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今回は前回の話のデミデミ版です。
私はデミウルゴス。
ナザリック地下大墳墓を支配された我らが創造主であらせられる《アインズ・ウール・ゴウン》に仕える者の一人です。
ウルベルト様に創造されてナザリック第7階層の階層守護者およびナザリック防衛時の指揮を任せられている。至高なる御身からこのような大役を任せられたときには天にも昇るような喜びだったよ。
まあ、私は悪魔だけれどもね。
我々にはそれぞれの役目がある。
第一から第三階層を任せられ、階層守護者の中で一番の戦闘力を持つシャルティア。
階層守護者一の防御力を持ち、玉座の間に控えている守護者統括のアルベド。
彼女らと比べれば攻撃力ではシャルティアに負けて防御力ではアルベドに負けてしまうだろう。そんな彼女らを羨んだ事もある。
攻撃力が高ければ一番槍を任され、防御力が高いと言うことは至高なる御身を守ることが出来るのだから。
アルベドに関しては玉座の間にいる事から御方々の近くに居られるのだから羨ましいと言う感情が溢れてしまいそうになる。
守護者の中で一番親しいコキュートスも同じ思いがあったらしい。だから私は言った。
「我々は至高なる御方々に創造された存在。他のものを羨むのではなく自分に与えられたこと、自分に出来ることこそを完璧に実行するほうが私はお役に立てると思うよ」
そう言ってコキュートスにではなく自分に言い聞かせた。
私は悪魔だ。
悪の定義においては至高の御方々の中でも一番であるウルベルト様に創られた存在。ならば、アインズ・ウール・ゴウンの至高なる42人の為に命を捨ててでも尽くさねばならない。
ナザリック以外のものには悪というすべてを持って事に挑もうと…
だが、すでに至高なる存在はお二人のみである。
アインズ・ウール・ゴウンの長であり、死霊魔法を得意として超位魔法まで扱えるモモンガ様
索敵能力や単独行動を最も得意とし、セバスを創造されたワールドチャンピオンでもあるたっち・みー様と唯一互角に渡り合えるぼっち様である。
私を創造されたウルベルト様もお隠れになられた。だが、たとえ戻ってこられなかったとしても我々は尽くさねばならない。最後までお残りいただける至高なる存在に…
今日も担当している第七階層を見回っていると何者かが転移した気配を感じた。
このナザリックでは転移を行えるのはシャルティアが使うゲートか一階層ずつ移動できる物のみ。その二つを除けば他の階層を飛ばしてこられる者はリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを所持していることになる。つまりは仕えるべき主が御越しになったということだろう。
シャルティアの可能性もあったが彼女の場合は彼女が来るのではなく使いの者が来るだろうからね。
あまり急いで行っても見苦しいので急ぎつつ、見苦しくないように気遣った。
御越しになられたのはぼっち様だった。いつもは気配さえ感じることは困難なのだが、今はここに居るぞと言わんばかりに気配を感じることが出来た。
あまり寄り過ぎると失礼にあたるので少し距離をあけて片膝と片手を地に着けて臣下の礼をとった。同時に護衛である者を付けてないことに気付いた。ぼっち様の強さを考えれば必要ないかも知れないがもしもと言う事がある。
「これはぼっち様。お供を連れておられないと言うことは…何か火急の用件でしょうか?」
「・・・・・・・・・」
ぼっち様は白い面をつけているため表情ははっきりしないが右目だけをのぞかせる穴より視線を向けられていることは分かる。
返事を待ったがいっこうに返ってくる気配がない。ぼっち様はこちらを向いたままだ。まるで時でも止まったかのように…
ふと疑問が頭を過ぎった。
なぜ隠密能力に優れたぼっち様の気配を私は感じられたのか?
この御方はアインズ・ウール・ゴウンの中でも謎の多い人物である。至高なる御方々でさえその素顔を見たことなく、会話も口数が少ない為どのような御方なのかも分からない。気配を感じるだけでも異常なのだ。
その上口数が少ないと言っても一言、もしくは頷きなどの反応を返される御方だ。その御方が何の反応もしないのだ…
可能性として私がぼっち様の不興を買ってしまったことだ。自分では完璧にこなしたとしても御方々が駄目だと言ってしまえばそれこそが正しいのだ。それよりも確認を取らねばならぬ。自分が一番に感じた不安を払拭するために…
「ぼっち様いかがなされましたか?もしやお加減でも…」
至高なる御身に何かあるほうが一大事と考えたのだ。
目の前に居られるぼっち様に何かありこの場から消えるようなことがあれば…などと考えると恐怖で心が砕けそうになる。
私は何度も言うが悪魔だ。
悪魔とは知恵を力を使い相手に最大の恐怖を与える存在。逆に言えば与えられることなどないのだ。
失礼と分かっていても抱えてでも魔法が使えるマーレ、もしくはモモンガ様のもとへお連れするべきだろう。たとえその行為で不快だと思われ、死ねと言われれば喜んでこの命を捧げる覚悟はある。
それよりもこの恐怖にあと30秒も耐えられる自信がなかった。立ち上がりすぐに行動に移そうと思った矢先に私の思考が霧散した…
ぼっち様がこちらを向かれたのだ。それだけではなかった。手を伸ばして自ら仮面をとられたのである。
その顔はその長身な御身体に似合わず幼さを強く残すお顔。凛々しさと可愛らしさが交わったようなお顔だけ見るとシャルティアより少し年上くらいの見た目だろう。
嗤った。
笑ったのではなく嗤ったのだ。
世界中の闇を集めたかのような左の黒い瞳。獲物を求めるように赤く輝く右の赤い瞳。口元が緩み、嗤ってくる。背筋が凍った。恐怖を通り越した何かが私を襲っている。
怖い。
至高なる御方にこのような事を思うのは本当に不敬だと思うが怖いのだ。身体中で何かが叫んでいる『逃げろ』と。しかし一歩も動けない。これは指示もなく勝手に動くのは失礼にあたるからなどと理性の行動ではない。言葉通りの意味で動けないのだ。あの瞳に魅せられれば。あの御顔に魅せられれば動けない。動くことすら出来なかった…
瞳に吸い込まれるような感覚に陥っていると、ぼっち様の人差し指が眼前に向けられていた。そして徐々に下へと向かって行き、唇に触れられた…
ぼっち様がゆっくりとそして優しげに口を開かれた。
「なにも 問題は ない」
たったその一言だった。
問題がないはずなどない。現に今もぼっち様は共もつれずお一人。そのうえ気配を曝け出しているという異常。挙げればいくつもあった。
私は指摘する。無礼にあたろうとも進言する。いつもの私ならば…
「な…にも…もんだいは…」
出てきたのは先程のぼっち様のお言葉。何も言葉が出ないのだ。いや、そういう話ではない。気付いたのだ。自分は今この御方にすべてを支配されたのだ。気配で私の身体を覆い、その瞳と言葉を持って私の意識を支配されたのだ。
そのことを確認したと言わんばかりにさっきよりも嗤いながら再び口を開いた。
「なにも 問題はない」
「…なにも問題御座いません…」
もはやその言葉しか出なかった。私はあまりの出来事にその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
気配が消えてぼっち様が居ないことに気付いた。
御方の前で立ち尽くすなど失態だ。拳に力が入る。すると身体の異変に気付いたのだ。
「私が……震えている?」
手が。
身体が。
思考が未だに震えていたのだ。
それに気付くと心だけは歓喜で溢れていた。
私は恐怖は痛みや言葉など様々な事を駆使して行うものと思っていた。それには様々な準備が必要である。拷問を得意とするニューロニストもそうだろう。本当の恐怖を与えるならば相手に合った恐怖を考え実行するだろう。
だが、そんなものは程度の低いものなのだろう。
あの御方は何の下準備もせず最小の言葉と動きを以て私に心の奥底まで最大の恐怖を与えてくださったのだ。
震える。
この歓喜の気持ちは狂喜と呼ばれるものなのだろう。心地いい。私は再認識した。我らが仕える御方々はただ創造した者達ではなく絶対なる支配者なのだと…
そんな思いを他所にぼっちはぼっちで自分の部屋でベッドに腰掛けていた。
寂しい。
今までは思わなかったけどこんな最高級ホテルのような内装は俺に似合ってなくない?しかもそんな部屋に俺一人。
…そんな事よりも何だよアレ。何とかなる!って思って旦那の台詞を口にしてみたけどあっちから見たら「なにを言ってんの?」の一言じゃん!?
あれは理解したんじゃなくてあきれ果ててたんじゃないのか?ああああ思い出しただけでも恥ずかしすぎる!誰か。俺のメモリーからさっきのアレを削除してくれえ。出来るかボケ!出来るんなら思い出のほとんど削除しとるわ!
あれ?おかしいな涙が出ちゃう・・・だってぼっちだもん・・・
『もしもし。ぼっちさん?』
モモンガさんの幻聴まで聞こえてきた。もうだめぽ・・・
『ぼっちさん今何処に居ますか?至急話したいことがあります。玉座の間に来てもらえますか』
「・・・了解・・・」
話した後でいいので俺の記憶を刈り取ってくださいお願いします!モモンガ様ああああああああああああああ!
三話目にしてあまり話が進んでないような気が…
次回も二日後を予定しています。