骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ
<< 前の話 次の話 >>

225 / 233
第184話 「ザーバ、法国へ………」

 一台の馬車が法国へと続く道を進んで行く。
 貴族や国で管理している馬車のように装飾品で飾り、自己の権威を見せ付けたりした物ではなく、小金持ちぐらいが手を出せそうな質素で簡素な物だった。
 中にはカソック服を着て読書に勤しむスカーレット・ベルローズ神父と、シスターのエイナ・ポルグレッサとキャロル・ヴィルシーが向かいに座り、二人とも長旅に疲れて眠りこけている。

 スカーレット・ベルローズを名乗るナザリック地下大墳墓第11階層のNPCで、神父の役割を創造主であるぼっちより授かったザーバ・クアンスラァは法国の要請で出向いているのだった。内容は王国で新たに広まっている宗教の内容を教えて欲しいと言う物だった。予想だが法国は自分達の宗教以外を認める気はなく、説明する中で問題点があればそこをついて間違った教え、または詐欺師の烙印を押して蹴落としたいのだろう。
 別段に信者が居なくなろうと蹴落とされようと別に構わない。それは彼らは至高の御方々を崇拝する資格が無かっただけだ。そう考えている。
 教会では聖書と呼んでいるギルド【アインズ・ウール・ゴウン】の活躍を描いた武勇伝をぺらりと捲り、何度も読み返したページに目を通し始めるとドアがノックされた。

 「神父様。着きましやぜ」
 「着きましたか。長い距離ご苦労様でした。ほらお二人とも着きましたよ」 
 「うん…あれ神父様?」
 「はっ!?寝てました」
 「えぇ、可愛らしい寝顔でしたよ」
 「い、いやだ。可愛らしいなんて///」
 「エイナ。乙女モードから戻って来て」

 頬を染めるエイナに微笑を向けながらザーバは馬車より降りる。
 今まで来た事のない宗教国家に興味を持っていたのだが、街並みは教会が多く見られる以外は王国とさして変わらなかった。街を行き交う人のなかには神父やシスターを見受けられたが、やはり多いだけでそう変わらない。多少肩を落としつつ荷物のトランクを荷台より降ろすと、6人ほどの神父たちがこちらに向かってくるのが目に入った。同じく荷物を降ろすエレナもキャロも気がついており、腰に下げている武器をいつでも抜けるようにしていた。

 「これはスカーレット神父殿。わざわざ遠いところからよくぞおいで下さいました。我々は神官様の遣いで参りました」
 「これはどうも。まずは宿屋をと思っていたのですが…シスターエレナとシスターキャロルは先に行っていて貰えますか?」
 「畏まりました。エレナが寂しがらないうちに来て下さいよ」
 「もう!そんな寂しんぼうじゃありません」
 
 むくれるエレナと共に地図を見ながら進んで行くキャロルを見ながら、辺りに尾行しているらしき者を見つけた。やはりと言うべきか歓迎はされていないようだ。六人の神父が道案内をしながら囲むような陣形を取っている事からも察せれるが、正直何の問題もない。問題があるとすればモミが調べたぼっちを名乗るNPCらしき神父だろう。
 連れて来られたのは自身の教会よりも一回り大きい程度の屋敷だった。部外者で自分たちと違う宗教化を招くのだから、自分達の神聖な教会ではなくこういうところにつれてくるのが正しい。
 扉を開けられて中に入ると、フード付きのローブを身にまとい十字槍を持っている兵士らしき者達が至る所で警戒していた。それらの横を通り過ぎ、奥の一室へと案内された。中には六人の老人と老婆が並んで座っていた。

 「どうぞおかけ下さい」
 「失礼します」

 六名の視線を浴びながら向かいの席に座り、ニコリと笑った。
 品定めをするかのように見つめる彼ら・彼女をスカーレットは予想していたよりも評価していた。私腹を肥やすような連中かただの老人たちを想像していたが、それぞれの目がそうではない事を雄弁に語っていた。動作どころか眉の動きのひとつですら見逃さない気らしい。
 
 「来て頂いて早々で悪いのだが君が信じている神々の話を聞きたい。構わないかね?」
 「勿論構いませんよ。私も皆々様に話したくてうずうずしておりましたので」
 「我々は六大神を信仰している。勧誘は期待しないほうが良い」
 「でしょうね。貴方達の眼を見たら分かります。己の神々を純粋に崇高しておられると」

 頭を下げながら顔が下に向いた瞬間に嗤った。
 彼らは理解し切れていない。彼らが神々と崇めるのはプレイヤーと呼ばれる存在で、レベルが高いだけのただの人だという事を。儚く脆い人間種であったからこそ神話の中でしか生き長らえない存在。
 目の前の神官と比べて自分は何と幸せなのだろうかと考える。彼らは物語の中の英雄伝にしか崇拝出来ないが、私は直接自らの神に奉仕し、崇拝し、そのお言葉を耳や肌、神経と身体全体で受ける事が出来るのだから。

 ザーバはいつになく饒舌に語った。至高の42人それぞれの特徴を現した二つ名を並べ、ギルド全員や各個人の武勇伝を語っていく。創作ではなく実際にあった話をありのままに話す為に粗や矛盾はなく、六人の神官は粗捜しから徐々に食い入る様に効き始め、中には固唾を呑みながら聴いている者もいるほどだ。
 
 「――と、簡単にですがこのようにすばらしき御方々が私が崇拝して止まない神であります」
 「今ので簡単にとは…。聞いている私も手汗握ってしまったよ」
 「しかし、貴方が仰る神々は全員異形の者なのでしょう?」
 「異形だからどうしました?私が知っている神話の中には人間型以外も登場するものをあります。クトゥルフが良い例ではないでしょうか?」
 「ふうむ…確かに異形だからと言うだけでは…」
 「それに考えてみてください!人間の器を持ったプレイヤーは人間と変わりなく滅びる。しかし!異形の神々は死の概念は払拭され未来永劫生き続ける。過去・未来・現在も!話の中ではなく実在する者として!」
 「待て!貴殿の話からすると貴殿は神に会った事があるのか!?」

 この世界では神と呼ぶに相応しいアイテムに力を持ったプレイヤー。
 後世に伝えられた話と残る奇跡をも起こすアイテムでしか存在を確認できない神官達は目を見開いて問う。愉悦を表した笑みで嗤うザーバは神官それぞれの眼を見渡しながら大きく頷いた。

 「まさかとは思うが君が語った死の神…そして神々を統括すべし者というのは…」

 あぁ…確かにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーを語るときにモモンガ様のことをそう称した。外見も容姿もありのまま言ってある。逆に気づかないほうが可笑しい。アレだけの実力を持つ者がただのアンデットの筈がない。プレイヤーだと薄々感づいて居ただろうし。

 「貴方達には魔導王と言った方が分かりやすいでしょう」

 やはりと言ったように納得した神官達は何やら話し出した。
 警戒しつつも興味ありといった感じか。
 話を聞いた神官達はザーバに会わせて欲しいと頼んできたが、その前に信者となった者達に先に会って欲しいと願い、神官達はその願いを聞き届けた。
 かつて陽光聖典として法国に仕えていた彼らがアインズ・ウール・ゴウンの信者となっていたのを見たらどういう顔をするのか……多少楽しみだな。






 【ぼっち】
 それは嘗てこのヴァイス城の騎士達をまとめていた英雄。
 力を欲する欲深な騎士。
 正義を行なおうとする騎士。
 戦う事を好んだといわれる吸血鬼。
 魔法で辺り一面を炭にする魔法詠唱者。
 様々な者達を纏め上げ、組織し、時には新人を鍛え、一緒に冒険に出て、仲間を苦しめるギルドに戦争を挑んだりと話を聞くだけでも好感を抱き、武勇伝には心躍った。
 私はその人の姿を模写した人形。騎士様達が望む彼を目指して振る舞い、行動してきた。時には残酷に、時には優しく、己が正義の為に剣を振るい続けてきた。
 スレイン様を始めとする騎士の想いに答える為に…。

 「ガハッ!」
 「おんや~?あれだけ大仰に言ってた割にはもう終わりですかぁ?」
 
 壁まで吹き飛ばされた神父ぼっちは口から血を流しながら、刀を支えに使いながらふらつく脚に渇をいれて何とか立ち上がるが、踏ん張りが利かずに顔から倒れこんでしまう。
 痛む身体に鞭打って何とか顔を上げて正面の人物を睨みつける。
 ロングコートのような白衣を着て、眼鏡の位置を直している長身の男。自分の創造主で騎士の中でゴーレム研究に勤しんでいたプロフェッサー。
 横には純白のウエディングドレスを着た付き剥ぎだらけのブロンドヘアーの女性。そして傷一つ負わずに自分を制圧しきるだけの性能を持つ全身丸みの帯びた西洋甲冑とボディスーツを合わせた【グリーザ】と呼ばれた者が無防備に立っていた。

 「まったく連絡は入れたというのに斬りかかるなんて…創造主に対する礼儀がたりないんじゃあないかい?」
 「確かに貴方は私を創った創造主だ。者によっては親や神とでも例えるだろう」
 「そうだろう。そうだろう。なのになんで君は襲い掛かってくるかなぁ」
 「私は騎士だ!民を助け、不都合な者を間引き、正義を行う者だ!」
 「あ~…だから私の頼みは聞けないっと。そうならそうと言ってくれたら良かったのに」

 正直プロフェッサーだけなら勝てた。プロフェッサーはレベル100ではあるが戦闘職がおまけで、ゴーレムを製作する為に必要だった職業レベルが大半。戦闘面で負ける要素はなかった。だが、それを補って余りある存在を造り上げていたとは…。自らの情報収集のなさにイラつきながら再度立ち上がろうとするがもはや手に力が入らない。

 「―――ゥア――ラ」
 「うん?………そうだね。言い方を変えよう!私が用があるのは王国と帝国にある素材だ。君がいう事を聞いてここの死守に万全を期すと言うのならスレインが見守っていた法国は制圧するだけで一般人や無抵抗な者に手は出さないと誓おう!逆に君が拒むというのなら法国からも素材を頂く事になるけど良いのかな?」
 「貴様ぁああああ……ぐうぅぅぅ」

 無理やり飛びかかろうとした神父ぼっちは左右に揺れながらもすばやく立ち塞がったグリーザに踏みつけられて動けなくされた。その様子を見てクツクツと嗤うプロフェッサーは両手を大きく挙げて声を挙げて嗤った。

 「さぁてぼっち君も従ってくれることだし…私の一世一代の計画を始めましょうか!!」