骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 今日の投稿は終了した…と思いましたか?
 ワレキシュウニセイコウセリ

 トゥラ、トゥラ、トゥラー!!

 …疲れた…


外伝02:英雄が生まれた日

 現在ユグドラシルではちょっとした盛り上がりが起きていた。

 小イベント「巨人の散策」が発生した為である。ヨトゥンヘイムにてとある巨人がうろつくようになっており、それを討伐するとレアアイテムなどがドロップしやすいのだと言う。

 俺、スレインもこのイベントに参加したのである。アルスズのメンバーとではなく皐月とだけであった。ミノタウロス戦より町へ帰った後すぐに皐月と共にアルスズから脱退したのである。

 それから大変だった。前衛一人に後衛一人のツーマンセルでモンスターを狩る日々。前に比べて目標もありやる気が違う為にすぐにレベルは50まで上がった。

 だが、巨人は強かった。巨人のレベルは50レベルでレベルだけ聞いたら楽なものであるがレベル通りの強さではなかった。

 元々身体がでかい為にHP、攻撃力、防御力などが高いのだ。さすがにドラゴンの同レベルよりはかなり弱いがモンスター内では上位であった。それにこの巨人にはスキルで自動回復を保有している。

 俺と皐月は10分もしない内に殲滅された。他のギルドでも同じように壊滅させられたなどの被害報告を良く耳にする。大手のギルドならともかく10人そこらの低ギルドなどでは太刀打ちできなかった。

 

 「では作戦会議を始めます」

 

 この小闘技場では小ギルドを含んだ作戦会議を始めていた。

 生産系ギルド「エルドー」より5人、剣士のみ加入できる「白騎士」より11名、そして今回作戦指揮を執る魔法詠唱者ギルド「サバト」から13名、あとはそこらのソロプレイヤーや集団が21名の総勢50名が連携を組んで巨人を狩ると言う物だった。

 ドロップしたものは均等に山分けでラストアタックのボーナスドロップはその人の物と黒いコートに黒い髪と黒尽くめのサバトのリーダーのクロノが話しているのを聞きながら視線は別の方向に向ける。

 

 この闘技場の端っこであの柔和で優しそうな笑みの表情をして腕を組み立っているぼっちさんが居た。

 前の時より装備が上がっているのが分かる。真ん中に白い線が真っ直ぐ上下に走っているコート型の神父服に動きやすい黒のズボン、首からは十字架のネックレスをぶら提げていた。

 その服装よりも背負われた大剣に目が行ってしまう。縦2メートル、幅30cmの両手剣《ミノタウロスの大剣》…レア武器のひとつで攻撃力が高い上、その大きさから防御用の盾にも扱える物で結構人気のある武器である。

 俺は理解する。彼がそれほどまで装備を充実させないといけない敵だと判断する。

 

 「そこの君、聞いてるかい?」

 

 壇上に立つクロノより声をかけられ慌てて頷く。少し不満げそうだったが納得し壇上を降りて行く。すると皆それぞれ移動を開始する。

 

 「もうスレインったらよそ見しすぎ」

 「むぅ、すまない皐月」

 「じゃあ行こうか」

 「何処に?」

 「何処にって、本当に聞いてなかったんだね」

 

 内容を聞いてなかったスレインにため息をつきつつ皐月は口を開く。

 

 「これより準備を整えてヨトゥンヘイムに移動するのよ」

 「了解っと…」

 

 勢いをつけて立ち上がると同時に彼を見つめる。どうやら彼は集団にもギルドにも配属しておらず第三前衛の『エリオ』と名付けられた隊と共に移動していた。ちなみに俺は第二前衛の『スバル』隊で皐月は第三後衛の『キャロ』隊に組み込まれていた。

 

 「ねえ、スレイン」

 「何だよ」

 「あのクロノってアバター可愛いと思わない?」

 「…お前ってショ…」

 「ショタコンなんて言ったら背後からファイヤーボール撃ち込むからね♪」

 「りょ、了解したよ」

 

 確かにあの指揮官のクロノさんは背の低い少年を意識して作られたのだろう。確かに可愛いとおも…

 そこまで考えて頭を左右に振り考えを祓う。俺はノーマル、俺はノーマルと繰り返しつつ歩み始めた。

 

 

 

 「白騎士はそのまま敵を引き付けてエリオ隊は後退、スバル隊は左翼より攻撃。キャロ隊は回復急がせて!ティアナ隊、サバト各員支援攻撃開始!!」

 

 俺達はクロノの指揮の下で巨人を狩って行った。巨人は全長6mあり、その大きさに圧倒されてしまう。が、クロノの適切な指揮と兵隊の数が合わさり苦戦しつつもすでに5体もの巨人を狩ったのである。

 前に出ながらある人物に目を向ける。

 「サバト」のリーダーのクロノである。レベルは62で結構な魔法を使い分け、実力は上級プレイヤーであろう。それが下から数えた方が早い弱小ギルドのリーダーなのか不思議でならない。理由はすぐ分かった。どうやら彼以外は仲良し子吉のプレイヤー達なのだろう。彼を除くサバトメンバーは戦い馴れしておらずレベルも然程高くなかった。

 そしてこの前一人でミノタウロスを狩ったぼっちさん。彼の実力は群を抜いていた。脱落者は居ないもののすでにかなり疲弊しているエリオ隊の中で彼一人だけ動きが良く、まだダメージを受けていない。それに背負うた大剣は背負ったままで剣一本で戦っていた。

 

 「ハハ。…良し、俺もやってやる!」

 

 あの人達のような上級プレイヤーに並ぶように気合を入れ駆けて行く。

 ユラリ…

 視界の隅で何かが動いたのが見えた。振り返り確認すると俺の脚は自然と立ち止まっていた。

 

 巨人。

 ここにきて二体目の巨人が現れたのだ。どうやら辺りの索敵を担当していたエルドーのプレイヤーが他の巨人の索敵範囲に入ってしまい、助けを求めてこちらに逃げて来たらしい。

 最悪だ。さすがに二体同時攻略など出来るはずがない。クロノもそれが分かっているのだろう。舌打ちしたのが聞こえてきた。目の前の巨人はすでに半分まで削っておりあと5分もすれば狩れるだろう。逃げるか戦うか…クロノは戦う方をとったのである。

 

 「回復したエリオ隊は二体目の巨人の足止めを頼む。5分!いや3分だけで良い!頼むぞ」

 

 それを聞いたエリオ隊の面々は動こうとしなかった。それはそうだ。これでは死にに行けと言われているようなものだ。だが、その中に居たぼっちさんが前に出た。ここからでは聞こえないが何か話し合っているのだろう。突如エリオ隊の面々の笑い声が響いた。

 本当に感心してしまう。表情は見えなくても雰囲気だけでも戦意喪失していたメンバーを少し話しただけで奮い立たせたのだ。

 彼らは何の迷いも無く二体目に向かって突き進んでいく。

 

 「彼らが足止めをしてくれている内に倒すぞ!!」

 『おおおおおおおおお!!』

 

 全員から雄叫びが上がり俺を含めた前衛隊が巨人に向かって突撃して行った。

 

 「全員少し下がれ!!《アイス・スピヤー・レイン》」

 

 斬りかかり少し経つと指示が飛ぶ。

 皆が一時下がると同時に巨人の上空より無数の氷で出来た槍が降ってきた。その攻撃を受けた巨人がよろめく。

 感嘆の声が漏れた。アレが第八位階の魔法…

 

 「突撃!!」

 

 クロノの魔法に見とれている場合じゃなかった。早く目の前の巨人を倒してぼっちさんの援護に行かないと…

 焦りつつも足元まで潜り込み斬りつける。

 視界が暗くなった。見上げると巨人が拳を振り下ろしてきていた。何とか回避しようとするが避けきれない。

 

 「スレイン!?ファイヤーボール!!」

 

 咄嗟に皐月が放った火の玉が俺に直撃し吹き飛ばす。そのおかげで何とか助かった訳だが…

 

 「けっ、言ってねえのに喰らわされるとは…」

 「助けて貰っといて何よ!」

 

 再び立ち上がり何度も斬り付けていく。上半身への魔法・弓矢の集中砲火に足元への斬撃。徐々に巨人のHPが削られて最後には倒すことが出来た。

 しかし時間は予定した3分ではなく7分もかかってしまった。それにこちらの疲弊もかなりのものであった。魔法詠唱者組みなどすでにMP切れの者まで居たのである。この状況ではとエリオ達を見る。

 

 「ぶるああああああああああ!!」

 

 すでに六名の隊員のHPは赤となっておりそれらを防ぐように一人戦い続けていた。殴りかかってきた拳を何とか避けつつその手に一撃を振るう。受け止めることはせずに避けてはダメージを負わせていく。負わした瞬間から自動回復が発動するがそれでも少しずつダメージを蓄積させていく。HPは5分の一も減らしていたのである。

 たった一人で仲間を守りつつ彼は戦う…

 

 「・・・重い!!」

 

 彼は大剣を地面に差し込み巨人の一撃をその場で止めると手に飛び乗り駆け出したのだ。弱点の一つである顔目掛けて。

 腰から剣と短刀を抜き放ち腕を斬り付けながら進んでいく。

 巨人が振り払おうと動き、バランスを崩す。その瞬間に持っていた短刀を顔目掛けて投擲した。

 

 「ガアアアアア!!」

 

 短刀が目に突き刺さりクリティカルダメージを受けた巨人は入力された叫び声を上げた。

 手を付きつつぼっちさんは地面に着地した。まだあの初期装備の剣一本でも挑むつもりなのだろう。

 

 「…ハッ!?ティアナ隊、サバトは支援攻撃を開始、MPが切れても構わん撃ち続けろ!!白騎士、スバル隊は突撃!エルドーはエリオ隊の救出、キャロ隊は回復を!!」

 

 彼に魅入っていた皆が我に返り行動を開始する。

 俺はすぐさま敵に向かうのでなくぼっちさんの元へと走る。あの人の実力は二刀流で発揮される。ならばとアイテムボックスに仕舞っていた武器を取り出す。

 それはレア武器のひとつでミノタウロスが現れた部屋のお宝の中にあった品。俺は片手剣使いの為に使えないがもし次に彼に会う事が出来れば渡そうと思い持ち歩いていたのだ。

 最初はアルスが反対したがakihiroもティアも賛成してくれてこの刀を俺が預かる事となったのである。

 

 「ぼっちさん!!」

 

 俺の叫び声に反応して振り返ったぼっちさんの目の前にアイコンを表示させる。

 アイテム受け取りの決定画面である。『スレイン より ぼっち ヘ 対象物:村正 受け取りますか? Yes/No』と表示されており突然の事で驚いていた。が、理解したのか承諾して、現れた刀を腰に提げた。

 剣を左手に持ち替え右手だけで村正を抜いた。村正のスキルが発動してぼっちさんのステータスが上がっていく。

 

 「・・・では、参ろうか!!」

 「!?は、はい!」

 

 彼は一人駆け出すのではなく俺も共にと言ってくれたのだ。こんなに嬉しい事は無かった。

 

 「ららららららあああああああい!!」

 

 俺も彼の掛け声を真似しつつ遮二無二突っ込んだ。足元に潜り込むと横薙ぎに斬る。その間に彼は身体を軸に回転させつつ左から三撃、右から三撃の斬撃を与えたのである。

 スキルでもなくアレは操作で行なった技なのだろう。ならばどうやっているのだろうか?あんな操作俺には一生かかっても行なう自身は無い。それにそれを処理しきる機器を用意しなければならない。本当に羨ましい限りである。お金も有り、そういう技術も持っている。それでも羨ましいと妬む感情よりも憧れの方がずっと大きいわけだが。

 

 「皆下がってください!もう一度撃ちます!!」

 

 クロノはもう一度あの魔法を使うのだろう。巻き添えはごめんなのですぐに下がろうとするが。

 

 「何をしているのですか貴方は!?そこから下がってください!!」

 「そこに居ては広範囲魔法を喰らってしまいますよぼっちさん!!」

 

 斬る事を止めず引く事もしない彼に対して俺とクロノは叫ぶ。すると彼は…

 

 「・・・構わない」

 

 そう言ったのだ。

 

 「くっ、死んでも知りませんよ!《アイス・スピヤー・レイン》」

 

 二度目の氷の槍が降り注ぐ。大きなダメージを負った巨人がよろめく中、彼は槍を避けつつ巨人を斬り続けていた。

 これにはその場に居た全員が驚いた。

 

 「・・・当たらなければどうと言う事はない・・・」

 

 いや、それはそうだけれども実際そんな事を行える人は居ないのではないか?そんな疑問を浮かべつつ巨人のHPを見る。赤く残るバーは微かなものでもう少しで倒せるだろう。

 巨人は最後の力を搾り出すようにぼっちに向けて拳を振り上げるのではなく、裏拳で横に振り払った。

 死んだ。

 吹っ飛んだようには見えなかったし、付近には彼の姿は無かった。

 

 「どうした、それで終いか!?」

 

 声のした方向を見つめると振り抜かれた拳の上にぼっちは立っていた。巨人が振り返る前から顔目掛け走り出しておりそのまま顔を切り裂いた。

 膝を付き、刀と剣を地面に刺すて着地すると同時に巨人が消滅した。

 唖然としてした皆の中を悠然と歩いてきたぼっちは俺の前で立ち止まり腰に提げていた鞘を抜き、刀を納めてこちらに差し出す。

 「返す」と言う事なのだろう。しかし差し出された刀を受け取る事無く、刀を握っていた手を覆うように両手で握る。

 

 「俺を!俺を貴方の仲間にしてくれませんか?」

 

 順序を飛び抜かして俺はそう叫んでいた。他にもいろいろ言いたいことがあったのだがもうその言葉しか出てこなかった。

 彼は空中でパネルを操作してこちらにパーティー申請を送ってきた。何も迷う事無く許諾した。

 

 これで俺、スレインとぼっち、そして皐月は同じ集団《v(ニュー)》の仲間になったのである。

  

 

 

 

 ~ぼっちSIDE~

 

 今日の俺は気分が良い。なぜなら今回は多くの仲間と共に共同ミッションに挑むからだ。

 やっとお金が溜まり前から欲しかった服装を手に入れ、今まで仕舞いっ放しだった《ミノタウロスの大剣》を背負っている。

 通り行くプレイヤー達が振り返りこちらを見てくるのが分かる。何とこの武器は希少な武器だったらしく目立ってしまうのだ。その中に《サバト》と言うギルドのクロノと言う人が居て「この後ご予定が無いのでしたら僕達と巨人狩りしませんか?」と誘われたのだ。

 複数で巨人狩り!?進撃ですね?進撃で良いんですね!

 そんな事を考えつつ二つ返事で答えた。

 

 皆で一緒に任務に挑む。こんな事数日前の俺じゃあ考えれなかっただろうなぁ。……今すぐ逃げ出したいけど。俺、まだ70レベルだけど良いのかな?あのクロノ君とか装備凄く良さそうだからきっと100とかなんだろうなぁ。

 そんなこんなで俺は端っこで結局ぼっちになっていた。作戦では俺以外に6人と組んでエリオ隊として接近戦を担当するらしい。

 どうでも良いかもしれないけどあのクロノ君は凄いと思う。だって姿や装備とかあのクロノ君に似てるんだよ。人の事言えないけどさ。それに隊の名前だって「スバル」に「ティアナ」に「エリオ」に「キャロ」だよ?僕リリカルが大好きです!って世界に発信いってるような感じだよ。俺にはそこまでの勇気は無いし出来ない。けれど出来れば「ヴィータ」隊って名付けられた方が良かった。…あ、それだったら前衛3隊に後衛1隊になっちゃうか。

 話も終わり軽くメンバーと挨拶…向こうが一方的に。こちらは頷くのとプレイヤーネームを指差すだけ…を交わして巨人戦の準備を進める。

 

 

 

 うん。やっぱり帰りたい。

 

 戦闘を重ねるたびにそう思い始めたぼっちであった。

 皆さん調子に乗ってごめんなさい。いつもしない自慢してすみませんと心の中で何度目かの謝罪をしつつ撤退指示に従っていた。

 理由はその背負った大剣にあった。

 邪魔。兎に角邪魔なのだ。集団戦において巨大すぎる武器が邪魔になるのだ。最初の戦闘前にそれに気付きずっといつもの剣で戦っている。もちろん初期の剣だ。

 

 『ブッ!?何その縛りプレイ』

 『地雷が混じってるんですけど』

 

 言われると分かっていた。本当はもうちょっと良い剣持ってるんだけど、この大剣やいらん物まで持って来たから入れる容量無かったの。…あ~胃が痛い…

 

 確かに最初はエリオ隊の皆がそう思って笑っていたが最初の戦いの終わり頃にはぼっちの実力に納得して理解して頼っていることに気付いていないのである。

 後方に引きエリオ隊の面々が回復されていく。度々白いローブを纏った女の人がぼっちを見て驚いたようなアイコンが表示される。何に驚かれてるか分からないのでとりあえず微笑みアイコンを出して答える。

 俺のどこか可笑しいかなと思いつつ辺りの皆を見渡すとこちらに向かってくる巨人が見えた。

 

 ……ワッツ!?

 

 頭が真っ白になった。二体目の巨人とかどう相手しろと!?と叫びたくなる。指揮官であるクロノ君も気がついたのか顔を向けていた。

 

 さぁ言うんだ撤退せよと。このままじゃ挟み撃ちに

 

 「回復したエリオ隊は二体目の巨人の足止めを頼む。5分!いや3分だけで良い!頼むぞ」

 

 はい、頼まれました。……何故にwhay!?ジョークだよね?え、マジデ?

 

 目が点になりつつ巨人を見据える。確かにエリオ隊が二体目の巨人に近い上に今フリーの隊である。あと近くに居るのはキャロ隊だけどエリオ隊から結構距離あるし後衛だし…

 6人が絶望のアイコンを連続で出している。気持ちは分かりつつ、この絶望的な状況を持ち直させようと口を開く。

 

 「別にアレを倒してしまっても構わんのだろ?」

 「「「「「「それ死亡フラグじゃねぇか!?」」」」」」

 

 初めて発した言葉に6人同時に突っ込んできた。一瞬やらかした感に襲われたが元ネタを知っていることに驚いた。だって一世紀前以上の作品なんだけど。

 一人が笑いアイコンを浮かべながら

 

 「あなたと共に戦えて光栄でした」

 

 と言って来た。すると皆笑いアイコンを出しつつ

 

 「この戦いが終わったら俺、結婚するんだ」

 「野郎ぶっ殺してやああぁぁる!」

 「大丈夫。必ず生きて帰るからな」

 「安物なんだがね、おふくろの形見なんだ。空でなくしたら大変だ、預かっといてくれよ」

 「EDF!EDF!」

 

 おい!今ベネットとスレッガーさんが居たぞって何ぞこれ?何故に死亡フラグを叫ぶことになったし。そして最後の奴連呼するな!本当にその連中と同じような状況なんだから!!

 口が緩む。もちろん現実のぼっちがである。笑い声が漏れる。それはぼっちだけでなくエリオ隊全員であった。

 結果的に皆戦意を回復し立ち上がる。あとは前を向いて進むのみ!

 俺達は果敢に、勇敢に、無謀に突っ込んだ。対する巨人はその大きな拳を振り上げた。振り下ろしが来ると分かり射線から退避する。

 ズドオオオン!!

 大きな音を立てて地面に打ち込まれた拳は砂煙エフェクトを撒き散らす。

 拳の後には3人が倒れていた。あの一撃を防ごうとしたのか盾を構えた奴もいた。急いで仲間の元へ駆け寄ろうと走り出す。その間に三人を守ろうと残った二人が盾になろうとがんばったのだが三人と同じように倒れた。まだHPは残っているようだが後方支援を受けられまい俺らには絶望的だった。

 そして留めの一撃を巨人が放つ。

 

 「させるかあああああ!!」

 

 背に仕舞い続けていた大剣を振るいコースをずらす。

 巨人の目が俺に向けられる。今の一撃で俺がターゲットにされたのだろう。

 それから巨人は俺目掛けて拳を振るう。それを回避したり剣で斬り付けたりを繰り返す。

 

 長い…今何分経った?まだ味方は来ない…諦めるか?…否!断じて否!あのクロノ君が!ギルドの団長を務めるような人が!俺みたいな外様にお願いしたんだぞ!!だったら3分ぐらい耐えてみせらあ!!

 

 「Steel is my body, and fire is my blood」

 

 覚えていた詠唱を口ずさむ。決して魔法が使えるわけでない。ただ口にしただけである。

 

 「I have created over a thousand blades」

 

 大剣と拳が交わる。

 

 「Unknown to Death」

 

 反動を受けてダメージが少し入る。

 

 「Nor known to Life」

 

 受け流し斬りつける。

 

 「Have withstood pain to create many weapons」

 

 振るう度に重く、遅く感じる大剣。

 

 「Yet, those hands will never hold anything」

 

 巨人の一撃を弾きつつ詠唱を続ける。最後に叫ぶ『So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS』と!!

 

 「ぶるああああああああああ!!」

 「「「「「「なぜ最後でそうなったし!?」」」」」」

 

 うるさいはもるな!!言った本人もそう思ってるよ!どうして若●さんが登場したんだよ!!キャラ的には合ってるけどさ

 巨人は今度は振り下ろすのではなく拳を突き出して来たのだ。避ければ他の皆に当たる。

 

 「・・・重い!!」

 

 いい加減振り回しにくい大剣を手放したいと思っていたからそのまま地面に刺し彼らの盾にする。拳が大剣にぶつかった瞬間、手の動きが止まる。今だと言わんばかりに飛び乗り腕の上を駆ける。やはりと言うか当たり前と言うか振り下ろそうと腕を振る。落ちる前にやけくそで抜いた剣と短剣のうち、短剣を投げつけ地面へと飛ぶ。

 

 「ガアアアアア!!」

 

 着地と同時に巨人が叫び怯む。しかしまだ誰も来ていない。もう少しくらいと剣を構える。

 

 「…ハッ!?ティアナ隊、サバトは支援攻撃を開始、MPが切れても構わん撃ち続けろ!!白騎士、スバル隊は突撃!エルドーはエリオ隊の救出、キャロ隊は回復を!!」

 

 クロノ君の声が聞こえ前衛隊が突っ込んできた。助かったとその場に座り込むのを我慢して立ち続ける。これで休めると安堵したのだ。

 

 「ぼっちさん!!」

 

 名前を呼ばれて振り返るとこの前の青年が俺の方に駆けて来た。すると目の前に『スレイン より ぼっち ヘ 対象物:村正 受け取りますか? Yes/No』と表示され首を傾げる。

 

 こいつ鬼か!?こっちでぼっちで戦ってきたぼっちにこれ持ってまだ戦えと?確かにHPはあんまり減ってないけど疲労感半端ないんですけど!!

 

 口にしようかと思ったがそこまで自分が喋れないのを理解して刀を受け取る。

 抜いた刀を手にするとステータスが向上するのが分かった。

 

 「・・・では、参ろうか!!」

 「!?は、はい!」

 

 何驚いてんのさ。もしかしてサボる気だったの!?ぼっちに戦わして…こいつやはり鬼だ。

 

 「ららららららあああああああい!!」

 

 半ばやけくそで叫びつつ突っ込む。現在他のプレイヤーにターゲットにされておりフリーのなのですんなり足元まで辿り着いた。

 そして連打で操作し回転しつつ斬撃を6回入れる。たまに練習しておいた「回転剣舞六連」を喰らうが良いわ!!さすがに技名を叫ぶことはしなかったが。。

 

 「皆下がってください!もう一度撃ちます!!」

 

 もう一度撃つ…ここに来る前に3戦目でも使った大技を使うのだろうと判断してそのまま斬り続ける。

 

 「何をしているのですか貴方は!?そこから下がってください!!」

 「そこに居ては広範囲魔法を喰らってしまいますよぼっちさん!!」

 「・・・構わない」

 

 だってあの魔法は上から降り注いでくるんでしょ?だったらこいつの陰に隠れておけば俺の攻撃もはいって良いじゃん。

 だからぼっちは退避しなかったのである。

 

 「くっ、死んでも知りませんよ!《アイス・スピヤー・レイン》」

 

 予想外だった。巨人がよろめき俺の盾が無くなる。

 うそでしょ!!

 後は当たらないように避けつつ必死に巨人の影に潜り込み斬りつける。

 

 「・・・当たらなければどうと言う事はない・・・」

 

 当たってたら死んでたかもだけどね!!

 心の中で悪態をついていると巨人の拳が横より迫ってきたことに気付いた。

 何とかジャンプして避けるとそのまま腕に着地してしまい背後をとる形になってしまった。

 ハッ!?と気がつく。これはるろうにの師匠と同じ構図ではないかと。だから師匠の台詞を言おうとしたのだが…思い浮かばず

 

 「どうした、それで終いか!?」

 

 まことさんの台詞を口にしてしまった。どうやら興奮すると台詞などを間違えてしまうのであろう。恥かしさを感じつつ巨人の顔に斬りかかる。

 その先に足場が無いことに気付かず。

 いきなり高いところから落ち剣と刀と膝をもって着地する。

 振り返ると巨人が消滅し始めたことから終わったのだと察する。

 

 何か皆が俺を注視してるんだけど…すみません、これ返したら帰りますんで…

 

 先ほどのステータス上昇といい、この切れ味といい、これは結構レアな刀ではと思いつつ持ち主であるスレインさんへと歩いていく。

 刀を鞘に納めて返しますと差し出したら手を覆うように握られた。そして… 

 

 「俺を!俺を貴方の仲間にしてくれませんか?」

 

 行き成りで困惑したがすぐに心が大歓喜した。俺がこのゲームを始めたきっかけはまずは仲間作りである。これ程の刀を簡単に知らない相手に渡せる程、器の大きいプレイヤーなのだろう。

 先ほどは鬼などと思い申し訳ありませんでした!どうか俺の友達になって下さい。

 急ぎパネルを操作してスレインさんにパーティー申請を送った。彼は迷う事無く許諾した。

 

 ぼっちは仲間を手に入れた。しかも二人!…二人?しかも彼と彼女は幼馴染…俺チーム内ぼっちじゃね?そんな事を思いつつ集団《v(ニュー)》を創設したのである。

 

 そしてこの一件がある疑惑を生む事など誰も知る由も無かったのである。

 




 ぼっちは戦闘に勝利した
 スレインと皐月が仲間になりたそうに見ている。

 仲間にしますか?Yes/No
 >Yes

 ぼっちはパーティ内ぼっちへ昇格した。
 テレレレッテッテレー♪

ぼっち「・・・解せぬ」

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