骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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第126話 「ドラゴン討伐:①」

 この世を滅ぼしきれる魔獣とアンデット達、そしてクアゴアとドワーフの軍勢を引き連れたアインズとぼっちは進む。約束通りにドワーフの前の都市奪還とフロスト・ドラゴン退治を行う為だ。道中間違えれば死ぬとまで言われた迷宮があったが索敵スキルを使用すれば一発で答えがわかり難なくクリアしてきた。

 

 気が抜けるほど簡単すぎた道のりを越えて、ヨオズと数名をクアゴア達本隊と合流させてこれからアインズとぼっちが行おうとしている事と、彼が見聞きした事を伝えさせる為に分かれて向かわせた。出切ればフロスト・ドラゴンの力を計ることを目的として一度戦いたいので呼び寄せるように指示も持たせた。

 

 ヨオズより話を聞いたクアゴア全八氏族の頂点に立つ統合氏族王であるペ・リユロは半信半疑ではあるがフロスト・ドラゴンの元へと向かっていた。後ろには金銀財宝を乗せた荷車を押すクアゴア達が並んでいる。金銀財宝などの美しい品々を収集したがる種族的な習性を持つ彼らに頼みごとをする為に用意した物だ。勿論満足する量など用意してない。用意出来ないと言うのも正しいが、持っている物を出してももっと寄越せと言われるのなら少なめに出した方が利口だ。

 

 今回ヨオズが言っていた者達の作戦に乗ったのは彼らを信じたからではない。もしも、万に一つでもあの忌々しいドラゴン達を退治して貰えるのなら万々歳。失敗してもこちらの損失は先遣隊のみで本隊は無傷。その上、ドワーフの総戦力のほとんどを失うのだからどちらに転んでも都合が良いのだ。兵力を失ったドワーフを本隊で襲えば、損失はかなり少なく終わる。

 

 ようやく着いたフロスト・ドラゴンが救うエリアに辿り着いたペ・リユロは両膝を地面につけて、頭を地面に擦り付けるように平伏する。そこにはアルゼリア山脈に一族で暮らしているフロスト・ドラゴンの王である白き竜王オラサーダルク=ヘイリリアルを中央に妃であるムンウィニア=イリススリム、キーリストラン=デンシュシュア、ミアナタロン=フヴィネスが囲っていた。めんどくさそうに首を持ち上げたオラサーダルクに自分の考えを悟られないように申し訳なさそうな表情をする。

 

 「何事だ?」

 

 不機嫌そうな声を漏らす声が耳に届き、より一層頭を下げる。

 

 「申し訳ありません!どうか、どうかお力をお貸し頂けれないでしょうか!!」

 

 片目を吊り上げて睨みつけながら、金銀財宝を見て話ぐらいは聞いてやろうかぐらいの心情で話の続きを催促する。

 

 「ドワーフ達に力を貸す者が現れこちらに進軍してきているのです」

 「それで?」

 「我らが本隊は未だ別働隊と戦闘中で、財宝を狙ってドワーフの主力にその者達がこちらに向かってきているのです」

 

 財宝を狙うという一言にピクリと動いた事にしめしめと笑う。もちろん顔は伏せている為に気付かれてない。先に書いたように財宝を収集する種族で、生態系の頂点に君臨するドラゴンのとしても王としてのプライドもあり、自分の財宝を狙うという奴らに対して怒りを覚えている。正直クアゴアなどはどうでも良いがそんな連中を放ってはおけない。

 

 「良いだろう。息子の中から誰かを向かわせよう」

 「え?」

 「なんだ。不満とでも言うのか?」

 「い、いえ!滅相もございません!!」

 

 竜王自ら行くかなと期待していたのがあっさり裏切られ、頭の中ではすでにドワーフの王国を攻める算段を考え始める。出切ればヨオズの先遣隊に所属していたレッドクアゴアとブルークアゴアだけでも回収したいものだ。ヨオズは優秀な奴だが奴まで回収してしまうとドワーフやアンデット達に気付かれてしまうか。

 

 「…それとどこぞ一族が奴らに加担しているようで」

 「貴様の責任だな。どう責任をとるつもりだ?」

 「埋め合わせは必ず」

 「フン…まあ良いだろう。行け」

 

 上手くいったと心の中で微笑みつつ、表情には出さないように踵を返して立ち去る。よほど財宝を狙っていると言う発言に怒っているのか金銀財宝の追加がなかった事は何よりだ。元来た道を戻っている道中でヨオズは口を開いた。

 

 「本隊は動けないとはどういう事なのでしょうか?」

 「ん…ああ、我がクアゴア本隊はアインズ陛下とアルカード伯の部隊とは合流せん」

 「はぁ!?それでは話が違います!!」

 「声がでかい。それと早とちりをするではない」

 「しかし今合流をしないと」

 「合流はしないと言うだけで戦わないとは言ってないだろう。我らは援護する形で背後から攻めると言うのだよ」

 「そういうことでしたか。すみませんでした」

 「構わん。説明をしなかったのは私の失態だ。許せよ」

 

 背後で頭を下げるヨオズを感じつつ、顔すら向けずに歩みを続ける。

 

 「その際に少しでも戦力が欲しい。先遣隊のレッドとブルーを本隊に合流させてくれ」

 「了解しました」

 「ヨオズよ。期待しているぞ…では行って来るがいい」

 「ハッ!!」

 

 列を離れて駆けて行くヨオズを見つめながらこれからの算段をより確かにして行く。

 

 クアゴア達が去った後でオラサーダルクはどうしたものかと悩んでいた。別にドワーフの群れやクアゴアを圧倒した程度の奴らの相手を渋っている訳ではなく、息子のだれに行かせるかと言うものだ。一族は妃が三匹にそこそこ育った子供が七匹、幼い子供が九匹と自分を含めて二十匹居るのだ。幼い子供の狩りの練習にしても良いがそれも面倒そうだ。

 

 「誰を行かせるべきだと思うか?」

 

 決め兼ねたオラサーダルクは妃達に聞いてみる事にした。一番最初に反応したのは第一位階の信仰系魔法を使える賢妃であるキーリストラン=デンシュシュアだった。

 

 「私の子供を送りましょう」

 「お前のか…誰をだ?」

 「一番上の子よ」

 「ヘンジマールか」

 

 誰かを理解して渋い顔をした。ずっと部屋に引き篭もってぶくぶく太った我が息子。すでにヘンジマールには何の期待もしていなかった。そして何故彼女が奴を進めてきたのか理解できなかった。

 

 「あの子はあれでも頭の中身は詰っている。相手がどれ程の者か見分けるだけの事は出来るわ」

 「それで手を貸してる連中を見極めると?それに何か意味があるのか?」

 「クアゴア達より使えそうなら使えばいいじゃない」

 「でも。アレで大丈夫なの?そもそも太りすぎてて飛べるかどうかも分からないのに…他の子の方が良くない?」

 

 不安がったミアナタロンの言葉も、キーリストランの考えも正しく思えてどちらを採用しようかと悩むが面倒だから両方でいく事にする。

 

 「ならば見極めはヘンジマールに、ドワーフやクアゴアの反乱分子の殲滅はトランジェリットに任せよう」

 

 トランジェリットは速度・腕力ともに優れ、息子達の中で一番強いムンウィニアの子である。ただ頭が弱いのが難点だが今回はヘンジマールに指示を任せれば問題ないだろう。キーリストランが言うのだからそれぐらいは出来るだろう。

 

 妃達に名指しした子供を呼びに行くように命じたが、ヘンジマールは引き篭もって出てくる事が無いと断られ、自ら呼びに行く事になるとはオラサーダルクも思わなかった。


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