職員日記   作:りんご飴

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投稿ッ!
さすがに頑張った。



第9話

 

 

仝月℡日

天気:cloudy

 

マジックさんという若干、いや格好がかなり痴女な人に拉致られてから数日経った。日記は血塗れになってしまっていたので新しく買い直した。心機一転、これからも頑張って書き続けよう。

 

取り敢えず、今回ばかりは本気でイストワール様達に怒られた。これから常時護衛をつけようなんて話にもなったが、どうにか収めた。プライバシーをガン無視の警護計画とか嫌すぎる。

 

だが外出時は誰か1人は同伴させなくてはいけなくなってしまった。まぁ、日記がある時は問題なく外用のクールな俺をやれるだろう。

 

最近になって気づいたが教会連中とか国の人達は俺を過大に評価し過ぎている。この間、新人職員の講習会をチラッと覗いてみたが講師が俺をすっごいプッシュしてた。

おかしい、これではイストワール様や俺を手伝ってくれてる人達が可哀想だ。確かに俺の名義で色んな事が行われているが、それらは各所の人達がいなければ出来もしないようなものばかりだ。俺は基本的な書類仕事しかしてないぞ。殆どが周りの人の成果なのに俺がやったみたいになってて手柄を横取りしてることになってる。

 

胃が痛くなってくる。

なんか俺に対する個人崇拝みたいなものすら出始めてるらしい。俺はそんな凄い存在じゃない。ただのお飾りなのに……。

 

イストワール様に良い胃薬を教えてもらおう。

 

 

 

●月◆日

天気:何時だって曇りさ

 

なんか女神様の救出作戦が始まることになった。

作戦会議してたんだけど、難しいことばっかりでついていけない。

え?他の教祖の人達は理解してるっぽいんだけど。取り敢えず俺も分かってる風に頷いておこう。困った時の某司令スタイルだ。それっぽく見えるからな。

 

しかし、嬉しい。

これで俺はお役御免だ。もう田舎帰って畑耕す。やっぱり、おらには都会なんて無理だったんだぁ。

 

ん?なんか話が進んじゃったなぁ。聞いてなかった。

 

……え゛!?俺も行くの!?

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

ギョウカイ墓場。

負の情念が渦巻く死の大地で女神候補生とその友、そしてアレン・エドワードは犯罪組織四天王であり墓守、ジャッジ・ザ・ハードと対峙していた。

 

かつて圧倒的な力の差で敗北したネプギアは不安に潰れそうになりながらも果敢にジャッジへと向かう。あの時とは違う。今はあの時にはいなかった支えてくれる友がいるのだから。そう思うと身体の震えは止まり、戦う意思が湧く。

 

今にも戦闘が始まるという張り詰めた空気が満ちる中、ジャッジは口を開いた。戦闘狂な彼らしくもない。

 

「おい、そこの貴様だッ。人間、お前がアレン・エドワードだなァ?」

 

ジャッジはアレンを指差し問う。

そしてアレンは疑問を感じながらも答えた。

 

「その通りだが?」

 

「マジックが言ってたぞォお!貴様は強いんだろォゥ!!?」

 

「なんだと?」

 

思わず、アレンは聞き返した。

自分が強い?そんな訳はないだろうと、ジャッジの認識が間違いである事を指摘する。

 

「奴が毎回貴様の名前を忌々しげに呟いてるからなァ!聞いたぞォ、マジックが貴様に勝てないと言っていたのをなァァァア!!」

 

しかし、ジャッジは思い込んだら止まらないタイプなのだろう。アレンの言うことなど耳を貸さない。

 

「マジックが勝てないなら貴様は強いハズだァァァア!」

 

それは思い込みだ。マジックは勿論、戦闘ではなく大局的な組織間での争いにおいて勝てないと言ったのだ。直接戦闘で勝てないなど間違っても言ってはいない。

 

「俺様と戦えェェェェエエ!」

 

それが分かっていないジャッジは得物である斧をアレンへと振り下ろした。

 

ネプギアやアイエフ達の甲高い叫び声が響く。

無情に振り下ろされた戦斧は地を抉り、辺りに粉塵を撒き散らした。

 

「なんだァ、もう死んだのかァ?」

 

あまりにも呆気ない幕切れにジャッジはこぼす。

 

「勝手に!死んだことにするな!」

 

土煙の中からアレンが転がり出てくる。大きな怪我は見られないが、飛散した土石に当たったのだろうか、所々に傷が見えた。

 

「躱したか、やるじゃねぇかァァア!!」

 

「チッ、まだ来るかッ!」

 

再び自身に向けられた凶刃から逃れようとアレンは駆け出す。

 

「逃げるつもりかッ!!」

 

「俺と戦いたいというなら追ってくると良い。その図体ではここは少々手狭だろう?」

 

戦えるわけがない。

精々、銃を扱うことが出来る程度のアレンに女神と同等の力を振るう四天王に勝つ術など存在していない。しかしだ、ジャッジの注意が自分に向いているというなら向けさせておこう。その間にネプギア達に女神を救出させれば良い。

 

アレンは声には出さず、その意を汲み取ってくれると信じ、ネプギア達に視線を向ける。勘の良いアイエフなどがわざわざ挑発までした目的を悟ったのだろう。ネプギア達に耳打ちをしていた。

彼女達は悩むような素振りを見せる。果たして置いていって良いものか。下手をしなくても死んでしまう。そんな状況の彼を囮に自分達が姉の救出に向かって良いものかと。

 

何時までも動く気配のない彼女らにアレンは激昂する。

 

「何の為の作戦だか忘れたのか!!お前達の為すべき事を為せ!」

 

その叱咤に覚悟を決めたのか、こちらを一瞥し、奥へと進んでいく。

ジャッジも気付いてはいたが、墓守りとして使命よりも己の闘争欲を優先したのか、こちらを睨むばかりで目もくれない。

 

「行くぞ、ジャッジ・ザ・ハード。貴様には足りないものが多くある」

 

「何だとォ?」

 

「情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!そして何よりもッ!」

 

ある程度の距離を保ち、ジャッジを見据えていたアレンは背を向け、再び駆け出す。そして声高に叫んだ。

 

「速さが足りない!!」

 

余談ではあるが、ジャッジ・ザ・ハードは高めな命中率を持つが回避力の高い相手に対しては強みとはならない。囮役が逃げ回りつつ回復し、周りから仲間に攻撃してもらうという戦法は非常に効果的である。

今回に限っては仲間がいない為に攻撃こそ出来ないが、ルウィーでマジックから散々逃げ回ったアレンの回避力ならば逃げ続けることくらいは出来る。つまりアレンはAGIに全振りである。

 

見る見るうちに遠ざかってく彼を憤慨しながらもジャッジは追いかける。

 

果たして、ネプギアが女神達を解放するのが先か。それともアレンが力尽きるのが先か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





というわけでアレンのステータスはAGI特化です。
当たらなければどうと言う事はない。


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