転送完了と同時に月守は視界にマップとレーダーを表示した。
(俺がいるのは北側で彩笑がいるのは南側。南北どっちもトリオン反応は俺ら込みで3人分。バッグワームで消えてる3人はスナイパー2人と……ソロの漆間さんかな)
予想込みではあるが素早く現状を把握し、事前の打ち合わせ通り彩笑と合流するべく動いた。
移動していると彩笑から通信が入った。
『咲耶!お互い真ん中のやつが1番近い橋だから、合流はそこにするよ!』
『了解。スタート直後はスナイパーの態勢もまだ整ってないから、狙撃に捕まる前に合流だ』
『オッケー。あっ、咲耶咲耶!カメレオン持ってるボクなら姿消せば狙撃気にしないで橋渡れるから、ボクがそっち行くよ!』
『ナイス。どんなに腕のいいスナイパーでも見えないものには当てられないからな』
『でしょー!』
『彩笑ってたまに頭良い発想するよね』
『遠回しに頭悪いって言われてる気がするけど、許す!』
合流の算段を整えたタイミングで、全体を見ている真香から2人へと報告が入った。
『同じ橋に向かって動いている反応が南北それぞれ1つずつあります』
それを聞いた月守がレーダーを確認すると、確かに同じ橋に向かって動く反応があった。
『どうする?』
『そのまま行くよ』
『なら俺もこのまま変更無しで行く』
『りょーっかい!』
通信を終えた月守は思考する。
(多分今、レーダーに映ってるのが来馬さん、村上先輩、那須先輩、熊谷先輩。どれが誰なのかは不明。北側も南側も、動いてる反応それぞれが合流しようとしてないから、恐らく敵同士。なら一方的に狙われることは無い。戦闘になったら、彩笑が渡りやすいように少し橋から離れた場所に誘導して戦うか)
一通り思考を整えたところで月守は再度レーダーを確認し、
(さて……どう来るかな?)
このステージを選んだ那須隊の意図を読み取ろうと考えを巡らせた。
*** *** ***
(そこの角を曲がれば視界開けて橋見えるけど、ほとんど同時に敵とぶつかっちゃうなぁ…。まあ、透明化して素通りするから関係無いけどさ)
疾走しながら彩笑はレーダーを確認し、そう判断する。
カメレオンを用いた透明化ならばスナイパーによる狙撃の心配は減るが、その反面、透明化している間は他のトリガーが使えないためシールドで弾丸を防いだりスコーピオンで斬撃をいなすことが出来ない。
そのため、村上や熊谷が使用する『弧月』のリーチを拡張する『旋空』を用いた横薙ぎの斬撃や、来馬がセットしているトリオン反応を探知して追尾するトリガー『ハウンド』による銃撃、シューターである那須ならではの広域弾幕。これらを防ぐことが出来ない。
しかし、彩笑はそのデメリットをデメリットと捉えていなかった。
出会い頭の相手がステルス化している事を瞬時に見破ることができる戦闘員が何人いるだろうか(彩笑は数人しか知らない)。ましてや相手は、今、その角から飛び出してくる戦闘員が彩笑だということすら知らない。その状況なら、彩笑は相手がそれを見破るまでの間に橋まで確実にたどり着く自信があった。
自信があるゆえに、彩笑はカメレオンを起動して透明化し、躊躇なく曲がり角を飛び出した。
(よし、視界クリア!)
開けた視界には当然ながら渡るべき橋が見えた。目標を視認した彩笑は横目で、同じ橋に向かって来た敵が誰なのかを確かめた。
(あっぶな。村上先輩だったんだ……)
同じ橋めがけて移動していた敵は、鈴鳴第一のエースである村上鋼だった。なるべく1対1を避けたい相手であっただけに彩笑は少しだけ焦ったが、すぐに意識を切り替えた。幸いにもまだ村上は見えるはずの彩笑の姿が見えていない理由を看破していない。もう少し距離が近ければ先制攻撃に切り替えても良かったが、間合いがガンナー・シューターの距離だったため、彩笑は素直に橋を渡ることにした。
透明化しつつ全力疾走する彩笑が橋にたどり着いたのとほとんど同時に、
「……カメレオンかっ!」
村上が彩笑のカメレオンを看破した。
「正解です!」
彩笑は透明化を維持しつつ、笑って答えた。
「くっ!」
村上は彩笑を追って踏み出すが、彩笑はすでに橋の4分の1程渡っていた。
(よしっ!このまま村上先輩振り切って咲耶と合流できる!)
彩笑が確信した、その瞬間、
ドドドドドッ!
彩笑が渡っていた橋に、大量のメテオラが降り注いだ。
「っ!!?」
まさかの事態に彩笑は動揺したが、このまま落ちてはならないと咄嗟に判断してカメレオンを解除してグラスホッパーを展開し、南側へと引き返した。
着地した彩笑の視界に、無残に破壊された橋が映った。
(うわ……がっつり壊されちゃった。この感じはメテオラ……)
だがそこで彩笑の思考は1度止まった。止まると同時、ほぼ無意識下で彩笑は片刃型のスコーピオンを展開して振るった。
そのスコーピオンは、間合いを一気に詰めて彩笑へと斬りかかろうとしていた村上の弧月と激しくぶつかり火花を散らした。
「まさかいきなり当たるとはね」
「ビックリですね、村上先輩!」
鍔迫り合いによる力比べに持ち込まれる前に彩笑は一瞬だけ脱力し、スコーピオンで弧月を軽く弾いてバックステップを踏んで間合いを外した。
サブ側にもスコーピオンを展開し、彩笑は二本のスコーピオンを逆手に持って構えた。右手に弧月、左手にレイガストを構えた村上の出方を窺っていたところに、月守から通信が入る。
『橋と一緒に落ちてないよな?』
『落ちてないけど状況は悪い』
『村上先輩に捕まったのか』
『そう。そっちの状況はどう?』
彩笑の問いかけを聞いた月守は通信回線越しに笑った。
『橋を壊すような怖いお姉さんに捕まった』
*** *** ***
観覧席のモニターに映し出される光景を見て、二宮は呟いた。
『序盤から展開が早いな』
『そうですね。ここで、試合開始からの流れをおさらいしましょう』
宇佐美はそう言い、転送完了からここまでの全体の動きを整理し始めた。
『ステージの北側に来馬隊長、那須隊長、漆間隊長、月守隊員とミドルレンジで戦うガンナー・シューター組が転送され、南側には地木隊長、村上隊員、熊谷隊員、別役隊員、日浦隊員とアタッカーとスナイパー組が転送。試合開始と同時にスナイパー2人と漆間隊長がバッグワームを展開してレーダー上から姿を消しました。事前に打ち合わせをしていたのか、地木隊がいち早く合流のために動き出しましたが、地木隊長が橋を渡っていた所を那須隊長がメテオラを放ち橋を破壊。地木隊長は落水こそしませんでしたが南側に残り村上隊員と交戦を開始し、北側では那須隊長と月守隊員のにらみ合いになりました』
試合の流れを見て、解説担当の不知火と二宮は各隊に対しての考察を始めた。
『合流する際に地木隊長が起動したカメレオンはリスクを差し引いても好手だったとは思うけど、橋ごと破壊して合流を防いだ那須隊長の度胸もあっぱれだね』
『いや。那須のあの躊躇いの無さを見る分には、おそらく橋を壊すのは事前の打ち合わせだったんだろう』
『橋を壊した狙いは、やっぱり合流の妨害かな。連携で戦う鈴鳴と地木隊からすれば痛手だけど……』
『だがそれは那須隊も同じだ。他にも何から狙いがあるんだろうが……この展開は地木隊にとって部が悪いな』
『だろうねぇ。少なくとも、あの2人が避けたかった展開のうちの1つなのは間違いない』
解説担当の2人の言葉の意味をギャラリー達が考える中、試合が動いた。
*** *** ***
「怖いお姉さんだなんて失礼しちゃうわ」
那須はバイパーのトリオンキューブを周囲に円を描くように展開しつつ、月守を見据えてそう言った。ほんの少しだけ拗ねたように言う那須に対して、月守も左手からトリオンキューブを展開して会話に応じる。
「いきなり橋壊すような人を怖くないって言えるほど、人生経験豊富じゃないものでして」
「あら。アクション映画だと定番よ?」
「映画もあんまり観ないんですよ」
河川敷の土手で2人は世間話をするかのように対峙していたが、月守は前触れもなくバイパーを放った。しかし那須はシュータートップクラスの機動力で躱し、躱しきれない分をシールドで対応した。防ぎきったのと同時に那須はバイパーを放ち、今度は月守がそれに対応する。
(相変わらず変幻自在な弾道……)
月守はそのバイパーを可能な限り目で追い、弾道を予測して回避する。那須には及ばないものの月守の機動力はシューターの中では高い部類に入る。だが完全リアルタイムで引かれる那須のバイパーを躱し切るまでは至らず、那須と同じように躱しきれない分はシールドを展開して防いだ。
(薄く、シールドにヒビ入ってる……)
被弾こそ防いだが軽くヒビ割れたシールドを1度解除し、月守は小さな声で呟いた。
「やっぱりちょっと、骨が折れますね」
そして言い終えるなり、月守は左手を川の方に向けて構えた。
「だから、一旦逃げます」
苦笑いを浮かべながらそう言った月守は、左手からキューブではなく青い球体を川に向けて放った。するとそれが薄い板を形取った。
(グラスホッパーね)
それを見た那須は、瞬時に青い板の正体が機動力を拡張するオプショントリガーであるグラスホッパーだと見抜いた。それと同時に月守が川に向かって一歩踏み出した。
(グラスホッパーを足場にして川を渡り切って逃げるつもりかしら?)
グラスホッパーと月守の初動を見て那須は瞬時にそう判断し、すぐに手を打つ。
「バイパー!」
素早くバイパーを展開し、弾道イメージを構築して放つ。変幻自在な軌道をとる大量の弾丸は川に向かって放たれ、雨のように川に降り注いだ。バイパーは多くのグラスホッパーを射抜き、足場としての役割を封殺する。グラスホッパーはまだいくつか残っているが川を渡るには厳しく、そうでなくともこのバイパーの雨を渡るのは至難の技であった。
那須の判断は好手であったがそれを実行した後、軽く後悔した。なぜならバイパーの弾道を引くために川に目を向けたその一瞬、月守のことが意識から消えており、弾道を引き終えた後に月守に視線を戻そうとしたが、そこには月守の姿が無かった。
だが完全に見失ったというわけではなく、レーダーを見る限りでは川とは反対方向のビル群の方に逃げたようであった。
(複数のグラスホッパーと踏み出す1歩目で川を渡るように見せかけたフェイント……でも本命は川じゃなくてビル群に逃げ込むことだったのね)
那須は落ち着いて現状を整理しつつも、月守を追って動き出した。動き出すと同時に、チームメイトとの通信回線を開いた。
『くまちゃん、そっちはどう?』
『村上先輩と彩笑ちゃんが早速戦い始めたわよ。私はいつでも参戦できるわ』
『わかったわ。仕掛けるタイミングはくまちゃんに任せるから、茜ちゃんはそのサポートをよろしくね』
『り、了解です……』
那須の指示を受けて返事をする熊谷と日浦だが、日浦の声にはどこか精彩に欠けていた。その理由を知っているメンバーの空気が、少しだけ重くなった。そしてそのことに日浦はすぐに気づき、慌てて言葉を紡いだ。
『あ、えっと……!その!ま、まだ決まったわけじゃないですから!帰ったらもう一回、お兄ちゃんと説得するのでだいじょぶです!』
日浦は明るくそう言うが、その声はいつもの明るさとは違うものであると、メンバーは痛いほどにわかった。
わかっていながらも那須は今はあえてそれ以上追求せず、話の焦点を試合へと戻した。
『そうね……今はひとまず、試合に集中しましょう。私はさ…、月守くんをこのまま追うわ。小夜ちゃん、全体のフォローよろしくね』
『わかりました』
オペレーターである志岐小夜子の返事を聞いたところで、那須は逃げた月守を追ってビル群へと飛び込んだ。
*** *** ***
彩笑は片刃型のスコーピオンを両手で持ち、二刀流で村上を攻め立てる。
「ふっ!」
短く息を吐いてから繰り出されたその剣撃の速度は並大抵のものではなく、レイガストをシールドモードにして防いでいる村上も一種のリスペクトに値する感情を抱いていた。
だが、
「それでも、まだ見える」
その高速の剣撃をもってしても突破できないほど、村上鋼の守りは強固であった。連撃の一瞬の隙を突き、村上はスラスターを起動させて彩笑の態勢を崩しにかかる。
「っ!」
レイガストに押された彩笑は素早くサブ側のスコーピオンをオフにしてグラスホッパーに切り替え、それを足元に展開して後方に跳んで間合いを開けた。
着地と同時にスコーピオンを構え、再び村上に向かい合った。
互いに相手の僅かな動き出しを狙うような睨み合いの中、彩笑は次の一手を考える。
(まだ遅い。最低でもあと一段階ギア上げなきゃ、突破できないんだろうけど……。村上先輩相手にこれ以上は……)
だがそこで彩笑はその判断に迷った。
その迷った隙を、村上は逃さない。
鋭い踏み込みで間合いを一気に詰め、弧月で彩笑に切り掛かる。
(ヤッバ、気ぃ抜いてた!)
彩笑は慌てて対応し、村上の太刀筋をほんの少しズラすような状態でスコーピオンで受け太刀し、斬撃をいなした。そこから彩笑は淀み無くスムーズに反撃に出る。受け太刀の状態からそのまま斬撃を繰り出すが村上もそれに反応する。だがそれはフェイクだった。斬撃と並行して彩笑はサブ側に用意したままであったグラスホッパーを足元に展開して踏み付け、再度後方に跳んだ。
さっきと全く同じ動きであり、当然村上も反応して追撃をかける。
しかし、それも込みで彩笑は次の手を打った。
(これに付いてくるのまで想定済み。本命はこの後!)
着地と同時にグラスホッパーを周囲に乱雑に複数展開した。
展開されたグラスホッパーを見て、村上の足が止まった。
(ピンボールか……)
瞬時に村上は彩笑が仕掛けようとしているのがグラスホッパーを連続で踏みつけて加速しつつ攻撃を加えていくピンボールだと看破した。だが看破したところで、すでに攻撃のために踏み出した彩笑からはもう逃れられない。
村上の周りから、彩笑がグラスホッパーを力強く高速で踏み続け加速する音が響き続ける。その間攻撃を受けるが、村上はその全てを防いでみせる。
そして彩笑のピンボールによる最後の一撃と同時に、村上は弧月を構えた。その構えた弧月の切っ先に、まるで吸い込まれるように彩笑が飛び込んで行く。
「っっ!!」
あわや串刺しになるその寸前、彩笑は無理やり身体を捻って弧月の切っ先を躱した。だが高速行動中に無理な挙動を取ったため着地に失敗し、地面にぶつかり1回転半してからなんとか態勢を立て直した。
(村上先輩やっぱりボクの動きを……ってうわ、口に砂利入った。じゃりじゃりして気持ち悪)
口の中に不快感を覚えるが、彩笑はそれを意識の外に追いやってスコーピオンを構える。
対する村上は彩笑にほんの少しだけ近づき、間合いを調整したところで口を開いた。
「地木は確かに速い。その速さを存分に活かした高速戦闘はスコーピオン使いの、1つの完成系とすら思う。だが……」
少し間を空け、両手に持ったそれぞれの武器を構え直して言葉を続けた。
「だからこそ、オレはその動きを読める。高速戦闘では、オレには勝てないよ」
と。
そして宣言するような村上の言葉を聞いた彩笑は、
「きっついなぁ、もう……」
そう言って思わず苦笑いを浮かべた。
*** *** ***
全体の動きを把握している観覧席側で試合を見ている二宮が口を開いた。
『さっそく綻びが出たな』
『そうだね。まずは地木ちゃんの方か……』
不知火がそう相槌を返し、そこに宇佐美が現状を整理するように言った。
『南側でいきなり衝突した鈴鳴第一の村上隊員と地木隊長の両エースですが、地木隊長より村上隊員が優勢に見えますね。地木隊長が得意とする高速戦闘をものともせずに戦っています』
『村上くんは地木ちゃんにとって、天敵とも言える存在だからねぇ』
苦笑いを浮かべながら言う不知火に対して、実況役の宇佐美が観客の多くが感じているであろう疑問を投げかけた。
『そもそも、なぜ村上隊員は地木隊長の高速戦闘についていくことができているんでしょうか?』
『ふむ……村上くんが地木ちゃんを追えている理由は2つある』
指を二本立てた不知火は、1つ目の理由を口にする。
『まずは、地木ちゃんの高速戦闘の弱点を村上くんが的確についているということだ』
『高速戦闘の弱点……ですか?』
『そうだ』
答えながら不知火は、同じくその仕組みを理解しているのにあえて疑問として聞いてくる宇佐美の実況役としての上手さを嬉しく思いつつ答えを告げる。
『高速戦闘の弱点。それは速さゆえの動きの読まれやすさなんだ』
と。
だが不知火の解答を聞いても、観客生のギャラリーの大半が今ひとつピンときていないようで、多くの人数が首をかしげていた。それを見た二宮は、不知火の解答にフォローを入れた。
『……生身の肉体でより速く走るためには、速く走るためのフォームがある。より正確なボールを投げるためには、そのためのフォームがある。身体能力が大幅に高まる戦闘体であってもそれは変わらない。一見サラッとやっている地木の高速機動だが、アレにも当然、フォームというか型と言うべきものがある』
『二宮くんナイス。そう。二宮くんが言うように、地木ちゃんの動きにはある種の型のようなものがある。まあ、あれだけの速さで動いていると当然だけど、動作中に次の動作を考えているだけの時間がほとんどないんだ。型というよりはクセやパターンと言った方がいいかな』
フォーム、型、クセ、パターンという単語をまとめて宇佐美は話を進める。
『ということはつまり、地木隊長の動きのクセさえ把握できればあの高速戦闘にも対応できるということですか?』
『理屈上はね。でも地木ちゃんが次の動きを考えてる余裕がないってことは、当然対応する側だって同じさ。完璧に対応するなら、地木ちゃんの動きのクセを全て把握して躊躇うことなく動かないといけない。地木ちゃんのクセを読んで対応するなんて芸当が可能なのは、長年彼女の隣に居続けた月守、地木隊で彼女と全く同じトレーニングをやってのける天音ちゃん、地木隊の前身である夕陽隊隊長の夕陽柾、彼女に剣とステルス戦闘の手ほどきをした風間くん、そして……』
1拍空け、不知火はモニターを見ながら最後の1人を口にする。
『1度得た体験や知識を一眠りすることで、ほぼ100パーセント習得することができる強化睡眠記憶のサイドエフェクトを持つ村上くんくらいだろうね。はっきり言って、地木ちゃんはこのまま戦っても勝てないよ』
と。
そして不知火が言うように、エースアタッカー2人の戦いは明らかに村上に分があり、彩笑のトリオン体は徐々に斬撃が決まり、トリオンが漏れ出ていく。
高速戦闘という彩笑の強みが、村上には通じない。
誰が見ても、この先に待つ勝敗は明らかであった。
だがそんな状況で、
空を飛ぶための翼をもがれたような状況でも尚、
「……はは、キツすぎて笑いしか出ないや」
地木彩笑は笑っていた。
ここから後書きです。
今回の本編は、どちらかと言えば彩笑がメインな話です。
実際、彩笑の高速戦闘の対処方法としては村上先輩や月守がやっている「動きの先読み」というのは当たれば大きいけど外れたら即死タイプの対処方なので、多分邪道ですね。黒トリ遊真や太刀川さんのように、自身の反応速度や実力で斬り合う方が多少のダメージがあっても大崩れしないタイプの対処方なので、こっちの方が王道です。
さて。今回スポットが当たったのは彩笑なのですが、この話を投稿した9月28日は月守咲耶の誕生日でした。
これからも更新頑張ります。不定期ですが、今後とも読んでくだされば幸いです。