骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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マインのことが決まった…さてスライム種であるぼっちがのどの渇きを覚えるはずがあるんだろうか?


第012話 「カルネ村とのしばしの別れ…」

 村に戻るとガゼフさんが出迎えてくれた。応急処置はしたのだろうボロボロの身体で…

「全員追っ払いました」なんて嘘をよく平然とつくなギルド長……全員強制的にお持ち帰りしたじゃないですか。しかも即行で拷問部屋送りって……さすがにひどいと思って言ってやりましたよ。

 

 「・・・・・・それは少し問題があるのでは・・・」

「? ああ! 確かにそうですね(レベル的に耐えられないだろう)。では、当分は監視するとしましょう」

 

 なんか他のニュアンスがあったような気がしたが…まあ、気のせい気のせい…そのモモンガさんは今、アルベトと夜空の下を散歩中である。よく空気を読んだと褒めてくれ。

 そ・ん・な・こ・と・よ・り、再びこの状況をどうしようか。

 夜風に触れようと森の近くに椅子を置き座ったところまでは良かった。何者かが近づいてくる気配を察知した。それは死んだ騎士でもなければ森のモンスターでもない。取得している能力のおかげで闇の中でもはっきり見える。あの男の子だ。いや、違ったね。女の子だった。黒髪でショートに切り揃えられた髪、身体は男の子と対して変わらないだろう。そんな子を。そんな娘を男の子と見間違えたのはしょうがないとして、対応をどうしようか悩む…

 

 「アルカード様!どうか弟子にしてください。炊事洗濯何でもしますんで」

 

 「ん?今何でもするって言ったよね?」と言うのを我慢した俺ってすごくね?

 確かにレア的な感じだから欲しいのは欲しいんだけど、持って帰っても飼える支度してないし……今「飼える」って思った俺アウトー!

 ちょっとひらめき、立ち上がる。この子は喋らなくてもついて来てくれる。何も喋らなくても動いてくれるって本当にありがてえ。

 目的の場所まで来ると足を止める。子供は不安そうにこちらを見上げてくる。それもそうだ。ここは襲ってきた騎士の死体を埋めた場所である。

 

 「・・・名は・・・」

 「!? マイン・チェルシーと申します。アルカード様」

 

 頼むから思いつきで答えた名前を連呼せんで下せえ。でもダークウォリアーよりはいいと思う……思いますよね、旦那…

 ロンメルと名乗った騎士の死体をサーチして手をかざす。

 

 「中位アンデット作成《ロートル・スケルトン・ナイト》」

 

 地面が盛り上がり一体のスケルトンが現れた。《ロートル・スケルトン・ナイト》はモモンガさんが作成する《デスナイト》の対のアンデットである。レベルは同じで目を見張るべきはその扱える技の数々だろう。下位から中位の剣技ならほとんど使用でき、防御力に特化されている。だが、その逆に攻撃力が低くデスナイトと戦闘になれば力負けしてしまうだろう。時間稼ぎ&囮の役目で多く使えるだろう。……だろうと言うのは単独行動メインだった為に使用することがなかったからである…

 姿はスケルトンで装備は槍・盾・剣・弓と様々な武器に騎士の鎧で身を固めている。あとの特徴は鼻下と顎に髭が生えているぐらいか…

 

 「マイン・・・お前を連れて行く訳にはいかない・・・」

 

 一気に表情がしおれていった。

 

 「そう…ですよね…」

 「・・・今はな」

 

 しおれた表情から一気に華が咲いたような明るい顔になった。表情見ているだけでなんか癒されるなあ。

 

 「またいずれ迎えに来る。それまでこの者に稽古をつけてもらえ。いいな」

 

 俺とスケルトンを交互に見たあとに本当に嬉しそうな顔をした。……レア物確保……たぶん邪悪な顔してるだろうな俺。そしてよく喋った俺! 褒めて、褒めて。

 

 『聞こえますか?そろそろ帰ろうと思いますがどうしますか?』

 

 よしやっと帰れる!休めるー!喉からっからだよおおおおお!

 

 「・・・・・・コクン(頷く)」

 『あのぼっちさん?メッセージで頷くの止めません?』

 

 

 

 第六階層ジャングル

 

 「・・・のど渇いた・・・」

 

 モモンガさんの嘘つきめアンデットだから喉が渇くことないでしょう?って、すんごく渇くんですけど……今なら湖の水全部飲めそうな気がする…

 

 「ハァ・・・ハァ・・・」

 

 何だろう?身体が重たい……何か呪いでも受けたか俺…

 ガクッ!?

 膝が言うことを利かない。何でこんな状態に陥っているか分からないが次から飲食不要のアイテムを付けよう……って、言うかここで倒れたらセバスの説教コース直行ではないのか? いや、すでに一人で出歩いているから決定ではあるのか…

 駄目だ。思考も上手く回らない……あそこで少し休もう…

 木にもたれて座り込む。身体にもはや力が入らない。やばいこのまま死ぬんじゃないのかな…………誰かがこっちに向かって走ってくる…

 

 

 あたしはセバスからの報告を聞いてぼっち様を捜索していた。なんでも帰った後、強烈な喉の渇きを訴えたまま転移したらしい。たしかにぼっち様の反応をこの第六階層から感じる。

 前にデミウルゴスが気配を隠されてなかったぼっち様の話を聞いていたから、何かを行っているとばかり思っていた。

 姿が見えた。その事にすごく安心する。しかし一瞬で不安の中に叩き込まれた。膝を突き倒れられたのだ。急いでぼっち様の下へ駆け寄る。

 

 「いかがなされましたぼっち様!?」

 

 反応が薄い。目はしっかりとこちらを見ているが力がない…。目だけではない身体全体から力を感じない。まるで生気をすべて抜かれたようだった…

 

 「ど、どうしよう。デミウルゴス…アルベド…。あ、モモンガ様なら!」

 

 モモンガ様を呼び行こうとしたら手が肩に触れた。

 

 「・・・ア・・ウラ・・・」

 

 か細く小さな声が聞こえた。どんなに小さくても聞き逃すことはなかった。

 

 「ぼっち様?しっかりしてください!…!?」

 

 弱弱しく触れていた手が力強くアウラの身体を抱き寄せた。突然のことが連続で続き頭がパニックを通り越して落ちついてきた。

 強く抱きしめられているから苦しいのだが体温や鼓動を感じられて心地よい感覚に陥ってきた。

 

 「ぼ…ぼっち…様…」

 

 面が落ちて素顔が現れる。アウラの予想では無表情で大人っぽい感じだと思っていたのが、予想と反して綺麗過ぎる幼顔に逆にドキリとしてしまう。

 弱ってしまっているためか、吐き出される息、弱々しい表情がたまらなく色っぽく感じてしまう。段々と顔が熱くなっているのが分かる。ここはブルー・プラネット様が創られた夜空の下で判り難いがたぶん自分は真っ赤な顔になっているだろう。

 

 「・・・アウラすまない・・・」

 

 謝るのと同時にぼっち様の唇がゆっくりと近づいてくる。もう目が離せなくなっていた。肩にかかってる手が首元を少し緩める。そのまま唇が近づいてくるため目を閉じた…

 

 「……くぅあ!?」

 

 心地よい痛みが首筋より感じた。ぼっちがアウラの首筋にその鋭利な八重歯を突き立ててた。そこから微量ながら水を弾いた音が聞こえてくる。心地よい痛みに嘗め回す舌の感触、何かを身体から吸われていき快感がアウラを襲っていた。

 

 「・・・・・・ぷはあ」

 

 満足したのか首筋からぼっち様の感触が離れた。

 

 「ごちそうさまでした」

 

 その言葉を聞くと同時にアウラの意識はゆっくりと暗闇の中へと沈んでいった…

 




なんだろう…アウラやマーレ、シャルティアとの絡みが多い分、デミウルゴス&コキュートスの出番が少ないどうしよう…

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