骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 本編でドワーフの国に行くメンバー二人を考えているのですが、もし避ければ活動報告でお答え頂けたらなぁと思っています。
 よろしくお願いします。


外伝10話 「異世界のモンスターと人間」

 緑多き森に険しい山脈、広大な草原…

 白馬に白い翼が生えたペガサスに乗って上空より辺りを見渡すと現実からも『ヴァイス城』が建っていた地形とも異なっていた。

 異常事態だ…

 いつも間にかアバターの姿のまま異世界に転生なんて誰も信じないだろうし俺だって信じ難い。これからの不安に恐怖により冷静な判断が出来なくなった俺達はすべての判断を仰ぐことにした。

 ちらりと後方をグリフィンに乗っている苛立っているミイに視線を向けて深くため息を付いた。

 こんな状況下でも冷静な判断を行なえたのはプロフェッサーが作ったぼっちだった。外見はプロフェッサー一人で作ったが設定はぼっちさんを知る皆(ミイ以外)が書き込んだ為にそれを模範として行動している。

 『どんな時でも臆することも慌てることもなく判断できる』

 彼が指示したのは三つだ。まず最初に『ヴァイス城』の異変がないかや防衛能力に変化がないかの確認。魔法やスキルが使用出来ることが解ったのでそれがこの世界でどのように作用するか。最後に周辺の情報収集。

 情報収集と言われてまず真っ先に名乗りを上げたのは索敵班長でもあるミイだった。自分が向いていると言う事もあるのだろうが一番はNPCぼっちを毛嫌いしているからだろう。

 今回の情報収集班はスレインに皐月、ミイ、エスデス、スサノオ、ビオの六名である。クロノはぼっちとこれからの相談でみのりこはお手伝い兼もしもの時の為の防衛陣営として待機。プロフェッサーはNPCのゴーレムや『ヴァイス城』の仕掛け、スキル・魔法のテストなどを行なっている。

 

 「んー…あれは村かにゃ?」

 

 索敵値が高いミイは普通に見えているのだがそこまで索敵値は高くない他のメンバーは目を凝らして見るしかない。通常の人間だったら豆粒にしか見えないがアバターの身体になって肉体能力が異常なほど上がって認識できる程度まで上がった。

 

 「村ですね…しかもかなり昔の生活みたいですね」

 「木で出来た小屋に貧弱そうな柵だな」

 

 小屋みたいな家が15軒に小さな畑が3ヵ所、中央には井戸があってそれら全体を1メートルもない柵が囲っている。村人らしい人々が入り口で何かを…

 

 「あれってもしかしt…」

 「いけない!!」

 

 視界に映った光景に頭より先に身体が先に動いていた。ペガサスの手綱を操り村に向かって急降下させながら速度を上げて行った。

 近付くにつれて遠めでも吐き気がする光景がはっきりと見えてきた。

 村の入り口に人が集まっていたのはゴブリン達が村を襲っていたからだ。中にはオークやオーガも混ざっていた。何の躊躇いもなくペガサスから跳び下りてちょうど真ん中辺りに着地する。

 静止した。

 空から人が振ってきただけでも彼らにとっては驚きなのにスレインの装備も異常そのものだった。

 この世界で金属などはまだなくあるのは木を使ったものが主流で鉄で輝かしいばかりの鎧など存在もしなかった。

 

 「美しい…」

 

 そんな声が漏れたのを気にも留めずにスレインは木の棒で必死の抵抗を行なっていた村人達を守るように立ち上がった。2メートルもの白銀タワーシールドと片手剣というよりはクレイモアに近い大きい剣を構える。

 最初に動いたのはオークだった。大きな木の棍棒を振り上げて襲い掛かってくるが盾に傷をつける事も出来ずに跳ね返されてバランスを崩してしまう。

 人間がオークとの力比べで勝るなんてありえないと言わんばかりにゴブリンも村人も唖然としていた。それよりも唖然としていたのはスレイン本人だ。まさかアレだけの巨体を持つ生物の攻撃を力を込める事無く跳ね返した事が信じられなかった。けれど…

 

 「これなら行ける!!」

 

 盾を構えたまま突っ込んだ。瞬間的な加速が生まれてぶつかったゴブリン6体はまるでトラックにでも撥ねられたかのように吹き飛んだ。

 あまりの強さに怯むが敵は一人に対して20体以上居るゴブリン達は引くことはなかった。

 

 「あれだけの力の差を見せ付けられて引かないとは大したものだな」

 

 いつの間にかペガサスと共に地面に降り立ったエスデスがスレインと反対側のゴブリン達の背後に立っていた。

 

 「エスデス!ゲームと同じように戦えるぞ。相手のレベルは10前後だ」

 「なんだ…相手をする気もなくなった。あの馬鹿にでも任せるか」

 

 先ほどまで不敵な笑みを浮かべていたがレベルを聞いてがっかりしたかため息を付きつつ肩を落としていた。そしてエスデスが言った馬鹿が降って来た。

 

 「ヌンッ!!」

 

 ゴブリンの中央に大剣を叩きつけるように着地して大きなクレーターを作ったスサノオは反動で宙に浮いたゴブリンを横薙ぎ一線で切り払った。辺りにはむせ返るような血の臭いと二つに分かれたゴブリンのパーツが散らばった。

 無表情で大剣の血をふき取るスサノオに対して苦笑するしかなかった。

 

 「オオオオ!!」

 

 一瞬にしてゴブリンを殲滅されたオーク・オーガ合計八体は踵を返して逃走を開始した。

 

 「ああ…そっちは」

 「終わったな」

 

 二人呟いたオークとオーガの先にはレイピアを抜く事無くつまらなそうに眺めてるエスデスが突っ立っていた。何としてもここから逃げて生きる為に武器を振るって排除しようと走りながら木の棍棒を振り上げる。

 

 「《アースフロスト・レベル4》」

 

 振り下ろそうとした棍棒が凍りついた。棍棒だけではなくエスデスを中心とした範囲50メートル内のものすべてが凍り付いていた。大地もオークもオーガもすべてが。

 

 「はぁ…つまらん」

 「きゃああああ!!」

 

 寒さで白くなった吐息を吐きながら呟いた一言を隠すように村の中から悲鳴があがる。村の中では子供の服を銜えて引き摺っていこうとする狼よりも一回り大きいヴァルグ三頭とビオ・ミイ・皐月が立っていた。子供の母親らしい女性を他の女性達が止めている。皆狼を見ているようでビオを怖がっているようだった。

 

 「そういえば真昼間から吸血鬼が歩いているって伝承的にどうなんだろうな?」

 「…普通は灰になる」

 「灰になろうが蘇えりそうだがな」

 「聞こえているぞガキ共!!」

 

 叫んだことでより一層周りの人は怯えて、狼は警戒する。

 

 「あれってヴァルグじゃない?」

 「そうにゃね。レベル…11だって」

 「魔狼か。飼ってみるか?」

 「狼って飼えるんですか?」

 「論外にゃ。猫としては却下にゃ」

 

 余裕たっぷりに喋っている様子を隙だと思ったのか子供を咥えてない二匹が飛び掛る。が、羽虫でも払うかのように片手で払い除けると頭から地面に叩き込まれ首から下が地面に埋まってピクリとも動かなくなった。

 

 「さぁて、あとはお前だけだな」

 

 ゆっくりと近付くビオに恐れをなして腹を見せて降伏のポーズを取る。まるで子犬のように鳴こうが関係なく腹を踏みつけた。それでも助けを請うように鳴くが足の力は弱まるどころか強くなっていった。

 

 「俺は犬が嫌いだ!怖いんじゃあない。人間にへーこらする態度に虫酸が走るのだ!!」

 

 あっけなく踏み潰してそのまま服を咥えられていた少年に近付く。泣きじゃくる子供の首根っこを掴み目線を合わせる。

 

 「喚くなクソガキ。泣く暇があるならもっと強くなれ!こんなカスに遅れをとるようじゃ生き残れんぞ!!」

 

 言いたい事を言うとフンと鼻を鳴らして母親だろう女性に手渡しした。

 

 「大きくなるまで護るのが親の役目だろうが!!せめて独り立ちできるぐらいまでは守ってやれ!!」

 

 怒鳴り上げるビオに母親は泣きながらありがとうと感謝の言葉を連呼していた。また鼻を鳴らしながらそっぽを向くビオの様子をエスデスとスサノオがにやにやと笑っていた。微笑を返したビオは猛ダッシュで二人に襲い掛かった。二人は謝りながら必死に逃げていく。

 まぁ、それは置いといてこちらはこちらで行なう事を行なおう。

 

 「この辺りの索敵を頼めるかなミイ」

 「りょ~かいにゃ!」

 「皐月は負傷者の治療を」

 「ええ、分かったわ」

 「守りは…あの三人がほっといてもやってくれそうだな…」

 

 索敵と治療を始めた二人は良いとしても攻撃系が何もしてない。防衛戦力としてもさっきの連中で考えると過剰である。

 

 「でも、さっきのが平均とは限らないか」

 

 もしかしたら彼らは弱いレベルの集団でほんとうは50台のモンスターが普通だったり格上が基本だったりするかも知れない。気を敷き締めてやることをやらなければ。

 そんなスレインに一人の老人が近付いてきた。他の村人と比べて多少服の装飾が豪華な事から代表者か何かだろう。

 

 「あ、貴方方はいったい?」

 「私達はソルブレイブス。通りすがりの…正義の味方…ですかね」

 

 言ってて恥かしい言葉だがこれ以上何も思い浮かばなかったのでそのまま口にしてしまった。「はぁ…」と返事する老人に笑いかけながらこれからどうするか悩む。

 

 「なるようにしかならないんだけどな」

 

 そう思うほかスレインはなかった…

 


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