自衛隊に炎龍討伐を依頼したヤオだが、生息地が帝国国境外のエルベ藩王国領内であることが原因で断られてしまう。
目の前の絶望に打ち拉がれる彼女は……
ダイヤの入った袋を力なく抱きしめるヤオは、柳田が運転する73式小型トラックに乗せられ、レレイと共にアルヌス村へと送られている。ヤオの目からは生気が消え、まるで屍のように座り込んでいた。柳田はそんな彼女をルームミラー越しに見ると、願いを断った理由を話し始める。
柳田「俺達の世界の軍隊ってのは
レレイ「イタミとワシヤならやるかも……」
レレイは柳田の言葉を翻訳し彼女に説明するが、当の本人は何も反応せず、ただただ降りしきる雨を見続けるだけだった。ヤオは食堂へと案内され、奥の貴賓席に座った。
すぐ近くの席では薔薇騎士団のメンバーが、梨紗から送られてきた冬コミの同人誌の選定をしていた。彼女達の服装はPXで購入したTシャツやノースリーブにジーパンというラフな格好をしている。もはや一見すればただのコミケ帰り腐女子達によるBL同人誌品評会である。
ボーゼス「イタミ殿よりリサ様が入手した『冬の新刊』を賜りました。リサ様ご自身のと『オオテサークル』の新刊と『キギョウ』の戦利品もです。今年はかなりの戦いだったとリサ様から聞き及んでおります。」
パナシュ「流石は日本……あぁ、私も一度でいいから行ってみたい……」
スィッセス「もう待ちきれません!早速翻訳を始めましょう!!」
ニコラシカ「終わったものから至急便でピニャ様にお送りしましょう。」
楽しそうな女子会?をしていると黒髪清楚な執事番が、紅茶と菓子を持ってやってきた。茶葉の良い香りと菓子の甘い匂いが彼女達の鼻を刺激する。
執事「新しい茶葉が入りました、是非お試しください。本日のケーキは日本国青山の有名菓子店から取り寄せたミルフィユ・グラッセでございます。」
四人「おいしい!」
ボーゼス「日本という国は些細な食べ物すら芸術の域に高めてしまうのですね。素晴らしいわ!」
執事「そのことを理解できる方に食されて菓子職人も満足しておりましょう。」
執事はテーブルの上の同人誌を見て身震いを起こした。実はこの執事番は
だが彼女達が興味を示す物と言えばBL同人誌とお茶とケーキぐらいなもので、彼としては非常に困っている。
執事「(腐ってやがる…遅すぎたんだ。何に関心があるかっていう
彼は肩を落としながらその場を後にする。それを第一と第四、第六の隊長と副隊長は見ていた。
加茂「……あれって二科だよな?」
柘植「”執事番”か…」
健軍「柳田が池袋の店に研修に行かせたらしいですよ。」
大明「おぉおぉ、ようやるわ。」
用賀「それよりあれ……」
用賀は奥に座っているヤオを見ながら指を差した。口は半開きになっており、目は死んだ魚のように濁っていた。
彼女はデリラが持ってきたお茶を二杯飲むと、顔を押さえて泣き始めた。やはり目の前の現実が信じられないらしい。
ようやく掴んだ希望という名の糸は、この地獄から救ってくれると思っていた。
だがそれは叶わなかった。目の前で糸が切られ、再び地獄へと引きずり込まれたのだから。
顔を押さえる手から大粒の涙が溢れ、とめどなく流れ続ける。
六人はそんな彼女を見ながら、申し訳なさそうにコーヒーを啜った。
健軍「……用賀、なんとかしてやれんのか?」
用賀「無理ですね。」
健軍「じゃあ、大明。お前はどうだ?」
大明「第四が無理なら俺達だってできねぇよ、
柘植「なんだそりゃ、ドラゴン退治がそうだって?」
用賀「実際、初めて遭遇戦した時の件があったじゃないですか。」
柘植「伊丹の三偵か。」
用賀「それに今回は帝国国境外ですから、越境攻撃というのは野党議員の格好の攻撃材料です。」
加茂「内閣不信任の口実になるってか?くそったれ!しかしよ、伊丹達ならまたうまいことかわせるんじゃないか?あの国会中継は爆笑ものだったぜ?」
柘植「あんだけ言っておきながら注意だけで済むのは人徳…いや『伊丹』と『鷲谷』だからか?」
用賀「いやあれはあの後の三人がインパクトが凄かったからですよ。コダ村に行ったのが我々だったらそのまま避難民を連れて来たか怪しいですが……」
その発言に加茂、柘植、健軍の三人は『うっ…』と息を飲んだ。鷹はタバコに火をつけ一服すると、話を進める。
鷹「問題は今度の内閣だ、当初は帝国を叩き潰したら銀座事件の責任者を処罰し、賠償を支払わせるのが目的だった。だがそれがいつの間にか『門』の確保と防御にスケールダウンしちまった。なぜだ?」
大明「坊やだからだよ、はっきり言って連中は弱腰の事なかれ主義者ばかりだ。特地の情勢も分かってきた、帝国の立場はアメリカと同じだ。そのアメリカがいなくなればロシアや中国、朝鮮の連中や中東の過激派が暴れ出すように、こっちの世界は戦国乱世の時代に突入だ。結局いつの時代も冷戦という名の平和が一番なんだよ。」
加茂「じゃあ俺達は何のためにこれだけの戦力を特地に持ってきたんだよ!それこそMSなんて代物、帝国にとっては過剰戦力だ!ザク三機で米軍一個連隊にも匹敵するほどの戦力だぞ!?」
用賀「現在帝都で和平交渉のための工作と準備が進んでいます。その交渉が決裂したら帝都進行と攻略が開始されるでしょう。計画立案は済んでいるので作戦が開始されたらMSも総動員して、帝都占領は約五十時間で完了する予定です。」
柘植「それいつになるんだ?」
用賀「明日、明後日じゃないのは確かだ。」
加茂「待つのも仕事の内か、くそっ!デリラちゃん、コーヒーおかわり!」
健軍「そんでもってドラゴンを倒す力のある俺達の後ろでは…女が助けを求めてさめざめ泣いている……相手は魔法だとか精霊だとか目に見えないものじゃない。
鷹「最小戦力ねぇ……」
加茂「飛んでるドラゴンなんかに三偵の連中はよくLAMを当てられたよな。」
大明「空自の
用賀「相手は第三世代MBT並みの装甲を持ってるんです、威力が足りません。MBTを撃破できる
用賀はそう言いながら自前の手記に構想を書き始める。
彼が考えた作戦は以下の通りである。
①空自による攻撃で高度50m以下まで追い込む。
②そこに99式自走砲とMS-06Kザクキャノン編成による特科大隊の
③コブラのTOWと74式のAPFSDS弾、MS-06JザクⅡとMS-05JザクⅠの連続射撃による攻撃で目標を無力化。
④普通科中隊による撃破確認を行い、必要なら
この作戦に六人は難しい表情を浮かべた。
大明「なんだよこの戦力図は……俺達ジャブローに攻め込むわけじゃないんだぞ?」
健軍「とても最小戦力とは……言えんなぁ…」
六人は自由に動けない不甲斐無さを実感した。
時は経ち、外はもう闇に包まれていた。レレイは仕事があるため先に店を出ている。何かほかに用があれば組合事務所へ行くようにと伝言を残して。他にする事もないヤオは店から出ることにした。普通なら大抵の者は途方に暮れ、来た道を戻るか、絶望に打ちひしがれ自ら命を絶つ者もいる。だがそこはダークエルフ、こういった経験は何度かしてある。
軍が全体的に動くことが出来ないのであれば、名のある武将を金か色仕掛けで落とす。誰を落とせば効率的に軍を動かせるか彼女が考えていると、ふとある二人の人物の名前が頭の中に浮かび上がる。
ヤオ「(イタミと……ワシヤなら……か…)」
彼女は不気味に頬を上げると、レレイに言われた通りPXの裏手にある組合事務所へと向かった。そこではテュカが受付で仕事をしていた。
ヤオ「すまない、レレイ殿の紹介で来たんだが…」
テュカ「あぁ、レレイから聞いているわよ。ちょっと待ってて、今空き部屋探すから。」
ヤオはそんな彼女を見て再び、不気味に笑った。
どうも、will.i.am の Scream&Shoutを聴きながら執筆しているメガネラビットです。
早速ですが、今月の9日に私は18歳の誕生日を迎えました!
大変喜ばしいことです(´ω`*)
解説コーナー
〔伊丹と鷲谷なら〕
この二人がこの小説の主人公だからしょうがないよね。
まぁ、鷲谷……頑張れ。
鷲谷「そんな!(・□・;)」
〔楽しい女子会(腐敗)〕
BL同人誌品評会の皆様、もはや風貌が板についていますね。
〔炎龍討伐部隊編成〕
こんなの自衛隊じゃないわ!地球に住んでるジオンよ!!
だったら戦えばいいだろ!!
今月で私は高校を卒業し、社会人として生きていくことになります。
皆様これからもこの小説と私を何卒よろしくお願いいたします<m(__)m>
それではまた次回お会いしましょう!
それでは( `ー´)ノシ