喰霊-廻-   作:しなー

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遅くなりました。


第14話 -三森峠3-

「……何か言うことは?」

 

「ほんっとうに申し訳ございませんでした!」

 

 雲ひとつ無い、穏やかな日差しが徐々に冬から春に近づきつつあることを示唆している気持ちの良い朝。思わず運動不足の人間でも散歩に行きたくなる程度には気持ちの良い心安らぐ朝方。そんな朝方に俺は諫山冥に頭を下げていた。

 

 90度に近いほど体を折り曲げて謝罪する俺の姿はそれはもう見事なものだっただろうと思う。自分で言うのも何だが、これまでに無いほどに完璧な謝罪であった。

 

「確か朝一番での出発を希望されたのは貴方だったように記憶しているのですが」

 

「奇遇ですね。俺にも同じような記憶があります」

 

 頭を下げたままそう返す。……ぐうの音も出ない。諫山幽に朝一で出発しますと告げたのはまさしく俺だからだ。諌山幽に啖呵を切った本人が忘れるわけがなかろうというものだ。

 

 ……さて、なぜ俺が諫山冥に謝罪をしているのか。

 

 理由は至極単純で、俺がまさかの寝坊をしたのである。昨日あの後冥さんと時間の打ち合わせをしてそのまま帰ったのだが、時間をこちらから指定したにもかかわらず諌山冥を乗せた黒塗りのクラウン2台が俺の家の前にやってきた時点で俺は完全爆睡中。インターホンに対応した母親が慌てて俺を起こしに来るまで眠りこけてしまっていたという訳だ。

 

 ……言い訳をさせてもらうと昨日は珍しく親父と母親が酒盛りをしていたので一緒にちょいと遅くまで団欒をしていたのである。妊娠をしてからは胎児に影響を与えないようにと全く酒を飲んでいなかったうちの母親だが、昨日は珍しくお酒を嗜んでいたので付き合ってあげたという訳だ。

 

 母親はお酒が大好きであり、よく晩酌をするタイプの人間だったのだが、よくよく考えてみればここ6ヶ月くらいはお酒を飲んでいるのを全く見たことが無かった。1週間に1度少量の飲酒をする程度なら胎児にそこまで悪影響を与えないらしいが、それでも胎児の事を考えて一切飲まないことにしていたらしい。ウイスキーを「ちょっとだけ」とか言いながら半分空けてしまう女がよくもまあ6ヶ月も我慢したものだと思う。

 

 だが昨日はちょうど結婚記念日であったことと、ちょうど俺がシェーカーとショートグラスを結婚記念日のプレゼントにあげたことが相まって6ヶ月ぶりに飲むことにしたのだという。

 

 本当ならカクテルを作ってあげて少し話したら寝ようかと思っていたのだが、作ってあげたギムレットをチビチビと美味しそうに飲んでいるのを見て微笑ましくなり、思ったよりも長い時間付き合ってしまったのである。母親は一杯で終わりにしていたが、親父は継続して飲んでいたので母と一緒にお酌などをして団欒していたのだ。

 

 俺は飲んでいない訳だけれど、遅くまで起きていたせいで時間通りに起きられず現在絶賛叱られ中である。親孝行をしていたのでぜひとも許していただきたいものである。

 

「……お乗りください。殺生石の反応はまだ移動していないそうですが、いつ動き出すか全くわかりませんから」 

 

「……はい」

 

 時間には結構几帳面な俺なのだが、遅刻をしてしまうとは。俺は基本15分前行動をモットーにしており、遅刻をすることなどほとんどないのだが諌山冥には遅刻する系の時間にだらしない男だと思われてしまったことだろう。

 

 ……こういう普段ならやらないような行為とか、ちょっとした掛け違いみたいなのをたまたましちゃったせいで喰霊-零-(あの世界)って壊れていったんだよなーとふと思う。黄泉が携帯の電源を切ったシーンもそうだし、神楽が黄泉に対して「黄泉はそんなことしない」なんて言葉をかけたこともそうだ。

 

 本当に些細な、一見何の問題も無いような行動が人を壊し、殺していったのだ。あの世界は本当に一から十まで救いがないよななどと思いながら車に乗り込んだのだが、そこでふととある思考にたどり着く。

 

 これが、誰かの死に繋がるかもしれないのか。流石にこの依頼に遅れた程度で誰かが死ぬだなんてそんな馬鹿な話があろうはずもないが、それでもこれから先思いもよらない落とし穴がある可能性がある。

 

 遅刻をしたのが俺じゃなくて諌山黄泉とデートの約束をしている飯綱紀之あたりだったら最悪だ。遅刻という行為がもはや対人地雷(クレイモア)じゃなくて対戦車地雷を踏み抜いていくにも等しい行為となってしまう。

 

 喰霊-零-(この作品)は名作であるのだが、徹底的に救いがない。希望は全て絶望に、愛は全て憎しみへと殺生石というフィルターを通じて変換されてしまうのだ。前者が濃厚であればあるほど後者も同様に深まっていく。

 

 元より認識をしていたつもりではあったが、改めてそれを認識して少々うんざりしてしまう。ほぼほぼあの馬鹿(三途河)のせいではあるのだが、それでも言わざるを得ない。本当になんてくそったれな世界なんだここは。

 

「そういえば対策室にはこの件を伝えてあるのですか?」

 

 自分がやろうとしている仕事の難易度に思いを馳せていると隣から声がかかる。

 

「伝えてありますよ。鼻で笑われましたけど」

 

 その声を聞いて思考を今目の前にある仕事に戻す。アルバイトの身とはいえ一応環境省に所属する人間なので環境省にもしっかりと今日のことを報告しておかねばなるまいと思い、本部に伝達をするだけはしたのだ。

 

 結果として鼻で笑われたけど。

 

 室長に取り次いでくれた男に散々バカにされた。曰く、「環境省が把握していない情報をお前は信じるのか?」だの「学生は暇でいいね」とのこと。俺も疑問に思ってた正論ではあるけど、結構本気でイラッとしました、はい。

 

 そして細かいことだが俺は学生ではなく生徒であると訂正しておこう。

 

「正直俺も半信半疑ですからね。信じてるか信じてないかで言われれば圧倒的に後者ですし。その信頼できるソースとやらっていうのは一体どこのどいつなんです?」

 

「詳しくは私も。ただ、凄腕の情報屋という話は聞いております」

 

「凄腕の情報屋ですか」

 

 非常に胡散臭いと言わざるを得ない。そんな凄腕の情報屋、何故喰霊-零-で名前を聞いていないのか。もしかすると本当に存在するのかもしれないが、アニメを見る限り霊力観測班でその役割は完結していたように思える。 

 

「昨日から相変わらず胡散臭い、とでもいいたそうな表情ですね。疑問だったのですがそれなら何故この依頼を受けたのです?受ける意味がわからないのですが」

 

 そう尋ねてくる。この疑問はもっともだ。俺はこれだけ懐疑的であるにも関わらずこの依頼を受けているのだから、そう思うのは至極全うな疑問である。

 

 確かに俺はこの情報を疑っている。ぶっちゃけると99%外れだろうとは思っているのだ。諌山幽がなんらかの策を用意して俺を嵌めようとしているのか、それとも諌山幽自体が嵌められてこの情報を流されているのかどうかはわからない。もしかするとその凄腕の情報屋とやらの単純なミスかもしれないし、こいつら家族ぐるみのなにかしらの罠かもしれない。

 

 だが、それでも俺はここにいる。受けるメリットなどほとんど皆無と思えるようなもののために以上、そこには確固たる理由がある。

 

「……言っても怒らないって約束してくれます?」

 

「……はい?」

 

 言葉通りといった表情を浮かべる諌山冥。

 

 別に俺の推測について話すことに俺自身は抵抗がないのだ。別に国家機密に触れるような内容であるわけでも無いし。だが、その推測の内容が内容なだけにそれをこの人達に話すのは抵抗がある。

 

 横顔に視線を感じる。話せ、ということだろうか。美人の視線を独り占めしていると考えれば嬉しくなくはないが、それが熱っぽい視線ではなくジトっとした視線であるなら話が別だ。むしろ美人であるからこそ「あ、見ないで貰っていいですか」と言いたくなってしまう。

 

「この前のカテゴリーA覚えてますか?俺が分家会議で散々語った三途河ってやつです」

 

「青い蝶を携えた白髪(はくはつ)の少年でしょう?特徴的だったので印象に残っています」

 

「失礼なことながら、実はその凄腕の情報屋っていうのが三途河じゃないかと疑っているんですよね」 

 

 前にも考えたことではあるが、この世界は既に俺の知っている喰霊-零-の世界ではない。土宮舞が生きていて、そして何より俺が居る。しかも自分で言うのもなんだが、そのイレギュラーたる俺は物語の中核というか、結構がっつり主要な立ち位置にいちゃったりする。居るだけでアウトな存在が、物語に参入してそれをひっかきまわしているのである。

 

 そんな状態で、あの阿呆(三途河)が正史通りの動きをするとは欠片も思えない。それこそ直接俺の家族にちょっかいをかけてきたりだとか、原作ではなかったが神楽を介してこちらにダメージを与えてくるかもしれない。そして、低いとはいえ今回の一件も三途河が介入している可能性がある。

 

 可能性は低い。だが、俺に口止めすることなくこの情報を渡したことを考えるとどうも諌山幽が嘘をついているとは考えにくいのだ。ならばどこを疑うか。そうなると情報の()()()が最も疑わしいのである。

 

「対策室の情報網は本当に広いです。やはりどうしても一介の情報筋程度が対策室にも入ってないような情報を手に入れられるとは考えにくい。それこそ事の当事者でもない限り殆ど不可能と言って差し支えないでしょう」

 

 飯綱紀之のような凄腕の退魔師がフリーになって各地を練り歩き、ローカルな所に眠っている情報を掘り起こしてきたというのなら話は別だが、今のところそんな実力のある人間の話は聞いたことがない。それに原作でも殺生石の目覚めに即座に対応していたのは神楽を筆頭とした環境省のメンバーだ。ローカルな心霊現象ならまだしも大規模な災害に関してお上に敵う存在がいるはずがない。

 

「……どういうことでしょうか?」

 

「あくまでも推測にすぎませんが、端的に言えば貴方達が三途河に騙されてるんじゃないかということです。三途河と直接会った貴女はその情報屋のことを詳しくはご存知ではないのでしょう?なら騙されてるのは諌山幽さんか情報屋から情報を貰って幽さんに伝えた誰かです」

 

 あくまでも俺の仮説がその通りならですが、と言っておくのも忘れない。内部に裏切り者がいる可能性もあるが、それは無視していいだろう。

 

「もしくは貴女方が俺を嵌めようと画策しているか、本当に勘違いかの三つが考えられますね。俺の予想としては話した順番にしたがって確率が高くなっていきます」

 

 冥さんの視線が俺に突き刺さる。正直この論を展開するのは怖かったため冥さんのご尊顔を拝見することが叶わずにいるのだが、直視などせずとも視線の温度が下がったことだけは分かった。お前らの話は信じてないよ、と遠回しに断言しているのに加えてお前ら俺を嵌めようとしてない?と聞いているのだから正直当たり前ではあるけど。

 

「……なるほど。とにかく私達が貴方に信頼されてないことだけはわかりました」

 

「いえいえ、信頼はしていますよ」

 

 信用はしてないですけど、と心の中で付け加える。隣に座っている人は戦力として期待できるけど、正直味方としては全く信用ならんのです。……俺ちょっとこの人を警戒しすぎかな?

 

「我々を無能と言ってみたり、背中を刺されるのではないかとおっしゃった口でよく言いますね」

 

「いやまぁ確かにそう言ったも同然ではあるんですけど……」

 

 クスッと冷たい微笑を1つ。こっちは何とも言えぬ苦笑を1つ。こうなるのがわかりきっていたため俺としては言いたくなかったのである。

 

「……正直に言って」

 

 お前ら騙されてるんだよ、そうじゃなければ俺を嵌めようとしてるだろと俺は述べたに等しいので、何かしら弁解をすべきなのかそれとも普通に話しかけるべきなのか考えあぐねていると、意外なことに諌山冥が先に口を開いた。

 

「貴方のその案は心持が良いものではありません。もっと言ってしまえば癪に障ります」

 

「それは、そうでしょうね」

 

 癪に障る、と冥さんは発言した。当然、俺も決して快く思ってくれるだろうなんて考えてはいない。むしろこれを言う相手が黄泉だったなら裏拳の一発は覚悟しておかなければならないような内容であるとは思っている。

 

 ……しかしそれにしては冥さんの態度は飄々としている。確かに冷たい態度ではあるが、それもいつもと比べて多少は冷たいかな?という程度。岩端さんとかならこの変化には間違いなく気づけないレベルの変化だ。

 

「貴方を陥れようと考えている、騙されている、などと思われるのは心外です。腹立たしくもあります。……しかし、実は私も同意見なのです」

 

「同意見、ですか?」

  

 

 態度に関する疑問を抱いていると、諌山冥は実のところ俺と同意見であると告白する。

 

 同意見である、ということはこの人も今回の件は殺生石が絡んでいる確率が低いと断定しているということだ。いや、それだけじゃないな。三途河が絡んでいる可能性も考慮しているということでもある。まさか俺が陥れられるということに対して同意見だと言っているわけはあるまい。

 

「ええ。貴方と同じく今回の一件はおそらく当家の勘違いで済まされる可能性が高いと踏んでいます。情報は父が掴んできたもの。私が手に入れたものではありません」

 

「だろうとは思いますけど。それならなんでわざわざ俺を同行させてまで向かうんです?控えめに言ってしまって意味がないと思うんですけど」

 

「そうですね。無駄な行為である可能性は否めません。殺生石に関してならば恐らくは徒労に終わるでしょう」

 

 そういって自分の手を見やる諌山冥。諌山奈落の臓腑を抉り出したその右手。女性らしい美しい手だが、同時に武人として立派な手でもあった。

 

「ですが、今回は行くところが行くところですので護衛がいても悪くないだろうと判断しました」

 

「そういえば詳しい行先を聞いてなかったですね。どこに行くんです?」

 

 昨日はプレゼントを買いに行こうと思ってたからパタパタとしていたのだ。東北に向かうということで朝出発にしようとは決めていたのだが、具体的には殆ど何も話していなかった。

 

三森峠(さんもりとうげ)です」

 

「げっ」

 

 しれっと答える諌山冥に、俺は思わず変な声をあげてしまう。

 

 三森峠をご存知だろうか?東北の福島県にある、通には有名な心霊スポットの一つである。旧三森峠とでも呼称するのが正しいのだろうか。昔はそこに県道が通っていたのだが、現在は新たな道路が走っているために封鎖されており、通常の方法では入ることが出来なくなっている。

 

 もし行きたい方がいれば是非行ってみるといいだろう。ネットで検索すれば入り方は簡単に調べることが出来る。多分霊感のない方には殆どなにも害はなく、夜に行ったとしても「あー走り屋うるさいなー」とか「郡山の夜景綺麗じゃないか」くらいにしか思えないはずだ。意外に車通りも多いし、旧道に入ったとしても大半の人には何も起こらないだろう。

 

 だが、霊感のある人間にとっては別だ。実はあそこは本物の心霊スポットである。俺も文献を読んだだけであって身を持って体験しているわけではないのだが、あそこは結構ヤバい系統に入る。カテゴリーで分類するならばBの下位~中位くらいだろうか。並みの退魔師なら太刀打ちできないレベルだ。

 

「三森峠って戦闘系というよりは精神系に負荷をかけてくる怨霊が多いとこですよね。片っ端から除霊してもいいなら楽なんですけど、あそこそれが効かないタイプのスポットですし……。俺そういうタイプの心霊スポット苦手なんですよね」

 

「それに、首なしライダーが出るという噂もあります。並みならば命を落としてもおかしくはないでしょう」

 

 再度変な声を漏らしてしまう俺。心霊スポットが環境省(俺達)に除霊されることなくなぜ放置されているのかをご存知だろうか?

 

 答えは簡単。除霊してもまた集まるからだ。

 

 心霊スポットには心霊スポットになった所以がある。某結核の病院なんかはそれが原因なのだが、そこにいた元来の霊を払っても払っても次から次へと新しいのが参入してくるのだ。しかも下手に除霊なんかをしようとすると逆に上位の怨霊なんかが集まり始めたりしてしまうのだ。

 

 三森峠もそれに漏れない。首なしライダーなんかが出てきたり、物理的に攻撃して来たら対処するしかないのだが、向こうが物理的な手段に出ない限りは基本的に手出しをしないほうがいいのだ。下手にカテゴリーCを払ってカテゴリーBが登場されてはきりがない。

 

 俺は戦える相手ならば怖くはない。カテゴリーDなんかただの肉の塊だし、カテゴリーB、Cだってただの雑魚だ。だが、精神的にじわじわ攻めてくるタイプで、しかも除霊できないといったケースは苦手だ。冗談に聞こえるかもしれないが、俺はホラー映画とかがあまり得意ではない。三森峠はホラー映画タイプなので正直行きたくはないというのが本音だ。

 

 完全に心霊スポットを壊滅してあげればいいんじゃないか?という声が聞こえてきそうだが、完全に心霊スポットじゃなくするにはそれこそ建物を壊して更地にして祈祷でもしてやるしかなく、かなりのコストがかかる。

 

 そしてコストの問題となるとどうなるか。地方自治体がやるか国がやるかでもめ始めるのだ。国は「地方がやれ」と主張し、地方は「国がやれよ」と言い始める。両者ともにお金など出したくないに決まっているので、「害がないなら放置しよう。封鎖だけはしとこうか」といった形になり、心霊スポットは放置されることとなる。

 

 それに、そもそもの問題として、心霊スポットをつぶしていくにはあまりに俺達の数が足りない。慢性的な人手不足のこの業界で、そんな所に気を配ってなどいられないのだ。

 

「……苦手なのですか?」

 

「ええ。とっても」

 

 多分俺はかなり嫌な表情を浮かべているだろう。

 

「この業界にいれば慣れるものと思っていましたが」

 

「慣れても根本っていうのは変えられないものだと俺は思ってます。俺は生来あまり度胸のあるほうじゃないんですよね……」

 

 憂鬱気な俺の様子に、冥さんがクスリと笑うのがわかった。笑われるのは心外ではあるが、笑われておかしくないことを言っているのでまあ仕方がない。

 

―――三森峠か。

 

 正直、結構憂鬱ではある。殴れない相手というのはとにかく面倒だ。

 

 溜息をつきながらふと前を見ると見えてくる緑色の看板。そこにウインカーを出して車が入っていく。首都高か。車に乗る人なら皆知っていることだろうが、高速道路の看板は緑色だ。都内に住んでいれば大量に見るのであまりそんな意識はしていないかもしれないけど。

 

 相変わらず静かな音を立てて車がぼったくり高速道路に入っていく。土曜の朝であるということもあるのだろう。下りは案外すいており、首都高にしてはよく流れているようだった。

 

―――そういや、到着まで冥さんと何を話そう。

 

 遅刻や行先に思いをはせてばかりで、隣の人との会話の内容を全く考えていなかった。

 

 三時間も俺は話が出来るのだろうかと不安になりながら、俺たちは東北へと向かったのであった。




次回はうまくいけばGWです。
無理なら下手すると六月以降になります。

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