骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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新年一発目の本編です!
実際にはないナザリック第11階層…ご覧ください…


第015話 「第11階層」

 パンドラズ・アクター

 

 ナザリックの宝物庫の管理を行う領域守護者。ナザリック最高頭脳を持ち、力は階層守護者と並ぶと言う…

 なぜ今回の始まりは彼の説明から入ったかと言うとこの話は一度も呼ばれない彼の理由に類する話だからだ。

 彼はアインズ…いやモモンガが創造したNPCで当時の思惑を強く反映されて生み出されている。その思惑とはかっこよさである。ゆえに彼の派手なアクションや喋り方はその影響である。だが当の創造主は己の若気の至りとも呼べる彼を見ると恥ずかしさで悶絶しそうになる。理不尽とも呼べる理由で彼は今だに守護者統括であるアルベドにすら会った事ない…

 

 「フヒヒヒ…これも至高なる方の為…」

 

 暗い部屋で何かを眺める。パンドラズ・アクター《黒歴史》と同じに思われている彼女は自分を創造された方の命を受けて動き出す。

 今回はそんな彼女達のお話…

 

 

 事の始まりはナザリックの定例会議から始まった。

 

 「何、在庫が合わない?」

 「はい…」

 

 アインズが不思議な声を上げる。

 ここナザリックには数多くの者が働いている為に出費は激しいほど多い。が、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーに考えて考え抜かれた結果、ナザリック内の収入で賄える。一部のアイテムは別としているが…

 羊皮紙などはこの世界で売られている物はユグドラシルの技法では第一位の魔法ですら封じ込めれないのだ。ゆえにデミウルゴスに何か代用品がないか頼んでいる。今のところ良い成果はないが…

 

 「で、何が減っているのだ?」

 「それが…」

 

 アルベドが困ったような表情をしてこちら見る。それがアルベドだけではなくデミウルゴスもなのだ。

 

 「増えているのです…」

 「は?」

 「ナザリックに備蓄されている物が増えているのです。それも収入リストに無い物まで」

 「なんだと?リストに無いものとは…」

 「はい。アインズ様が私に命じられた羊皮紙や中位に渡る蘇生・回復アイテムなどです」

 「そのうえ何処に保管されているかが分からない状態です」

 

 その言葉に会議に参加している者全員が困惑の表情を浮かべている。この地にて原因不明な事態が起こっているのだ。それくらいシャルティアでも理解できる。

 アインズはそんな皆の顔を眺めながら検討を始めようと必死に頭を働かそうとしていた。ある一人の人物を見るまでは…

 

 「どうしたのですかぼっちさん?」

 

 申し訳なさそうに手を上げるぼっちに皆の視線が集まる。

 

 「・・・心当たりがある・・・」

 「心当たりとはなんでしょうか?」

 

 ぼっちは何かを考えていたようだが決心したようにこちらを向いた。

 

 「第11階層を起動させた・・・」

 

 理解できずに皆の思考回路が停止した。

 

 

 ナザリック地下大墳墓は地下10階層からなる拠点である。そんなナザリックに11階層など存在するはずがないのだ。

 しかしそれを可能とした要因が終わる寸前まで狩りと称する略奪行為を行っていたぼっちだった。

 サービス終了の一週間前。とある過疎化した拠点を襲った際に彼はワールドアイテムを入手に成功したのだ。

 

 『パラレル・ザ・ワールド』

 戦闘では一切の効果を発揮しないアイテムだが拠点作成では多大な効果を持つ。その効果は無条件に拠点を一階層増やすことが出来、400のレベルを与えると言うものだ。しかもその階層に限りだが通常出来ることはないはずの入り口を塞ぐ事が出来るのだ。

 

 「新しい階層を作っても・・・」

 

 ぼそっとモモンガに言ったけれども覚えていなかったのだろう…

 ぼっちが製作したのはナザリックの生産工場である。つい先日やっとのことで完成して稼動させたのだ。

 

 「ここが入り口ですか?」

 

 コクンと頷くぼっちを先頭に部屋に入っていく。ここはメンバーが増えることを想定されて造られた45人目の部屋。中には他の部屋と同じように家具が置かれているが一つだけ変わったものがあった。

 それはとても大きな姿見の鏡である。コキュートスが二、三人余裕で映るほどの大きな鏡。ぼっちは鏡に向かって歩き出し鏡の中へと消えていった。

 

 「隠し扉ですか」

 

 アインズは呟き何の疑いもなく進んでいく。追従する階層守護者達も…

 光に包まれた先に見たものは…

 

 

 光り輝く花々に囲まれた大きな広場だった。第六層に似ている感じがあった。空は闘技場の上を彩る星が煌びやかに舞い、中央には一対一で戦うことを想定された柵と広場があった。

 

 「これはこれは」

 「うわあ」

 「キレイでありんすね…」

 「ウム……ッ!?」

 

 この自然な煌びやかさに目を奪われている中、コキュートスは広間の真ん中に立つ騎士に目を奪われていた。

 プレアデス達のメイド服に白銀の騎士の鎧を混ぜたような服を着こなし、聖剣を地面に突き刺し柄を両手で覆う一人の少女に…

 デミウルゴスも気付き彼女を観察する。きれいな金髪を後ろで束ね、優しさと強さを持った眼差しでこちらを見てくるただの人間の女。ただ風に揺らめいているにしても少し揺られすぎな髪が気になるくらいであるが…

 少女と目が合った。その強い眼光はコキュートスに向けられていた。

 

 「参られよ」

 

 ただ一言を放った。それまで気にも留めてなかったそれぞれが彼女を認識する。一名を除いて…

 

 「参ル!」

 

 突如コキュートスが駆け出したのだ。一人の武人として彼女の参られよの言葉に対して無視するわけにもいかぬからだ。

 止めに動こうとしたデミウルゴスをぼっちが止めた。

 広場で閃光が走った。コキュートスの放った一撃が少女の一撃により流されたのだ。

 

 「見事!ダガコレハドウダ」

 「な、四刀流!?」

 

 少女はコキュートスのそれぞれの手に握られた獲物に目がいった。ただ持っているだけではない。それぞれが意思を持って襲ってくる。

 たった一本の剣では捌ききれぬ斬撃の数々。

 少女は楽しそうに笑う。

 捌ききれぬのであれば捌かなければいい。

 剣筋を見切り最小限でかわし、斬撃を弾き、流しては逆に攻めていく…

 まるでアニメや漫画で繰り返される剣戟。一般人では見切れぬ戦いが行われている。数千とも言える手数がたった数秒に込められていく。

 二人は楽しそうに笑いながら、だが決して手を抜くことなく斬り合う。その中、大きな動きがあった。

 

 「そこだ!」

 「イヤ、マダ甘イ!」

 

 コキュートスが作った一瞬の隙を少女はつく。

 一太刀を浴びせたのだ。

 浅い、浅すぎる一太刀はダメージとしては軽い部類だろう。勝負をつけようとコキュートスが攻めた。少女の腕に獲物を振り下ろしながら勝利を確信した…

 ガキンッ!!

 腕を守っていた鎧が裂け、少女の細腕は渾身の一撃を弾く。

 苦悶の表情をする少女と困惑を露とするコキュートスは互いに距離をとる。

 かすかな威嚇の声を少女の後頭部から聞き取りながら…

 

 「!?ナルホドソウイウコトカ…」

 

 少女も裂けた鎧の隙間から緑色の鱗が見えた。そして彼女の髪と思っていた物が一本一本意思を持って威嚇していた。

 

 「・・・そこまで」

 

 二人の中間に一瞬で現れたぼっちにより戦闘の幕がおろされた。 

 少女は膝をつく、創造主に篤い視線を送りながら。

 

 「お久しぶりで御座いますぼっち様」

 「・・・うむ・・・挨拶を・・・」

 

 ぼっちはアインズ達の方を振り向きながら言った。少女は短く返事をしてアインズへと向いた。

 

 「お初にお目にかかりますアインズ様。私は第11階層《夜空の広間》領域守護者、《ゴルゴーン》のシュバリエ・ステラで御座います」

 

 少女…ステラの凛とした声がアインズの耳に届いた。

 

 

 種族《ゴルゴーン》は三人の種族《ゴルゴン》通称《メディーサ》が三人居ることで開放される種族である。

 《ゴルゴン》の主だった能力はオプションで石化能力と特化された防御力である。その防御力は最終的には上位の鎧のも劣らない物となる。前衛にしてもいいが《メディーサ》は魔法を取得できるため後衛としても優秀な種族なのである。

 しかし、あまり使われることはなかった。理由は種族ゆえだった。

 プレイヤーの意思とは関係なく威嚇して自分の位置を教えてしまう髪の蛇達。

 肌が緑の鱗で覆われその醜い容姿。

 最終的には強くなるが低レベル時は逆に弱いステータス。

 異形種であるため異形種狩り遭うなどの理由で嫌悪されていた。

 逆にNPCとしては優秀すぎる性能で異形種好きなギルドでは使用されてた。

 そして《ゴルゴーン》になると能力の配分強化と言うスキルを持つ。

 登録した三人の能力値を合計し、平均的に三分割してそれぞれの元の能力値をプラスするのだ。レベル70のステラがレベル100のコキュートスと渡り合えたのはそのスキルが合ったことが大きいのである。

 なんにしてもこれから残りの二人の《ゴルゴン》に合わねばならぬのだ。少し頭痛のような物を感じるぼっち。何事もなければいいのだが…




今日はこれまでで続きはまた今度です。
次回の話と同時にオリキャラの設定を公開します。増えたりしたら随時更新致します。

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