モモンガ様迷惑を受ける   作:大きな像の金槌

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11話。エ・ランテルの続き。


11.1エ・ランテル

投げられた死の宝珠は自分の強制力を突破し投げ飛ばした者を思う。

 

あの存在を支配できていれば確実にわが望みは進んだだろうにと。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

カルネ村での薬草採集の依頼を終え、漆黒の剣とモモンさんチームがエ・ランテルへ戻ってきたころ。

 

冒険者組合と、ン・フィーレアの店への分かれ道に差し掛かったときに矢先に、

 

ヒュ~、トガ゙ン。

 

石?が飛んできた。

 

 

 

「街中に、何が降ってきたんだ?」

 

この世界では隕石が降ってくることはよくあることだろうか?

 

本当に隕石が目の前に落ちるってどれだけ低い確率だよ。

 

アインズはそう思ったが、黒の漆黒のメンバーは何が落ちて来たんだろうと、それに近づこうとしていた。

 

 

そこへローブ姿の老人が空から飛んできて、落ちたそれを拾う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、ここにあったか。なんとか回収でき・・・・」

死の宝珠にひびが入っており、黒い霧が漏れていた。

 

その黒い霧がカジットを包み込むように溶け込んでいく。

 

なんなんだ、これは一体どうしたというのだ。・・・・カジットは感づく。いや理解する。

 

 

 

これが死の宝珠の本当の力なのだと。その瞬間カジットの存在は消えた・・・・・

 

 

 

カジットの身体が大きく膨れ上がり、身体から黒い液体がこぼれ出る。

その黒い液体が、身体の周りで固まり、フルプレートが造られた。

 

その瞬間

 

 

 

死の騎士(デスナイト)が生まれた。

 

 

 

 

 

 

「この世に存在する下等生物どもよ。

我が名を聞くがよい。

我は死の宝珠。

この世に死を振りまく存在だ。」

 

 

 

頭の奥に響くように、恐ろしい声がエ・ランテル全土に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漆黒の剣や、落下音を聞いて外に出てきた町民、冒険者も寄ってきていた。

 

その恐ろしい声を感じ、逃げることすらできないでいる。

 

あまりにも恐ろしい声に、あまりのも恐ろしいアンデットの姿に皆震えている。

 

 

 

 

ミスリルクラス冒険者であるクラルグラも近くにいたのだが、動くことが出来なかった・・・・

 

 

 

 

クラルグラにとって不幸だったのは、

カジットの知識を

現代の冒険者の仕組みを死の宝珠が得たということだ。

 

クラスの高いプレートを身に着けているということは、この世界では実力を示すことにつながっている。

周囲には・・・・・・・彼ら以上のプレートを持っている者はいない。

 

1人かなり立派なフルプレートを身に着けた者が、所詮は銅プレート。大したことはあるまい。

 

 

 

カジットを取り込んだ今でも勿体ないと思う。私、死の宝珠を投げた存在を媒介に出来ればと思う。

あれほどの力を持つ人間であれば、より高位のアンデットとなることができたであろうに。

 

死の宝珠の本来の能力であり、目的であった。

lvの高い存在を取り込み、高位のアンデットとなることが死の宝珠の望みであった。

 

いつの頃から存在しているのかは、もはや覚えていない。

 

これまでずっと力の弱いものを取り込み、その能力を上げてきていた。

 

幾多ものアンデットの姿をとり、媒介となった存在の知識を取り込み、魔力を力を上げていった。

 

 

そのたびに、力を取り込む存在を手に入れるために宝珠の形をとり相手に寄生していったのだ。

だからこそ惜しいと思う。

我、死の宝珠を投げ飛ばしたあの者を取り込むことが出来れば、どれほどの存在になれたか見当もつかない。

 

 

だが、過ぎたことは仕方がないと思う。

 

時間は無限にあるのだ。

 

この街に死を振りまいたのちに、また媒介を探せばよいのだと。

 

いや、あれを取り込むために墓地に戻り探せば良いだけだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラルグラがチームリーダー、イグヴァルジが叫ぶ。

「全員、距離を取れっ。相手はアンデットだ。銀武器を用意し、かかれっ」

 

力の差が分からなかったのも無理は無いだろう。

 

むしろ動くことができたことを褒めるべきなのだ。

 

確かに銀武器であれば、ダメージを与えることは出来た。だが、基礎となる能力が違い過ぎたのだ。

 

フランベルジュの一刀のもと、更なる2撃目を受け、クラルグラのメンバーが上半身と下半身が別れてしまった。

 

 

 

 

 

ミスリルプレートの冒険者が殺されたことで、ようやく周囲の人間は逃げ出した。いや、逃げ出そうとした。

 

 

 

 

だが、すでに手遅れだ。気が付けば、街中をアンデットが徘徊している。周囲にもスケルトンやゾンビが多数いる。

 

霊廟から飛び出してきたアンデットが周囲を覆っているのだ。

 

 

 

周囲のアンデットはなぜか、人間を襲おうとはしていない。

だが好き好んでアンデットの横を通ろうとする人間はおらず、動くに動けない状況となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

死の宝珠は、死を振りまけることに喜び、どう楽しもうかと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

さて、どうするか?

アインズは考えていた。ミスリルプレートの冒険者が殺されたのだ。ここで死の騎士:デスナイトを倒し、この包囲網を突破する。

さすれば、我が名声は素晴らしく高まるだろうと。

 

その時、伝言:メッセージが届く。

 

――――アインズ様

メッセージの魔法が頭に響く。今はだめだ。メッセージに応答して、不自然な姿を見せるわけにはいかない。

応答しない以上、切ってくれればいいのだがよほどの緊急だったのだろう。

 

 

 

――――――シャルティア様が反旗を翻しました。

 

 

 

 

は?

 

え、いや、反旗ってどういうことだっ?

 

沈静化が、起こるがすぐさま動揺が続いてしまう。

 

いやいやまてまて、もしかしたらペペロンチーノの設定かもしれないじゃないか。

こんな場所でNPCから離れていたら反逆するとか、俺に不満を持ってとか何か理由があるだけじゃのかっ

 

沈静化が働いているのに。沈静化の効果が幾たび起こる。

 

急ぎ戻らなければならないが、いきなり転移門(ゲート)を開いて、もしくは指輪の能力を使って戻るわけにはいかないと思うくらいは落ち着いた。

 

 

 

目の前の死の騎士(デスナイト)が、優越感に浸っているのか光悦した表情をしているように見える。いや表情は無いが・・・・

まるで、己の望みが叶う瞬間を目の当たりにしているようだ。そんな気がする。

 

 

 

 

あの満足している雰囲気にたまらず、叫んでしまう。

 

 

「くそがぁぁ。くそくそくそぉ」

 

俺が急いで戻りたいときに限って、厄介事の最中とは。

 

 

死の宝珠は、人間の諦め、もしくは、この瞬間の絶望を感じ叫んだのかと思った。だが・・・・・・・

 

「何なんだ貴様は。死の宝珠とか言ったか。至急の用事があるに邪魔をするなぁぁぁ」

 

 

その瞬間、周囲のアンデットがアインズに襲い掛かる。

 

モモンガが戦士として本気の力を振るった。

 

 

力任せに両手に構えた大剣を振り回す。

 

一振りで数十体のアンデットが吹き飛ぶ。別の手に持っている大剣で、さらに数十体が吹き飛ぶ。

 

 

 

 

そのあまりの威力に死の宝珠は、この場でもっとも対処すべき存在が黒いフルプレートの戦士だと理解する。

 

いや、余計なアンデットを他に回す場合ではない。

 

全てのアンデットに、黒い騎士を襲うよう念じ指示を出す。

 

 

それでも、黒い騎士は止まらない。怒りに我を忘れ剣を振るっているように見える。

 

そのまま半数ほどが倒されたところで、骨の龍:スケリトルドラゴンを4体召喚する。

 

が、

 

両手の大剣を振り回し、一太刀で屠られる。

 

 

どういうことだ。

今まで人間種にこれほどの力を持ったものは見たことが無い。

それはもちろん、寄生した者の知識の中にはない。

あるとすれば神話の中にだけだ。

 

 

全部の力を力を込めて切りかかる。

 

黒い戦士から大剣を投げつけられ態勢を崩したところに、追加の一撃が迫る。

 

 

 

「私の目的・・・・が・・・・・・」

 

「さっさとくたばれっ」

追加の一撃を加える。

 

死の宝珠の存在が失われたことで、エ・ランテルに存在していたアンデットが消滅することとなった。

 

 

 

 

エ・ランテル街中を襲った悲劇だったが、結果だけを見れば、ミスリル級冒険者1チームのみの壊滅という損害だけで終わってしまった。

 

 

あまりの事件だけあって、あっという間にリ・エスティーゼ王国に広まることとなった。

 




戦闘シーンを簡単にして、それなりに描写を増やしてみた。

死の宝珠の設定は、
スケリトルドラゴンくらいだと他のミスリルクラスが倒しそうだったので捏造してます。

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