もちつきしたら餅っていくらか残りません?やっぱり残った餅は焼いて食べるか煮て食べるかですよね…餡子餅にするのも良いかな?
ぼっちは呆れつつアインズを眺めていた。
あれだけブラック企業で働いていたから正月休みと言う事で三日ほど休むかなっと思ったら二日にして通常業務ですか…
コン、コン、コン
木と木が軽く当たる音がアインズの執務室に響き渡る。気になったのか音源へ振り向いた。
「何をしてるんですか?」
「・・・揚羽根」
暇だったので羽子板で羽根…または羽子を打ち上げてを繰り返していた。つまりぼっち遊びであった。
「羽根突きですよね?揚羽根とも言うんですか」
「・・・違う・・・羽根突きの遊び方の一つ」
多分モモンガさんが知っているのは追羽根だよな。二人居なければ出来ない高等な遊び…ぼっちはテレビか何かでしか見たことが無い…
「羽根突きとは何でございましょうか?」
これまでの会話を聞いていたアルベドが声を上げた。まあ、知らないよね。うん、分かってた。『説明しよう!』モモンガさんが!
「羽根突きは正月に行なう遊び?だったか…」
うーん…間違っては無いよな…確か武家で女児の誕生祝で羽子板を贈るのが庶民に広がって、お歳暮として女児の居る家庭に贈られるようになったのが由来だったか…
気になっているアルベドを見てある考えが出てきた。
「・・・モモンガさん・・・休憩がてらにしませんか?・・・アルベドも」
「ふむ…良いですよ。少しなら」
「私も宜しいんで御座いますね」
ここは二人を楽しませるとしてぼっちはぼっちで楽しむから良いよっと…視線を感じる…
視線を感じる先には一般メイドのフォアイルが立っていた。目が合うと恥かしそうに目線を逸らした。たまに食堂で三人で居るところを見るが一緒に居るリュミエールは上品そうでシクススは明るいお姉さん的な感じだが目の前に居るフォアイル髪は短く切り揃えられ、メイド服は多少短めな物を着ている為活発そうな雰囲気を出している。
「・・・モモンガさんとアルベドがするとして・・・一緒にするかフォアイル?」
「!?…わたしも…」
「嫌か・・・」
「いえそんなことは…ぜひご一緒に」
これで二グループ出来たので羽根突きを行なう事に…
「えい…やぁ…」
やり方を一回聞いただけでとりあえずやったが中々楽しい。といっても本気を出す事はない。いや、本気を出すとレベル差がありすぎて問題が発生してしまう。
最後にはフォアイルが落として終わるのだがその度に申し訳なさそうにこちらを見る。
「も、申し訳ありません…またわたし…」
「構わない・・・こういう遊びなのだから・・・」
あっちよりはこの方が羽根突きらしいのだから…と思いつつ見る。
もう一グループではコン、コンなどと言う音ではなく金属バットで鉄を殴ったような音が響いている。魔法職とは言えレベル100同士が本気で羽根突きをしたらあんな感じになるんだなと見ていた。
凄過ぎねぇかアレ!?羽根突きと言うよりテニヌだよアレ…人殺せるよ…物理的に…受ける前に腕ごと飛びそうだよ!モモンガさんも補助魔法で肉体強化しているし…アルベドはたまにスキル使って返しているし…
長く続くテニヌじゃなかった羽根突きもモモンガさんが落として終了した。
「ふぅ…さすがアルベドだな。中々楽しかったぞ」
「いえ、アインズ様ほどでは…なんでしょうかぼっち様?」
ぼっちが筆と墨と硯をアルベドに差し出していた。
「・・・勝った方が負けた方の顔に墨をつける・・・これルール・・・」
「!?ちょ、ぼっちさん!?」
「そんなアインズ様にそのような事…」
「・・・『私の者』なんて書いたら良いんじゃないかな?・・・(ぼそぼそ)」
「くふぅー!!!!ルールならしかたありませんわね。アインズ様申し訳ありませんが…」
「お、お、お、落ち着けアルベド!ぼっちさん止め…」
「・・・この羽子板と羽根をあげよう・・・使ってくれ」
「ぼっち様からの…ありがとう御座います!大切に…大切にします!!」
「おーい…もしもーし?」
助けを求めるアインズを無視しつつ部屋から脱出したぼっちはナザリック内をぶらつく事にした。
やってきました一般メイドが多く居るお昼時の食堂へ!って皆の視線が痛い…
「これはこれはぼっち様。どうされたんですか?」
『出たなショッカー!』
ち・が・う!それは執事助手であるぺんぺん…は新種の温泉ペンギンで目の前に居るイワトビペンギンは…えーとエクレアだったか
『私を見てー!』
ちげーよ!筋肉質で記憶喪失してた妹キャラでもねーよ!エクレア・エクレール・エイクレアーだったな。そしてショッカーではなくエクレアの部下の男性使用人な!
「・・・少し用があってな」
「そうですか…どうですかぼっち様、ナザリック支配の為に…」
そうだった。こいつナザリックの支配を狙う(冗談的な)設定があったっけ…しないとは思うんだけど…
「・・・私は関与しない・・・だが、行動を起こしたのなら容赦はしない・・・」
「ヒッ!?…肝に銘じておきます…」
「・・・まあ、起こした場合はな」
「し、承知しました…」
そこまで怖がらせる気はなかったんだけどな…それより本来の目的を果たそうか…
辺りを見渡し目的の者が今居ない事を確認する。仕方ないから厨房に向かう。
「ぼっち様、厨房に何か御用でしょうか?」
見つけたおばけきのこの八頭身…やめようか。見つけたのは頭がきのこの副料理長だった。良かった目的の人見っけ。
「・・・少し借りるが良いか?」
「ぼっち様が料理を!?」
「良い・・・のか?」
「あ、はい。どうぞお使い下さい」
厨房へ入ると料理人達と厨房外からメイド達の視線が向かってくる…もう気にしない…
「雑煮・・・を知ってるか?」
「ぞうに…ですか?いえ、知りませんが…」
「ならば…覚えてくれるか?」
「勿論です!ではどのような…」
「・・・見てれば分かる・・・」
このきのこはSですか!?ぼっちはぼっちだから喋るの苦手なんです。解説役であるモモンガさんは執務室だし…だから見て覚えてくれ。
ぼっちは鍋を二つ用意して湯を沸かし始める。本当は寒ブリを使ったり、具沢山の雑煮が良かったのだが生憎ぼっちがその材料をもってない。ゆえにシンプルに餅を主とする事にする。
片方の鍋でスルメや鰹節で出汁を取り、途中でほうれん草を入れる。薄口醤油を用いて澄まし仕立てのつゆを作っていく。もうひとつの鍋で餅を茹でて柔らかくなったところで漆器の椀につゆを注いで餅を入れる。他の具財として紅白かまぼこを一枚ずつと三つ葉を乗せる。何か物足りないがこんな物でいいだろう。餅は焼いて入れるのも良いけど数がある時は茹でたほうが楽だし…
「・・・出来た」
「それがぞうになる物ですか…」
珍しそうに雑煮を見る副料理長に大量の餅を渡す。
「昨日守護者達とモモンガさんでついた餅・・・みんなに振舞ってくれ・・・」
「は、はい。畏まりました。さっそくぞうになる物で皆に振舞いますが…」
最後に何か言葉が弱々しくなった…なんだろうと見つめると
「ぼっち様が御作りになられたぞうにはいかが致しましょうか?」
「?・・・食べるか?」
「!!私が!でございますか?」
一瞬そんなに嫌かな?っと思ったんだけどすごく輝く顔を見たら違う事は一発で分かった。
「・・・構わないぞ」
そう言って厨房を後にして行く。後ろで騒ぎが起こっている事はスルーして…
執務室前を通ると八肢の暗殺蟲に連れ出されるアルベドを目撃した…
明日で連続特別編終了ですね。
ちなみに皆さんはどんなお雑煮を食べられましたか?