スキーを一通り楽しんだぼっちは皆の片隅でシャルティアの頭を膝に乗せ介抱していた。
原因は数分前の目の前で起こった…
雪を使った遊びの話になり雪合戦の話になっていた。
アインズとアルベド…真っ赤なままだが…も戻っており参加するようだった。ぼっちは端っこで見学しようと座っていた。
「雪球を投げつければ良いのでありんすよねぇ?」
「そうですね。アインズ様も無礼講と仰られましたしね…」
普通に会話しているはずなのだが何やら禍々しいオーラが漂っている。
シャルティアとデミウルゴスはお互いに向き合い雪球を投げようとしたが直前で向きを変え全身全霊を持って投げた。デミウルゴスにいたっては珍しく大声を上げていた。
投げた方向にはアウラでも、マーレでも、コキュートスでもない。もちろんアインズでもなく目標はアルベドだった。
二人とも何か恨みでもあったのかなぁ?
しかしただの雪球が守護者の投げた速度に耐えられることなく、アルベドに届く前に空中分解していった…
『ヅダは、もはやゴーストファイターではない…』
おおう…久しぶりに聞いたわこの幻聴。好きだったなヅダ…
さっきまで俯いていたアルベドが笑いながら足元で雪球を作り本気で投げた。結果はさっきと同じ…じゃなかった!?
「ぷぎゃ!?」
「「「シャルティアー!!」」」
空中分解することなかった弾はシャルティア顔面に直撃した。目をばってんにして崩れ落ちたシャルティアの付近に落ちていた弾をデミウルゴスが拾い上げる。
「こ、これは金属?」
「ア、アルベドよ。雪球に何かを仕込むのは反則だからな…」
「分かりましたアインズ様♪」
やべぇってアレ…壊れてやがる…目がマジだって!逃げてデミウルゴス~!!
「シャルティア…仇は必ず…この私が!!」
デミウルゴスが立ち上がり新たな雪球を投げようとするが…
『圧縮、圧縮、空気を圧縮ゥウ!!』
いや空気じゃねえし!アウラとマーレが折角作った大型雪だるまを野球ボール程度に圧縮…だと…
大きく振り被り投げられた雪球が通過すると付近の風を吹き荒らしデミウルゴスへ向かって行く。
猛ダッシュしたぼっちはデミウルゴス後方で倒れてるシャルティアを素早く掴み離脱する。
直撃したデミウルゴスは水切りのように跳ねさせられながらぶっ飛んだ。
『良いもんね!俺には港々で女の子が待ってるん…』
アールより跳んでねぇか、おい。ピクリとも動いてねえし…ヤムチャしやがって…
止まったデミウルゴスを心配そうに近づいたコキュートスが医務室へと連れて行く。残った4人はコキュートスに任せ雪合戦をしている。もちろん手加減してであるが…
そして現在に至るわけなのだがぼっちは暇なのだ。シャルティアを膝枕した結果一歩も動けず正座しっぱなしだしやることないしでどうしよう?
「・・・・・・」
シャルティアの顔を見つめつつ手持ち無沙汰だったので髪を梳いてみる。さらさらの髪が指先に程よく絡まり触ってて気持ち良い。
「う~ん…ん?え!えええええええ!?」
いきなり叫ばれたぼっちはもちろんシャルティアも驚いていた。飛び起きようとしたようだが優しく撫でて起こさせなかった。相手の名を呟きながらされるがままの状態に途惑いながら落ち着いた。
前頭部から後頭部へと優しく撫でられ多少のくすぐったさと心地よさとで表情が緩んでいた。
「~♪」
何この生物!?可愛すぎるんですけど!!まるで甘えてくる子猫みたいに頭とか擦りつけてくる…んだけど何故アイモ鼻歌で歌ってるのか?……あの風呂の時に聞かれてたのか!?まあ、どうでもいいか。今凄く心地良いんだ。
「あの、ぼっち様…」
「・・・ん?」
「少しお話したいことがありんす…」
少し恥かしげながら真面目な表情で身体を起こすシャルティアを今度は止めなかった。馴れてない正座をして対面してきた。
「その…ぼっち様…前々から…」
言葉を真剣な眼差しで聞いていく。って言うかこれってアレじゃない?
「…前々から私はぼっち様の事…」
「シャルティア何やってんの!?」
「へ!?アウrっぷ!!」
慌てたように駆け寄るアウラと顔目掛けてマーレが投げた雪球が直撃して最後まで話すことは出来なかった。肩をわなわなと震わせ立ち上がる。
「なぁにをするでありんすかこのドチビ!!」
「はぁ~!!それはこっちの台詞でしょ!?何抜け駆けしてんのよ!!」
「……」
ぼっちをぼっちにして…じゃなかった一人除け者にして話は進んでいく。と言うかシャルティアとアウラの台詞にマーレの態度…
もし勘違いだったら恥かしいが確かめたい気持ちもある。答えは…
「シャルt・・・」
「「「…あ…」」」
今度はぼっちの後頭部に雪球が直撃した。投げた犯人はアインズだった。
「ははは、ぼっちさんも参加しましょうよ。…あれ?お話中でしたか…」
「く、くく、くくく…」
ぼっちは肩を震わせながらゆらり、ゆらりと立ち上がった。その姿に見ていた5人は後ずさる。
「クハハハハハハハ」
笑い声を上げつつ片目だけだがニヤリと嗤う。この場にデミウルゴスが居ればどれほど歓喜に包まれていたか…
「良いですよ・・・あそび(戦争)をしましょうか?」
「おおおお落ち着きましょうぼっちさん!?」
「落ち着いてますよwwええ、落ち着いてますよ?・・・《二の太刀要らず》発動・・・」
「ちょ!ぼ、ぼっちさんさすがにスキルは使用はって、その雪球からどす黒いナイフの柄が見えてるんですけど!?」
「ああ・・・大丈夫ですよ。たかがナイフの一本じゃないですか?」
「お、お姉ちゃん…アレって…」
「うん…ナイフ・バットだよね……しかも特上じゃないかな?」
「マーレ・・・アウラ・・・」
「「ひゃい!?」」
「シャルティアも手伝ってくれるよね?」
「も、ももも勿論でありんすぼっち様!!」
「あたしもお供させていただきます!」
「ぼぼぼぼ僕も同じく!!」
「戦力差が圧倒的過ぎますって!?アルベドは…」
「ハッ!私はアインズ様と共に」
戦力を補充しようと辺りを見渡す。遠くにモミが見えたか目が合った瞬間そそくさと隠れた。未だデミウルゴスもコキュートスも帰ってこない…ふともう一人居た事を思い出し探す。
「マスター!我が剣はマスターの為に」
終わった…二対五とか…しかも一人は接近戦が得意分野である。
「さぁゲームを始めよう・・・」
この後ナザリック内の皆がぼっちさんを怒らす事は何があってもならないと言うことが共通の認識となったのであった。
ちなみにシャルティアの話はこのゴタゴタで有耶無耶になったと言う…
ここでヒロインは決定させない!
させたらいろいろ出来なくなるから!!