GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

六個深部偵察隊の一つ、第三偵察隊隊長を任された伊丹は村を点々と移動しながら情報収集を行っていた。
すると情報にあった集落のある森を謎のドラゴンが襲撃。殆どの住民が死に絶えた中、井戸の中でその村の住民であろう少女を発見した。



第四話:エルフと炎龍とザクと…

 伊丹はMSに付けられたウィンチロープを伝って井戸の中へと降りていく。深さは大体10m程ぐらいだろうか。中は狭い上に暗い為、あのドラゴンの襲撃から生き延びることができたのであろう。底の方まで降りて水の中に入ると、水深はこの辺りぐらいまでの深さしかない。だが水温はとても低く、エルフ少女の身体も冷え切っていた。外傷は殆どなく、あると言えば伊丹が投げ入れたバケツによるたんこぶぐらいだろう。

 急いで彼女を背負い、無線で上げるよう連絡を行う。

 

伊丹「鷲谷!上げてくれ!」

 

鷲谷《了解!》

 

 その合図で鷲谷の旧ザクがゆっくりとウィンチを巻き上げていく。井戸から上がるとすぐさま、隊員に人命救助の指示を飛ばす。

 

伊丹「人命救助!急げ!」

 

一同「了解!」

 

伊丹「人ではなく、エルフなんだけどね…」

 

 心なしか、彼女の瞳から一筋の涙が流れているように見えた。地面に寝かせ、頬を軽く叩きながら声をかけて生存確認を行う。

 

伊丹「おい、大丈夫か!?目を開けろ!鷲谷、サーマルで体温を調べてくれ!栗林、体を拭くものを車から取って来てくれ、急いで!!」

 

栗林「了解!」

 

鷲谷《伊丹隊長、危なかったっすね。あともう少し遅かったら低体温症で死んでいましたよ。身体のほとんどが青色です。》

 

伊丹「分かった。黒川二曹、そっちで診てくれないか?」

 

黒川「分かりました。」

 

 緊迫した状況の中、倉田がデジカメで救出したエルフを撮影していた。呑気なものだ、と伊丹は心の内に思う。

 

倉田「エルフっすよ!伊丹隊長!!」

 

伊丹「そうだねぇ。何だ倉田、お前エルフ萌えか?」

 

倉田「自分はケモノ娘一筋ですが?エルフがいるんならケモノ娘もいるはずっスよね!絶対!!」

 

伊丹「そーねー、いたらいいね…」

 

栗林「あっち行く!見せ物じゃない!!特に倉田!!!」

 

 栗林の怒号によって、周りにいた隊員達が波のように引いていった。しばらくしてエルフ娘のバイタルが安定して来た事を伝えに黒川がやって来た。

 

黒川「失礼します。」

 

伊丹「どう?あの子。」

 

黒川「体温が回復してきています。命の危険は脱しました。」

 

伊丹「そりゃよかった。」

 

黒川「それでこれからどうしましょう?」

 

伊丹「そうねぇ…集落は全滅しているし…ほっとくわけにはいかないでしょ。保護という事にして連れ帰りましょ。」

 

黒川「隊長ならばそう言ってくれると思っていましたわ。」

 

伊丹「僕人道的でしょ?」

 

黒川「さぁ、どうでしょうか?二尉が特殊な趣味をお持ちだとか、あの子がエルフだからとかいろいろと理由を申し上げては失礼になるかと。」

 

伊丹「あ、あははははは…」

 

 黒川の口から放たれる言葉とオーラに、伊丹は動揺を隠し切れず困惑した表情を浮かべた。

 第三偵察隊は一度報告の為、アルヌス駐屯地に帰還する事を決定。そのついでにあの赤いドラゴンについて詳しい情報を得るべく一同は一度、コダ村へと向かった。村に到着して早々、村長にドラゴンの情報を片言ながらなんとか伝えると次の情報が出て来た。

 あの謎の赤いドラゴンは炎龍と呼ばれており人々から『生きた天災』として恐れられていた。炎龍は村や集落を襲い住民や家畜を貪ると、また次の村などを襲うらしい。だが村長曰く、炎龍は一度長い休眠期間に入るらしく、最低でも後50年程は活動しない筈なのだ。だが活動し始めたのだからそんな事はもはやどうでもよかった。

 コダ村の住民は村を捨て、急いで逃げるよう事を決めた。三偵は少々迷ったが、村の住民が安全な場所――少なくともここよりかは――にまで退避できる様、護衛をする事にした。

 

 同時刻――コダ村のはずれ――

 

 集落のはずれ、森の奥にある滝つぼの近くに小さな家が建っている。そこに住む魔導師のカトー・エル・アルテスタンは村から来た伝令から炎龍がすぐ近くで目撃された事を知り、急いで弟子のレレイ・ラ・レレーナと一緒に馬車で移動しようと荷造りをしていた。

 

レレイ「お師匠、これ以上は積み切れない。」

 

カトー「うーむ…レレイ、なんとかならんかね?」

 

レレイ「無理、これ以上は馬車が壊れる。」

 

カトー「仕方ないか…本が全部詰めただけでもよしとしよう。」

 

レレイ「お師匠、早く乗って。」

 

カトー「はぁ?何故儂がお主に乗らねばならんのじゃ?儂はお主みたいな幼子なんかより、お主の姉みたいなボン!キュ!ボン!な女性の方が――」

 

 確かにレレイは大人――特地基準――とは言えまだ15歳と若い、地球側ならまだ中学校に通っている年齢だ。ともなればやはり自身の発育は気にするもの。そんなアンタッチャブルゾーンに触れられて怒らない年頃の娘はいない。

 カトーの卑猥な冗談に少しイラッとしたレレイは魔法で圧縮した水の玉を勢いよくぶつける。

 

カトー「うお!?こ、こら!やめんか、レレイ!うわっぷ!?ま、魔法とは神聖なものじゃ!むやみやたらに使ってよいものではわぶ!わかったわかった…そう急かすな…全く冗談の通じん娘じゃ…」

 

レレイ「冗談とは相手の捉え方次第で変わっていくもの。特に性的な物の場合、互いの人間関係を破壊する恐れもある。大人ならわきまえて当然のこと。」

 

カトー「疲れる…本当に歳は取りたくないのう…こんな調子じゃ儂の身が持たんわい…」

 

レレイ「大丈夫、師匠の身体はゴキブリやそこら辺に生える雑草並みにしぶとい。」

 

カトー「失礼なことを言う弟子じゃ…」

 

レレイ「これはお師匠から受けた教育の賜物。」

 

 レレイはそう言って鞭を打ち、馬車を走らせようとするが一向に動く気配は無い。それもそうだろう。何故なら鞭を打っているのは馬ではなく、それよりも小さいロバなのだから。

 魔法研究に欠かせない本や道具、材料などの他にレレイとカトーも乗っている馬車は、あまりの重さに車輪が地面にめり込んでおり、文字通りこのロバにとっては荷が重すぎたのだ。

 

カトー「…ほ、ほらこいつもだいぶ年を取って来たし…」

 

レレイ「それを差し引いても本は全部持っていくといった師匠にも責任はある。」

 

カトー「し、仕方なかろう!?儂ら魔導師にとって知識の詰まった本は何よりの宝じゃ!それを置いていくことなどできん!」

 

レレイ「でもこのままだといつまで経っても移動できない。」

 

カトー「心配することは無いぞ、レレイ!我らは魔導師じゃ!ただヒトの道を進む者にあらず、じゃ!こういう時こそ魔法を――」

 

レレイ「魔法は神聖なものだからむやみやたらに使うなと師匠は言った。」

 

 レレイに次々と論破され、もはやぐうの音すら出なくなったカトー。レレイのジト目が心に突き刺さり、ついには観念して『す…すまんかった…』と謝った。

 

レレイ「いい、師匠がそう言う人だと分かっている。」

 

 レレイはそう言って自分の杖を振って馬車全体に浮遊魔法をかけ、再びロバに鞭を打つ。森を抜けて村に到着するや否や、馬車が渋滞で進めなくなっていた。どうやら荷物の積みすぎで車軸を折った馬車が道を塞いでいるらしく、負傷者もいるらしい。仕方なく待つ二人の目の前に圧倒的なまでの存在感を放つものが現れた。それは頭と肩と腰と足は緑色で、それ以外は青色という珍しい配色をした単眼の巨人。ザクⅠだった。

 

レレイ「巨大な…人?」

 

カトー「巨人じゃな…緑色の…大きいのぉ、なんだか不気味じゃ…」

 

 そんな巨人をまじまじと見ていると、その赤い目がカトー達の方へと向いた。

 

カトー「ひぃ!!い、今こっちを見おったぞ、レレイ!!」

 

レレイ「赤い一つ目、緑色の巨人…」

 

 レレイは今まで書物でも見た事の無い謎の巨人に興味津々であった。一応似たような種族としてオークやトロール、ジャイアントオーガーといった知能の低い怪異、キュクロプスという単眼の巨人種は書物でも見たことがある。

 だが目の前にいる緑色の巨人はそれらとは違う雰囲気を醸し出していた。見れば丸い円盤が横に付いた謎の杖を手に持っている。

 興味が尽きないレレイの耳に、今度は聞いた事の無い言葉が聞こえてきた。後ろを見ると緑色と茶色の斑模様の服を着て、巨人と同じような謎の杖らしき物を手に持った人達があちこちを動き回っていた。

 

カトー「聞いた事のない言葉じゃの。兵士か?女もおるのか。」

 

レレイ「お師匠、様子を見てくる。」

 

カトー「え?ちょ、ちょっと!レレイ!!」

 

 カトーの声を無視し、馬車を次々と追い越して先に進む。その先には馬車に乗っていたであろう人達が数名、地面の上に倒れていた。恐らく車軸が折れた拍子に投げ出されたのであろう。

 倒れている者の中には少女もおり、その隣では馬が苦しそうに暴れていた。

 

レレイ「この子が一番危険な状態…」

 

 レレイが少女の容体を確認しようとすると、先程の緑の服を着た女性兵士――黒川――が脈拍などを計り始めた。

 

レレイ「医術者…」

 

 そんな時だった。先ほどまでもだえ苦しんで倒れていた馬が突然起き上がり、いきなり暴れ始める。落ち着かせる余裕もない暴れ馬の前足がレレイに襲い掛かる。

 だが目の前の馬を巨大な手が掴み、押さえつけた。左に目をやると、そこには先程からいた巨人の姿があった。

 

レレイ「あの巨人が…私を助けた?」

 

 レレイはますますこの巨人と緑の服の彼らに興味が湧いた。

 その後、移動準備が整いコダ村の逃避行が始まった。だが道はこの前の雨でぬかるんでおり、車輪が埋まって動けなくなったり、再び荷物の詰め過ぎで車軸が折れたり、逃避行は困難を極めた。

 敵のテリトリーのため応援を呼ぶ事も出来ない状況の中、伊丹たちは何とかコダ村の住民たちを手助けしつつ、安全が確認できる所まで付き添う。

 

 逃避行開始から数日が経ったある日、道の真ん中で座り込むゴスロリ少女を発見した。空には無数のカラスが飛び回り、自身の身長の倍以上はあろう巨大なハルバードを抱えている。

 

伊丹「ゴスロリ少女!?」

 

倉田「えっ!?うわぉ!!等身大の球体関節人形か!?」

 

伊丹「あー勝本、古田。もしかしたら銀座で連れ去られた()かもしれない、様子見てきて。」

 

勝本「了解」

 

伊丹「………あれ?話し通じてる?」

 

鷲谷「なんだか家出した未成年者に職質している新人警官みたいっスねw」

 

ゴスロリ少女「ねぇ、貴方たちはどこからいらして、どちらへ行かれるのかしらぁ?」

 

伊丹「え~っと…なんて言った?」

 

倉田「さぁ…分かんねぇっス…」

 

黒川「見た目は子供のようですが…」

 

 困惑している伊丹達をよそに、子供や大人達は一斉に少女の周りに群がり、崇めるように歓声を上げた。

 

子供達「神官様だ!!」

 

ゴスロリ少女「どこから来たのぉ?」

 

子供「コダ村からです!」

 

老婆「村を(みな)で逃げ出しまして…」

 

男性「炎龍が出て来て、ここまで来ました。」

 

ゴスロリ少女「嫌々連れていかれるってわけじゃないのねぇ?」

 

 彼女はどうやら何かの宗教的な存在なのかもしれない、とこの時の伊丹は考えていた。そんな少女が今度はこちらに顔を向け、興味津々で伊丹達や高機動車、ザクなどを見つめた。

 

ゴスロリ少女「それにしても…随分と変わった格好ねぇ…この巨人さんは…」

 

子供「でも色々助けてくれるんだ!優しいし、悪い巨人さんじゃないよ。」

 

ゴスロリ少女「ふ~ん…(でも変ねぇ…この巨人、魂の反応が人間のそれと一緒だわぁ…どういうことなのかしらぁ?)この変な人たちはぁ?」

 

子供「この人たちも助けてくれたんだ、いい人たちだよ。」

 

ゴスロリ少女「これどうやって動いてるのぉ?」

 

子供「分かんない、僕が知りたいくらいだよ。でも乗り心地は荷車よりずっと良いよ!」

 

ゴスロリ少女「へぇ~、乗り心地がいいのぉ?私も感じてみたいわぁ、これの乗り心地♪…ちょっとつめてぇ~。」

 

伊丹「オイオイ!待て待て!小銃に触るなって!!」

 

子供「せまいよ、お姉ちゃん。」

 

伊丹「わぁ!なに持ち込んでんだ!」

 

倉田「羨ましいっス!!隊長!!」

 

 そしてなぜか伊丹の膝の上に少女が座った。伊丹はグイッと膝を動かして少女をどかせるが、少女も負けじと座りなおす。しばらくの間、車内で小さな攻防戦が続いた。

 その結果、伊丹が窓側半分、少女が車内側半分ということで決着がついた。

 

 そしてその謎の少女も一緒に同行する事となり、逃避行は再開された。数キロ移動しただろうか、辺りの景色も野原から岩肌が見える丘へと変わった。

 MSや車の中は冷房器具がつけられていて快適だが、荷車の人達は照らしつける太陽の日差しで体力が消耗している。

 

伊丹「なぁ、鷲谷。こっちの世界の太陽って日本より暑くないか?」

 

鷲谷《外気温は日本より少し高いってところですかね。》

 

伊丹「どおりで暑いと思ったわけだよ。」

 

 伊丹はふと後ろを向くと、長い列の後ろにギラギラと太陽が輝いているのが見えた。その太陽の中に鳥のようなものが映り、近づいてくるのが見えた。

 伊丹は嫌な予感を感じ取り、その直後鷲谷から通信が入った。

 

鷲谷《後方に巨大な熱源反応を確認!こちらにまっすぐ来ています!あれは……炎龍です!!》

 

伊丹「なっ!こんな開けた場所で!!総員戦闘配置!!」

 

鷲谷《後方の列が襲われそうです!!先に自分が行きます!!》

 

 鷲谷は105mmザクマシンガンを構え直すと、後方の列に向かって行った。

 

伊丹「俺たちも向かうぞ!」

 

 伊丹達の車も向きを変え、急いでアクセルを踏み込み全速力で後方へと向かう。その後方部分では既に村の人達が襲われていた。

 炎龍の口から吐き出される劫火は村の人々を焼き殺し、熱に驚いた馬は暴走して人を跳ね飛ばしていく。馬車の下敷きになるものもいれば、逃げるのを諦めてその場に座り込み神に祈りを捧げる者もいる。

 鷲谷は一旦炎龍の意識を村人からこちらに向けるべく、マシンガンの引き金を引いた。

 

鷲谷「こっちだ!トカゲ野郎!!」

 

 マシンガンは轟音を立てて火を噴き、弾頭はまっすぐ炎龍へと向かう。だが炎龍は巧みにかわし、まるで鷲谷を揶揄うように飛行する。

 

鷲谷「クソッ!トカゲのくせに空なんか飛び回りやがって!!」

 

 そんな炎龍は次のブレスを吐く準備を始める。旋回した後、村人がいる方向に急降下を開始。それまるで攻撃機の対地攻撃のようにも見えた。

 

子供「母ちゃん!急いで!!」

 

メリザ「ダメ…もう足が…お前たちだけでも逃げて!」

 

子供「そんなの嫌だ!」

 

父「メリザ!立つんだ!!」

 

 そんな家族に炎竜は容赦なく火炎を吐こうと口を開け、ブレスを放った。迫りくる火球と熱風にメリザは目をつぶった。

 だが炎龍の火は家族に届く事は無かった。不思議に思い、メリザは恐る恐る目を開けるとそこには家族に覆いかぶさり、火球から家族を守る旧ザクの姿があった。

 

メリザ「巨人…さん…」

 

 そこにようやく伊丹たちの車両部隊がやってきた。

 

伊丹「鷲谷!状況は!!」

 

鷲谷《大丈夫です!!1200度のナパームにも耐えられる強化装甲ですよ!?こんなトカゲ野郎の吐くブレスごときでザクはやられませんよ!!》

 

 すると炎龍は旧ザクの頭上を飛び去ろうとするが、炎龍の足を掴んで地面に向けて叩き落とした。

 

鷲谷《これ以上飛ばして堪るかってんだよ!!》

 

 鷲谷の機体はマシンガンを拾い上げ、炎竜の頭に銃口を突きつけた。

 

鷲谷《これで終わりだ!!》

 

 そう言って引き金を引いた、だが…

 カチッ!

 

鷲谷《あれ?》

 

 カチッ、カチカチカチ…

 どれだけ引き金を引いても、なぜか弾が発射されなかった。

 

伊丹「どうした、鷲谷!絶好のチャンスだろ!!」

 

鷲谷《え…な、なんで…あっ!た…た…弾切れです!!》

 

伊丹「嘘だろ!!」

 

 攻撃してこないザクに炎龍はハンマーの如く尾を振り回し、後方に思い切り吹き飛ばした。その衝撃でマシンガンを遠くに落とし、炎龍は今度は伊丹たちに目標を切り替え、ブレスを吐き始める。伊丹達も手持ちの64式やブローニングM2機関銃を炎龍向けて射撃するが、固い鱗に守られた炎龍には通用しなかった。このままでは伊丹達がブレスに焼かれる。鷲谷は急いで機体を起き上がらせ、炎龍を羽交い絞めにして動きを封じ込んだ。

 

鷲谷《伊丹隊長!僕が押さえている間にパンツァーファウストを叩きこんでください!!》

 

伊丹「分かった!勝本、パンツァーファウスト!」

 

勝本「了解!おっと、後方の安全確認っと!」

 

一同「馬鹿、遅いよ!さっさと撃て!」

 

勝本「東、揺らすな!!」

 

東「無茶言わんでください!コンピューター制御じゃないんだ!行進間射撃なんて無理だよ!」

 

 舗装されていない場所を走っている為に車の揺れがとてつもなく、勝本は勢いよく引き金を引いてしまった。所謂"ガク引き"である。放たれた弾頭は炎龍ではなく、鷲谷の乗る旧ザクに飛んでいった。

 

伊丹「このままじゃ鷲谷に当たる!鷲谷、避けろ!!」

 

 伊丹が声を上げたその時、ゴスロリ少女が後ろのドアを蹴り開け、屋根に上がり巨大なハルバードを炎龍に向かって投擲した。ハルバードが地面に刺さると勢いよく盛り上がり、その衝撃で鷲谷のMSは倒れ、炎龍がバランスを崩した。

 バランスを崩した事によって弾頭は左腕の比較的に柔らかい付け根部分に当たり、左腕を吹き飛ばした。炎龍は悲鳴の咆哮を上げる。その叫び声は空気を震わせ、吹き飛ばされた腕は地面に落ちる。

 そして炎龍は伊丹達を睨み付けると翼を広げ、遠くへ飛んで行ってしまった。

 

倉田「お、終わったんスかね?」

 

伊丹「あぁ…多分な。」

 

 その夜、炎龍によって亡くなった人たちの追悼が行われ、亡くなった犠牲者の中には子供の親もいた。伊丹は泣いている女の子を銀座事件の被害者の女の子と照らし合わせていた。

 どんな世界でも子供に罪は無い、その事を改めて実感した伊丹はどこか胸の内が苦しかった。伊丹は泣いている女の子の頭を優しく撫でる。

 生存者の大半は近隣の身内や他の街や村で生活する事となった。ケガをしている者や残された者はどうするのか村長に聞くと、村長は他の村人達も自分たちのことで精一杯で、他の者たちの心配をしている余裕は無いらしい。

 伊丹たちは村長たちを見送ると、残った者たちの事について考えた。残ったのはケガをした女性や男性、身内を亡くした子供や老人。後は他の理由で残った数人。伊丹は残った者たちの方を見ると、笑顔でVサインを出した。

 

伊丹「ま、いっか。大丈夫、まーかせて!」

 

 伊丹のその笑顔に安心したのか皆笑顔になった。黒川も笑っていたが、伊丹は先ほどの黒川を知っているせいか、少し引いた。

 

伊丹「…え、何この空気?」

 

黒川「いえ、二尉ならそうおっしゃると思っていました。」

 

 今の黒川は純粋に笑っているようだ。

 

伊丹「僕人道的でしょ?全員乗車!これよりアルヌスに帰還する!!」

 

 伊丹達は炎龍の腕と共にコダ村の難民を連れて、アルヌスへと帰投した。




どうも、メガネラビットです。
こちらの方も今回が今年最後の投稿になるかもしれません。
それと最近感想の方でMSの動力源に関する事やコスト面などで今の日本では不可能だとかという質問が来ましたが、これは二次小説作品です。ですので今の日本では無理とかそんなこと知ったこっちゃないのでそういった細かい設定だとかは基本的に無視して下さい。
それが許せない方がもしいた場合はすぐに閲覧を止めるように警告しておきます。それに実質今の日本で不可能なことを書いている二次小説なんて私以外にも大勢います。
これは趣味の一環でやっていて、別に細かいこだわりだとかは私にはないんです。
ですので今後そういった感想とかはおやめください。そこの所をご理解下されば幸いです。

解説コーナー

〔ザクのモノアイ機能〕

この作品のザクにはサーマル機能が搭載されております。
原作のMS IGLOO2の陸の王者、前へ!にもこの機能はちょこっと登場しています。

〔テュカ・レレイ・ロゥリィ、全員集合〕

ここで皆さんのザクの印象を聞いてみましょう。

テュカ「(気絶中)」

レレイ「どのような種族なのか気になる…」

ロゥリィ「強そうな魂…死んだら私の体通ってね?」

〔炎龍戦〕

旧ザク一機で炎龍と互角、これ全部隊で戦ったら跡形もないんじゃないの?



それでは来年も投稿していきますので今後ともよろしくお願いします!
それではよいお年を!!

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