東方大戌伝   作:-褌-

4 / 14
肆 正体

今俺は鬼に撫でられている。

触られている部位は体の一番弱いと言っていいだろう、腹部である

ここで説明しておくが犬が相手に腹を見せるのは服従か、又は自分は相手にかなわないと見た降参の意である(確かだが)

でも俺が今こいつに腹を見せているのはどちらでもなかった

 

単に身体を診てもらいたかった

 

 

いやそう言う意味では無くてな

前も言ったが体の調子がおかしいんだ

 

「あれ?犬さん何か元気ないですね?」

 

!!

来た!気付いたここで何とか体全体でアピールするんだ!

おし...こうやって

 

俺はうまい具合にお座りして片手で腹を指しながら鬼を見た

 

「む...どうしたんですか?」

 

鬼は異変を感じ俺を抱きかかえる

やったぜ。まさかうまくいくとは...

 

「あれ?犬さんいつの間に妖怪になったんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

____________________________

 

 

 

待て、落ち着け鬼よ。

何を口走っている。俺は人間だ。

いや今なんか犬だけどさ

妖怪ってのはないだろ…な?

 

「昨日までこんな気は感じなかったんですが、微かに犬さんの中から妖力を感じますね」

 

なんやそれ。

揚力?俺は理系じゃないんで知らんわ

 

「!てことは自我を持っている可能性が...」

 

お!持ってる!

そこに気付くなんて思ったより彼女は冴えている

 

っじゃねーよ、まず話についていけない

何だ今の話を聞いたところによると、俺は妖怪で微かな揚力を持っていると...

 

どこのメルヘンだこん畜生

 

「兎に角喋れないですかね?」

 

鬼が俺に話しかけてくる

俺は首を縦に振る。

 

「やっぱり自我を持ってますね!」

 

彼女はキャッキャッと喜びながら俺を抱きかかえる

ていうか自我があること分かった後に抱くなや

嫌味か、そうか戒めか

 

「ならまずは喋れないとどうしようもないので特訓しますか」

 

へー特訓するのか

 

 

 

 

 

ちょっと待て

特訓ってなんだよ

まさか芸の練習...!?

 

 

「まずは妖力を使って話せる程度にはなってもらいましょうか」

 

だからね、まず僕には揚力がわからないんだっt

 

「あ、そう言えば生まれたての妖怪はまだ何も知らないんでしたっけ...

これは私が直々に教えてあげなければいけませんね...」

 

何故か悪寒が走った

本能的に拒むかのように

 

「ワゥ...」

 

 

 

 

「え」

 

...喋れた?

 

「今、喋りました...?」

 

「ワフ」

 

朗報、俺喋れるようになる。

 

ぅゎぁ、ぉれすこ”ぃ

 

 

「何か犬って吠えるのは普通なはずなのに凄い驚きました」

 

確かに

 

「まぁ、とりあえずこれで意思疎通は図れそうですね」

 

苦労が報われた瞬間だぁ...

まぁ、吠えれるようになったところで何もないんだけれどな

 

 

「じゃあ、明日から修業しますからねー」

 

そう言いながら彼女はまた洞窟に潜り寝息を立て始めた

 

 

何故彼女がこんな犬一匹に熱を入れているのか俺には想像もつかなかった

 

 

 

 

 

そしてまだ朝なんですが鬼さん、もう寝るんすか

 

「クゥーン...」

 

俺の声は空しくも洞窟の中を通る風に掻き消されてしまった

 

 

 

________________________________

 

皆は魔法を信じるだろうか

俺は信じない、目の前で鬼が変な丸い球を出そうと決して俺は信じない

 

「犬さん見えますか!これが妖力ですよ!」

 

少し離れた位置にいる犬が俺に向かって言う

伝わってきたので俺はその意を込めて一吠えする

 

「ワン」

 

「お、わかりましたか。妖怪の力で妖力ですからね、くれぐれもお間違えの無いように」

 

 

 

訂正、魔法でも揚力でもなかった。

 

「まぁ、これをうまい具合に使いこなすと戦えるようになるんです」

 

え、何言ってんのこいつ。

俺戦う気なんてないんですけど...

 

「今は体に纏って防御用に使うのが良いですね」

 

成程。

兎に角俺が使えるようになるには時間がかかるということだけはわかった

 

だからその謎のオーラを俺に向けるのはやめろ鬼

おい、やめろ

 

 

 

 

...俺が全力で逃げて結局彼女に捕まったのは余談だろう


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。