GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

伊丹と鷲谷の二人なら何とかしてくれるかもしれないと言う最後の希望を頼りに、ヤオは行動を開始する。その伊丹達は帝都に到着し、講和のための園遊会を開く準備を進める。



第二十三話:最初の一歩目

帝都――皇宮のあるサデラの丘、その麓には紺碧屋根の白亜宮殿と神殿が立ち並んでいる。

その南宮にある豪華絢爛な館の中では、金髪で筋骨隆々な男と白銀髪が特徴的な兎耳の女性が交わっていた(・・・・・・)。男が首を絞め、女が苦しそうな喘ぎ声を上げる。

男の名前はゾルザル・エル・カエサル、皇帝の第1子で、ピニャとは腹違いの兄である。

女の方はテューレ、ヴォーリアバニーの国の女王である。

長い時間、陵辱の限りを尽くされ、力尽きたテューレはベッドに倒れ伏せる。そんな様子を見てゾルザルは、まるで使い尽くしたゴミでも捨てるかのように追っ払うと、メイド達を呼び着替えを始めた。

 

彼は三年前にヴォ―リアバニーの一族を襲い、奪い、破壊し、殺戮した。彼女はそんな彼の暴虐を止めようと自ら慰み者となった、一族をこれ以上殺さないことを条件に。

だがこの(クソ野郎)はそれを破り、残った者達を殺し、攫い、犯した。その事実をテューレはまだ知らされていない。

 

着替えが終わると、マルクス伯が部屋へと入ってきた。

 

マルクス「ゾルザル・エル・カエサル殿下。いけませんな、皇太子とあろうお方が汚らわしい獣人の牝(ヴォ―リアバニー)と交わるなど……」

 

ゾルザル「マルクス伯か、俺は開明的な男だから種族で差別などせんのだ。ハッハッハッ!」

 

マルクス「し、しかしもし孕んだりしますと……」

 

ゾルザル「そりゃいい、俺の子が奴らの王か。と言っても奴らの国など疾っくの疾うに滅んでいるのだがな。テューレの奴、そんな事も知らずに慈悲を乞うていたよ。おっと、あいつの耳はデカいからな、聞こえたらまずいまずい。」

 

マルクス「(残酷なお方だ……もしこの方が皇帝になったと考えたらゾッとする……)」

 

ゾルザル「ところで何の用だ?覗きか?なんならテューレの奴を譲ってもいいぞ?」

 

マルクス「め、滅相もない……実は…一部の元老院議員に不穏な動きが見受けられます。」

 

ゾルザル「……フン、どうせディアボが裏で手を引いているのだろう?皇位継承順位をゆがめようと――」

 

マルクス「いえ殿下、弟君ではありません。アルヌスの門の向こうからきた敵の使節が議員達の買収工作を進めているそうなのです。講和交渉を有利に進めるために、今この瞬間にも皇帝庭園にて……」

 

その言葉を聞いた瞬間、ゾルザルの顔が険しくなった。

 

ゾルザル「なんだと?それは本当か?」

 

マルクス「えぇ、最近になり門の向こうで捕虜になっている者が相当いることが明らかになりました。議員達はそれらの身柄と引き換えに譲歩を迫られているに違いありません。」

 

ゾルザル「なんて卑怯な……肉親の情に付け入るとは…蛮族らしいやり方だ……分かった、俺が自ら出向いて使節と議員共に忠告しておいてやろう。俺の馬を用意しろ!……ところでマルクス伯、なぜ皇帝(父上)ではなくこの俺に伝えた?」

 

マルクス「皇帝陛下の耳に入ると事が大きくなると思い……元老院との対立は帝国にとっては良い事ではありません。次代の皇帝陛下にとりましても……」

 

ゾルザル「そうだな、ディアボを利することになりかねんしな。よし!行くぞ!」

 

そう言ってゾルザルは数名の側近と共に庭園へ向かった。マルクスはその様子を見ながら呟いた。

 

マルクス「せいぜい派手にかき回して来い、馬鹿が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、帝都郊外にある庭園では多くの議員や伯爵家、侯爵家が園遊会を楽しんでいた。

ある者は酒を飲み、ある者は食い、ある者は会話をし、子供たちは楽しく遊ぶ。ここまではいつも通りの園遊会だ、だが今回はいつもとは違う。

今回は自衛隊(三偵)がいる、栗林は富田を相手に女性でも出来る護衛術を教えている。数名の奥様方は富田の逞しい肉体に若干惚れているようだ。黒川は女性の顔がより美しく見えるメイク術を奥様方に伝授している。倉田は議員の子供たちと一緒にサッカーをして遊んでいる。

 

ピニャ「議員や侯爵、伯爵の一家一族を一堂に招待する催しとは、雅量な心をお持ちであるな、スガワラ殿。」

 

菅原「いえ、大したことではありませんよ。それに今回はイタリカのメイド長が来てくれたおかげで助かりましたよ。」

 

ピニャ「此度はフォルマル伯爵家の方から協力を申し出てくれてな、イタリカの景気はアルヌスあってこそと伯爵家も理解しているのだ。」

 

菅原「しかし、あの家から来たメイドにしてはヒト種ばかりですね。」

 

ピニャ「帝都ではな……」

 

菅原「なるほど…確かに言われてみれば帝都の貴族の家では、メイドは(みな)ヒト種ばかりでしたね。」

 

その時、二人の後ろから少女が走ってやってきた。

 

???「スガワラ様!従姉妹が真珠の首飾りを見せびらかすのです!おかげでちっともパーティを楽しめません!わたくし、くやしくってくやしくって!」

 

少女は菅原の腕に抱きつき、顔をじっと見続ける。突然の事態に菅原が困惑していると、両親が慌てて駆けつけ少女を引き離した。

 

ロベルタ「シェリー、おやめなさい!スガワラ様、どうか無礼をお許しください。」

 

ピニャ「テュエリ家の者だ、カーゼル侯爵の類縁にあたる。」

 

菅原「カーゼル侯の?」

 

ピニャ「そうだ、母親の方がロベルタ・テュエリ、父親の方がイヴァン・テュエリ。その娘がシェリー・テュエリだ。」

 

菅原は何を思いついたのか、戻ろうとするシェリーと両親を引き止めた。

 

菅原「お待ちください、御両親様。どうか娘さんを叱らないであげてください。シェリー様、御両親を困らせてはいけません。いい子にしていたらきっと良い贈り物が届くと思いますよ?」

 

その優しい言葉にシェリーは菅原に惚れた。目を輝かせ、頬を紅く染めた。

 

ピニャ「口説くのが上手いな、あの娘の表情を見たか?貴殿に惚れていたぞ?」

 

菅原「ピニャ殿下、御冗談を。カーゼル侯爵との繋がりは是非にと思いましてね。」

 

ピニャ「なるほどな、まぁ許せ。ところで、イタミ殿はどこだ?姿が見えぬが?」

 

菅原「あぁ、でしたらあちらです。」

 

その先には議員達へのデモンストレーション用に造られた特設の射撃場があった。菅原に案内されると、すでに十数名の議員達の姿があった。64式小銃から放たれる7.62x51mm NATO弾が標的を撃ち抜いていく。壺は粉々に割れ、帝国軍が使用している鎧や盾はいとも簡単にバラバラにされていく。射撃を体験しているキケロ卿はこの威力に言葉を失っている。

 

続いて特地に搬入された新型機関銃、M299 5.56mm軽機関銃のデモンストレーションが行われた。このM299はベルギーFN社製のミニミ軽機関銃を改良して作製された新型機関銃であり、最近になって実戦配備が決定されたものである。分隊の支援火器として、また歩兵と同じ弾薬を共用できる軽機関銃として設計されており、ミニミと同じくSTANAGマガジンでも射撃可能となっている。毎分1000発という連射性能を活かし弾丸をばら撒き相手の行動を制限したり味方の行動のフォローをするための支援火器である。そのため銃身安定用の二脚バイポッドが標準装備されている。フィードトレイには照準器を載せるためのレイルが取り付けられており、銃身の一部が露出しているため空冷速度が向上している。ストックには整備用用具を収納できるスペースもあり、万が一の場合そこから用具を素早く取り出すことが出来る。200発の大容量マガジンに詰め込まれた5.56mm弾が、綺麗に並べられた壺を無残な姿に変えた。

 

ピニャ「(これが"ジュウ"の威力だ、キケロ卿。)」

 

伊丹「どうでしょう?これが64式小銃とM299軽機関銃の威力となります。」

 

キケロ「こ…これはどうやって作る?売ってくれまいか?」

 

伊丹「え~っと…作ってるところも売ってるところも見たことが無いので分かりかねます。」

 

デュシー「このジュウという武器、貴殿らはどの程度そろえておるのだ?」

 

伊丹「詳しくは申せませんが、一人一つは持っていると考えて下さい。えー 皆さん、次の場所に移動します。」

 

キケロ卿は名残惜しそうに64式とM299を見つめた後、他の議員と共に外に出た。外には既にMS-05LザクスナとMS-06J指揮官用ザクが待機していた。

 

デュシー「おぉ……これが…」

 

キケロ「これが兵士たちが言っていた巨人か……」

 

伊丹「これから我々の主戦力、巨人の演習を行います。鷲谷、あとは頼む。」

 

鷲谷「了解。皆さん、ここから先は私、鷲谷が説明を務めさせていただきます。我々はこちらの巨人を主戦力にしています。この巨人の名前はザクと言います。最も数の多い巨人です。これからこの巨人の戦闘訓練を行います。皆さん、あちらの斜面をご注目ください。」

 

鷲谷が指を指す方向には木の板に人が描かれた射撃訓練用の的が、10人程の分隊を組んで並んでいた。それと同じものがあと9つある。搭乗しているパイロット――多那城は武装の確認を行う。

 

多那城「通常弾薬、装填よし!安全装置、解除よし!周辺安全確認、よし!射撃準備、よし!」

 

鷲谷「目標、敵歩兵部隊!数1、射撃よーい……てぇ!!」

 

鷲谷の号令によって120mm弾が発射される。巨大な爆音が辺りに響き渡り、議員達は驚き耳を塞ぐ。発射から数秒遅れ、観測者から無線が入る。

 

観測者「弾ちゃーく……今!」

 

120mm弾は分隊の丁度真ん中に着弾し、的を粉々に吹き飛ばした。

 

鷲谷「続いて連続射撃、数9、よーい……てぇ!!」

 

多那城は単発撃ちから連射に切り替え、残りの目標に向けて攻撃を行った。一発一発撃たれるたびに空気がビリビリと震え、地面が大きく揺れる。

目標のあった場所は粉々に吹き飛び、土が露出し、黒煙を噴いていた。議員達はこの迫力にもはや声すら上がらなかった。次にビームライフルの実技試験を兼ねたお披露目が行われた。

 

鷲谷「阪疋さん、お願いします。」

 

阪疋「任せとけ、狙撃屋の腕を見せてやるよ。エネルギーチャージシステム接続、チャージ開始、充電率100%、照準システム安定、観測用ドローンとのカメラリンク確立、射撃準備完了……」

 

今回の目標は10km先の気球に取りつけた翼竜の形の的である。ここからでは見えないので議員達にはドローンの映像を見せる。

 

鷲谷「目標、敵翼竜!数1、よーい……てぇ!!」

 

銃口から黄緑色の閃光が放たれ、一直線に伸びていく。その光景に議員達は画面に釘付けとなる。そして……

 

観測者「弾ちゃーく……今!」

 

ビームが翼竜の的を撃ちぬいた。いや、もはや撃ちぬいたと言うより消し去ったと言った方が正しい。胴体から上半分が無くなっているのだから。

 

和賀佐「すごい……」

 

槲手「これが……ビーム兵器の威力……」

 

議員達はこれを見て、最悪のシナリオを考えていた。懸命に立ち向かう兵士達を嘲笑うように吹き飛ばし、翼竜を薙ぎ払い、帝都を燃やし、親族や友人、家族や恋人を皆殺しにする巨人達の戦列を……

 

デュシー「あ、あの緑の閃光は、どのくらいまで届くのだ……?」

 

鷲谷「うーん……そうですねぇ…こちらの単位で大体約19リーグ(約30km)ですかねぇ。」

 

デュシーをはじめ、他の議員達はこのありえない数字に度肝を抜かされる。

 

議員A「19リーグだと!?」

 

議員B「戦場はおろか、帝都全てがすっぽり収まってしまうぞ!?」

 

議員C「もはや敵の姿を見る事すらないのか……」

 

キケロ「デュシー侯……」

 

デュシー「うむ……このまま我らが戦えば……帝国は敗れる…いや滅ぶ。ピニャ殿下はすでにこの結論に至っていたのだな。スガワラ殿、二ホンはなぜそうまでして講和を求めるのか?これほどの力をもってすれば我らが帝国を滅ぼすことなど容易いと言うのに……」

 

菅原「それは我が国が求めているものが平和だからです。」

 

デュシー「平和か……耳心地の良い言葉だ。だが勝って得る平和と負けて得る平和は違う。甘美と苦渋、同じ平和だと言うのに、その中身は全く逆の意味が含まれている。儂は今日(こんにち)まで勝って得る方しか知らなかったが……二ホン軍が帝都を蹂躙する前に講和交渉が必要であろう。スガワラ殿、二ホンは和平にどのような条件を出すおつもりなのか?」

 

そこで菅原は4つの条件を提示した。

 

1.帝国はこの戦争の口実となった銀座事件の非を認め謝罪し、責任者を処罰すること

 

2.帝国は賠償金として8億スワニを支払うこと。地下資源採掘権でも可。

 

3.帝国はアルヌスを中心とする半径100リーグを日本国に割譲(かつじょう)すること。またその外側10リーグは非武装非戦闘地域とする。ただし条件を破り、武装して侵入した場合は侵略行為とみなし、反撃を行う。

 

4.通商条約の締結

 

以上が日本が提示した和平条件である。1と3と4については何も問題は無い。だが2の条件に議員達は自分の耳を疑った。

 

キケロ「……8億スワニだと!?」

 

デュシー「そんな無茶な!世界中の金を集めてもそんな額には到底及ばん!!」

 

ピニャ「ス…スガワラ殿…もはやそれは帝国の死刑判決と何も変わらないではないか。そんな面倒な事をせずともさっさと妾達を殺せばよかろ?」

 

菅原「流石に8億スワニはインパクトが強すぎましたか。単純に我が国の金の相場を当てはめただけなんですが……これでも年間予算を少し超える程度なんですよ?」

 

この言葉にピニャはついに気絶してしまった。

 

デュシー「8億もの額がたった一国の年間予算と同じだと?」

 

キケロ「二ホンとはそれほどの大国なのか?いや、でもあの巨人達のことを考えると8億スワニもかかるのは納得だな。」

 

この事に関しては菅原は対して驚いていなかった、むしろ予想通りとさえ思っていた。

8億もの金貨を一度に持ち帰れば特地の経済は破綻するし、世界経済も破綻する。だからそう易々と支払われてもこちら(日本)としては困るのだ。これは賠償額がまだ決まっていないと言えないから決めただけの参考例であり、問題はここからなのだ。

菅原は慌てふためく議員達を落ち着かせ、詳細な説明を行った。

 

デュシー「……つまりは賠償金に関しては応交渉ということか?」

 

菅原「えぇ、そうです。」

 

議員A「(敗走国なんぞ属国化や君主を追放したり、死刑にしたりして民は奴隷化するのが当たり前だが…)」

 

議員B「(賠償金をどうにかできれば軽い条件だな…)」

 

デュシー「賠償金額に関しては双方が納得するものにせねばな。」

 

菅原「では正式な講和会議の日程を取り決めましょう。」

 

キケロ「捕虜の帰還についても考えなければな。」

 

講和交渉が円滑に進んでいく中、伊丹は気絶したピニャを起こした。彼女は(うな)されており、身体は汗で濡れていた。伊丹が木の枝で足を突っつくと、ピニャは身体をビクつかせて飛び起きた。

 

伊丹「殿下、大丈夫ですか?魘されてましたけど?」

 

ピニャ「イタミ殿…妾はもうダメかも知れぬ…だから後生だ…あの時のことは本当にすまなかった…許してたもれ…」

 

伊丹「あの時?…あぁ、イタリカでのことか。大丈夫ですよ、あれくらいじゃ人間は死にませんよ。」

 

ピニャ「いやもうダメだ…お願いだ、許してくれ…」

 

伊丹はピニャの必死すぎる願いに若干ウンザリしたのか、はたまた呆れたのか、ため息をついた。

 

伊丹「……わかりました、許します。だから気をしっかりと持って――」

 

ピニャ「ホントか!?許してくれるのか!?」

 

先程までの疲労感はどこへやら…彼女は泣きながら伊丹に抱き着いた。

 

ピニャ「これでようやく肩の荷が全ておりた!ありがたい…本当にありがたい!」

 

伊丹「ちょ、ちょっとくっつきすぎですって~(まぁ、これも役得かな?)」

 

伊丹が鼻の下を伸ばしていると、無線機から連絡が入る。それは監視任務をしている特戦群からだった。

 

グワジン「ソロモン、こちらグワジン。送れ。」

 

伊丹「こちらソロモン、どうした?」

 

グワジン「お楽しみの最中、すまないな。騎馬の集団が八騎、SSL(監視警戒線)を越えてそちらに接近中。招待客に見えないが、盗賊や野盗にも見えない。こちらで対処するか?」

 

伊丹「グワジン、しばし待て。殿下、こちらに八騎の騎馬集団が接近中です。何かお心当たりはありますか?」

 

だがピニャは何も知らないらしく、『それがどうかしたのか?』と、ポカンとした表情を浮かべた。こういう場合は特戦群に任せれば済む話だが、今回は勝手が違う。帝国の上位軍か政府関係者だった場合、円滑に進んでいた講和が水の泡と化してしまう。伊丹は無線機を使ってそれぞれに命令を送る。

 

伊丹「園遊会会場、緊急事態発生だ。議員達を離脱させろ、高機動車を射撃場によこしてくれ。グワジンはそのまま監視を続行。MSは悪所近くの森林格納庫に輸送、急いでくれ。…殿下、議員の皆さんを離脱させます。園遊会はそのまま続行していてください、いいですね?」

 

ピニャ「分かった。」

 

伊丹「菅原さん、身元不明の騎馬集団が接近中です。安全を考慮してVIPを離脱させます。」

 

菅原「分かりました…皆さん、緊急事態が発生しました。こちらへお集まりください!」

 

伊丹「八騎の騎馬集団がこちらに接近中との連絡が入りました。お二人共、荷物をまとめて急ぎ離脱準備をお願いします。」

 

和賀佐・槲手「分かりました。」

 

議員達を集めると、高機動車に乗せて離脱準備を始める。議員達は始めて見る車に驚いていたが、事態が急を要するので急いで乗せた。

 

伊丹「皆さんを帝都の南東門の近くまでお送りします!短い間、『ドライブ』をお楽しみください!」

 

キケロ「南東門だと?」

 

デュシー「治安の悪い悪所の入口だ。あそこなら人目にもつかないし、普段、帝国兵は近づかん。」

 

全員が乗車したのを確認すると、倉田はアクセルを踏み込む。車体が大きく揺れ、高機動車は悪所へ向かった。

同時刻、園遊会会場にゾルザルの騎兵隊が到着した。ゾルザルはマルクスから聞いていた話とだいぶ違う光景に、自分の目を疑った。

 

ゾルザル「ここでは今、何をしているのだ?」

 

メイド長「ピニャ殿下とスガワラ閣下共催の園遊会でございます。見ての通り家族ぐるみの集まりでございまして、皇子様もお呼ばれに参られたのでは?」

 

ゾルザル「ピニャの?いや俺は――」

 

メイド長「でしたら皇子様方もぜひお楽しみください。」

 

メイド長に流されるようにゾルザルやその側近兵達は目の前に並べられてある料理に手を伸ばす。皇室では見たことがない料理に若干の不安感を思いつつ、一口食べてみる。ゾルザルはその美味さに目を見開いた。

 

ゾルザル「(うまい!皇室の料理より…しかもこの食感…今まで食ったことがない!おかしいな……マルクスから聞いた話と違うぞ?)」

 

そんな不思議に思うゾルザルの後ろからピニャの声が聞こえてきた。

 

ピニャ「兄様、何のご用でございましょう。」

 

ゾルザル「なんだピニャ、俺が来て迷惑そうだな。」

 

ピニャ「とんでもない、兄様を拒む門などございません。兄様は昔からこういう催しには無関心でしたので…あ、兄様にぜひ食べていただきたいものがございます。こちらです。」

 

ゾルザル「なんだこれは?見た限り、固めた米と生魚が乗っているだけだな……不味そうだ。」

 

ピニャ「これは"スシ"と言います。この料理には"ショウユ"という珍しいソースが合いますよ。」

 

彼は先ほどと同じく不安感を思いながら寿司を口の中に入れた。

 

ゾルザル「ピニャ…この料理を作った料理人はどこで見つけた?……今度宮廷に招いて皇帝陛下(父 上)にも召し上がってもらいたいな!!」

 

どうやらゾルザルは寿司が気に入ったようだ、ピニャは心の中で安堵した。

 

ピニャ「料理人についてはちょっとした縁がありまして……でもそのようなこと、宮廷料理人が許しますまい。」

 

ゾルザル「なーに、どこか貴族の館に行幸ということでいけるだろ?」

 

ピニャ「それについては後々に考えましょう。それで兄上、今日はどうしてここに?」

 

ゾルザル「あ?マルクスに行ってみろと言われた。」

 

ピニャ「マルクス伯が?なんと言って?」

 

ゾルザル「……あー!気にするな!俺の間違いだった!騎士団団長のお前が謀議(ぼうぎ)の中心なわけないしな!」

 

そう言ってゾルザルは残りの食料を持って側近達と一緒に帰っていった。議員達の家族も次々と帰っていき、後に残ったのはメイド達とピニャ、菅原と自衛官達だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇帝宮殿では椅子に深々と座るモルト皇帝と報告を行うマルクス伯の姿があった。

 

モルト「なるほどな…ゾルザルはわざわざ餌を漁って来ただけだったか、あやつらしい。まぁよい、機会はまだある。」

 

マルクス「ですが…元老院で講和会議の開始が承認されますといささか不都合がございます。」

 

モルト「余は会議そのものは否定しておらん、なぜならそれは違法でも違反でもないのだからな。だがどのような交渉をしようとも一ビタの金も、一ロムロの土地も譲るつもりはない。会議なぞ好きにさせておけばよい。話が進まなければ敵の方から交渉を打ち切って来よう。伯も自由にしておけ、いずれにせよ、帝国の敗北など到底許される事では無いからな。」

 

マルクス「ハッ!一命に懸けましても。」

 

モルト「それと…例の巨人についての対策も打っておけ。どれだけ強大で強力な魔法が使えようとも、奴らは蛮族だ。弱点は必ず出てくるだろう。」

 

マルクス「それにつきましても必ず…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシア――ウラル山脈――極秘研究施設――

 

山をくり抜いて作られたこの施設には多くの科学者や研究者、学者や軍人が忙しそうに動いていた。ロシア人のみならず、中国人の姿も見える。そんな彼らを髪を綺麗に整えたスーツ姿の男が見ていた。ジェガノフ大統領だ。そんな彼に一人の男性が声をかける。名前はトレノフ・Y・ミノフスキー、白髪に白髭が特徴的で白衣を身にまとうその姿はまさしく博士だ。

 

ミノフスキー「ジェガノフ大統領、お久しぶりです。」

 

ジェガノフ「やあミノフスキー博士、順調かな?」

 

ミノフスキー「ハッキリ言って……あまり順調ではありません。設計については大体終わりましたが、物理演算や燃費の問題、これだけの物を動かすための動力源など……問題は山積みです。」

 

そこでジェガノフはある国を思い出す。近年IT大国として名をはせ、世界的企業でリーダーに就任しつつあるあの国を。

 

ジェガノフ「……インドだ……」

 

ミノフスキー「えっ?」

 

ジェガノフ「インドだよ!あのIT企業大国の!!彼らが来てくれれば、この計画は必ず成功するだろう!!早速交渉してくる。」

 

ミノフスキー博士は鼻歌混じりに歩いていくジェガノフの後ろを静かについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、Austin MahoneのDirty Workを聴きながら執筆しているメガネラビットです。
35億…ボソッ

もうすぐ4月ですね…働きたくねぇ…朝起きるのだるい…辛い…

解説コーナー

〔俺が一番嫌いなキャラ、ゾルザル〕

なんで一番嫌いなキャラのセリフなんか書かなきゃならんのだ…
これから新コーナー『ゾルザルの拷問コーナー』でも作らんと俺の精神ストレスがマッハで溜まるぞ…(#^ω^)

〔テューレさんマジ可愛い(´ω`*)〕

あの尻尾モフモフしてめちゃくちゃ困らせたい(*´Д`)

〔シェリーのご両親の名前〕

イタリアの男女名前一覧から付けた。なぜ名前を付けたかって?後々分かるさ……

〔M299軽機関銃〕

地球連邦軍が使用していた軽機関銃。本作ではミニミの改良型という設定。
詳細な説明は本文をご覧ください。

〔デモンストレーション〕

これで確信したでしょう……日本には勝てないって事が。

〔8億スワニ〕

原作では5億スワニだったけどMS投入による年間防衛費の爆上りで3億分上がった。

〔伊丹のコードネームはソロモン〕

やらせはせん!やらせはせんぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

〔鉄人計画、難航中〕

100tを超える人型戦闘兵器なんて考えたことなかったから難しいんでしょう。日本については触れないで……

〔トレノフ・Y・ミノフスキー〕

ロシア人だからいる、ただそれだけ。

〔インド、計画に参加(強制)〕

人革連は主にロシア、中国、そしてインドから成り立ってる。だから参加。










辛いけど頑張る。誤字脱字報告、あったらお願いします<m(__)m>

それではまた次回お会いしましょう!
それでは( `ー´)ノシ

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