東方大戌伝   作:-褌-

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玖 能力

彼女に正体を見破られた俺は静かにベッドに座っていた。

 

「貴方人型にはなれないの?」

 

ふと永琳が言葉を漏らす。

そんな言葉に俺は少し動揺しながらも首を横に振った。

すると永琳は少しこっちを睨んだ後また机の方を向きなおした。

 

「何の事情があろうともいつかは人型になってもらうわよ」

「えぇ...何でですか...」

「仕方ないわ、少しくらい私があなたをそばに置く理由がないと話もできないもの」

「マジですか」

「えぇ、それに二人には出来るだけあなたの正体を知って欲しくないし」

「知られたくないです」

「あら、そうなの」

 

素っ気なくそう言った永琳はまた机に向かい集中し始めた。

研究室に来てから3度目の沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは意外な人物だった...それは、俺でもなく永琳でもなく

依姫だったのだ。

 

「あー!ワンちゃん此処にいたのね!探したよー」

「あら依姫ここに入るときはノックしてって言ったでしょ」

「ごめんなさーい、ねぇそれよりきいて!この犬の飼育許可が出たのよ!」

「へーそれはよかったじゃない。」

 

そう言い永琳は悪い笑顔を浮かべこちらを見てきた。

やめろ その顔で俺を見るな、怖いから

 

「あ、そう言えば飼うんなら名前決めなきゃね!」

「あら?名前はまだなかったのかしら?」

「当たり前でしょ永琳!この子は野生だったんだから」

「...それもそうね」

 

今さらが俺名前無かったな。

菊さんとの会話の時も犬さんだったし...正直必要性を感じなかった...

あっても無くても変わらないだろうしね

だが飼われる以上名前は必要不可欠だ。

この場合名前はあきらめよう。彼女に任せるしか俺にはない

どんなネーミングセンスだろうと俺は驚かないぞ

 

「うーん...出来るだけ私に似た名前が良いのよね」

「なんで?」

「私が飼い主だから」

「へー、面白いわね...決めたら言ってちょうだい、作業にいったん戻るから」

「はーい」

 

そう言い彼女はその場から立ち上がり研究所の奥の方の扉に消えていった...

 

「そうねぇ...名前ねぇ...」

 

彼女は初めて名前を付けるのだろうか、とても激しく迷っている

何か頭抱えているのは少し見ていて和んでしまう

すると、何かを思った彼女は顔を上げて俺に向かっていった

 

戌姫(じゅつき)でいいわ!そうしましょう!」

 

何だその難しい名前。俺にはふさわしくないぞ...

それにあなた方姉妹と凄い名前似てしまっているんですが...

良いんですか...?ちょっと不安だ

 

「えーりん!名前決めたよー!」

 

依姫が大声で永琳を呼んだ。

彼女は待ってたと言わんばかりのスピードでこちらへと出てきた

 

「で?どんな名前にしたのかしら?」

「えっと、こいつ犬でしょ?」

「えぇ、犬よ」

「だからね、戌に姫って書いて戌姫って名前にしたの」

「でもこいつは男よ?」

「別にいいでしょ、心なしか顔が雌っぽいし」

 

え...?俺の顔雌っぽい?

ちょっとさり気に吐かれた一言の衝撃が激しいんだけど...

人型でも女扱いなのに...勘弁してくれ...

 

「まぁ、確かに女顔ね」

 

お前はお前で納得しないでくれ永琳...

 

「さぁ、名前が決まったところで依姫。戌姫は一旦借りるわ、後で返すからその時また来てくれるかしら?」

「うん、別にいいよ。永琳が出した宿題もあるし適当に時間潰しとくよ」

「ありがとう。」

 

依姫は永琳に一礼した後ドアを静かに開け廊下へと駆け出して行った

ドアを開けっぱなしにして...

 

「あの子最後までやりっぱなしなのよね...」

 

そう言い、立って永琳は開けっ放しの扉を閉めた

 

 

_______________________________________

 

「貴方この街に入って何か気づいた?」

「へ?どういう事?」

「例えば、これが変とか、これがおかしいとかよ」

「あぁ、あるある!」

「そう。何々感じた?」

「まず一つは人の速さだ」

 

これは俺がこの町の外で感じた物だ

 

「どんなかんじ?」

「一人一人の速さが1.5倍くらいになっている感覚だった」

「へぇ...」

「他にも科学技術発展速度の異常かな?」

「あら、そんな事にも気づいただなんて…あなた出来るわね」

「ちょっと何言ってんのかわかんないんだけど」

「いえ、大丈夫よ。そして今確信したわ」

「...?何を確信したんだ?」

 

 

「貴方は能力を持っているわ」

 

 

 

「は?」

 

 

俺は少し彼女を冷たい目で見つめた

 

「違うわよ!そう言う目で見ないで!」

「何が違うんだよ」

「貴方知らないの?能力の事」

「知らないよ、なんたってずっと山住だからな。流行には疎いんだ」

「あっそ。それなら説明が必要ね」

「あ、お願いします」

「まず、能力とは強力な力を持つものに与えられる力よ」

「ふむふむ」

「まず普通の人は持ってないわ、妖怪もね。その能力には圧倒的メリットが多いの」

「へー」

「例えると、何も武器を持ってない少年と剣を持っている少年位差がある。それに能力なんて先天性のものがほとんどなの。見つけるには苦労がいるわ」

 

難しいな要するにその先天性の能力とやらが俺には備わっていると...

いや、そんな感じ一度もなかったんだが...どういうことだ?

 

 

「...なので貴方にその能力のテストをさせて頂くわ。覚悟しなさい。」

 

 

半ば強制的に俺への能力テストは開始した、そして...

 

 

彼女のテストのおかげで俺は無事(?)体力のすべてを使い切った...

 

 

俺の能力は何だろうな...そんな事を考えながら俺の意識は暗転した

 

 

 

 

 


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