銀座の中心部に現れたGATE。そこから襲いくる帝国軍との戦闘の末、撤退させることに成功。
日本政府は銀座事件の首謀者に責任追及と賠償させる為、自衛隊を特地へと派遣することを決定。
GATEを超えた先に待ち受ける帝国軍との戦闘にも勝利し、アルヌスの丘と呼ばれる場所の防備を固めつつあった。
その頃、帝国の首都、ウラ・ビアンカでは...
自衛隊がアルヌスの丘周辺の防備を整えつつある中、帝都では元老院議員による緊急会議が行われていた。
ガーゼル「大失態でしたな皇帝陛下、帝国の保有する総戦力のなんと6割を損失。いかなる対策をお考えですかな?皇帝陛下はこの国をどのようにお導きになるおつもりか?お教え頂きたい。」
ガーゼル侯爵の耳が痛くなるような質問に周りの議員たちはざわめきたてる。王座に深々と座る一人の男、皇帝陛下と呼ばれるその男、モルト・ソル・アウグスタスを除いて。
モルト「ガーゼル侯爵、貴殿の心中は察するものである。此度の損害で帝国が有していた軍事的な優位が失せた事も確かだ。帝国に服している諸国が反旗を翻し、帝都まで進軍してくるのではないかと不安なのであろう?だがそういった危機の度に皇帝元老院、そして国民が心を一つにして立ち向かい、今日まで切り抜けてきたではないか。250年前のアクテク戦役のようにな。戦争に百戦百勝はありえない。ゆえに此度の戦いの追及はせん。まさか他国の軍勢が帝都を攻撃するなど…裁判ごっこに明け暮れようとする者はおらぬな?」
モルト皇帝の冗談混じりの一言に周りの議員が少し笑うが、ガーゼル侯爵は不服だった。
ガーゼル「自分の責任を不問に…」
ゴダセン「しかしいかがなされる?送り込んだ軍はわずか2日で壊滅してしまった。しかも門は奪われ、敵はこちらに陣を築こうとしているのですぞ!無論我らも丘を奪還せんと迫りました!だがアルヌスの丘が点滅したと思った次の瞬間、周りが吹き飛んだのです!あんな魔術わしは見たことも御座いません!!それにあの緑の巨人、我々の攻撃はすべてはじかれ、更には謎の鉄の杖を振り回し、兵たちを次々と殺していくのです!!逃げ帰ってきた兵士たちは悪魔の化身、地獄からの使者などと怯えております!!」
ポダワン「なら戦えばよいのだ!!兵が足りなければ属国から集めればよい!!そして、再び門の向こうに攻め込むのだ!!」
ポダワン議員の発言に周りからはヤジが飛んでくる。『力ずくで戦ってもどうにもならい、ゴダセン議員の二の舞になるだけだ!』と言う者もいれば、逆に『このまま黙って見ているわけにはいかないだろう!』と交戦的な者もいる。議事堂内が騒然となる中、モルト皇帝が手を挙げると、それを合図に先ほどまで凄惨を極めていたヤジがぴたりと止まった。
モルト「事態を座視することは余は望まん、ならば戦うしかあるまい。属国や周辺諸国に使節を派遣せよ!!フォルマート大陸侵略を狙う異世界の賊徒を撃退するために援軍を求めるとな!!我らは連合諸王国軍ゴドゥ・リノ・グワバンを糾合し、アルヌスの丘へと攻め入る!!!」
一斉に歓声が巻き起こり、議事堂内に忠誠を誓う声が響き渡った。
ガーゼル侯爵「皇帝陛下、アルヌスの丘は人馬の骸で埋まりましょうぞ!」
モルト皇帝はその言葉に答えるように、ニヤリと不気味に笑った。すぐさまこの情報は使者を通して周辺諸国の軍に伝わり、連合諸王国軍が結成。アルヌスの丘へと進軍を開始した。
アルヌスの丘奪還作戦当日。小高い丘に佇む眼帯をつけた一人の男、エルベ藩王国国王であるデュランは続々と合流する諸王国軍の隊列を見ていた。
デュラン「連合諸王国軍か…」
そこに顔馴染みでもあるリィグゥ公が話しかける。
リィグゥ公「さて、デュラン殿。どのように攻め込みますかな?アルヌスに先発した帝国軍の情報によると異世界の兵達は穴や溝を掘って籠もっている様子だ。これほどの軍をもってすれば鎧袖一触、戦いにもなりますまい。これほどの人数を相手にする敵が哀れで仕方ない。」
デュラン「そうですな…だがそれほどの敵ならばなぜモルト皇帝は連合諸王国軍を呼集したのか?それなら帝国が保有する軍だけで事足りるはず…」
リィグゥ公「我々に手柄を立てさせてくれるのでは?」
デュラン「それなら有難いのだがな。リィグゥ公殿、戦いに油断や慢心は禁物ですぞ。」
リィグゥ公「ハハッ、貴公も歳に似合わず神経が細かい事だ。なに、敵はせいぜい一万ほど。二十一ヵ国総勢合わせて三十万を号する我らが合流すれば、自ずと勝敗は決しましょうぞ。どうやら敵には巨大な緑色の巨人がいるそうだが、せいぜいオークかジャイアントオーガー程度でしょう、我らの敵ではありません。」
リィグゥ公をはじめとしたそこにいる者達は、勝てると信じていた。いや、もはや勝つ事しか考えていなかった。だが次の日…彼らは予想すらつかぬ結果を知る事となった。
早朝、諸王国軍は自衛隊の陣地があるアルヌスへと進撃を開始。その様子は見張りの自衛官からもハッキリと見えていた。
自衛官A「…ん?あ、あれは…敵襲!!総員戦闘配置!!」
戦闘配置という掛け声とともに大勢の自衛官が64式やミナミを手にし、戦車乗員は74式に、MSパイロット達はMSに乗り込んで準備を開始した。更には後方のバンカーから肩に長距離砲を積んだMS-06K『ザクキャノン』が現れる。
このMSは長距離攻撃に特化しており、主に砲撃による長距離支援を得意としている。自走砲に比べ、地形を気にせずに砲撃支援が出来ることのほかに、胴体部分を切り離して固定砲台にする事も可能となっている。
自衛隊が着々と迎撃準備を行っているとも知らない連合諸王国軍は、帝国軍との合流の報告を今か今かと待ちわびていた。すると伝令の騎士兵が駆け足でデュランの前までやってきた。
騎士兵「報告!前衛のアルグナ王国軍、モゥドワン王国軍、続いてリィグゥ公国軍、アルヌスへの前進を開始しました!」
デュラン「うむ。それで、帝国軍と合流は出来たのか?」
騎士兵「そ…それが、帝国軍の姿は一兵もおりません!!」
デュラン「なに!後衛も残していないのか!!」
デュランが騎士兵の報告に驚いたその時、ザクキャノンの155mm榴弾砲から砲弾が発射され、弧を描いた。それはそのまま敵軍の中心部へと落ちていき、巨大な爆発を生んだ。砲弾が落ちた中心部には大きなクレーターが出来上がり、そこにいた兵士達は見るも無惨な姿で死に絶えていた。
今まで聞いた事がない爆発音にデュラン達は何事かと丘へ向かう。そこには巨大な火柱に次々と飲み込まれる兵士たちの姿があった。
デュラン「なっ、何事だ!?アルヌスが噴火したのか!?」
デュランの目には丘の上で肩に砲を担いだ砂色の巨人や、鼻の先から火を噴く鋼鉄の象、いくつも点滅する光の矢が味方の軍勢を一方的に撃ち殺している光景だった。もはや戦いではない、これは虐殺である。
デュラン「な、何だあの巨人は…亜神だとでも言うのか?一方的で圧倒的な力と恐怖、そして何事も近づけさせないような強固な身体……我々は…一体何と戦っているのだ!?」
連合諸王国軍第一陣は全滅。しばらく経つと連合諸王国軍は再編成され二度目の攻勢に打って出る。次はワイバーン部隊を大幅に増やした航空戦力主力の部隊だ。それに対抗する形でMT-05V『ザクタンク』対空戦闘特化改修車を出撃させた。
ワイバーン部隊が一斉に槍を構え、ザクタンクに向かって突撃を敢行。翼竜の搭乗者は目の前にいるザクタンクを恐れていた。第一陣をいとも簡単に大勢葬り去った謎の巨人。その赤く光る
あともう少しで手に持つ得物をあの巨人共の目に突き刺すことが出来る。そう思い更に翼竜を加速させたその時だった。二連装砲からおびただしい量の弾が発射されワイバーン部隊に次々と襲い掛かる。大量の破片が翼竜部隊を無残に切り刻んでいき、その上に乗っていた搭乗者は相棒と同じ最期を迎えるか、翼竜から落ちて地面に叩きつけられ、血肉を土に滲み込ませるかの二択を強制的に選ばされた。
地上の歩兵や怪異達は落ちてきた翼竜やその搭乗者に驚き、運の悪いものは下敷きにされて死んでいった。
その夜、残った者達との、おそらく最後になるであろう会議が行われていた。
王A「十万を超えた諸王国軍はすでに半数が存在せぬ…なぜこのような事態に…」
王B「帝国軍はどこで何をしておるのか!?」
王C「いや、帝国軍とてかなう相手では無い。ここはもう引くしかないのでは…」
デュラン「このまま逃げて帰るわけにはいかん…せめて一矢報いてやらねば…」
王A「しかし、デュラン殿!我々の力では…」
デュラン「…夜襲ならあるいは…今夜は新月…この闇夜に乗じ、丘の裏手から仕掛ければ気づかれることなく、敵陣へ迫れるはず…」
デュランは残った兵力を総動員させ、アルヌスへと向かった。辺りは暗く、月の明かりも無い。これならあの異界の敵を葬り去れる。だが自衛隊はそんな彼らを見過ごさなかった。
自衛官A「ニッフィー3、ニッフィー3、敵を視認。地面が三分に敵が七分、繰り返す!地面が三分に敵が七分だ!!戦闘配置!総員戦闘配置!!」
自衛官B「またか、くそ!三度目だぜ、今度は夜襲か!」
自衛官C「DVD途中なのに…」
自衛官A「つべこべ言うな!急げ急げ急げ!!!」
文句を言いながらも自衛隊員は64式やミニミを用意する。ザクもマシンガンやバズーカに弾を装填して所定の位置にて待機する。一部のザクはマシンガンの銃口にM-120専用特殊照明弾頭を取り付けている。
自衛隊員「照明弾、てぇ!」
デュラン「なんと!この明るさ!!」
隊員の掛け声と共に照明弾が空に向かって放たれ、先ほどまで数メートル先も見えないほど暗かった荒野を明るく照らす。危険を察知したデュランは、馬を走らせた。
デュラン「全軍突撃!!馬は駆けよ!人は走れ!!走れ!走れ走れ!!」
自衛隊員「撃てぇ!!」
MSパイロット「撃てぇ!!」
自衛官達の64式やミニミ、74式の105mm砲やザクの持つ120mmマシンガンや280mmバズーカが一斉に火を噴き、光の矢となって敵に飛んでいく。それらがデュランの後方で爆発を生み出し、味方を吹き飛ばす。
デュラン「止まるな!!走れ!続け!!!」
デュランは爆発を振り切り、少しでも敵の陣地へと向かって駆け出していく。だが馬が鉄柵に引っかかり、彼は馬から投げ出されてしまった。
兵士A「デュラン様!!今お助けいたします!!」
兵士B「盾を前へ!!」
デュラン「うぅ……逃げろ…皆逃げるんだ!!」
だが命令の直後、目の前から飛んでくる光の矢が部下や仲間たちの命を奪っていった。
デュラン「おのれ…!!」
弓を拾い上げたデュランは矢を一本を放ったが、その行為は全くの無意味という結果で終わった。
デュラン「なぜだ…なぜ、こんなことに…ふふ…ふふふはははっははっはは!!あーーーはっはっはっはっはははは!!」
狂ったように笑い出したデュランは、爆発によって吹き飛ばされた。次の日、丘の周辺には兵士や翼竜の死体が大量に転がっており、火薬や鉄が焼ける異臭と兵士達の亡骸から腐臭が漂っていた。
伊丹「しっかし…銀座と併せて約十二万か…ちょっとした地方都市一個分の人が死んだって事か…どんな国か知らねーけど、もう末期症状じゃねぇのかな?」
諸王国軍のほぼ全滅という報告を受けたモルト皇帝は、安堵の表情を浮かべた。
モルト「これで近隣諸国が我が帝国を脅かす不安は消滅した。アルヌスより帝都に至る町・村を焼き払い、井戸には毒を投げ入れ、食料・家畜は運び出せ。さすればいかなる軍とて立ち往生し、付け入るスキは現れぬであろう。」
マルクス「焦土作戦ですか…税収の低下と内部の離反が心配です。」
モルト「離反とは?」
マルクス「カーゼル侯が中心となり、元老院で陛下の罷免を企てる動きが見られます。」
モルト「ふっふっはっは!一網打尽に元老院を整理する良い機会だ。枢密院に調べさせておくがよかろう。」
そんな会話をしていた時、後ろの扉が重々しく開くが部屋に鳴り響いた。
???「陛下!!」
モルト「わが娘よ、何用だ?」
若々しい声の正体はモルト皇帝の実の娘、ピニャ・コ・ラーダである。
ピニャ「無論、アルヌスの事です。連合諸王国軍が無残に敗走し、帝国の聖地たるアルヌスの丘に敵軍が居座っていると聞きました。この事態に陛下は何をなされているのですか!?」
マルクス「我々はこの期間に兵を集め、必ずや丘を――」
ピニャ「悠長な!!それでは敵の侵入を防ぐ事は出来ぬ!!」」
モルト「ピニャよ、そなたの言葉のとおりだ。だが我らはアルヌスの丘にたむろする敵兵についてあまりにもよく知らぬ。丁度良い、そなたの騎士団と共に偵察に行ってもらえぬか?」
ピニャ「わらわが?我が騎士団と共に?」
モルト「そうだ、もしそなたのしている事が兵隊ごっこで無ければ、の話だがな。」
モルト皇帝の馬鹿にした態度にピニャは顔を赤らめた。
ピニャ「…確かに、承りました。」
この後ピニャが思いもよらぬ助けを受けるとは誰も思わなかった。
どうも、皆さま。今回はアルヌス攻防戦でしたが、やはり敵が圧倒的戦力の前にやられていくのは心地が良いものですねwww(ゲス顔)
解説コーナー
〔アルヌス攻防戦〕
圧倒的じゃないか、我が軍は!!
〔デュラン〕
あんたは弱くない、こっちが強すぎたんだ。
〔M-120専用特殊照明弾頭〕
120mmマシンガンに装着する特殊照明弾。
約六十秒間の間、地上及び航空を照らし続ける。
〔モルト皇帝〕
殺したい…ザクマシンガンを0距離で撃ちたい…
〔ピニャ・コ・ラーダ〕
可愛いの一言に尽きる。
はい、解説になっていないかもしれないが気にしないで下さい。
次回もお楽しみに!!