ワールドトリガー 《ASTERs》   作:うたた寝犬

114 / 121
第104話「世界で一番素敵な言葉」

 15日土曜日14時00分、月守咲耶ボーダー本部現着。

 

 月守としてはもう少し早めの時間に来てランク戦昼の部を観る気だった。しかし家を出ようとしたタイミングで、不知火が駄々をこねてお昼ご飯を一緒に食べようとせがんだため、遅くなった。

 

 試合までの時間をどう潰すか迷いながらも、月守の足は自然と作戦室へと向かう。そして各隊の作戦室が集まるフロアまで来たところで、今日対戦する三雲と出くわした。

 

「お、三雲くん。お疲れさん」

 

「月守先輩、お疲れ様です」

 

 ちょうど嵐山隊の作戦室から出てきた三雲と挨拶を交わした月守は、軽く頭を下げた。

 

「昨日は不知火さんが迷惑をかけたね。玉狛第二は無事だった?」

 

「あ、はい。空閑と千佳は昨日は玉狛支部の方にいましたし……ぼくも、ずっと嵐山隊の作戦室にいたので、大丈夫でした」

 

「そっか。なら良かった」

 

 月守はホッと胸をなでおろし、やんわりとした笑みを浮かべた。

 

 なんの気なしに、月守は三雲に今日の試合についての話題を振る。

 

「今日の試合……自信はある?」

 

「えっと……全く無いって訳では無いですけど……簡単に勝てるとも思っては無いです」

 

「無難な答えだけど……、まあ、それもそうか」

 

 無意識に試合の探りを入れてしまった自分に対して自嘲気味に笑う。

 

 月守の笑みにどんな意味があるのか三雲は考えつつも、チラリと時計を見てから1つ提案をした。

 

「月守先輩、この後時間ありますか? ぼく、お昼ご飯はまだ食べてないんですけど……」

 

 後輩からの遅めの昼ごはんの誘いに乗りかけた月守だが、申し訳なさそうな表情を見せてから、首を左右に振った。

 

「その提案は嬉しいけど……今日はやめておいた方がいいかな」

 

「え……?」

 

「今日試合するメンバーで飯食ってると……野良のB級とかC級で、いらない邪推をする奴が出てくるからな」

 

 月守が濁した言葉の意味を、三雲は正確に推察する。

 

「邪推……。点数のやり取りをしてるとか、ですか?」

 

「ああ、そうそう。そんな感じ。もちろん少数ではあるけど……そういう話が出る事自体、面倒だろ?」

 

 過去に似たような経験をした月守は、肩をすくめながら三雲に同意を求めた。

 

「だから……飯は今度、お互いに対戦がない時にしよう」

 

 そしていつか食事をしようと約束をしたところで、

 

「あれ? 咲耶とミック?」

 

「オサムと月守先輩だ」

 

 姉弟のように並ぶ彩笑と遊真が現れ、月守と三雲の会話に割って入った。

 

 ホントこの2人は小柄だな、と月守は思いながら、相棒の名前を呼ぶ。

 

「おはよ、彩笑。遊真と2人でランク戦でもしてたのか?」

 

「ん? 違うよ?」

 

 月守の問いかけに対して、彩笑は曇りない笑顔を浮かべて、

 

「2人で昼の部の観戦した後、ご飯食べてた!」

 

 月守が周囲の目を気にしてやらなかったことを、平然とやってのけた事を告げた。

 

「…………」

 

 無言ながらも月守が、コイツ何してくれてるんだろうと思っていると、

 

「えっと……地木先輩は、月守先輩と違って人目とかあんまり気にしないんですか?」

 

 三雲が遠慮した体を装いながらも、堂々と質問した。

 

「うにゅ?」

 

 なんの話? と言いたげに彩笑は首を傾げたが、すぐに三雲の言わんとする事を理解して、クスッと笑った。

 

「ああ〜、対戦相手と仲良くしてると、あんまり良くない噂されちゃうやつ?」

 

「あ、はい。それです」

 

「ボクはその辺気にしないよ」

 

 彩笑はしっかりと三雲の瞳を見据え、自信に満ちた表情の中にほんの少しだけ妖しさを滲ませながら、答える。

 

「だって、試合見てそんな噂するような人、ボクらの力量を見る目がないって言ってるようなものだもん。そのくらいの人になんか言われても、気にする必要なくない?」

 

 太陽が沈んだら夜になるんだよ、くらいの当たり前の事を語るように、彩笑はその手の輩を気にする必要はないと語った。

 

 それを聞いた3人は程度に差はあれども、一理あると感じた。少なくとも、とっさに否定の言葉が出ることはなかった。

 

 無言の3人を見て悪くない反応だと思ったのか、彩笑は、ぱあっと明るく笑った。

 

「ヤバい! 今日のボクめっちゃ冴えてる! 今、凄くいい事言えた感ある!」

 

「その反応で台無しだよ。一瞬でもお前が頭良いんじゃ……とか思った俺がバカだった」

 

「なんでそんなこと言うのー!」

 

 素直に褒めれないのか、と言いたげに彩笑は憤慨し、月守はそれを慣れた様子であしらう。

 

 そんな2人の様子を、少し離れた位置で三雲が見つめる。

 

「なんだか、最初に会った時のことを思い出したな……」

 

「オサムも?」

 

 三雲の隣に並んだ遊真が、小首を傾げつつ問いかける。

 

「空閑もか。……初めて駅で会った時も……2人はぼくらを前にして、あんな風に喧嘩していた……」

 

 そこまで言った三雲は、左手に軽く力を込めた。

 

 一見すると、彩笑が月守にじゃれつくような喧嘩は微笑ましいものがあるが……それをあの日、戦場だったにも関わらず目の前で行われたのは、今にすると悔しいものがあった。

 

 敵として見られてなかった。

 

 当人がどこまで意識していたかはわからない。しかし敵として……相手として見られてなかったから、あんなやり取りをしていたとしか思えない。

 

 そんな相棒の心のうちを、遊真は察した。ニッと片方だけ口角を上げて挑戦的な雰囲気の笑みを見せてから、

 

「じゃあ……今日の試合で、前とは違うってところを見せなきゃな」

 

 三雲の背中を押すような一言を添えた。

 

 正直、遊真とて今の三雲が今日の試合で地木隊を打ち負かせるような動きをするとは、思っていない。

 

 贔屓目で見て甘い判断を下すと痛い目を見る事を、遊真はかつての戦場で痛いほど経験していた。

 

 だからこそ、遊真は努めて冷静に判断する。

 

 仮に、三雲が地木隊の誰かと1対1の場面になったら、負ける。あり得ないほどの幸運が積み重なれば勝てる可能性はあるものの、まず負ける。

 

 負けるが、しかし……何もできずに負けるということは、無い。

 

 この1週間で三雲が仕込んだ成果……それはせいぜい付け焼き刃程度でしかないが、それが決まれば、地木隊や影浦隊を驚かせることは、できる。

 

 次に繋がる成果を残せる。

 

 それが遊真が冷静に見た、今の三雲だった。

 

「……そうだな。ありがとう、空閑」

 

 相棒に背中を押された三雲は、控えめで、それでいて奥に自信を潜ませた、引き締まった表情を見せた。

 

 そこでタイミングを狙ったのか、たまたまなのか……じゃれあいのような喧嘩を切り上げて、彩笑がとびきりの笑顔を2人に向け、

 

「ゆまちにミック! 今日の試合、楽しみにしてるからさ! 良い試合に、しよーね!」

 

 良い試合にしよう。そう宣戦布告を打った。

 

*** *** ***

 

 案の定と言うべきか、この日の天音のコンディションは最悪だった。

 

 昨夜訪れた病の症状により、眠れぬ夜を過ごしたゆえの、寝不足。及び頭痛。

 

 不快感を押し込めたような腹痛と吐き気によって一晩中嘔吐し続けたため、ひどい空腹感に襲われつつも身体はまだ食べ物を受け入れるのを拒否しているという矛盾。

 

 加えて、それら各種の不調に引っ張られ、身体全体が鉛のように重く、倦怠感が身体の動きを鈍らせる。

 

 運動能力が高く、それに応える身体があるゆえに、脳が下す指示と実際の動きの誤差に違和感を覚え、不調へと拍車をかける。

 

 いつもなら、こういう時は学校もボーダーも休み、一日中家で寝ている。幸いな事に天音の母は、

 

「学校なんて無理して行かなくてもいいのよ」

「あんなの、1日2日休んでもどうとでもなるわ」

「ボーダーのシフトに穴が開く? 花奈ちゃんに電話しとくから、問題ないわ」

「お粥食べる? 卵も溶くからね」

「今日の仕事? 娘のピンチより優先する母の仕事なんてないわよ」

 

 と、万全の体制でサポートしてくれるのだが、流石にランク戦だけはどうにもならない。

 

 気怠い身体でなんとか本部に辿り着いたものの、天音は限界を感じた。地木隊作戦室近くの自動販売機のそばのベンチに座り込み、目を閉じて壁に背中を預ける。

 

(やっぱり、辛い……)

 

 身体中から不調を知らせる痛み(アラーム)を感じつつ、ゆっくりと息を吐く。

 

 心と体は繋がっている。体の調子が狂えば、心もまた調子を崩す。

 

 身体に影響されて乱された心……精神を落ち着かせようとした呼吸だったが、気休め程度にしかならず、天音の頭の中にモヤモヤとした不快感が渦巻く。

 

 おまけに、なんとかやり過ごした眠気が今頃になってやってきて、それに抵抗しようとすると、さらに心と身体の乱れに拍車をかける。

 

 いっそ、このまま眠ってしまおうか……天音がそう思った矢先、

 

「神音?」

 

 この世界で誰よりも、自分の意識を起こしてくれる人に、名前を呼ばれた。

 

『世界で一番綺麗な言葉は、好きな人が呼んでくれる自分の名前』

 

 どこかで聞いたその言葉を思い浮かべながら、閉じた瞼を頑張って持ち上げる。

 

「……月守先輩」

 

 目を開けると、そこにはやっぱり、不安そうな顔で自分の事を見つめる月守の姿があった。

 

「どうして、ここに……?」

 

「彩笑にお使い頼まれたの。ここの自販機のココア買ってきてって」

 

 疑問に答えながら、月守はそっと天音の隣に座る。

 

「寝不足?」

 

「そんなところ、です」

 

 いつもと同じように答えることが出来ているか不安になる天音に、月守は優しく穏やかな声で語りかける。

 

「……試合まで時間あるし、それまで寝てたら?」

 

「……そう、しよう、かな……。作戦室に、まくら、あるし……」

 

 何気なく答えた天音の言葉に、月守は首を傾げた。

 

「作戦室に枕、あったかな……?」

 

「真香」

 

「ん?」

 

「真香の、太もも……。膝枕に、ちょうど、いい、柔らかさ、なんです、よ」

 

 いつもの無表情でまさかのカミングアウトを受けた月守は、友達のことを枕扱いした事に突っ込むべきか、自身が経験したことのない膝枕という行為の詳細を尋ねるべきか、迷った。割と本気で迷った。

 

 そこへ、

 

「あと……真香、歌も、うまいから……心地いい歌、リクエストすると、よく眠れ、ます」

 

 天音がさらに情報をつぎ込み、月守を混乱させた。

 

 混乱した月守だが、ここで黙ってしまうのは何となくマズいと判断し、会話を途絶えさせないように意識する。

 

「膝枕がどんなものか体験した事はないけど……確かに、よく眠れそうだね」

 

「はい。……月守先輩も、一回、試してみると、いいですよ」

 

 小首を傾げて提案する天音だが、その状況を想像した月守は思わず苦笑した。

 

「それは……色々な意味でアウトだと思うし、そもそも真香ちゃんは俺にそんなことさせてくれないと思う」

 

 セクハラですよ、とか普通に言われそうだな……と月守が思っていると、

 

「んー……だったら、今度……月守先輩が、眠くて、仕方ない、とき、あったら……私が、膝枕して、あげます、よ?」

 

 天音が冗談か本気か判断しかねる無表情で、そんな提案をしてきた。

 

「……」

 

 その提案を受けて、月守の全てが止まる。思考、脈、呼吸、時間、全てが一瞬止まった。

 

 一瞬の沈黙を経て、月守は言葉を捻り出す。

 

「神音……まだ、酔ってる?」

 

「……いいえ。ただ……すごく眠くて……ちょっと冗談、言った、だけ、です……」

 

 そう答える天音はやっぱり無表情で、月守はそこから何の感情も読み取れない。それでも、

 

(……見つけた時よりは、元気になったのかな?)

 

 自動販売機の前で、死ぬように眠りにつきそうだった時と比べると、いくらか元気になったように見えた。

 

「……そっか」

 

 呟くように言って、月守は立ち上がる。

 

「今から作戦室戻るけど……一緒に行く?」

 

「……もうちょっと、ここで休んでから、行き、ます……」

 

「ん、わかった。……あんまり遅いと、真香ちゃん……枕をここに寄越すからね」

 

「……りょうかい、です」

 

 本音を言えば、背負ってでも作戦室に連れて行って寝かせてあげたいと、月守は思っていた。しかし天音の意思を尊重して、自分の気持ちを心の中へと押し込め、先に戻ることにした。

 

 作戦室に向けて一歩踏み出したところで、月守は天音にすぐにでも伝えるべきものがあったことを思い出して振り返った。

 

「神音」

 

「……? はい?」

 

 少しだけ……本当に少しだけ小首を傾げた天音に向けて、月守は、

 

「……カップケーキ、美味しかったよ。また来年も、食べたいって思ったくらい」

 

 昨日もらったバレンタインの贈り物(カップケーキ)の感想を、伝えた。

 

「……」

 

 それを聞いた天音は目を丸くしてキョトンとしたような雰囲気を醸し出した後、淡々とした声で答えた。

 

「……ありがとう、ございます。……でも、月守先輩が、食べたいなら……来年まで待たなくても、作ります、よ?」

 

「あはは、それは嬉しいけど……()()がいいな。また来年、神音からチョコ貰いたい」

 

 月守が『来年』という言葉に込めた重みを、天音は違えずに受け取った。受け取った上で、

 

「わかり、ました。……来年、絶対に渡します、ね」

 

 必ず渡す(生きる)と、答えた。

 

 

 

 

 

 月守が立ち去ってベンチに一人残された天音は、俯いて両手で顔を隠す。

 

「……もう。私……単純だなぁ……」

 

 月守先輩と話せただけで。

 美味しかったよと言ってもらえただけで。

 嬉しくて嬉しくてたまらない。

 

 嬉しいという思いが……心の回復が、体へと影響を与える。

 

 さっきまでどうしようもなく辛かった身体なのに、ほんの少し、良くなったように思えた。

 

「……ありがとうございます、月守先輩」

 

 今日一日、頑張れそうです……と、天音は誰にも聞こえないくらい小さな声で、お礼を言った。

 

 

 

 

 

 

 月守が作戦室に戻ると、

 

「クリームのたい焼きは美味しけど、やっぱり邪道じゃない?」

 

「いえ、もっと変わり種がゴロゴロしてるので、クリームたい焼きは十分王道ですよ」

 

 どういう経緯か不明だが、彩笑と真香がたい焼きについて議論していた。

 

 作戦室に戻ってきた月守に気付いた彩笑が、曇りない眼で見つめる。

 

「咲耶おかえり! ココアは?」

 

「あ……買うの忘れた」

 

「えー……」

 

 バカなの? と言いたげな目で見られた月守だが、

 

「それはさておき」

 

 と無理やり話題を断ち切って、

 

「緊急だけど、今日の作戦変更しようと思う」

 

 この上なく真剣な顔で、そう切り出した。

 

*** *** ***

 

 日が完全に暮れて、欠けた月が夜空に煌々と輝く中、ランク戦観覧室に役者が揃った。

 

『お待たせしました! B級ランク戦ラウンド4の実況を務める嵐山隊綾辻です!』

 

 雑務に押されて会場入りが少し遅れた綾辻が、やや慌てた様子でマイクを取った。

 

『解説席にはナンバーワンスナイパーの当真隊員と、三輪隊の三輪隊長にお越しいただきました!』

 

『『どうぞよろしく』』

 

 いつもと変わらずどこか余裕を持った面持ちの当真と、仕事には手を抜く気が無い真剣な表情の三輪が、声を揃えて答える。

 

 観覧室に設置されている巨大なモニターを見て、当真がどこか退屈そうに口を開いた。

 

『ステージは市街地Dか……スナイパー的には、あんまり面白くねえステージだな』

 

 あまりにも素直に面白くないと言ってのける当真を見て、綾辻は苦笑いをこぼす。

 

『狙撃しやすい大きな通りがいくつもありますが、中央にある大型ショッピングモールでの戦闘がメインになりやすいマップですので……スナイパーには厳しいマップになりますからね。……三輪隊長は、ステージ選択をした玉狛第二の意図はどのようなところにあると思いますか?』

 

 玉狛が……三雲がどんな意図を込めたのかを、三輪は推察する。

 

『……普通に考えるなら、雨取隊員による地形変更の利点を活かして……変更前後で影響が大きいマップを選んだ、というところですね。ただ……』

 

 普通に考えるなら、という前置きを当真は逃さず拾う。

 

『けどよ、三輪……それは他のチームにも当てはまるぜ? 影浦隊はやろうと思えばゾエがメテオラで建物ぶっ壊せるし、地木隊だって月守がいる。このマップには、地形変更以外の狙いがあるんじゃないか?』

 

『ええ、その通りです当真さん。そうなるとこのマップ選択にはそれ以外の意図があるんでしょうが……それを考えるのは、試合が始まってからですね』

 

 マップについての考察に区切りがついたのを見て、綾辻は各部隊の戦績について言及を始めた。

 

『マップ選択をした玉狛第二は、今シーズン破竹の快進撃を遂げているフレッシュなチームです。迎えるは、どちらもA級だった実績を持つ影浦隊と地木隊ですが……大まかに、どんな試合展開になると思いますか?』

 

 綾辻の問いかけに対して、

 

『点の取り合い』

『乱打戦ですね』

 

 当真と三輪はそれぞれ、迷わず答えた。

 

 アタッカー、ガンナー、スナイパーとバランスの良い編成ながらも攻撃的な戦法を取る影浦隊。

 

 高速アタッカーとオールラウドに立ち回れる二枚エースに加えて、守りが手薄いシューターで構成される地木隊。

 

 A級入りを目標に掲げ、大量点を狙うはずの玉狛第二。

 

 点の奪い合いが起こらないはずがない組み合わせである上に、3チームとも高レベルなスコーピオン使いがいる。当人たちがどれほど意識しているかはわからないものの、試合の内容如何ではB級内で最も強いスコーピオン使いが決まる。

 

 誰しもが、瞬きする間すら惜しむアタッカー戦が起こることを予想する中、

 

『時間です! 3チームの転送が開始され、試合が始まりました!』

 

 ラウンド4、開幕。

 

*** *** ***

 

 視界が水滴に濡れる。

 

 事前に天候設定を雨にしていたので、三雲は視界をわずかに遮る雨に驚くことなく、試合開始を迎えた。

 

『宇佐美先輩、バッグワームしたのは……』

 

 打ち合わせ通り、三雲はオペレーターの宇佐美にバッグワームでレーダーステルスをしているであろう、絵馬の大まかな位置を予想してもらう。

 

『転送開始直後の間隔を見るに、不自然に空いてるのはモール内の中だけ……うん、敵の反応は5人分あるから、絵馬くんはほぼ間違いなくモール内だよ』

 

『わかりました』

 

 事前に予想した内容の1つであり、三雲は迷わず全員に周知した作戦の開始を告げる。

 

『よし、じゃあ作戦通りに『トリオン供給機関破損、ベイルアウト』

 

 しかし三雲が言葉を言い切るより早く、一筋の閃光が彼の胸部を貫いた。

 

 

 戦闘開始12秒後、三雲修ベイルアウト




ここから後書きです。

許せ、修……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。