ワールドトリガー 《ASTERs》   作:うたた寝犬

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前書きです。

正方形に縦横4本の線を引いて25分割します。上から下へABCDE、左から右にabcdeとします。

Aのcに月守、Aのeに来馬さん、Bのbに那須さん、Bのdに漆間さん、Dのbに村上先輩、Dのdに熊谷先輩、Eのaに太一、Eのcに彩笑、Eのeに茜ちゃんがいる状態でランク戦が始まりました。

Cが川です。Cのa、c、eが橋です。Cのcは壊されてます。

原作で見るマップ付きランク戦って全体の動きが分かりやすくていいなと、本作を書いてて思いました。

またもや時間が空きましたが、それでも尚、本作をお楽しみいただけたら幸いです。


第52話「逃げ惑って尚、彼も笑う」

僕には悪い癖というか、嫌な体質というか、習慣のようなものがある。

 

それは夜眠っている間、僕の薄っぺらいこと極まりない過去の夢を見るというものだ。

 

頻度としては、週に1度。多くて2度程度。

 

最近のものからずっと前のものまで、記憶からランダムにエピソードを選択され夢として再生されている。だけど全くの無作為というわけでは無いらしく、何個か特定のエピソードが何度か選ばれている。どれもこれも、僕の人格形成に多大な影響をもたらしたと思えるようなエピソードばかりだ。

 

その中でも一番古く、それでいて多分最も多く再生されたエピソードがある。

 

僕は人工的な白い施設の中を行く当てもなく歩き回っている。幼い僕は、白衣を着た大人の人から逃げている。彼らが、僕にはどうしようないほどに恐ろしかった。彼らの言葉を聞くたびに、僕が何者なのかを突き付けられるようで、怖かった。僕は自分が何者なのかを認めるのが怖くて、彼らから、そしてその事実から逃げるように歩き回っていた。

そんな中、僕に1人の少女が声をかけた。

「君はいつも、元気に歩いてるね」

儚くて淡くて、そして僕を追いかける彼らには無い綺麗な笑顔を向けてくる、そんな少女だ。

 

「おねえさん、だれ?」

僕は問いかける。そして少女はその綺麗な笑顔のまま、名乗る。

「私は…」

 

 

 

 

 

でも大抵、そこで夢は覚めて俺は現実に引き戻される。夢は覚めても、俺の記憶の中には続きがちゃんとあるから、その後の出来事が自然と頭に浮かぶ。

目が覚めた俺は、

「…貴女は優しすぎたよ」

彼女のことを思い、いつもそう言っていた。

 

 

*** *** ***

 

 

背の高いビル群の間を、月守は全力で駆ける。だがレーダーに映る輝点は、そんな月守の疾走を嘲笑うかのように距離を徐々に詰めていた。

(相変わらず走るのが速い人だな)

シュータートップクラスの機動力に軽く驚きつつも、月守は手を打った。

 

「メテオラ」

 

月守はメテオラを放つが、周囲にはトリオンキューブ1つない。那須が追ってくる事を前提として、ここまでの道中にキューブを仕込み、それを放ったのだ。置き弾と呼ばれる技術だが、本来は相手の注意を自分に向けたところの不意を突く方法で使われることが多い。仕込んだ弾丸を見えていないところで放つのは外れるリスクが大きく、トリオンの無駄使いでしかないが、平均的な隊員よりも多くのトリオンを持つ月守ならさほど問題にならない量だった。

 

放ったタイミングから少し遅れて、メテオラの炸裂音が響く。

 

だが月守の視界に映るレーダーの輝点は消えていない。多少の足止めになった程度で、那須の反応はすぐに月守を追って動き出した。

(まあ、このくらいで倒せたら苦労は無いか)

レーダーレンジを広げつつ、月守は戦況を把握する。だがその途中、真香からの通信が入った。

『わかってたことですけど、那須先輩本当に速いですね』

 

『トリオン体の速度を決める要素は使い手のイメージと生身の運動神経の良し悪し、あとは本人のウエイトだからね。那須先輩はバイパーの弾道をリアルタイムで引けるからイメージする力は十分だし、あと見るからに軽そうだし、多分病弱ってだけで運動神経いいんじゃないかな。見かけより運動できるっていうか……あ、神音と同じタイプ』

 

『しーちゃん、生身の運動神経半端ないですもんね』

雑談を挟んで軽く笑ってから、真香は本題を切り出した。

『わかってると思いますけど、那須先輩の射程距離内です月守先輩。いつバイパーが飛んできてもおかしくない状況ですよ』

 

『ん、そうだね。ねえ真香ちゃん、少し頼みごとしてもいい?』

 

『頼みごとですか?』

 

『そ』

全力疾走しつつ、月守は真香に頼みごとをした。

『1つ目はスナイパーの位置予測。前みたいに高い精度じゃなくてもいいから、何カ所かポイントを絞ってほしい』

 

『わかりました』

 

『2つ目。マップ全体の動きを見て、誰がどんな風に立ち回ってるかを報告してほしい』

 

『了解です。……月守先輩。これって、各隊の思惑を読むために必要な情報……ってことですよね?』

慎重な様子で尋ねる真香に対して、月守はやんわりとした声で答える。

『そうだよ。少なくとも、那須隊は何か狙ってる。行動の戸惑いの無さをみる限り、おそらく最初から橋を壊すのは狙ってたんだと思う。意味なく壊す筈がない以上、その奥には狙ってる何かがある』

 

『それを見破って、対策を立てるんですか?』

 

『そういうこと。でも俺は那須先輩にマークされてあんまり余裕ないから、正確に読み切るのはちょっとしんどい。だから、真香ちゃんの方でも予測立ててもらっていい?』

 

『はい、了解しました!任せてください!』

躊躇いなく承る真香に月守は思わず苦笑してから、

『うん、任せたよ』

そう言って、1度通信から意識を戦場へと完全に切り替えた。と同時に背後から嫌な音が響き、月守は素早く振り返った。

(完全に射程圏内に捕まったか……)

振り返った視界に映ったのは、月守を取り囲むような軌道で迫ってくる数え切れないほどのバイパーだった。

 

『鳥籠』と称される那須のバイパー弾幕を、月守は体捌きで全て躱しきった。だが躱すために進む足は一瞬だけ緩み、その隙に那須が追いつき、建物の陰から姿を見せた。

「無傷なんて凄いわね」

 

「レーダーの位置情報だけを頼りに仕掛けるバイパーなら、精度は落ちるからね。それなら躱しきれるよ」

 

「そう……」

レーダーとはどれだけ正確な情報を映せるようになったとしても、所詮はレーダーなのだ。場合にもよるがことバイパーの弾道を引くことに関しては視覚で得た情報に勝るものはない。リアルタイムで弾道を引く技術には正確な距離感・空間認識能力が求められるので、見えていない場所にいる相手を狙おうと思えば、必然と精度は落ちる。

 

そして精度が落ちた鳥籠なら月守は躱せると言い、実際に躱しきってみせた。だが逆に言えば、

「じゃあ、こうやってしっかり見えてる状態なら躱しきれないってことね?」

本領を発揮した鳥籠から逃れるのは困難の極みである。

 

那須は言い切るや否や周囲にバイパーのキューブを円を描くように展開した。それとほぼ同時に月守も左手からバイパーのキューブを大量にばら撒くように展開する。

 

「「バイパー」」

 

図ったように同じタイミングで放たれた互いのバイパーは一瞬だけ交錯し、相手へと襲いかかる。相手を包囲するような弾道を引いた那須のバイパーを月守は機動力と体捌きで回避することを選択した。だが、ボーダー屈指のバイパー使いである那須が放つ攻撃の回避はそう容易いものではなかった。

 

(体捌きどうこうじゃ躱しきれない密度の弾幕を張ってきたのか……)

 

どれほど身体を上手く扱える技術があっても、弾と弾の間に身体を割り込ませるほどの隙間がなければ躱せる道理は無い。回避しきれないと即座に判断した月守はシールドを展開して弾幕を防いだ。防ぐことには成功したが、最初の撃ち合いの時と同様でシールドにはヒビが入っていた。

 

「……」

 

その割れかけたシールドを見た月守は、すぐに那須へと目を向ける。那須も月守と同じように回避とシールドを併用してバイパーを防ぎきっていたが、その表情は月守よりも涼しく、余裕すら感じられた。

「余裕そうだね」

 

「あら、そう見える?」

 

「見える見える」

困ったように笑いながら会話をする月守は那須に対して半身に構え、さりげなく左手を身体の陰に隠してキューブを生成し、バイパーを放った。不意打ちに等しいタイミングのバイパーだが、那須はそれを冷静にシールドを張って対応した。しかしそれは陽動であり、月守はその一瞬の隙をついて、再び逃走した。

 

「相変わらず、威力低めで弾速速めに設定するのが好きね」

初動こそ遅れたものの、那須はすぐに月守を追うべく走り出した。

「好きというよりはクセ。彩笑に合わせようと思えば、自然と速い弾丸が多くなるからさ」

追いながら呟く那須の言葉に対して、月守は律儀に答える。周囲の建物を使って撒くような逃げ方をしているものの、2人の距離は会話ができてしまう程度には近く、そしてそれは完全に那須の射程であった。

 

逃げる月守の動きの先までイメージし、それを加味した弾道イメージを那須は引いて放った。そして月守は那須がバイパーを放った事を、キューブの分割音や射撃音で判断して回避に転じる。

(グラスホッパー)

左手からグラスホッパーを生成し、月守は鳥籠に捕まる寸前に踏み込むことで大きく跳躍して回避に成功した。そして続けて左手からさらにトリオンキューブを生成した。

「メテオラ」

普段の月守が好んで使う細かく大量な分割ではなく、大雑把に8分割されたメテオラは周囲のビル群を巻き込むように乱雑に放たれ那須へと襲いかかった。

 

(崩落に巻き込こむことを狙っているのかしら?)

 

しかし那須は崩れてくるビル群を前にして冷静であり、またその対応もしっかりとしていた。

 

(シールド)

 

向かってくるメテオラには爆風の余波を考慮して、自身から十分な距離を開けてシールドを展開して防いだ。間髪開けずに襲ってくるビル群の崩落に対しては、軽く跳躍して()()()()()()()()()()()()()()()、まるでそれを足場のようにして駆け、危なくなったら次のビルの欠片に跳躍して再びそこを走るという芸当を数回繰り返して、崩落の嵐を乗り切った。

 

那須が月守の攻撃をやり過ごすし、再度月守に意識を向けると、またその姿を見失っていた。一瞬、死角からの攻撃を警戒した那須だが、レーダー反応を見るとどうやらまた逃げ出したようで、ビル群を縫うように走っていた。

 

「また逃げ……?」

 

繰り返すような月守の行動パターンを受け、那須は追いかけつつもその意図を考え始めた。

(やけに消極的ね。私の意識から何度か外れていることを気付かない子じゃないし、そこを狙って攻撃の1つや2つ入れてきそうだけど、それをしない……。ということは、今回は最初から逃げるのが狙いなのかしら?)

那須はすぐに月守を射程に捉えるほど距離を詰めたが、確実に当てるためにさらに距離を詰めることを選択した。

(そういえば、今回はトリガー構成が妙ね。ここまで使ってきたのは全部サブ側で、種類はバイパー、メテオラ、シールド、グラスホッパー…。別にこれ自体はそうおかしくないけど、気になるのはさっき、()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()……。どうしてサブ→サブだったのかしら?アタッカー用トリガーを使ってるのは見たことないから、メイン側も射程があるトリガーのはずなのに……)

那須がその奇妙な行動に違和感を覚えたのと同時に、逃げてきた月守に追いつき、その背中を視界に捉えた。

 

(まあでも、あの子が奇妙なのはいつものことよね。あの表情の下で、何を考えてるのかわからないのは、昔からだもの……)

 

そう割り切った那須は再びキューブを生成し、攻撃を再開させようとした。

 

*** *** ***

 

那須が月守を追う姿を観ている観覧席側では、解説役の2人が意見をそれぞれ述べていた。

『月守が押されているな』

 

『そうだねぇ。月守のソロでの基本スタイルは走って建物で射線を切りながら策を弄するもの……言うなればラン&トラップってところかな。普通に戦うなら厄介というか、面倒くさいタイプのスタイルだ』

 

『ガンナーやシューターは射線を通すために月守を追うが、追いかけた先には置き弾や合成弾が待っている。月守より機動力のあるアタッカーが追いつけたところで、視界の外から襲いかかるバイパーやゼロ距離射撃が待ってるからな』

 

『遠くからハウンドで牽制しようにも、あの子はそれを察知すればすぐさまバッグワームを起動するからね。実際、月守の戦闘スタイルはほとんどの隊員に対して有効だけど、数少ない例外が那須ちゃんだ』

不知火はコーヒーを一口飲んでから言葉を続けた。

『月守の戦闘スタイルを崩すには、何かを仕込ませる隙を与えずに常に攻撃を仕掛ける、もしくは常に視界に月守を収め続けることだ。マップデータさえあれば那須ちゃんはバイパーを使って月守を牽制できるし、そもそも機動力でも那須ちゃんの方が上』

 

『地木にとって村上が天敵であるように、月守とっては那須が天敵といったところか』

二宮の言葉を受けて、不知火は控えめに笑った。

『そうだねぇ。純粋なバイパー使いとしても、月守は那須ちゃんの方が上だと言っているし、天敵という表現は的を射てるね』

 

『実際に月守の方が下だろう。かつてバイパー使いと言えば月守と出水だと言われていたが、那須が来てからは月守が追いやられたからな』

不知火と二宮がそこまで言ったことろで、宇佐美が口を挟んだ。

『つまり、この勝負は那須隊長が勝つ……ということでしょうか?』

 

勝敗について問われ、不知火は少し唸ってから言葉を返した。

『これがソロのランク戦だったなら、那須ちゃんが勝つね』

那須が勝つという不知火の見解を聞くと、澄ました表情でモニターを見ていた二宮は、

『同感だな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

と、不知火と同意見ながらも含みを持つ答えを返した。

 

*** *** ***

 

那須の放つバイパーは徐々に、それでいて確実に月守を捉えていた。

(この感じだと、かなり俺の動きを予習してきてるのかな。動きのクセとか、読まれてる感じがする)

グラスホッパーを細かく使った回避技術を主軸にして、要所要所にシールドを織り交ぜて防いでいるものの、危ない橋を渡るような場面が少しずつ増えていることに、月守は焦りを感じていた。

 

そんな少しだけ平静が崩れた時、

『さっくやー、生きてるー?』

底抜けに明るい声で、隊長からの通信が入った。

 

一瞬だけキョトンとした後、月守は苦笑しながら答えた。

『生きてるよー。そっちは?』

 

『それなりにキッツい!村上先輩と熊ちゃん先輩に挟まれた上に、来馬さんが村上先輩の援護してるからキッツい!』

 

『点取れそうも無い感じ?』

 

『取れなくは無いけど、バグワ組の奇襲怖いじゃん!』

 

『奇襲警戒して守りに入ってるってことか。その割には楽しそうだな』

 

『楽しそうにでもしてなきゃ集中切れるもんっ!』

通信の最中でも那須のバイパーは飛んでくるが、不思議と話している時の方が身体が軽くなったような感覚になり、月守はバイパーを余裕を持った上であえて紙一重で回避し切った。ついでに那須からの追撃を少しでも防ぐためにメテオラをばら撒くように放った。しかし那須の反応は淡々としたもので、苦もなくメテオラを防いで追撃をかけてきた。

 

『っていうかさ!咲耶の方はどうなの!』

 

『こっちもしんどい。那須先輩とはちょっと部が悪い』

 

『なんで?』

 

『いや、なんでって……バイパー使いとしても、機動力にしても、那須先輩の方が上だし……』

 

『ふーん?』

その言葉を聞いた通信越しの彩笑は何故か不機嫌そうで、月守はその理由を尋ねた。

『なにその反応』

 

『咲耶咲耶』

 

『シカトかよ。で、何?』

 

『咲耶が自己評価をどうしようが知ったこっちゃ無いんだけど…』

彩笑は1拍とってから、言葉を続けた。

 

 

 

 

『ボクは、咲耶が1番凄いバイパー使いだと思ってるよ』

 

 

 

 

と。

 

『…………』

その言葉を聞いた月守は反応に困り、思わず言葉に詰まった。そしてそこに、彩笑は言葉を重ねる。

『だから咲耶。あと5分待つから、それまでにこっちに来てよ?』

 

『……それは命令?』

 

『Of course!』

彩笑の答えは、無駄に発音が良い英語だった。

そう言われた咲耶は彩笑には見えていないのは分かっている上で、不敵に笑った。

『……了解!すぐにそっちに向かうから、それまでにベイルアウトすんなよ!』

月守はそう言って彩笑との通信を一旦切り、すぐさま真香へと通信を切り替えた。

『真香ちゃん、ここまでの南側の動きをざっとまとめて説明よろしく』

 

『了解しました』

通信の間にも飛んでくる那須の鳥籠を防いで反撃しつつ、月守は真香からの報告に耳を傾けた。

『アタッカー3人がメインになって南エリアの中央部で乱戦をしてますが、地木隊長が一方的に標的にされてる状態です。来馬さんが西側から村上先輩を援護する射撃をしてて、地木隊長が東側に逃げようとしても熊谷先輩の足止めが上手くて逃げ出せないみたいですね。乱戦になるのとほとんど同じタイミングで、東側の橋を北側から渡る反応がありました。漆間さんだと思うんですけど、渡りきったあとにバッグワーム使ったみたいで、その反応は今レーダーから消えてます』

 

『なるほど…。来馬さんは最初、どっち側にいたか分かる?』

 

『恐らく北側です。途中で北側の反応が1つ消えたんですけど、南側の乱戦に来馬さんが混ざるのと同じタイミングで輝点の数が揃ったので……』

 

『乱戦になってるって言ってたけど、戦闘になってるエリアの広さはどのくらい?』

 

『アタッカー組がメインなのでエリア自体は小さいですけど、中心にいるのが地木隊長なので常にエリアが動いてますね。それも含めると、南側中央部で東西に分断できる程度になります』

月守は真香からの情報を吟味するような思考を続ける。

『スナイパーの位置予測は?』

 

『できてます。先輩の視界に表示しても大丈夫ですか?』

 

『いいよ、ちょうだい』

キーボードをせわしなく叩く音のあとに小気味好くエンターキーを押した音が通信越しに聞こえたと思った次の瞬間、月守の視界に元々出ていたマップデータに茜と太一がいるであろうポイントがいくつか表示された。

 

「………」

 

そしてそのマップデータを見た月守はゆっくりと笑った。

 

(真香ちゃんナイス。欲しい情報をピンポイントで送ってくれたおかげで、()()()()()()

 

必要なカードが揃った月守の頭の中には、戦況を打開して勝ちに辿り着くための道が見え始めた。

 

『月守先輩、那須隊の狙いは読めましたか?』

 

『多分ね。真香ちゃんはどう?予測できた?』

 

『はい、できました』

迷いなく真香はそう言い、その言葉には確かな自信があった。

 

それを聞いた月守は思う。

(真香ちゃんも神音も、どんどん成長していく……後輩が育ってくれるのって、こんなに嬉しいことなんだ。俺と彩笑の特訓に付き合ってくれた夕陽さんと白金先輩の気持ちも、今ならちょっと分かる)

 

後輩が育つ頼もしさと嬉しさを噛み締める月守は自然と笑顔になり、楽しそうな声で、

『それじゃあ真香ちゃん、答え合わせしよっか』

そう、言った。




ここから後書きです。

チームランク戦って戦いっていうよりはルールがある分、やっぱりスポーツみたいだなと思います。楽しそうですし。

亀且つ不定期更新になりつつありますが、今後とも更新していきます。読んでくださる皆様には本当に感謝です。

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