何だその笑い声は?キッチン付近より黒いオーラが見えてきた。
頭の中に様々の名前が通り過ぎていく…
セシリア・オルコット、ニア・テッペリン、ペルソナ4女性陣、妃英理、神谷薫、ホライゾン・アリアダスト、姫路瑞希、ノエル=ヴァーミリオン…etc.etc.
不味い…本気で不味い…シンジ君なら「にげちゃ駄目だ」だけど俺は「逃げなきゃ駄目だ」
重い体に鞭を打ってベッドから這い出る。目指すのはドアから先の通路。通路まで出ることが出来れば一般メイドの誰かが居るだろう。
「…何処行くの?」
「~~~!?」
振り返るとニタリと笑ったままモミが立っていた。そのまま近づき後ろから抱きしめられ、ひきずられて行った。
キッチンの机の上には何か料理が置いてあるのだろう。良い匂いが漂ってくる。
「座って、座って」
まだ地面に膝を付いていたぼっちは急かされるまま椅子に座った。机の上にあったのはとろとろのオムライスの上にハヤシライスのソースがかけられたオムハヤシだった。
…あれ?普通に美味しそうなんだけど…
「…よいしょっと」
何故に貴方は俺の膝の上に座るのでせうか?そして何がそんなに嬉しいんでせうか?すっごい笑顔。
スプーンに一口分をすくい、口元まで寄せてきた。
「はい、あ~ん」
「・・・・・・・・・へ?」
「あ~ん」
「・・・自分でたb…」
「…あ~ん」
「・・・あ~ん」
「フヒ♪」
恥かしさで悶絶しそうなぼっちの口の中にモミが作ったオムハヤシの味が広がる。
美味しい。ルーに程よい触感で混ざり合った豚肉にたまねぎ。とろとろでふわふわの卵…旨い…
「どう?…どう?」
不安げな表情で瞳を輝かせながらこちらの瞳を覗いて来る。
「・・・凄く美味しい」
「えへへへへ…練習した甲斐があった」
「・・・・・・」
なにか心の奥底が温かくなった気がして取り合えすモミを撫でる。すると嫌がるように振り払われた。
「む~…子ども扱いNG…」
「・・・すまん・・・」
「…あ~ん」
「あ~ん・・・あむ」
最初と変わらないような静けさだが何とも心地よかった。
かちゃかちゃと音を立てながらモミは食器を洗い、ぼっちは再びベッドに戻り休む。
今日はモミの意外な一面が見れたような気がする。…気がする所じゃないが…
お腹いっぱいになった為か急に瞼が重くなる。そのまま寝転び就寝しようとする。
ごそごそ、ごそごそ
眠気が極限に近づいた頃に物音が耳に入って来た。寝惚け始めていた脳を動かす。この部屋にはぼっちを除けば洗い物をしているモミだけだ。ならばモミなのだろうが音源はすぐそこから聞こえてきた。重い瞼を抉じ開けると複数の視線と合った。
「・・・・・・何してる?」
「……添い寝…」
目を開けた先には布団に潜り込み、いつもだらけたような感じの蛇髪がこちらを見ていた。
甘えるそうに擦り寄ってくるモミを追い出すわけにはいかずにそのままにする。
「……暇」
眠りかけてる人に何をしろと言うんだこの子は?
「…耳かきしてあげようか?」
「・・・寝たいのだが?」
「……仕上げに耳舐めもしてあげるよ」
「・・・・・・何?」
「…耳舐め」
ハハハ。ごめんぼっち意味が分からない。耳舐め?何それ?字のままでいいのかコレ…字のままだと耳を舐めるってことだよな…what
「?耳舐め知らないの?…耳掃除の仕上げにするって音声作品で言ってた…」
え、なに?マジであるのそういうの?ぼっち知らないんだけど…ってどうやって知ったのこの子…
「・・・物知りだなモミは・・・」
「…うん。褒めて褒めて」
急かされるようにモミの頭を撫でてぼっちは意識を手放した。間違った(?)知識を殖え付けられて…
ぼっちが熟睡した頃になってモミは布団から這い出た。
初めてだった。こんなにこの人と触れ合ったのは…そう思うと顔が赤くなっているのが分かった。
いろいろネタを用意していたのにあまり喋れなかった…父親と娘の会話なんてこうゆう物なのかと自身で納得する。
火照った顔を覚ますように手洗い場で冷水を顔に浴びせる。
切り替えないと…私はナザリックの理を第一に考える守護者…ならばもしもの時は…
鏡を見て我に返る。そこにはやる気なさそうでニタニタ笑っている自分でなくハイライトが消えながら嗤っている。頭を左右に振りいつもの表情に戻す。
何故この嗤い方と多少だけど喋り方だけ似てしまったのだろうか?出来るなら一つぐらい同じ技など欲しかった。
「…まぁ…いっか…」
頭をぽりぽり掻き扉を開けて部屋を後にする…………………しっかりぼっちの寝顔写真をゲットしてからな!!
チェリオ「にやにや」
モミ 「……何?」
チェリオ「お楽しみだったようですねぇ?」
モミ 「//////!?」
チェリオ「あ~んに添い寝からの耳かきまでしようとは…」
モミ 「……………」
チェリオ「あれ?モミさん?っ!?お願いだからその杖振り上げないで~!?」