骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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休みの朝早く(すでに昼前…)
お年玉片手に(自分から自分への…)
マイ・カーに乗って(自転車…)
昨日ぼっちカラオケ行って来たチェリオです。
…喉が痛い…ぼっち三時間辛かった…



第018話 「とある守護者の一日」

 マーレ・ベロ・フィオーレの一日は極寒のような部屋から始まる。

 皆様には経験あるだろう。冬場は寒く、布団の中が暖かい。すると布団の中から出にくくなり寝るときはすんなり寝れて、朝起きる時は辛いことが…

 この部屋の主であるマーレは魔法を使用してまで部屋の温度を下げて、快適な安眠を行っている。 

 ゆえに訪れる朝の辛さが…

 

 「マーレ、起きなさいってば!」

 

 いつもはおどおどして皆の言う事を理解するのだが朝になると頑固として起きようとしない。

 毎回アウラが起こしに来るのだが素直に起きた事などない

 

 「むう…あと五分…」

 

 寝言のような一言を言い終えると二度寝しようと布団の中へと潜ってゆく。

 わなわなと怒りで肩を震わすが効果的な方法を思い出しそっとマーレの耳元へと近づいていく。

 前に大きな声で叫んでみたのだが逆に潜られ出てこなかった。

 布団を剥ぎ取ったらシーツに潜り込むしまつ。

 そんな今までの労力を無駄にする一言…

 

 「早く起きないとぼっち様に相談しちゃうよ」

 

 さっきまでの行動が嘘のように布団から飛び出す。

 

 「ま、待ってよお姉ちゃん。今…今起きたから!」

 

 マーレの頭にある一件が思い返される。

 あまりにマーレが朝起きない事をアウラが至高の御方々に相談したのだ。

 アインズ様は「寝る子は育つと言うし、少しぐらいは良いんじゃないか?」という返事だったのだがぼっち様は黙ったまま答えなかった。

 僕はこれを至高の御方々から黙認されたと判断してしまったのだ…

 

 

 

 朝6:00

 その日は朝7:00からお仕事が入っておりいつもと変わらぬ時間に寝ていた。

 部屋は寒く、布団の暖かさにあっという間に意識を奪われ夢の中へ旅立っていった。

 ゆさゆさと身体が揺すられる。

 お姉ちゃんが起こしに来たんだと思い、いつも通りに…

 

 「あと…5分」

 

 と答えてしまったのだ。すると五分きっかりにまた身体を揺さぶられた。

 まだ眠たかった為に布団の中に潜り込みまた5分の延長を申したのだった。

 何度も答えているうちに時間は6:25になった頃にまた揺さぶられる。

 今日のお姉ちゃんはいつもと違うなあ…と、思った時

 

 「マーレ!いつまでねてんのさ」

 

 お姉ちゃんが怒鳴りながら上がって来たのが分かった。

 

 …お姉ちゃんが上がってくる…

 

 ゆっくりと揺さぶられた方へ顔を向けた…

 

 「・・・・・・おはよう、マーレ」

 「!?!?!?お、おおおおおはよう御座いますぼっち様!」

 「へ?ぼ、ぼっち様!!どうなされたのですか」

 「おはようアウラ・・・」

 「お、おはよう御座います。ぼっち様」

 

 朝から驚きで頭いっぱいの二人にぼっち様は落ち着いたまま

 

 「アウラからの相談で・・・起こしにきた・・・」

 

 その一言を言い終えると姿をかき消すように消えていった。

 後から知ったのだがぼっち様は朝5:30からベット脇に座り、6:00から5分刻みに起こそうとしていたのだ。

 至高なる御方を一時間も。それもあんな寒い部屋に待たせてしまったのだ。

 アルベドやデミウルゴスを始めとする守護者達にこっぴどく怒られた。

 

 あの事件を繰り返すわけにはいかない。

 マーレはすぐさま着替えだした。確認したアウラは

 

 「いつもこうならいいのに…じゃあ、あたしは行くね」

 

 と部屋を出たアウラを追うかのようにマーレも家を後にした。

 

 

 

 「おや?今日はずいぶんと早いんだね」

 「…おはよう…」

 

 会議室に先に来ていたデミウルゴスとモミがマーレを迎え入れた。

 

 「おはようございまう。デミウルゴスさん、モミさん」

 

 今日の仕事は物資の生産体制の規定を作ることにあった。

 新たに生産エリアに指定された第11階層は生産能力が高すぎてすぐに貯蔵エリアを溢れさせてしまうのである。ゆえに今日の会議である程度の目処をつけてアインズ様にお渡ししなければならない。

 

 「……今日は早く起きたんだ…」

 「は、はい」

 「まあ、早く起きてもらわなければ困るのだがね…この前みたいな事が再びあったりしたら…」

 

 他愛の無い会話の中でこの前の事件を思い出したデミウルゴスの怒気で会議室が満たされる。

 あれからマーレは何度と無く言われてきている。皆が至高の御方々の事で頭がいっぱいなのだ。自分だって他の誰かが同じ事をしていれば何度も注意していたのかもしれない…

 

 「まあ、その話は置いといて…さっさと仕事終わらせようよ…」

 

 助け舟を出したのはモミであった。

 モミはぼっち様が創り出されたNPCでその地位は守護者以上、統括以下と曖昧な事になっている。

 原因は設定の一部に《ギルドメンバーに近しい者》という一文があり、守護者達が協議した結果で地位が決まったのだ。

 

 「ふむ。君の意見はもっともだがもう少し言い方をどうにかできないものかな」

 「ヒヒヒ…それは無理…」

 

 僕もモミさんの言葉を不快に思うときがある。

 まるで友達に話しかけるように話すのだ。

 彼女は至高の存在は自分達の命令権を持つ者であり守り通さねばならない者であって、崇拝や絶対的な支配者ではないのだ。

 以前アインズ様が「もし私とぼっちさんのどちらかにつかねばならない時が来たらどうする?」と守護者各員に聞かれた事があった。

 僕を含めてほとんどの者は答えが出なかった。口には出さないが決めているアルベドさんと口出すのも問題があると口を閉ざすデミウルゴスさん、誰も答えを口に出来なかった空間でただ一人口を開いたのがモミさんだった。

 

 「そんなの決まってる…私はナザリックに理があるほうにつく」

 

 そうだ。彼女は高らかに宣言したのだ。例え自らの創造主であるぼっち様ですらナザリックに害なす者と判断したらアインズ様につくと…

 この一件は守護者間で問題になったがアインズ様はその答えを聞き安心され、ぼっち様が認めたため何のことも無く終わった。

 そして皆が気付く。彼女は私達と違う守護者なのだろうと…

 

 「では会議を始めようか」

 「はい。わかりました」 

 「……了ー解ー…」

 

 

 

 

 会議が始まって5時間が経ちようやく規定書が出来上がった。

 

 「これならアインズ様もご納得していただけるでしょう」

 「私は…早く部屋で寝たい…」

 「え?あのー、まだお昼前ですよ?」

 

 あくびをしながら心の声を口に出したモミは今すぐにでも寝ようとしている。

 呆れ果てた顔をしたデミウルゴスが深ーいため息をついた。

 

 「まったく…そんな事では…!?」

 

 皆の動きが止まった。誰も居なかった場所に突然ぼっち様が現れたのだ。

 

 「これは!ぼっち様今日はどうなされましたか?」

 「おー…ぼっち様…」

 「………」

 

 なんだろう…胸の辺りがもやもやする。

 ぼっち様が度々デミウルゴスさんと何か話し合っている事を目撃する。大抵何かの業務の確認なのだがそれでもデミウルゴスさんに話を持っていくことが圧倒的に多いのである。

 

 その度に胸の辺りがもやもやしてお姉ちゃんやシャルティアさんに相談したところお姉ちゃんは「応援するよマーレ」と言い、シャルティアさんは「マーレまで!?ま、負けないでありんす!!」と言われただけで原因も不明のままで今に至る。

 

 「・・・少し話がある・・・」

 「お、お話というのはなんでしょうか?」

 「モ・・・アインズさんが外に出る・・・その件」

 

 情報収集のためにアインズ様が人間達の町へ出かけると言う事は守護者だけではなくナザリック全体に広がっていた。同時にぼっち様が先行して別の情報収集拠点の確保と資金源の入手のために町へ行かれるのだ。

 守護者各員は反対したのだがアインズ様の決定は翻る事はなく、最低でもプレアデス以上の護衛者を付ける事で終了したのである。

 

 「君らなら・・・アインズさんの支援でどのような事を行う?」

 「え、えーと…どうしましょう…」

 

 この時情けない事に何もいい案が出なかった。助けを求めるようにモミさんを見ると

 

 「…こういうのはデミデミに任せるに限る…」

 

 と手をひらひら振りながら質問自体をデミウルゴスに投げた。ぼっち様の前でその態度は無礼に当たると抗議の視線を送るが当の本人が気がつかなかった為、何も起こらなかったが…

 デミウルゴスさんは手を顎の辺りに被せて悩んでいる。一瞬ニヤっと笑い口を開いた。

 

 「そうですね。まず必要となるのが資金でしょうか。ユグドラシルの金貨が使えない以上、現在あるのはあの陽光聖典の者達がアインズ様に献上した硬貨のみ。ならば早急に資金面での支援が必要になるでしょう。

 次に情報。それも冒険者として行かれるアインズ様に限定すると、町の近くに出没するモンスターデータに地形データなどの情報が必要となるでしょう

 そしてぼっち様の任務を考えると冒険者に関わりつつ資金源を集める拠点を考えると冒険者が集まれる集会所や宿泊所…また武器・アイテム店などが宜しいのではと…」

 「さすがはデミウルゴス・・・よく考えたな・・・」

 「いえいえ、ぼっち様ほどでは…」

 

 満足そうに頷くぼっち様に頭を垂れるデミウルゴスの頭に手が置かれた。

 お姉ちゃんや僕を撫でるようにデミウルゴスさんも撫でていた。

 嬉しそうに頬を薄っすらと高揚させるデミウルゴスさんを見ていたらもやもやがまた発生した。

 

 「ぼ、ぼっち様!」

 

 気がつくと大きな声を上げていた。

 驚きこちらを見るぼっち様の手は止まり、名残惜しそうにぼっち様を見つめるデミウルゴスさん。

 なんだか心のもやもやが収まった…

 

 「つ、次こそはお役に立って見せます!」

 「そ、そうか・・・・・・ではな」

 

 そう呟くといつも通り姿を消した。

 僕はさっきの会話で疑問に思ったことを聞いてみた。

 

 「さっきのはど、どういう意味なんですか?」

 「ん?ああ、さっきのことですか…」

 

 一瞬恨めしそうにこちらを見たがすぐにいつもの表情に戻った。

 悪い事してしまったなあ…

 

 「先ほどの質問は我々を試していたと言う事だよ」

 「???」

 「…どゆこと?」

 

 やれやれと肩を竦め、説明を続ける。

 

 「良いかい?私が思い至った事なぞ至高の御方々ならすぐに思いつかれるだろう。それなのにあえて私達に聞いた。なぜか。我々がどの程度の事を理解し行動できるかを試されていたに他ならない。それに以前仰られた事の中に「思考することの大切さ」を語られた事があった。多分これからも今みたいな事があるだろう。ぼっち様は我々に問題を与えては思考させ、何が最善で最悪かの判断が出来るように教育してくださっているのだよ」

 

 僕は自分への苛立ちともやもやでいっぱいになっていた。

 そんな事を考えられていたのに意図を汲み取る事ができなかった…

 デミウルゴスさんと二人きりでいろんな話をしているんだ…

 そんな二つの感情が溢れかえりそうになっていた。

 

 「で、では僕は戻りますね」

 「そうですね。私も早くアインズ様にこれをお渡しせねば…」

 

 マーレとデミウルゴスは席を立ち、会議室より出て行く。

 

 「……二人とも考えすぎと思うけど…」

 

 残っていたモミがそう呟いた。

 

 

 

 今日は散々な一日だった…

 ぼっち様のご期待には答えれずに午後のお仕事では普段しないミスを連発してしまったのだ。

 そしてあの時からこのもやもやが取れない…

 

 (僕…どうしちゃったんだろう…)

 

 はぁーとため息を付いていると

 

 「どうした?」

 「うひゃあああ!?」

 

 驚き振り返るとぼっち様が不思議そうに首を傾げながら立っていた。

 何か言わなきゃと焦る中でもやもやが消えている事に気がついた。

 

 「ぼ、ぼっち様…えーと…そのー」

 「?」

 

 言葉が出てこない。何か言わなくちゃ!と今度は焦りでいっぱいになり始め、口を開いた…

 

 「今日一緒に寝ませんか?」

 

 自分口からでた言葉にマーレは赤面した。まさかこの一言が出るとは思わなかった。前にお姉ちゃんが倒れた時に一緒に寝たことがありそれからまた一緒に寝たいという願望はあった。まさかこんな時に…

 ぼっち様の顔を窺がうと朗らかに笑っていた。もちろん目と雰囲気でだが…

 

 「・・・良いぞ。マーレ」

 「!?本当ですか?」

 

 マーレは嬉しそうにぼっちの手を引き、帰路へとついた。

 その日の夜はいつも以上に安心して眠りについた。

 ちなみにぼっちを独占した事でアウラやシャルティアはもちろんデミウルゴスにも攻められたと言う…




モミ  「お知らせです…」
チェリオ「感想で書かれた疑問・質問があった場合、次回のあとがきでチェリオとモミ     がお答えしようと思います」
モミ  「まあ、答えられる範囲で…フヒッ…」

ぼっち 「・・・・・・不安」

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