GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

モルト皇帝の策略によって自衛隊と戦うことになった連合諸王国軍はアルヌスの丘にて攻防戦を繰り広げる。
だが数世紀分の圧倒的な技術差を数や闘争心などで埋められるはずもなく、連合諸王国軍は敗走。
モルト皇帝が安堵する中、実の娘であるピニャ・コ・ラーダはアルヌスを偵察することを命じられる。

その頃自衛隊は次の準備に取り掛かっていた。


第参話:第3偵察隊

 攻防戦を終えた自衛隊は周辺に敵勢力の活動が無いと分かると、周辺偵察を行う為に部隊を編成していた。仮設テントの中では檜垣三佐が伊丹に今後の行動内容を伝えている。

 

檜垣「…というわけで、今後の方針を決めるためにも、我々はこの地の人間・産業・宗教や政治形態の調査が必要だという結論に達したわけだ。」

 

伊丹「調査ですか?それがいいかもしれませんね。」

 

檜垣「それがいいかもじゃない!!君が行くんだ!」

 

伊丹「…まさか一人で行けと?」

 

檜垣「そんな事言うわけないだろう……まずは六個の深部情報偵察隊を編成する。編成内容等は資料に記載されている通りだ。君の任務はそのうちの一つ、第三偵察隊の指揮だ。担当地域の住民と接触して民情を把握、可能ならば友好的な関係を結んできたまえ。」

 

 手元の資料には隊員の情報と編成内容、行動目標やアルヌス周辺の地図などが記載されている。偵察隊の編成は軽装甲機動車一両、高機動車一両、七三式小型トラック一両、MS-05BザクⅠ偵察仕様機一体となっている。

 

伊丹「はぁ…まぁ、そういうことなら。」

 

檜垣「よろしい!伊丹耀司二等陸尉、これより第三偵察隊の指揮を命ずる!」

 

 テントから出た伊丹は早速装備を整え、第三偵察隊の集合場所へと向かうと、そこにはもうすで十二名の隊員が整列していた。

 

桑原「集まれ!第三偵察隊、集合しました!」

 

伊丹「おやっさん、あ、えっと……第3偵察隊の隊長になった伊丹です。」

 

 伊丹がおやっさんと呼んだ桑原陸曹長のほかに、倉田三等陸曹、富田二等陸曹、戸塚陸士長、勝本三等陸曹、東陸士長、栗林二等陸曹、仁科一等陸曹、笹川陸士長、古田陸士長、黒川二等陸曹、そして鷲谷二等陸尉の姿があった。

 

伊丹「あの日新橋でゆりかもめに乗り損ねたばっかりに、気づけば隊長か…じゃあ出発しよっか。」

 

栗林「この人大丈夫なの?」

 

 そんな不安そうな彼女を尻目に、伊丹は例のMSパイロットに会いに行った。その当人は旧ザクの前で準備をしている。

 

伊丹「えーっと…確か君だよね?偵察MSのパイロットって。」

 

鷲谷「あ、ハイ!鷲谷二等陸尉です。」

 

伊丹「じゃあ同じ階級だからため口でいいよ。俺も敬語とか慣れないから。んで?これが例の偵察用MS?あまり見た目は旧ザクと変わってないけど……」

 

鷲谷「そう見えるでしょ?でも内部はかなり改良されてるんですよ?」

 

伊丹「何が改良されてんだ?」

 

鷲谷「カメラのズーム倍率や通信範囲、熱源レーダー索敵範囲、装甲板の強化等々されているわけですよ。」

 

伊丹「ふーん、で?武装は?」

 

鷲谷「105mm旧ザクマシンガンが一丁と予備弾薬が一つ。」

 

伊丹「これなら大抵の攻撃は何とかなるだろう。じゃ、情報収集よろしく。」

 

鷲谷「頑張ります!」

 

 そして鷲谷は意気揚々とMSに乗り込むと、ザクを起動させる。ウォンウォンと融合炉が音を立てて動き始める。バーニアノズル、マニピュレーター、モノアイ等の作動確認を終え、第三偵察隊はアルヌス駐屯地を出発した。

 まず最初にコダ村と呼ばれる小さな集落に向かい、そこで村長から近くの村の情報などを収集し始める。最初こそは警戒されたものの、敵意が無いとわかると積極的に話を進めることが出来た。そして情報にあった次の村、また次の村へと移動し情報をかき集める。気づけば日は沈み、時刻は夕方になっていた。すると桑原が妙な質問をし始める。

 

桑原「なんで持ち込んだ武装はそろって旧式なんですかね?車両やMSは一応現役ですけど…」

 

伊丹「予算じゃないかな?最悪、こっちに投棄して退却って可能性まであるし。」

 

桑原「捨ててもいい武器って事ですか?」

 

伊丹「それに最新式は電子装備満載だけど、衛星が無いんじゃGPSも役に立たないしな。」

 

鷲谷《後、本土防衛が手薄になるのを懸念したんじゃないですかね?》

 

桑原「適材適所ですな。おい倉田、この先の小川で右折して川沿いに進め。しばらく行ったらコダ村の村長が言ってた森が見えてくるはずだ。」

 

倉田「了解。」

 

伊丹「お、言った通りの川だ。頼りにしてるよ、おやっさん。」

 

桑原「頼られついでに意見具申します、伊丹隊長。森の手前でいったん野営しましょう。」

 

伊丹「賛成。」

 

倉田「一気に乗り込まないんですか?」

 

伊丹「今入ったら何がいるか分からない森の中で夜になっちゃうでしょ?それに、集落があるとしたら、住んでる人を脅かす事にもなるし…俺たち国民に愛される自衛隊だよ?この任務は友好的な関係を結ぶのが目的だからね。サヴァール ハル ウグルゥー(こんにちは、ごきげんいかが)?」

 

倉田「棒読みっすねぇ。駅前留学通った方が『うるせぇ!』へへへっ……ってあれ?」

 

 伊丹が特地の言葉の翻訳本を倉田に投げつけ、それを倉田は笑いながら受け流す。そんな二人――もとい車内に鷲谷から無線連絡が入る。

 

鷲谷《隊長、前方に煙を確認!かなり巨大です!》

 

 その報告を受け、前方へ向き直ると、そこには巨大な黒い煙が天高く立ち上っていた。

 

倉田「燃えてますね…」

 

伊丹「盛大にな…大自然の驚異?」

 

桑原「というより、怪獣映画です。」

 

 そういうと伊丹は桑原から手渡された双眼鏡をのぞき込む。するとそこには……

 

伊丹「あれま!」

 

 一匹の赤い鱗を持つ巨大な竜が、口から炎を吐いて暴れていた。

 

桑原「首一本のキングギドラか?」

 

伊丹「おやっさん、古いっすね。」

 

鷲谷「ありゃエンシェントドラゴンですよ、桑原曹長殿。それと倉田、あいつを大剣で倒したいとかいうなよ。」

 

倉田「回復薬がいくらあっても足りないよ。」

 

栗林「伊丹隊長、これからどうしますか?」

 

伊丹「栗林ちゃーん、おいら一人じゃ怖いからさ、一緒についてきてくれる?」

 

栗林「嫌です!」

 

伊丹「あ、あぁそう...」

 

鷲谷《どうします?攻撃しますか?》

 

伊丹「今はまだだ。あの竜の事に関しての情報が少なすぎるからな。それと……あのドラゴンさぁ、何も無いただの森を焼き討つ習性ってあると思う?」

 

栗林「ドラゴンの習性に関心がおありでしたら、隊長自身が追いかけてみてはどうですか?」

 

伊丹「いや、そうじゃなくてね…さっきのコダ村で聞いただろう?あの森には集落があるって。おやっさん、野営は後回しかな。」

 

桑原「了解です!全員、移動準備!!」

 

 赤いドラゴンが立ち去り、夜が明けた頃を見計らって全員が森の中に突入する。集落と思われる残骸が密集した場所に着いた頃には炎がいつの間にか降った雨によって消されていた。木は黒く焼け焦げ、煙が辺りを包み、焦げ臭い匂いが立ち込めている。

 

桑原「まだ地面が温かい……」

 

倉田「これで生存者がいたら奇跡っすよ。」

 

伊丹「どうだ?MSのサーマルで探せそうか?」

 

鷲谷《無理ですね。残骸にもこんなに余熱が…》

 

 残骸の下には下敷きになり、黒く墨になった腕が天に向かって伸びている。それはまるで神に助けを求めるかのように。

 

倉田「あ、隊長…あれって…」

 

伊丹「言うなよ…」

 

倉田「うぇ…吐きそうっす…」

 

 全員で辺りを調べたが結局生存者は現れなかった。伊丹は小休憩の為、井戸の鉢に座ると水筒の中身を口の中に流し込む。

 

栗林「隊長、この集落には建物のような構造物が三十二軒。確認した遺体は二十七体と少なすぎます。大半はがれきの下敷きか、あのドラゴンに食われたと思われます。」

 

伊丹「一軒に三人と考えても、百人近い人数が全滅か……」

 

栗林「酷いものです。」

 

伊丹「この世界のドラゴンは集落を襲うことがあるって報告しておかないとな...」

 

栗林「門の防衛戦で登場した小さなドラゴンでも腹部を12.7mm徹甲弾でどうにか貫通ということでした。」

 

伊丹「ちょっとした装甲車だね。ドラゴンの巣と出没範囲を調べておかないとねっと……」

 

 そう言いながら伊丹は新しい水を水筒の中に補充するべく、井戸の中にバケツを放り込んだ。するとコーンと不可解な音が聞こえてきた。不審に思い井戸の中を調べるとそこには……

 

伊丹「人だ…人がいるぞ!!!」

 

 金髪の美しいエルフの女性が水面に浮かんでいた。




どうも、メガネラビットです。今回は第三偵察隊の初任務となりました。
今回はここまでとなります。次回はコダ村の脱出支援と炎竜との戦闘シーンです。
どうぞお楽しみに!!

それでは、また次回お会いしましょう!!
では!!

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