骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 投稿が遅れましてすみません!
 ゴールデンウィーク中は忙しくて土曜日になってやっとパソコンに触れれた次第でして…。


第168話 「高レベル者との出会い…」

 カーミラの姿になっているぼっちはモモンとして動いているアインズと共に、吸血鬼の王都侵攻軍とされる軍隊を破った事に表には現さないががっかりしていた。

 

 捕縛したマイエル=リンクは最初はぼっちに対して口を閉ざしていたが、モモンの質問には多少硬さはあったものの答えていた。どうやらマイエルは今回の首謀者であるディオに領民を人質に取られて参加させられたとの事。イビルアイより彼が人を牙にかけない事や領民を大事にしている噂を聞いており、その事から遊び半分で戦っているカーミラを好まず、王国の守り手であるモモンには同じ守り手として喋ったのだろう。

 

 何にしても首謀者の居場所と残りの兵力は分かった。今は王都より離れた破棄された小さな集落に向かっている。その地下に神殿を築いて待っているらしい。ならばこちらは正面から殴るだけでいい。しかし妙にマイエルの事を気に入ってしまった為に彼の人質となっている者の救出作戦も同時進行させている。救出にはナーベとイビルアイ、マイエルの三名が向かって、敵本拠地にはカーミラとモモン、シャルティアが進軍している。

 

 「残りの兵力も残り僅かなのにこれはさすがに過剰戦力では?」

 「先ほどと変わらないわ」

 「そうですけどイビルアイ達が居なくなったおかげで全力を出せますし…って本当に変身すると性格というかいろいろと変わりますね」

 「ははは…っ!?」

 

 笑みを浮かべて歩んでいたぼっちは足を止めてトーラスとラグナロクを構えた。付近には誰も見えないというのにどうしたなどと考える間もなく、モモンはぼっちの背を守るように構えた。モモン―モモンガはユグドラシル時代から知っている。ぼっちが何も言わず付近を警戒するときは何かがある。それもかなり厄介な…。シャルティアも遅れて付近を警戒しているとローブを姿の者が現れた。

 

 「…何者です?」

 「分からない。こちらのスキルが弾かれている。一応情報は提示されているがステータス系と奴自身に一致する箇所が少ない。間違いなく誤情報…嘘だ」

 「索敵特化のスキルが効かないという事は―」

 「同じプレイヤーの可能性が高い…」

 

 ローブ姿の者は袖より毛むくじゃらの手より爪を伸ばして突っ立っている。

 

 「…モモンさん。ここは私に任せて先に」

 「っ!?危険です。ここは一気に…」

 「付近に別の反応がある。そっちはレベル100の騎士らしき奴が居る。名前と一部はアイテムか何かで隠しているが間違いないだろう。それとディオとかいう奴をひと目見たがあれはNPCだ」

 「今まで黙っていたんですか!?」

 「ひとりなら大した事ないと思って…」

 「大有りですよ!しかも囲まれる可能性が高いとくれば」

 「状況は最悪と言いたいところですがディオはモモンさんが。追加の敵はシャルティアで事足りるでしょう」

 「しかしぼっ――カーミラ様を残して行くなんて守護者として…」

 「良いから。良いから」

 

 不安と残ると意思を表したぼっちに心配を向ける二人に対して笑みを浮かべる。今までもだが少女らしからぬ外見にそぐわぬ邪悪と愉悦を混ぜた笑みを浮かべる。

 

 「やっとだよ。やっとなんだ…。格下の相手でもなく、身内でもない。正体不明もステータスも不明だけれども本気を出せる相手が出て来てくれたんだ」

 「……まったく…スラスラと言葉が出るようになったと思えば変わりませんね。いつでしたかいきなり他のギルドに殴りこみをかけた事もありましたね」

 「・・・あったっけ?」

 「忘れたんですか!?あの後、たっちさんとウルベルトさんが必死に救援に」

 「ああ!」

 「はぁ…。索敵重視のぼっちさんの索敵を誤魔化しきったという事は相手も索敵重視の可能性が高い。ならここはお任せします。私は敵の本拠地を落としましょう。行くぞシャルティア」

 「え、あ、はい。畏まりました。御武運を」

 

 シャルティアとモモンが去る様を邪魔する事無くただこちらを見つめる者に違和感を感じる。待ってくれたのは嬉しいのだが攻撃する気があるのだろうか。普通に突っ立っているようにしか見えないのだが…。

 

 「ふっふふ…ふふふ」

 

 少女らしい笑い声が漏れ始めてトリガーに指をかける。やっと動きらしい動きが見れた。足を肩幅に開いて―――跳んだ。フェイントもなにもせずに躊躇する事無く正面に跳んだ。前から突っ込んでくるだけの的の筈がトリガーを引くほうが間に合わない。大慌てで身を捻って回避するが、鋭い爪が髪の数本を切り取っていった。振り向くこともせずに銃口だけを向けて撃つ。ローブ姿の少女は左右に動くだけで避けきった。

 

 「・・・(速度が)早い!」

 「なんていう反応速度だにゃ!」

 

 ・・・・・・にゃ?

 

 今、にゃって言ったよね。

 疑問を抱きながら懐かしい感覚を味わいながらぼっちはカーミラとして銃口を向ける。

 

 

 

 

 

 

 今にも崩れそうなボロの廃村の真ん中に地下へと続く入り口があった。そこに漆黒のフルプレート姿の戦士が入っていくのを、スレイン法国に協力しているぼっちは胸元にかけている十字架に触れながら見つめていた。入り口へ足を踏み込んだモモンではなくその地下に居る知人を…だ。

 

 「まさか貴様ほど崇拝していた者を裏切るとは…。私の最大の同志にして同胞ディオよ。例え間違った行為でも出切れば手を貸してやりたがったが残念だ」

 

 十字架より手を離して腰に下げていた刀を抜き放つ。その目には先まで友を想った慈愛に満ちた眼差しはなく、ただ騎士として相手を屠る目をしていた。

 

 「私はあの方々に言われたのだ。騎士として人を守護するように…だから私は―――ッ!?」

 

 神父姿のぼっちはそこまでで口を閉じて振り返る。背後には見知った黒いドレス姿の吸血鬼が立っていた。

 

 「こんばんわ神父さん」

 「こんばんわ吸血鬼のお嬢さん」

 

 お互いに笑みを浮かべながら挨拶を交わすが、にこやかな表情と違って両者とも気は少しも弛まず戦闘態勢をとっていた。刀と爪がいつでも相手を切り裂けるように。

 

 「貴方も彼のお仲間ですか?」

 「共同戦線をとっているので仲間ですわ」

 「そうか…」

 

 素直に答えられた事に拍子抜けな感じを受けるが、やるべきことはかわらない。刀と刀を重ねて十字に構える。シャルティアは嗤いながら指先に力を入れる。

 

 「私にはやるべき事がある」

 「それはこちらも同じでありんすよ」

 「だから無理やりにでも果たさせてもらう」

 「人間風情が私を相手にすると?」

 「吸血鬼風情が調子に乗るなよ」

 「……殺すぞ人間!いや、確実に殺す!!」

 「シャアアアア!!」

 

 人の目に映らぬ速度で駆け出した二人の刀と爪がぶつかり合う音だけが響く。次に視界に映るのは優雅に地面に降り立つシャルティアと地面に何かが激突した砂煙が起こったふたつだ。砂煙の中から神父は立ち上がり、服に付いた埃を払う。その様子をシャルティアは微笑みながら眺める。 

 

 「まったく…自身満々だった割にはとんだ三流…いえ、雑魚でしたわね。ただ私の一撃を耐えた事には及第点をあげましょうかえ?」

 「右腕に多少の負荷。各部損傷は無し…戦闘継続に支障はないな」

 「見上げた根性でありんすね。でも―」

 

 急加速したシャルティアの手刀が一刀で真っ二つにしようと振り下ろされる。刀をクロスさせて防御の姿勢を取るが反応重視の自分が受け止めれるわけは無いのは先の一撃で体感できた。ならばと刀に触れた瞬間に刀と刀で手を挟んで、力を流しながら横にずらす。目を見開いて驚きを露にするがそれも一瞬のこと。なぜなら初手でシャルティアは神父がこの世界では珍しい高レベルだが自分よりも弱者として認識。つまり余裕を持って対応できると判断してしまっているのだ。

 

 「反応速度も中々でありんした」

 「お褒めの言葉、恐縮です。お礼も兼ねてひとつ――雷斬!!」

 「――ッ!?」

 

 刀――雷斬より放たれた青く輝く電撃が辺りに放たれる。もろに触れていたシャルティアは飛び退き、右腕を見るが傷一つつける事が出来ないと思っていた相手により焼け爛れていた。しかも青い電流が迸っている。感電のダメージが続いている。

 

 「貴様!」

 「そちらの損傷はその右腕一本。これで対等に渡り合えるか?無理だろうな。吸血鬼は変化の術を持っていたと記憶している」

 「油断…また…」

 「おかげでこちらは大打撃を加えれて良かったが、結果的に獅子を目覚めさせてしまったか」

 「ええ、もう油断はしない。ぶち殺す!!」

 

 スポイドランスを取り出して構える。先と違って油断の欠片もなく向かい合う姿に妙な高揚感を感じる。なんと表現すれば良いか分からずに、神父は気持ち悪く感じる事しか出来なかった。

 

 「まぁ…なんでも良いか」

 

 カーミラと名乗るぼっちとフードの少女。シャルティアとぼっちを名乗る神父。そしてモモンとディオ…。この世界では少ない高レベル同士の戦いが始まった…。

 


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