骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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第174話 「猫と吸血鬼と棺桶」

 ぼっちはビオが納められている棺桶の前で座り込んでいる。姿はロリカードからいつものアルカード姿に戻っていた。一応モミとアインズが覗き見されて無いかを調べはした。ぼっちの横にはディオを名乗っていたジョルノが、ぼっちがビオが一番に信頼していた騎士だったことをミイから知って正座をした状態で今回の事件の発端を話して沈黙していた。

 

 ここまでを見ると前のギルドメンバーとの再会と死を受け止め、ビオが創造したジョルノが心に溜まっていたものをぼっちに話したシリアス系の場面だと思う。左右に抱きついたシャルティアとミイが居なければ…。

 

 「で、ぼっちさん。隣のケットシーはどなたで?」

 「さっさと言うでありんす!何処の何方でなんでぼっち様に抱きついているでありんすか!さっさと離れるでありんすよ!!」

 「……シャルティア。前文は兎も角、後は同じ事を言われると思うよ」

 「モミの言う通りにゃ!そっちこそ私のぼっちさんから離れるにゃ!」

 「少し気になる発言を聞いた気がするのですが…」

 

 会話の中にケットシーの少女は『モミの言う通り』と言った。という事はモミとは繋がりを持っている事になる。だがそんな報告はまったく聞いてない。ぼっちさんは――知らないようだったからぼっちさんの指示ではないだろう。その事を問おうとしたらシャルティアが怒りで顔を歪めながら口を開いた。

 

 「そうでありんす!『私の』ってどう言うことでありんすか!まさかぼっち様の…」

 「彼女にゃ!」

 「・・・堂々と・・・嘘つかない」

 「ばらすの早いにゃよ」

 「う、嘘でしたか……心臓が止まるかと」

 「吸血鬼が心臓麻痺ってどうよ?」

 「いや、そこじゃなくて貴方とモミは知り合いなのですか?」

 「……あ!…さぁ、なんのこと――」

 「知り合いというか良く遊びにくるにゃよ」

 「さ…さらだばー」

 「逃がさん」

 

 にへら笑っていたモミは青ざめた表情に変わり、ダッシュで逃げ出そうとしたがぼっちの伸びた手に捕まって引きとめられた。シャルティアもモミが至高の御方に内緒で他の勢力と繋がりを持っていたという事実に気付いて睨みを利かせる。抱きついた体勢は変わってないが…。

 

 「まずはモミから話を聞こうか?」

 「話を聞こうかって言われてもなぁ…。前々からぼっちさ――まの元ギルメンが居るらしいのは知ってたんで敵性かどうかを調べてた」

 「結構な頻度で遊びにきてたにゃ…」

 「知っていた?いつからだ?」

 「あー…結構前から…動き始めたのはアルカードの領地にケットシーの巣にぼっち様のスキルでも読めないところがあるってステラから聞いてからだったっけな」

 「ぼっちさんの元ギルメンってナザリック前の…」

 「・・・(コクン)」

 「と、いう事はぼっち様のご友人という事になるんでしょうか?」

 「ふふーん♪ご友人なんて言葉じゃすまないにゃ。出会いは運命的な―」

 「あーすまないが話が長くなりそうなら端的にすませてもらえないかな?」

 「むぅ。ミイはぼっちさんに友人で弟子にゃ」

 「・・・同じ索敵型」

 「ぼっち様のご友人という事なら私は態度を改めたほうが…」

 「急によそよそしくしなくて良いにゃ。さっきみたいでいいにゃよ」

 「しかしっ…」

 「・・・大丈夫、大丈夫」

 「ぼっち様がそう仰られるなら」

 「忠誠心がカンストしてるにゃね」

 

 とりあえずぼっちさんと友好的な事は分かった。サボリも混じっていただろうがモミが危険を知らせないという事はそれなりに大丈夫なのだろう。問題は正座しているジョルノと棺桶の中身のビオというプレイヤー。ぼっちさんの友人なら蘇生してあげたほうが良いのかとも思うがどんな人物かも分からない。それにまだ聞きたい事はある。

 

 「聞きたい事があるのだが良いかな?」

 「んにゃ。なんでも聞いて欲しいにゃ。ただし!スリーサイズ等は黙秘する」

 「誰が貴方みたいな貧相な身体に興味を持つでありんすか?」

 「そっちだって同じ体型の癖に!」

 「はいはい。アインズ様が真面目な話しているんだから黙っていようね」

 「…コホン。まずぼっちさんと関わり合いのプレイヤー、もしくはNPCはどれぐらい居るのかね?」

 「えーと、プレイヤーはミイにプロフェッサー…あとビオも入れるなら三人かな。NPCはジョルノに粗悪で不出来の贋作とプロフェッサーが作りこんでいたゴーレムの二人と一体かにゃ?」

 「・・・スレインは?」

 「…死んだよ。というかユグドラシル最終日にログインしていたプレイヤーはミイ達を除いて死んだよ」

 「死んだというのは?」

 「いろいろ。贋作に殺されたり、プレイヤー同士で殺しあったり、病気や寿命なんかもあったよ」

 「・・・・・・そうか」

 「…聞きにくいのだがここに来てからワールドアイテムを使用したことは?もしくは渡したりしたことはないか?」

 

 ぼっちもシャルティアも質問の意図を理解していないが、これは確認しておかないといけない。何故ならもしもぼっちさんにワールドアイテムを使った・使った連中に渡した者なら警戒しなければならない。嘘を言う可能性も高いが…。聞くだけ聞いたほうが良いだろう。

 

 「わー…なに?」

 「ワールドアイテムです。まさか知らないなんて事は…ないですよね?」

 「んー。あったようななかったようなぁ」

 「どっちなんですか」

 「拠点の集積所にあるかも」

 「集積所とは?」

 「・・・整理する前の・・・宝物庫」

 「…理解しました」

 「僕からも宜しいでしょうか?」

 

 本気できょとんとしているミイの回答に警戒する相手でもないなと半分投げやりな気持ちになりつつあった時、ジョルノが真剣な表情で口を開いた。

 

 「ぼっち様、ミイ様。どうかビオ様の蘇生をお願い致します」

 「・・・」

 「…えー、嫌にゃ」

 「何故ですか!?ビオ様はミイ様とは仲が悪くはなかったと記憶しております。なのに何故!」

 「だってあいつが言ったにゃ。『命はひとつだ。だから死んでも蘇生するな』って」

 「それは……そうですが…。ぼっち様はどうでしょうか?ビオ様はぼっち様の事を慕っていました。久しぶりの再会を果たす為にも…」

 「・・・今は・・・駄目」

 「そんな!」

 「・・・喋り難い」

 

 間が空く普段の喋りで長話は難しかったのか、再びロリカードに姿を変えて身体の節々を軽く解す。

 

 「蘇えらすのはいいけど蘇えったら蘇えったで一騒ぎあるだろうからこちらの用事がすんでから」

 「………」

 「それに蘇えった時にパーティもしたいしね・・・・・・以上!」

 

 スラスラという事言ったらすぐさま姿を戻して立ち上がる。そして手を差し出しながら微笑む。

 

 「一緒に・・・おいで」

 「…はい。感謝しますぼっち様」

 「ミイは止めたほうがいいと思うけど。絶対あいつきれるよ?」

 「そのときは・・・そのとき。アインズさん・・・」

 「ええ、分かってますよ。一応監視付きですがナザリックへ招待しましょう」

 「ありがとう」

 「いえいえ。それにしてもモミは独自に動いていたとは…あれ?モミは何処行ったんだ?」

 「先ほどゲートを開いて行きましたが」

 「そういえば・・・帝国はどうしたんだ・・・ろう」

 「あ!あいつ…」

 

 帝国での千年公の仕事を放棄して参上した事に今更気付いたが逃げられては仕方がない。帰ってきたときにいろいろと言わせて貰おう。今は王国に吸血鬼退治の報告とぼっちさんたちを何とかしないと。棺桶を大事そうに抱えるジョルノにはそのまま運んでもらって、ぼっちさんには抱きついているシャルティアとミイを持っていってもらって…私はアルベドに話を通して一応の監視体制や鎮圧準備も用意しなくては。

 

 忙しくなるなと甘く考えていたアインズはナザリックに帰還したぼっちがシャルティアと見知らぬ女性を抱き締めて現れた事で大騒ぎが起こるとは微塵も考えていなかった…。


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