骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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間違えて消しちゃって投稿し直しました…


特別編14:モミの一日…

 第11階層

 ナザリック地下大墳墓の大部分の生産を担っている階層である。一日のほとんどを生産業務に当てており、各監督を行なっているNPCは大忙しである。

 

 造られた夜空の元で輝く花々を咲かせて幻影的な光景を見せている、第11階層の出入り口にある《夜空の広間》にてダンボールががさごそと地面を這っていた。

 

 先ほど書いたように大忙しなのだ。階層守護者ともなれば一日の半日を書類仕事に費やさねばならない。

 

 ダンボールに開けられた二つの穴より目が覗く。辺りを確認するとなるべく音を発てない様に動く。

 

 …忙しいはずなのだが…

 

 「何をしているのですか?」

 「『!』」

 

 《夜空の広間》の守護を任されているステラはおもむろにダンボールを取り上げた。中からは大きく『!』と書かれた立て札を持ったモミが出てきた。

 

 「その立て札はなんですか?それとこんな物で私の目を誤魔化せるとでも?」

 「……ダンボールはステルス性の高いアイテムではなかったのか」

 「残念がってないで仕事に戻ってください」

 「…えー…!?今すぐ戻るから剣に手をかけないでください」

 

 ステラの本気の威圧に姉の威厳ゼロ…もともとそんなものはなかったが…でとぼとぼと帰っていく。

 彼女こそぼっちが最初に創造し、階層守護者と言う大役に就いているNPCなのだが、他の者からは『サボり魔』と呼ばれるほどナザリック脱走の常習犯である。

 彼女の私生活はだらしないの一言に尽きる。特に朝は起きないところから始まるとか。今日もこの階層で働いている者に『ステラ様にご報告を』という脅しを聞かなければ昼以降も寝ていただろう。

 

 「また外へ行こうとしたのですか?」

 

 声をかけてきたのはモミの弟であり、ステラの兄であるハイネンスであった。

 モミはわざとらしく落ち込んだ表情で頷く。ハイネもワザとと言う事を理解して苦笑いを返す。

 

 「姉さんも懲りませんね」

 「反面教師としてはこれ以上ないでしょう?」

 「反面教師を欲する者は居ないように私は思いますが」

 「フヒッ…それもそうだ。じゃあ仕事を済ますとしますか」

 

 普通の二階建てにしか見えない第11階層の中枢である《中央家》に向かって行く。

 カーテンも締め切った二階の暗い一室こそがモミの仕事部屋兼私室であった。ここにはぼっちの部屋に置けなくなった家具などを置いている為に他の守護者の部屋よりも充実していた。

 席につく前に音楽プレイヤーらしき機器を操作して曲を流す。曲名は『黎鳴』。無料の曲ではなく有料で手に入れた物だ。曲のリズムに合わせて頭を小刻みに振りながら書類に手をつける。

 そのまま午前が過ぎていった。

 

 

 

 昼食時…

 モミはステラとハイネと昼食をとっていた。

 三人共食べ方が違っていたがステラはどれも美味しそうに、そして嬉しそうに一口一口を味わっていた。味わっているのに速度はダントツだった。ハイネはゆっくりと作法どおりに食べている。モミは今日の主食であるローストビーフだけを食べて野菜は除けている。ちなみに除けられた野菜は文句を言う事無くステラが食べている。

 

 「姉さん。仕事は片付いたのですか?」

 

 あらかた食事を済ませたステラが食べ物を口に含む以外に口を開いた。先ほどの殺気まではなかったが少し険しい物だった。対してモミはドヤアアアア!!と言わんばかりの顔で答えた。

 

 「終わったよ」

 「姉さん。そのドヤ顔はどうかと思いますよ」

 「と言うかいつもちゃんとしていれば何も言わないんだけど」

 「…ぶー」

 

 頬を膨らましたモミは食器を下げに行った。ステラもハイネもそんな姉に対して微笑んでいたがいっこうに戻って来ないモミが脱走したことにステラは笑いながら怒っていたと言う…

 

 

 

 リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンとゲートを使ってナザリックより抜け出したモミはトブの大森林近くの山脈の『アゼルリシア山脈』に来ていた。もちろん魔法などで姿を消しているが…

 山頂まで行かずに大森林が見えるぐらいの中腹にある洞窟目指して歩いていた。

 中は涼しく夏は過し易そうであった。奥は行き止まり…なのだがそこで立ち止まり辺りを索敵魔法で調べる。誰も居ない事を確認してから「…合言葉」と呟いた。すると壁の向こうより「さんごうかいは」と呂律があまり回ってない言葉使いで返ってくる。最後にモミが「超サイコー」と返すと岩の壁が重い音を立てて動いた。

 中にはオーガが二匹並んでおり、モミを認識すると片膝を付いて忠誠心を表してきた。そんな二匹に目もくれずに薄暗い階段を降りて行く。階段を降りた先は広い空間が広がっていた。

 目に付くのは古びた木で出来た住居に畑、大昔の西洋の砦を思わせるような軍事拠点と小さな王国のようだった。

 ここにはモミが勝手に集めたゴブリン300にオーガ50、エルダーリッチ5体とそれらを束ねるホブゴブリン5匹が暮らしていた。

 この戦力はモモンの武勇を上げるのにもどこかを攻める為の兵力ともなんとでも使える手駒として揃えたのだ。そのまま使う事無くこうして彼らは暮らしているのだが…

 

 「閣下!?」

 「閣下がいらっしゃったぞ!!」

 

 モミが中央に建てられた砦に向かうには簡易的な居住区の大通りを歩かなければならない。普通に歩いているだけなのにそこを通りかかっていたゴブリン達が道脇に逸れて平服して行く。

 サボっている間にこの空間を造り、当初の目的でゴブリン達を連れて来たのだが彼らは何故かモミを閣下として忠誠を誓っている。

 ゴブリンは森や草原に生息しており、人間の生活圏と被ることが多い。ゆえに攻撃を受ける事があるのだ。好戦的な部族もいれば平和的な部族もいるのだ。そんな事は分からず、理解もせずに滅ぼされた部族もある。ここに居る部族の半数は滅ぼされかけたり人間達に被害を受けていた者ばかりで、この環境は楽園とも言えた。だからモミに忠誠心を捧げている。後半数は抵抗したが圧倒的な力の前に平伏して忠誠を誓った者だ。

 その二種類の考えを持つ者たちはモミに対する忠誠心だけは同じでいつのまにか『閣下』と呼ばれるようになっていた。

 閣下は…コホン。モミは大通りを抜けて砦の門を潜る。そこに詰めている兵士達が同じく片膝を付き忠誠心を捧げる。中でも鎧を着用し、白いマントを付けた『親衛隊』と呼ばれる精鋭達がモミの続いて歩いて行く。

 小さな石造りの城の中に入るとそのまま玉座の間に入る。玉座の間にはすでに来た事を知ったホブゴブリンが待っていた。

 ホブゴブリンには役職があるのだがどれが誰だか見分けの付かないモミは彼らが纏っているマントで判断している。ここのほとんどを任せている宰相は黒のマント、精鋭部隊を指揮する親衛隊隊長は白、町の暮らしを守る保安隊隊長は青、食物系の生産を任せている生産隊隊長は緑、モミが特に重要視している特務隊隊長は黄色である。

 正直こうなるとは思ってなかった。宰相に任命したホブゴブリンに暮らしの為の書物を渡したところ何故かこうなっていたのだ。そのまま放置してたら砦まで築いていたのだ。

 目も向けることもなく玉座に座ると膝を付いたホブゴブリンが口を開ける。

 

 「閣下、お久しゅうございます」

 「…しばらく留守にした」

 「我々のような者達を気遣っていただき真にありがとうございます」

 「…留守の間に何かあった?」

 

 まるで友達に聞くような気軽さで聞くがホブゴブリン達は礼儀正しい姿勢で答えていく。

 

 「ハッ!まずは生産隊隊長よりご報告いたします。現在の野菜類の生産状況は70%であと一月もすれば100%に達するかと。されど魚の養殖場にはまだしばらくかかるかと…」

 「特務隊隊長よりご報告がありますが例の物が完成しました」

 「…マジで!良くやった」

 「ハッ!ありがたきお言葉」

 「他に報告する者は居らぬか?」

 「では早速見に行こうか♪」

 

 嬉しそうなモミを案内するように特務館と呼ばれる建物に移動していった。

 砦内にある美術館を思わせる白い建物の中には数多くの彫像が並んでいた。特務隊とはゴブリンの中で手先が器用な者が集まった部隊である。

 モミの顔が輝いていく。

 

 「良い出来だ!はぁ~」

 

 発言に対し感謝の言葉を述べている特務隊隊長の言葉など耳に入ってこなかった。

 目の前にはタンクトップを着て無表情で愛らしい少年の彫像が立っていた。彫像の台にプレートが付けられており『黒子のバスケ 黒子 テツヤ』と書かれていた。他にも『薄桜鬼』、『進撃の巨人』など看板が立てられたところにも様々な彫像が立てられている。しかも男性の彫像のみである…

 この後2時間ほど見て周ってから宰相にこれからの指示をしてナザリックへ帰っていった。ステラが聖剣を抜いたのは言わずもがな…

 

 モミは良くサボってナザリックを抜け出すがこれがほとんどではない。リザードマンの集落にも行くがその二点を合わせても50%ぐらいである。あとの50%は…

 


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