骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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第175話 「ぼっちの私室にて」

 ナザリック地下大墳墓のぼっちの私室では階層守護者三名による監視体制が整えられていた。ぼっちが人間種でプレイしていた頃に所属していたギルドの仲間であるミイにNPCのジョルノ、遺体で棺桶に入っているビオの三人がナザリックに来てからそれぞれが監視を付けられている。

 

 ジョルノはモミとの戦闘から戦闘能力をアインズが解析してコキュートスの元で監視を受けている。棺桶のビオはもしもジョルノが暴れた際の人質として使えるようにエントマとシズが待機している。

 

 戦えない遺体と戦闘慣れしていないNPCはまだいい。問題は索敵特化のミイというプレイヤーだ。戦闘能力も隠密スキルも持って限定されていたとは言えロリカード状態のぼっちと互角以上の戦闘を繰り広げた事から危険度は最も高い。

 

 本人の性格や知識の薄さからステータスのと強調するが…。

 

 ゆえに階層守護者のシャルティアにアウラにマーレ、そしてぼっちの四人体制で監視している。監視している対象がミイなのかシャルティアなのかは分からないが…。

 

 「あのー…アウラ」

 「なによ」

 「そのぉ、私達はアインズ様より監視役として来たのよね」

 「そうよ」

 「だったらミイを監視しながら私も監視するのは…」

 「なっ!にっ!かっ!言った?」

 「あと、あの。マ、マーレも」

 「じー…」

 「うぅ、なんでこんな目に」

 「その薄い胸に聞いてみたら?」

 「薄っ!?」

 「ぼ、ぼっち様に抱き締められるなんて羨ましいです!」

 「いや、マーレ。そっちもだけどそっちじゃなくて、シャルティアからぼっち様に抱きついた事でしょ」

 

 『うっ』と顔を顰めながら呻き声を上げるがシャルティアに対する二人の視線は和らぐ事無かった。

 

 アインズから大体の事情を聞いたアルベド指揮の元、監視体制を構築している最中。ぼっちが監視対象を連れて帰還する連絡を受けて一同がナザリックの入り口までお迎えに出たのだ。列を組んで現れる至高の御方をお待ちしていると現れたぼっちは左腕に見知らぬケット・シーを、右腕にシャルティアを抱いてゲートより登場したのだ。アインズ様一筋のアルベドは問題なかったが他は動揺しまくってパニックに近い状況に陥ってしまった。守護者の中でもぼっちよりのアウラとマーレは表情でシャルティアを怯ませるほどの形相をしていた。何があったかを一切合切白状した結果、守護者内で監視対象同様にシャルティアを監視する事になったのだ。妬みを半分以上含んだ監視だが…。

 

 「だってしょうがないじゃないの!あの時はそうでもしないとぼっち様が盗られそうな気がして…」

 「まぁ、その気持ちは分かるけどさ」

 「さ、さっきからずっと二人で話し合っておられますもんね」

 「あれを話し合いって言って良いかどうかは別だけど」

 

 三人の視界の先にはベッドに腰掛けたぼっちとぼっちに向かって手振り身振りで話している監視対象であるミイが居た。部屋に入ってから二時間以上話しっぱなしなのだ。主に今まで自分が体験した事から愚痴や世間話程度の物まで引っ切り無しに喋り続けている。それをぼっちはミイの目を見て真剣に、時に微笑み、頷いたりして真面目に聞いている。見ているほうが飽き飽きしてしまいそうな一方的な会話なのだが、演技や変身、緊張MAX時ではなく普段通りでは話すのが難しいぼっちは楽で良いと考えている。

 

 「ところでこれからどうなさるんでしょうか?」

 「どうってぼっち様はアルカード領に行くのではありんせんか?」

 「え?いえ、そうじゃなくて…あのぉ」

 「どうしたのさマーレ。気になることがあるならはっきり言えばいいじゃない」

 「うん…。ぼっち様は僕達を捨てて行かないよね」

 

 マーレの言葉にアウラもシャルティアも驚いて固まる。シャルティアはどうしてそんな事を言い出したのか分からずにだが、アウラは思い当たる節があって否定できなかった。

 

 「なにを言い出すかと思えば…そんな事―」

 「無いとは言い切れないかもよ」

 「どういう事でありんすか!?」

 「だ、だってぼっち様は前のギルドを出たのは自分より強い相手を見つけたからってさっきミイさんとの会話で言ってたし」

 「そそそそそそ、そんな訳…」

 「ぼっち様が強い相手って言ったたっち様はここには居ない」

 「そしてぼっち様と仲の良い異性のプレイヤーが…」

 「―――ッ!?いや、まさか…そんな」

 

 アウラとマーレの言葉を否定しようと考えながら焦るシャルティアは視線を泳がしながらぼっちへと動かす。そこでは楽しそうに話を聞いている姿が…。

 

 「ぼ、ぼっち様!!」

 「ん?・・・デバフッ!?」

 「ぼ、ぼっちさーん!!」

 「ちょ!あんた何してんのよ!!」

 

 不安に押し潰されそうな心境で瞬間的にトップスピードを出し、ぼっちに抱きついたシャルティアの一撃でぼっちは壁にぶつかって止まった。アウラとマーレが慌てて駆け出し、いきなりの事にミイは驚いている。

 

 後頭部を思いっきり打ったぼっちはゆっくりと視線を胸板に向けると、溢れる涙を滝のように流し続けるシャルティアがしがみ付いていた。

 

 「ぼ、ぼっちざまぁ」

 「・・・どうした?」

 「ぼっち様は私達を見捨てたりしないですよね…居なくなるなんて嫌でありんすぅ」

 

 泣きながら懇願するシャルティアの髪を優しく撫でながら微笑む。

 

 「・・・大丈夫・・・私は・・・ここに居る・・・から」

 「本当なんですよね!」

 「・・・(コクン)」

 

 シャルティア同様泣き出しそうになったアウラとマーレに手を伸ばして引き寄せる。胸元に倒れこんだ二人とシャルティアを包むように抱き締めて安心させようとする。するとひとり頬を膨らませて見つめるミイが…。

 

 「ミイも抱き締めて欲しいにゃあ!!」

 

 三人の上から飛び乗り、ぼっちに四人が抱き付く格好に…。

 

 「ぼっちさん。様子はどうでs………」

 「・・・」

 「お邪魔しました」

 

 その格好を見て開けた扉から引き返すアインズが見えたが気にしないで置こう。というか今は気にする余裕が無い。幸せそうな四人の表情を見つめながらこれからどうするべきなのかと頭を働かす。

 

 とりあえずユリより伝えられたラナーちゃんからの伝言通りに帝国にでも行って見ようかな?




 
 えー…次回は本編ではなく外伝をやっていこうかと。外伝のほうが本編より文章が多いので一週間に一回になるかと…。予定では三話で完結です(外伝がです)

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