骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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お久しぶりです。チェリオです。
お気に入りで11も入ってるとは…嬉しかったです。
だいたい2日に一話のペースで投稿しようと思います。


第002話 「終わりの日・始まりの時」

 ナザリック地下大墳墓

 

 スライム種で体がぼろぼろの上に睡魔に襲われていたヘロヘロさんが今この地を去った。

 ため息をつく魔法使いらしい黒いローブを纏ったモモンガが懐かしそうに辺りをみつめる。

 

 (過去の栄光か・・・)

 

 二人で守り抜いてきたユグドラシルは今日終了する。メンバーにメールを打ったがほとんどの者が来ることは無かった。

 ダンッ!!

 怒りを込めて振り下ろした拳と机がぶつかり大きな音を響かせた。はっと我に返り頭を二、三回横に振る。

 

 「いけませんよね。最後の日に…」

 

 ふと目に入ったギルド武器《スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》に手を伸ばした。

 「思えば長い間プレイしてましたよね」

 今までの思い出を振り返りつつ最後のときを迎える為に玉座の間に足を進めた。

 途中見かけたセバスや戦闘メイドプレアデスを最後に働かそうかと思い連れて行くことに

 

 「玉座の間にて待ってますよ……ぼっちさん…」

 

 NPCの誰も反応することなく最後まで残った友への言葉を残して玉座の間の扉の中へと進んで行った。

 

 

 

 「くそっ!罠だったとは…」

 

 モモンガは焦っていた。

 異形種を狩る者達を狩る異形種集団《アインズ・ウール・ゴウン》。まだ人数は少ないがワールドチャンピオンのたっちさんを主軸とし、育ってきたメンバーを含めた戦略で勝利を続けていた。

 いつもと同じように異形種狩りを行う人間種を狩りに来たはずだった。

 囮に奇襲、そしてたっちさんの相手をするワールドチャンピオン級プレイヤーの攻撃により分断され襲われた。

 ガチタンのぶくぶく茶釜さんとペロロンチーノさんは上手くカバーしながら凌いでいる。たっちさんにいたっては押し返していた。

 だが、一人にされた魔法詠唱者が複数のプレイヤーと戦って勝てる気はしなかった。 詠唱する時間は無く、止まれば殺される。逃げるしかない!少しでも敵を引き付けタッチさん達が勝つまでの時間を稼げればもっと良い。

 相手はそんなことを許すはずが無かった…

 

 「ぐぅ…」

 

 追いついた剣士に思いっきり斬りつけられ倒れこむ。

 周りから異形種に対する罵詈雑言が襲ってくる。あとは殺されるのを待つだけ。それが長く感じたそのとき、一人の重戦士が何かを見ていた。

 それはちいさな水溜り。この辺りには湖がある為、フィールドに水溜りがそこらじゅうにある。たまに中からレアモンスターが飛び出すこともある。

 なんにしても一人のプレイヤーが意識を他に移した。だからと言って状況を打破する手立ては無かった。先程の重戦士が消滅するのを見るまでは…

 突如に水溜りと思っていた中から片目だけを覗かせた白い面を付けた者が飛び出してきたのである。次の瞬間には重戦士を斬り捨てていた。他のメンバーはこの奇襲に動くことなくたった一人に殲滅された。

 

 「あ、ありがとうございます!」

 

 ただ一瞥するだけで返事は無かった。返事が無くても感謝の気持ちだけは伝えたかった。ゆっくりと去ろうとした彼を呼び止める。

 

 「待ってください!せめてお名前を…」

 

 コートを風でなびかせながら彼は口を開いた。

 

 「・・・ぼっち・・・・・・元《無口の英雄》・・・ぼっちだ・・・」

 

 そう呟くと颯爽と駆け出し、他の人間種プレイヤーを次々と倒していった。見も知らない私達を救うためだけに…

 

 

 

 ぼっちは地面につきそうな真っ赤なコートと腰まで長い黒髪をなびかせながら全速力で移動していた。

 くそう!なんでこうなるんですか。あのときの俺は何を考えているんだか。口下手なのもあり、一言もしゃべらない間に負けて出てきたのが何が「・・・狩ってくる・・・」だよ。おかげで終了時間30秒前だよチクショウメー!

 走馬灯のように昔の思い出がよみがえってくる。

 モモンガさんと出会ったとき勘違いして敵に斬りかかり助けれたのは良かったと思った。け・れ・ど・も!なんだよ「元《無口の英雄》・・・ぼっちだ・・・」だよ!だれがかっこつけろって言ったよ。それ以前に上手くしゃべれていたかも怪しいし、格好をつけてもいいのはイケメンだけで俺は断じて否!いや、この創った顔はイケメンとは言わないかも知れないが格好良い出来だと思う。

 あまりの恥ずかしさに走り出して他の人間種に八つ当たり。結果、俺は助けてくれた恩人扱い。誤解を解こうとしたんだよ。言うタイミングがあの時かき消されてって、なに思い出しているんだ俺は!

 ふと指輪が目に入り10秒前になって転移が使えたことを思い出した。遅いわ。やっぱり俺に足りないのは……速さだ!いや、コミュ力か?ってそんなことはどうでも良いとりあえずモモンガさんのもとへ

 ぼっちは指輪の力を発動させたと同時に姿をかき消した。

 

 

ナザリック第7階層「溶岩」

 

 そこらかしこで火が噴出し、溶岩が姿を見せる。ここはナザリックの防衛時の指揮を執る悪魔が住まう階層である。プログラムで創られ熱など感じることなど無いのに、すごく熱く感じるのは創り上げた者達の技術なのだろう。しかし、今はそんな熱さではなく絶望に襲われていた。

 

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 この主人公がモモンガなら異変に気付き何かしら行動を起こすのだろうが主人公であるぼっちは背筋をピンと張ったまま固まっていた…

 

 アイエエエエエエエ、ジカンナンデェ!?

 そして転移する場所間違えたあああ。玉座の間に行こうとしたのに……時間はもう過ぎサーバーは落ちる。諸君らが愛したユグドラシルが死んだ。何故だ!

 『坊やだからさ…』

 なんか幻聴まで聞こえてきやがった。ごめんなさいモモンガさん。間に合わなかった俺を許してください。あ、なんか涙でそう………

 なんか視界の隅で近づいてくる者が見える…

 

 「これはぼっち様。お供を連れておられないと言うことは…何か火急の用件でしょうか?」

 

 さすがナザリック防衛時の指揮官だ。悪魔でありながら礼儀正しく柔和に話しかけてきた。リアルでこんな人(?)がいればどんなに……あれ?何で動いてるの?それにしゃ、しゃ、しゃっべったああああ!おおおおおお落ち着け俺。まだ慌てるようなじか……時間が過ぎてる!ログアウトできない!いやそれはそれで嬉しいんだけど。

 

 一歩も動かずこの階層の主であるデミウルゴスを観察する。やはり口や表情、三つ揃えのスーツも動作するたびに少しではあるが動いている。にしてもデミウルゴスは本当にスーツが似合うなあ。まさに出来るエリートとでも言うのかさすがウルさん。良い仕事してますねえ。

 

 「ぼっち様いかがなされましたか?もしやお加減でも・・・」

 

 やっべ、観察に夢中になりすぎて話しかけられていたの全無視してもうた。どげんしよう!じゃなくて何とか対応しろ俺!今までこのナザリックで培ってきた交渉術を発揮するは今ぞ。

 

 「索敵お願いしてもいいですか?」

 「・・・・・・(コクリ)」

 

 「さすがぼっちさん。腕は衰えてませんね」

 「・・・毎日やっているからな・・・」

 

 「…誰か一人でも来てくれますかね?」 

 「・・・・・・・・・来るさ・・・」

 

 駄目だ……オワタ。誰だ俺にコミュ力を期待したのは。そんな力があるんなら何とかしとるわ!って、デミウルゴスが本気で心配しとる。そうだ。こんなときこそ旦那の力をお借りしよう!

 

 説明しよう!旦那とはぼっちがお気に入りの漫画の主人公なのであーる。最強の吸血鬼で主人公と言うよりどう考えてもラスボスだろう!?と、誰でも思わず突っ込んでしまうようなキャラクターである。

 ぼっちは異形種になる際は吸血鬼を選ぼうと思っていたが隠密行動に向いている現在の変身型のスライム種を取るしかなかった。逃げるために……だからこそあの大会での景品を武器や防具ではなく吸血鬼にもなれる魔眼《ヴァンパイヤ・アイ》を頼んだのである。決して逃げるために吸血鬼スキルがほしかったわけではない。まあ、欲しくないと言ったら嘘になるが。ともかくその旦那に憧れて服装も似ているような地面につきそうな赤いコートを着て、髪も旦那を意識した。顔は旦那より執事君の若かりし頃の顔をモデルにしているのだが・・・

 

 オラに力を分けてくれえええ。と旦那に願いながらデミウルゴスに向き直る。

 ふと、白い面を付けたままでは無礼になるのかなあ?と思い面を外すとデミウルゴスが目を見開いた。何でそんなに目を見開くのおおお。あ、なんか目がキラキラして綺麗だな・・・。

 じゃなくて俺、変な顔してないよね?昔からポーカーフェイスで表情が読め取れないってよく言われるけど。こんなときこそ自然な笑顔で。なんかずっと見つめられると恥ずかしいな……そうだ!どっかの伝説のバスケプレイヤーが自分から視線をずらす技法をしてたな。たしかミスディ…なんだっけ?

 

 人差し指を伸ばしてデミの目の前に持っていくと予想通りに視線が指先に向かっていく。

 肌質ってどうなってんだろうと思いそのまま下へずらしていき、唇に人差し指が優しく触れる。

 

 ・・・・・・・・・なにやっとんじゃ俺は・・・・・・

 何とかせねばと悩むと旦那が助け舟を出してくれた気がした。それも童話で聞く泥舟ではなく大きな空母のような船である。落ちていて優しく言えば大丈夫だ。

 

 「なにも 問題は ない」

 

 これで正解のはずだ。さあ、デミウルゴスはどう反応してくれる!?

 

 「な…にも…もんだいは…」

 

 続けて喋ってくれてる!あのシーンを再現してるかのように…。ならば俺は言葉を続けるだけだ。

 

 「なにも 問題はない」

 「…なにも問題御座いません…」

 

 デミウルゴスはそのまま声をかけられた時のぼっちのように固まっている。

 大丈夫だよな?なんとなく納得はしてくれたっぽいし(?)、とりあえず部屋に戻ろう。

 ぼっちは目的地を目指して歩き出した。小刻みに震えているデミウルゴスをその場に残し…




やっと主人公が喋ったと思ったら即終了…
文章短すぎるかなあ…

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