骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 前回のあらすじ
 ぼっちが王国から戻って来る間にバーベキューの用意をするナザリックの守護者とアインズ。
 モミがアインズの労を労おうとドラム缶のお風呂をしてあげたよ。


第108話 「バーベキューしようか」

 王都に一時戻ったぼっちは猛ダッシュでナザリック(偽)に到着した。

 ナザリックでの話し合いでどうなったか気になっていたらしく王族と貴族全員が玉座の間で待機していた。ラナーが軽く説明した結果、ほとんどの者が青ざめた表情をして諦めの言葉を口々にしていた。

 まだ戦ってないと言うに諦めるとはどういう事なんだろうとぼっちは思ったが王国と帝国の戦いを理解している者から見れば当然である。

 毎年行なわれるカッツェ平野での戦争では王国20万と帝国4万もの兵が戦いあって帝国を撃退しているのだ。

 防衛線としては防衛しきれているのだから勝利しているのだがたった4万の兵を20万の兵を用いて撤退させるのだやっとなのだ。帝国兵は騎士として訓練を受けて冒険者銀相当で士気も技量も高い。対して王国兵は多くともその大半が領地から無理やり連れて来られた領民であり士気も技量も低い。それだけでなく王国の兵士と言ってもガゼフのように王国に忠を尽くす者から自分の利益大事の貴族の私兵と軍としても完全には指揮系統も取れていない。

 すでに帝国は王国に勝つことなど考えてなく、年々死んで行く領民には農業などに携わる者が多く、勝たなくとも食糧難から暴動などが起こり勝手に自爆するだろうと攻めては引く戦法に変えている。

 そんな帝国が本気で騎士を集めた場合、王国が勝てるかどうかは怪しい。同盟国の事を考えれば当然本気で攻めて来るだろう。

 不思議そうにするぼっちにラナーが今までの戦争を教えると王に進言した。

 

 「私ならば勝って見せましょう。防衛線ではなく野戦のご許可を頂ければ勝利をお約束致します」

 

 本人は『俺が突入すれば勝てるよ』と言ったつもりだがぼっちに敵対している貴族派閥は馬鹿にしていると捉えて却下するようにと怒鳴り散らしていた。最終的には王が諌めて会議は終了。後は用事があると言う事で飛び出し、見られてない事をスキルなどで確認しながら走ってきたのだ。

 あ!忘れかけていたけど会議が終わった直後にリットン伯爵が必死に謝ってきたのだが何のことか分からない上に仲間にして欲しいと言ってきた時は混乱したな。とりあえず了承したら泣き出しながら喜んでいたんだけど何故に?あと、話を聞いていたラナーがこちらに微笑みを向けてからリットン伯と話してたんだけどどういう意味があったんだろう?

 

 到着したぼっちはコキュートスとアウラが狩って来た動物を捌いて、アルベドとマーレが切った野菜と共に焼き始める。

 肉の焼ける音に熱を持ち甘みを持ったであろう野菜がおいしそうに焼けてくる。皆嬉しそうに食べて行く。

 コキュートスの食べ方が可愛いんだけど。キャベツの葉をモキュモキュと口を動かして少しずつ千切っては口の奥へと消えて行く。

 

 「ぼっち様」

 「・・・ん」

 「僭越ながら焼くのをお代わり致しましょうか?」

 「・・・いや、代わらなくていい」

 「しかしぼっち様は食べられないのでは?」

 「・・・そんな事は」

 

 気遣って声をかけたデミウルゴスと焼く事に集中しているぼっちの間に肉が突き出される。

 

 「ぼっち様。あーん」

 「・・・あーん」

 

 頬を緩ませ顔を赤らめたシャルティアは差し出した肉をぼっちが食すのを嬉しそうに見つめていた。羨ましそうに見つめるアウラとマーレだったが今日は何も言わない。モミがふふんと鼻を鳴らして笑っていることからモミがアインズと二人っきりになる為に話した内容だったのだろう。アウラは膝枕の話があった為に言わなかったがマーレは最初は文句を言おうと思ったがまた次の機会に何か頼んであげるからと言われ言葉を飲み込んだ。

 

 「アッチモコッチモ仲ガイイナ」

 「そうだね。近寄り難いほどにね」

 

 振り返った先ではぼっちとシャルティアのように食べさせっこをしているアインズとアルベドが居た。二人とも真っ赤で嬉しそうな顔をしている。

 二人空間×2を見つめながらも食事は進む。

 

 「あら?もうありませんね」

 

 アルベドの前に置いていた網の上には野菜も肉もなくなっていた。焼く前の材料も無くもう食べさせあいっこが出来ないと残念そうに俯く。何とか笑顔にしようと声をかけようとしたら横から野菜や肉を乗せた皿を差し出される。

 

 「あぁ…ありがとうございますぼっちさ……ん!?」

 

 あんぐりと口を開く眼前には肌の色から装備品まで全てが白一色のぼっちが立っていた。驚きの声を上げたことで皆も同じように見つめ同じく驚く。シャルティアだけ肉を焼いているカラー付きぼっちと真っ白ぼっちを交互に見返す。

 

 「え、え、エインヘリヤルうううう!?」

 

 シャルティアも使えるスキルで使用した本人と遜色無い分身を創り上げるもので物理攻撃しか出来ないがレベル100が一気に二体になる事は脅威である。原作ではアインズも焦ったほどだ。

 それが調理をこなして手渡してきた。驚かないわけが無い。

 

 「・・・どした?」

 「どしたじゃないですよ!!何してるんですか!?いや、何をさせているんですか!!」

 「・・・?」

 「首傾げない!!エインヘリヤルも首を傾げない!!」

 「まぁ、まぁ落ち着いてってか落ち着け」

 「最後命令形になっていなかったかしら?」

 

 慌てながら大声をあげる王の態度ではなかったアインズを静めようと間に入ったのだがアルベドが殺気だった。やべっ、っと呟きながらも表情はにへらにへら笑っていた。

 

 「…キキマチガイジャナイカナー」

 「棒読みで言っても説得力無いわよ」

 「これでも飲んで落ち着きなよー♪」

 「お茶ぐらいで…変わった味ね」

 

 説教を行なおうとしたアルベドが差し出されたお茶を口に含むと疑問符を浮かべる。

 

 「ちょっとだし汁でお茶を入れてみようと思ってね」

 「出汁を使ったお茶って無いんじゃないの?」

 「…はっはっはっ。面白そうだったから」

 「「おもしろそう?」」

 「ハッ!?違った。美味しそうだったから!!」

 

 言葉に違和感を感じながらモミを見つめた時にあるものがアインズの目に止まった。

 茶葉が置いてある机の近くに置かれたドラム缶…

 

 「私の出汁じゃないか!?」

 「あああああああ、アインズ様の!!」

 「何故にばれたし?」

 「ばれない訳無いだろう!!」

 「モミ!!残りのお湯は私にくれない?」

 

 鼻息荒くモミに詰め寄るアルベドを止めるのかと思われたデミウルゴスも参戦してアインズの出し汁争奪戦が始まった。

 

 「まったく何をしているでありんすか」

 「二人トモ至高ノ御方々ノ前デアルゾ」

 「もっとやれー」

 「煽るな!!」

 「ギャップラン!!」

 

 止めに行くコキュートスとシャルティアは途中煽っているモミに一撃を入れて吹っ飛ばしてから仲裁に入る。少し遅れてマーレも中に入って行く。

 ひとりぼっちになったぼっちは焼くかどうするか悩んでいるとこちらをチラチラと見ているアウラと目が合った。到着した時にモミが『このナザリック(偽)を完成させたアウラはご褒美として膝枕を所望してるよ』と言っていたのを思い出して、長椅子に腰を降ろしてアウラに向かって太ももを叩く。意味を理解したアウラは嬉しそうに駆け寄ってきた。

 

 「良いんですか♪」

 「・・・(コクン)」

 

 ルンルン気分で膝に頭を降ろして緊張と嬉しさのあまり震えていた。うっとりとした笑顔を浮かべているのが本当に幸せそうなアウラの頭を優しく撫でる。

 髪を掻き揚げたところで長い耳に目が行った。指先を耳かき状に変化させてゆっくりと耳に入れていく。

 

 「ひゃうん!?な、なんですか?」

 「すまない・・・気になった・・・嫌か?」

 「全然!むしろ嬉しいです♪」

 

 また笑顔を向けてくる事に喜び痛くないように優しく丁寧に耳を掻いていく。気持ち良さそうにしているのは良いのだが耳の中は綺麗で定期的に自分でしていたのだろう。これではぼっちのやることは無い。

 と、言う事で…

 

 「・・・あむ・・・ちゅる・・・」

 「ふぁあああああ///」

 

 何の躊躇いも無く耳を甘噛をして舌で耳の中を舐められ声を上げてしまった。何が行なわれたか理解が及ばず目をグルグル回してぼっちを見つめる。

 

 「え、あ、え?い、今何を///」

 「?・・・耳舐めだが」

 「舐め!?私の耳を舐められたのですか///」

 「耳かきでは・・・最後に行なうと聞いたが」

 「そ、そうなのですか?」

 「続けるが・・・良いか?」

 「は、はい!!よ、宜しくお願いします///」

 「・・・はむ。ちゅるちゅる」

 「ふぁああ。はうん///」

 

 喘ぎ声にもにた熱を持った声を聞きながら丁寧に舐め取って行く。

 甘?したときの反応なんて可愛らしい…あれ?なんかロリコンぽくないか俺。いやいやいや、そんな馬鹿な。

 ナザリックで一番良く遊んだり一緒に居る女性キャラはアウラにシャルティアにエントマにモミ…あんれ?

 王国などの人間ではマインにラナー…

 …10歳以上歳の離れた者ばかり…ロリコンは置いておくとしても年下ばっかりじゃないか?男では…マーレか…それではショタコンみたいだなぁ…

 と、思い悩んでいたら皆の視線が集まってきた。いつの間にか争奪戦は終了していたらしい。

 

 「なにをしているんですかぼっちさん」

 「耳舐め・・・耳かきの後にする・・・仕上げ」

 

 当たり前のよう答えるとモミが爆笑しながら転げまわる。

 

 「あひゃひゃひゃひゃ、冗談で言ったのにまさか実際に行なうなんて。うひゃひゃひゃひゃひゃくしきいい!?」

 

 至高の御方を騙したと判断したデミウルゴスが思いっきり蹴飛ばし、モミは木々の合間へと消えて行った。嘘と知ったぼっちは赤面するが仮面を被っている事で誰にもばれずに…ってこの仮面そればっかのような。

 材料をきらした白ぼっちは消失してその場から消える。これで仕舞いだと感じた。

 

 「皆、良く食べたか?」

 「はい!私はいっぱい食べましたわ///」

 「た、楽しかったですね」

 「ええ。またしたいですね」

 「ボッチ様。今度ハリザードマンノ集落デ行ナイマセンカ?」

 「何、自分の担当箇所を出しているでありんすか!!」

 

 がやがやと騒ぐ皆を見て微笑む。

 現実の世界ではこんな事なかったし…

 

 

 

 ―勝手にすれば良い。私は――のように叱ることはない。お前には何一つ期待もしていない―

 

 

 

 「ぼっち様?」

 

 ある事を思い出してボーとしていたぼっちをシャルティアの声で呼び戻される。

 

 「・・・なんだ?」

 「ぼっち様やアインズ様のお誕生日などにパーティーなどは如何でしょうか?」

 「…誕生日」

 

 やべぇ…余計に思い出が…

 全員賛成のようで頷きつつ腕時計に日付を設定する。

 

 『時間を設定したよ。ぼっちさん』

 

 良い声してるよな茶釜さん。しかし、何故モモンガさんは『モモンガお兄ちゃん』で俺は『ぼっちさん』なのだろうか?もしかして嫌われていたのか!?

 ただ話したことが少なくて馴れ馴れしくして良いのか不安だった為にさん付けだっただけである。

 突然聞こえたぶくぶく茶釜さんの声に皆が反応して驚いたが説明すると歓声をあげつつ見つめられる。それがバーベキューのお開きとなりナザリックへ(ぼっちは王都へ走って向かう)帰っていった。

 ちなみにアインズの出し汁は第11階層の仕事を数十日間請け負うと言い出したアルベドが3分の2を得て、残りをデミウルゴスにアルベドの半分で売った。




ぼっち 「俺が行けば勝てるっしょ」
貴族派閥「調子に乗り負って!!」
リットン「これまでの事を謝りますんで仲間にしてください」
ぼっち 「あ、はい」


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