チェリオはボッチしてまーす!あははは…はは…
では本編をどうぞ
特別編:ぼっちの特別任務
時刻は23:50
ぼっちはたった一人でナザリック大墳墓の外に立っていた。
「・・・・・・楽しかったな・・・」
今日の出来事を思い返す。
パーティーをしようと言い出したモモンガさんとそれを盛り上げようとする守護者達。
今日だけはと言われ仕事を忘れ楽しむプレアデス達。
お酒を飲めないのに飲んで渋い顔をしていたマーレ。
相変わらず口喧嘩を繰り広げるシャルティアとアウラ。
仕事を忘れて楽しめばいいのにぼっちとモモンガさんのことばかり気にしていたデミウルゴスにセバス。
急に変なテンションになり暴走するアルベド。
何も食べれないけれど雰囲気を楽しんでいたモモンガさん。
楽しかった…楽しかったんだ。
今日はぼっちとモモンガがこの世界にとばされてから計算して12月25日。今日行われたパーティーはクリスマスパーティーだ。
まずクリスマスと言うものを説明するのにだいぶ時間がかかってしまった。
時刻23:55
自分の姿を確認する。頭の先から爪先まで赤を基準とした服装。仮面を外した素顔を変えて優しげなおじいさんの顔にしてある。トナカイの代わりの鹿も用意した。
これで何処から見てもサンタクロースだろう。
アウラ曰く、空をも飛べる獣を支配している。
コキュートス曰く、老人にして強靭な肉体を持ち世界中の子供への荷物を運ぶ。
デミウルゴス曰く、索敵・隠密スキルは至高の御方々にも気付かれぬ。
……なぜこうなったし、ぼっちとモモンガさんは皆が知ってる通りの話をしたはずなのに…貰った事があるといったらアインズ・ウール・ゴウンにも気付かれない存在になってるし…
時刻23:58
これからのミッション内容を確認する。
24:00より潜入任務をスタート。目指すは各階層の住居エリア。最終目標モモンガさんの自室まで見つからない事を第一に…
時刻00:00
ぼっちの任務が始まった。
この任務は同じレベル100の隠密系プレイヤーでも不可能に近い任務だった。前に一度ぼっちに突破された事がありデミウルゴスとアルベドが警備体制を一新したのだ。
もちろんこれにはぼっち自身も関わっており、ぼっちが使ったスキル対策も施してある。
しかも今回は縛りプレイに近かった。夜とは言え赤で統一された衣装に前回使ったような高スキルの使用不可など多々な縛りが発生している。前回よりも有利な点と言えば脇にシズを抱えてない事ぐらいである。
まずは第一階層には多数のアンデットが配置してあるのと新たに索敵用トラップが待ち受けていた。索敵用スキルを使えばすぐさま警備に連絡が行われてしまう。何処に何が居るか分からないまま突っ込まなければならないのだ。だが…
「~♪」
ぼっちは鼻歌交じりに駆けて行く。もちろん歌はMGSのメインテーマだ。
何処に配置されているかは分かっていない。だけど問題ないのだ。視界にアンデットが入った瞬間に影を渡り、乱立する柱に隠れられるのだから。
ぼっち専用スキルとでも言える《インパルス》。見てから反応できる反応速度のおかげでそれらの行動を簡単にこなすのだ。何かに気付いたアンデットが振り返ったところで何も居ないのである。確認に来るのであれば死角に入り悠々と後ろを歩いて進むだけ。
楽しいのだ。リアルで得た力だがリアルでもこの世界でも使う事は少なく、埃を被っていた置物と変わらなかった。それがこんなにも発揮できている。楽しくて仕方なかった。
そして第一階層の第二関門にたどり着いた。キャラクターの当たり判定を利用した警備システム。壁よりランダムに照射される光に触れると当たり判定を確認して誰か居るかを判断する。ここに警備の者が居れば誤認してしまう為、ここには誰も居なかった。
ぼっちの前には無数とも言える光が射していた。だが、こんな物なんの役にも立たなかった。
「・・・コントロール・ デシジョン」
コントロール・デシジョンとは己の当たり判定を操るスキルである。当たり判定を任意のままに集めることも出来る。ここまで聞けばチートに聞こえるかも知れないがデメリットは当然ある。
まずはタイミングである。作動させるタイミングには厳格なルールがあり、それを少しでも外すと効果は無効化される。それだけならばまだ良い。失敗したら受けるダメージが倍化されるのだ。あと使える回数が少ない。だから誰も使うことが無いマイナースキルなのであるが、ぼっちの反応速度はそんなルールは破るほうが難しいのだ。
なるべく光に当たらないようにしつつ、当たる時にはスキルで回避していく。傍から見れば踊っているようにも見える。
「・・・他愛なし」
調子に乗って何か口走り始めた。
『誰の許可を得て面をあげる。雑種!』
何か幻聴が聞こえたので真面目に進もうと思う。
ここを抜けたら居住区まですぐだった。
さすがに恐怖公に直に渡すわけにもいかず、扉の前にプレゼントを置いて次ぎへ。
最後の部屋でぼっちは焦っていた。
第二階層に居を構えているシャルティアだった。部屋に入ると寝ていた彼女を発見し、可愛い寝顔を拝見していると目を覚ましたのだ。
「誰でありんすの!?」
辺りを見渡すが誰の姿も無い。立ち上がり近くの机の下などを確認した。
長い間、確認し終えると再びベットに腰を下ろす。
「ぼっち様が御越しになられたかと期待したんでありんすが…」
残念そうな表情をしつつ横になった。それと同時に足音も風も起こさずに天井から降りた。シャルティアの視界に入らぬようにプレゼントを置き、部屋を出て行く…
シャルティアの部屋を出た後は意外と楽だった。第四から第八まで何事もなく進んでいく。途中で見たアウラ・マーレ・ニグレドの寝顔が可愛かったなぁ。デミウルゴスとコキュートスが部屋に居なかったのが気になったが…
最大の難所である第九階層に到着した。
どげんせえちゅうねん…こんな狭い廊下に見張りを配置されたら見つからずなんて無理じゃね?でもぼっちがんばる!良い子の為に!!…この先は骸骨だけだけど…
一通り悩んだ後ぼっちはスキルを使用することを決めた。
「・・・《アイズ・モニタリング》・・・」
《アイズ・モニタリング》は高位索敵魔法の一つで付近に居る者の視界を共有する事が出来る。出来るといってもゲーム時はマップ上に視線の範囲や向きが現れるだけだったが現在は頭の中で複数の映像を見ている感じである。
パチンと指を鳴らすのと同時に壁を駆け出した。もちろん音を消す《サイレント・ムーブ》も使用している。音に気がついた見張りが振り向く。死角である頭上から後ろになっている方に着地する。
「…?」
首を傾げる頃にはぼっちは通り過ぎ、部屋へと近づいていく。部屋の前には見張りが二人がドアの前に立っている。
これは無理だな…どっかの潜入が得意な蛇みたいにダンボールでもあれば何とかなるか?無理だよな、普通。排除しても良いんなら速攻で瞬殺出来るかも知れんけど…よし、ぼっち諦める!暴力駄目、絶対!
「……!?誰だ貴様!」
ぼっちは自分で設定した縛りを無視してそのまま歩いて見張りの前に立っていた。この時気配を消していてはぼっちとばれるのでダミーではあるが気配を出していた。
警戒する見張りの前に小さな箱を差し出した。警戒したまま一人が受け取る。
「も、ゴホン。アインズさ、殿に渡してくれ」
見張りは不審な箱と不審な人物を見ている。
「誰のシモベだ?」
「メ、メリークリスマス」
一言告げると脱兎の如く駆けて行った…
息が続かん!肺が痛い!無理無理無理!!「・・・」の間を空けずに喋るとかこの任務内で一番難しいって!
「おい!そこの者止まれ!!」
まあ、さっきの対応を見れば追って来るよねぇ。ここまですんなり行ったんだから良しとして第二目標をクリアしますか。
第一目標であるアインズの部屋までの任務をクリア(?)したぼっちは第二目標を目指す。第二目標は現在の格好が関係するのだ。ばれないだけなら隠密性の高い装備にすれば良いのだがそれでばれなかった場合は「正体不明の侵入者」が入った事になる。それでは駄目なのだ。この日に格好をした老人がプレゼントを渡した事にならなければクリスマスにならない…と、ぼっちは考えている。別に忍び込まずプレゼント交換でもすればいい話なのだが…
後ろから追いかけているが追いつけず姿は見えなくなった。帰りは見張りが騒ぎ出した以外変わらなかった。って言うか展開速度よりぼっちの突破速度が上回っていたのだ。第十階層で不審な老人の報告を受けた第八階層に多くの見張りが集まる頃にはすでに第七を突破していたのだ。元々内部情報に精通している上に何処を通ったら近道になるかなど暇つぶしで行っているぼっちならではだった…
「まさか本当に存在するとは…ですがここまでです」
もう少しで外に出れるという所で予想だにしない事が起こった。
第一階層入り口にデミウルゴスを始めとしてコキュートスにアウラ、シャルティアが待ち構えていたのだ。
もしもの事を考えていたデミウルゴスはぼっちと入れ違いでシャルティアの元を訪れたのだ。そこで話に聞いたようなプレゼントが置かれており不審に思い、辺りの索敵をアウラに頼んで警備の強化の為コキュートスに来てもらっていたのだ。
中央をコキュートス、左右をシャルティアとデミウルゴスで固めていた。この時ぼっちは絶望を味わっていた。この三人を突破するのにスキル無しで愛刀無しで突破など不可能である事に…
ここでばれれば至高の御方のお茶目なイタズラですむのだろうか?と考えるが否定する。モモンガさんが作ってきた上に立つ者が崩壊する気がした。
『コキュートス曰く、老人にして強靭な肉体を持ち世界中の子供への荷物を運ぶ』
その言葉と共に思った…三人を突破する必要が無い事に
考えがまとまったらコキュートスに対して全力で向かっていった。力勝負でコキュートスを突破すればいいのだ。
しかしそれはそれで問題があるのだ。非力なのだ…巨体に力も強いコキュートスに対しぼっちはスピードタイプ。力はこの世界の住人よりも強いが守護者達ほどではない。戦闘能力は技能と武器による物が大きい為、純粋な力を重視しなかったのだ。
コキュートスとぶつかり合う瞬間、身体を低くして突っ込んだ。先ほどの話は正面からぶつかればの話で今から行う事に関しては問題なかった。相手の力を無力化してやればいいのだ。
手で押す前に膝や肘を曲げ、押す瞬間と共に伸ばす。手の力は前にではなく斜め上に向けて押す。一瞬だがコキュートスの足が宙に浮き、重さだけとなる。その一瞬で自由を失ったコキュートスの脇を抜けた。
「ナンダト!?」
「まさか!?」
驚く二人を余所に追いかけようとするシャルティアにアウラの乗る魔獣の速度は凄まじいものであった。
速度重視とは言え一瞬でも足を止めたぼっちにシャルティア…ましてや魔獣が追いつけぬわけは無かった。
ここで用意したトナカイを使用することにした。
「ケリュネイアの鹿」
今日特別に付けた指輪が輝き黄金の角と青銅の蹄を持つ巨大な雄鹿が現れた。跳び乗ったそれに追従出きる者は無かった。
「なんでありんすかあの鹿は!?」
「あたしに聞かないでよ!あたしだってあんなの知らないわよ!!」
すでに遠く離れた後方で叫び声が上がった。
ぼっちが召喚したケリュネイアの鹿はギリシア神話に登場する巨大な雌鹿で女神アルテミスの聖獣である。五頭居る内一頭は狩猟の神でもあるアルテミスでも捕まえることができなかったと言う。
ユグドラシルイベントの一つ《十二の功業》で入手した召喚獣である。《十二の功業》はヘラクレスの十二の功業を元に作られており三つ目の試練で登場するのだ。
入手するには高い速度&索敵能力を必須とされていたので高い速度・索敵能力を自負していたぼっちは参加したのだ。しかし単独潜入を行う為仲間内にも見せた事の無い物であった。
これがトナカイの代わりである…ちなみに当時のギリシアには角の生えた雄鹿は居なかった為、話の起源がトナカイの居る北方の話ではないかと言う物がある。
次の日の朝
アウラやマーレが部屋に来てサンタから貰ったとマフラーと手袋を見せに来た。最初は不審物として扱う話が出ていたらしいが「受け取っておきなさい」と事情を察したモモンガさんの一言により皆受け取ることにしたのである。一部頭の良い守護者などは疑っていたが…
それでも喜んでくれたのは嬉しかった。来年も行おうかな?と想い始めていた。
ナザリックで一番嬉しそうだったのは肉体付属用スライムを受け取ったモモンガさんだった…
今までのより1000~2000字ほど多くなってしまった…そしてぼっち脳内台詞が少なっ!
次回は前回の後編です。これでカルネ村としばしの別れですね…寂しいな。っていうかマインどうしよう…