特地の危険生物『炎龍』との戦闘に勝利した第三偵察隊は負傷し、行く当てのない村人たちを連れ、アルヌスの丘へと帰った。
一方その頃、とある町では…
大勢の人で賑わう酒場、酒に酔った者達が笑い合い、時に怒号を飛ばしている。酒場の雰囲気を盛り上げる様々な楽器の音色があたりに響いている。
その一角では炎龍から命からがら生き延びたコダ村の生存者――メリザの話で持ちきりだった。
客A「炎龍を追い払った!?嘘だ、そんなの絶対無理だ!!」
客B「魔導師やエルフだって古代龍を倒すなんて不可能だ!本当に炎龍だったのか?新生龍や翼竜の間違いだったんじゃないか?」
メリザ「本当に炎龍だよ、この目で見たんだ!」
客C「それにあの炎龍相手にコダ村は四分の一の犠牲ですんだんだぜ?」
客達「いったい誰が!?」
そんな客達の噂話を聞き耳立てて聞いている四人組がいる。
ピニャが隊長を務める帝都隠密偵察隊だ。
ハミルトン「緑の斑服を着た正体不明のヒト種と、緑色の巨人による謎の傭兵団…騎士ノーマ、どう思われます?」
謎の傭兵団の事について先に聞いたのは茶色の髪の女騎士、ハミルトン・ウノ・ロー。
その質問に若干ウンザリとした表情で返したのは、ノーマ・コ・イグルーだ。
ノーマ「どうって…汚い酒場にまずい酒としか…」
グレイ「ノーマ、我らはアルヌスへの隠密偵察任務の途中。炎龍の話をしているのだ。」
ノーマのふざけた返答に更に返したのはグレイ・コ・アルド。ピニャは「声が大きい。」と少し強めの口調で叱った。彼らはアルヌスの丘に居座る異界の軍の情報を掴むべく、道中の酒場に立ち寄っていた。
ノーマは炎龍を追い払った傭兵団の話がやはり信じられずにいた。龍といえど数多くの種類がいる。単に翼竜の見間違えという説もある。
疑問に思っている四人に噂話の元であるメリザがやってきた。
メリザ「本当に炎龍だよ、お客さん。この目で見たんだ、間違いない。」
ノーマ「はっは、私は騙されないぞ。そんな噂話。」
ハミルトン「まぁまぁ、私は信じるから。良かったらその斑服の人達のこと、詳しく聞かせてくれない?」
ハミルトンが金貨を見せると、メリザはひったくるようにそのお金をもらった。
奪ったと言った方が正しいかもしれない。
メリザ「ありがとよ、若い騎士さん。こりゃあとっておきの話をしないといけないね。」
メリザが一つ咳払いをすると、周りの話し声がピタリとやみ、酒場を盛り上げていた楽しい音楽も消えた。
メリザ「コホン、コダ村から逃げる私達を助けてくれたのは、緑の服を着た人達が十二人と大きな緑色の巨人さん一人。女が二人いたよ。」
客A「女はどんな姿だった?」
メリザ「男ってのは皆、それだねぇ。まぁいいや。一人は背が高くてきれいな黒髪のさらっとした異国風美女。もう一人は栗色の髪で小柄な可愛い娘。牛みたいな胸でさ、だけど腰はちゃんとくびれてんだよ。」
男性客陣「おおおおっ!!」
メリザ「次に巨人の話をしようかね。巨人さんは凄く大きくて、身体中は緑色で所々に白い線が入っていたね。巨人さんの持つ巨大な鉄の魔法の杖からは炎が吐き出され、地面を深くえぐり、大きな爆発を起こすんだ。それでね、炎龍が現れて私達に向かって炎を吐こうとしたんだ。あの時は死を覚悟したねぇ。でも巨人さんが守ってくれてあたしたちは助かったんだ。巨人さんは炎龍の炎をもろに食らっても焦げ目一つすら無いんだ。」
客B「炎龍の炎って騎士の鎧も溶かすほどの高温だろ!?それをもろに食らって無事だなんて…」
メリザ「話はまだ終わってないよ。それでね、空を飛ぼうとした炎龍の足を掴んで地面にたたき落としたんだ。炎龍も負けじと尾を振り回して巨人さんを吹っ飛ばしたんだけどそんな攻撃、巨人さんには効きやしない。巨人さんは炎龍の腕を掴むんで、動きを封じたんだ。すると後から来た緑の人の頭目が何かを叫んだんだ。すると緑の人の一人が黒くて特大の、まるで鉄の逸物のような魔法の杖を取り出して、呪文を唱え始めたんだ。『コホウノ・アゼンカクニ』って唱えるととんでもない音と一緒に炎龍の左腕が吹っ飛んだんだ!」
ハミルトン「凄い人たちのようです。いかがでしょう、ピニャ殿下。」
ピニャ「妾は緑の巨人に興味がある。女、その巨人の姿見た目をもう少し詳しく教えて欲しい。」
メリザ「いいよ。巨人さんは目が一つしかないんだ。その目は左右にギョロギョロと動いていて、目の色は赤いんだ。最初は少し怖いと思ったけど、特に何もしてこないし、緑の人達とも仲が良さそうに見えたよ。」
ピニャ「そうか、詳しく教えてくれて感謝する。(全身緑色で赤い一つ目…炎龍の炎にも耐えられる強い身体…確かアルヌスの丘から帰還した兵士の話に同じ特徴の巨人の話を聞いたな。まさか!?…いや、まさかな…)」
ピニャは杯の中の酒を飲み干し、考えを払拭させた。
皆様新年明けましておめでとうございます
今年も何卒よろしくお願いいたします
本年も私の駄作小説をよろしくお願いいたします
それではまた次回まで!