GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

発展を続けているアルヌス村にて酒を酌み交わしていた伊丹達は、謎のダークエルフの女、ヤオと揉めてしまう。
間一髪暴力沙汰にならずに済み、ヤオは近くの森にて野宿することとなった。



第二十話:希望と絶望の間で…

アルヌス村の騒動の翌朝、空自区域のバンカー近くには燃料満タンに補給したF-4EJ改が三機待機していた。

その近くには今か今かと興奮している神子田と久里浜、堀之内の三人がいた。

 

神子田「ここには米軍も民間機も、邪魔なビルも騒音を気にする住宅街も無い!!俺らだけの空だぜ!久里浜!堀之内!迷子だけは勘弁だけどな。」

 

久里浜「おいおい、俺を誰だと思ってんだ?神子田。」

 

堀之内「はしゃぎすぎて地面とキスするなよ?」

 

久里浜「当たり前よ!お前こそ、ダイブしすぎて気失うなよ?」

 

神子田と久里浜は一緒の機体に、堀之内は担当のコ・パイロットと一緒に搭乗した。

 

タワー《こちらアルヌスタワー、六八〇、六〇三、三二〇、離陸を許可します。陸自さんと鳥さんに迷惑かけなきゃ自由に飛んでいい、ただし墜落するなよ?》

 

神子田《六八〇、了解(コピー)

 

西本《三二〇、了解(コピー)

 

堀之内《六〇三、了解(コピー)

 

 

 

一方近くの森で一晩野宿したヤオはF-4のジェット音で目を覚ました。

一瞬自分がなぜここにいるのか分からなかったが、宿が無かったから森で野宿をしたことを徐々に思い出した。

朝の風の精霊の心地よいそよ風を感じていると、精霊達が騒いだ。

そして風を切る音が段々と近づいてくるのを感じた。

その方向へと目をやると、ヤオはそこに映った光景に驚きを隠せなかった。

 

自分の上を、銀色に輝く(つるぎ)がとてつもない速さで飛んでいた。

 

神子田《どぉだぁ!ついて来れるか、西本ぉ!!》

 

西本《くそっ!後ろにつかれた!右にブレイク!!》

 

神子田《オラー!ケツ獲ったぞぉ!!》

 

西本《まだまだぁ!!瑞原(みずはら)、目離すなよぉ!!》

 

そんな二人が追いかけっこをしているもっと上では堀之内が優雅に飛んでいた。

 

コ・パイ《三尉?一緒に飛ばないんですか?》

 

堀之内《…………》

 

コ・パイ《三尉……?》

 

堀之内《……俺の()だ……》

 

コ・パイ《えっ?》

 

堀之内《掴まってろ!舌を噛むなよ?》

 

次の瞬間、彼の機体は真っ逆さまに落ちていった。

そして通信に彼の雄叫びが木霊した。

 

堀之内《イィィィィィヤッホオォォォォォォォォォォォ!!!!!!》

 

神子田《えっ!あいつまた!?》

 

西本《なっ!?ブレイク!ブレイク!!》

 

二機は左右に回避し、堀之内はその二機の間をすり抜けるように落ちていった。

そしてヤオはその光景を見て、歓喜に打ち震えていた。

 

ヤオ「人が…乗っている…彼らの噂は本当だった―――彼らなら炎龍を倒してくれる…同胞を助けてくれるに違いない!!」

 

ヤオは荷物をまとめて一目散に走り始めた。

 

 

 

 

同時刻、基地ではファットアンクルの前に第三偵察隊の隊員と旧ザク、ザクスナ、指揮官用ザクの三機、そして外交官の藤堂鉄男がいた。

目の前にある荷車には酒や工芸品の数々がぎっしりと詰まっていた。

 

柳田「日本の伝統工芸品に現代の利器の数々……おぉ!日本酒まであるよ!寒中梅の特級?こんだけあるんだから一本ぐらい無くなっても分からんよな?」

 

藤堂「やめてくださいよ、柳田さん。これは俺達外交官の武器弾薬なんですから。」

 

柳田「自分達で飲んでんじゃないだろうな?んで、こっちは活動資金の硬貨か。」

 

藤堂「えぇ、協同組合から買い上げてもらったやつです。抱かせ食わせ飲ます、金を使ってでも不平不満分子をこちら側に取り込むのはもう基本ですよ。」

 

柳田「発展途上国の役人連中には随分と効くだろうな。」

 

藤堂「連中は賄賂(わいろ)恫喝(どうかつ)が外交の基本と思ってますからねぇ、隣の中国なんて典型的ですよ。白樺ガス田や尖閣諸島のようにすぐ武力武装をちらつかしてきます。一度でいいから胸張って言ってみたいですよ、『やれるもんならやってみな』って。」

 

柳田「言えばいいじゃん、あっちでもこっちでも。今の俺達にはMS(あれ)があるんだ。」

 

そう言って柳田は親指でザクを指したが、藤堂は残念そうにため息をついて否定した。

 

柳田「確かに今の日本にはMSがあります。あれさえあれば中国や韓国、北朝鮮が一塊になって攻めてきても返り討ちにすることが出来るでしょう。ですがヘタに波風立てるわけにはいかないんですよ。今は二十一世紀であって、十九世紀の帝国主義時代じゃないんです。特地の政体は維持していく方針の可能性もありますし、禍根は残せません。今は講和派を一人でも増やすのが第一優先目標なんです。」

 

一方伊丹の方は……

 

鷲谷「うげぇぇぇぇ……気持ち悪りぃ…」

 

伊丹「だから言っただろ、飲みすぎるなって…お前昨日の事覚えてるか?」

 

鷲谷「えっとぉ……四杯目のビールを飲む前あたりは覚えてるんですけど…そこから先は全く……」

 

伊丹「(これは教えない方が良さそうだな…)」

 

昨日の酒で完全にグロッキー状態になっている鷲谷とそれを介抱している伊丹に一人のパイロットが近づいてきた。右頬に長い切り傷をつけており、まさにベテランと呼ぶに相応しい風格をまとっていた。

 

多那城「今回一緒に行動することになった多那城梶(たなじょう かじ)二等陸佐だ。アンタの噂は聞いてるぜ?神様に好かれたオタク自衛官だってな?まぁ仲良くしようじゃないか。」

 

伊丹「あ、どうもよろしくお願いします。鷲谷……誰?」

 

鷲谷「え…知らないんすか?多那城二佐は日本全国陸上自衛隊MS射撃大会で一位になった凄腕パイロットですよ?自衛隊内じゃ有名な人なのに……」

 

伊丹「へ~…でもザクスナの評価試験を帝国議員達に見せる予定だよな?それで充分なんじゃないか?」

 

そんな伊丹の質問に答える人物がいた。

 

???「通常機と試作機の違いを見せつけるためです。」

 

振り返ると赤いスーツと赤髪が特徴的な女性と、緑色のスーツを着た男性がその場に立っていた。

 

伊丹「えーっと…どちら様で?」

 

和賀佐「あぁ、申し遅れました。防衛省から参りました、和賀佐波木(わがさ なみき)技術試験員です。今回の評価試験に同行させてもらいます。」

 

槲手「同じく防衛省から参りました、槲手緋尾井(かしわで ひおい)技術試験員です。よろしくお願いします。」

 

和賀佐「ふーん…あなたがあの銀座事件の英雄と言われた伊丹耀司二等陸尉ですか……テレビで拝見していましたが…やはりあまりパッとしませんね。英雄ならもう少し良い姿勢と態度をした方がよろしいかと。」

 

伊丹「悪かったね…パッとしなくて…」

 

槲手「和賀佐評価員…申し訳ありません、彼女は少しその…言い方に少々問題が…」

 

和賀佐「あら?私は本音を言っただけよ?英雄なら英雄たる姿があるべきだと......まぁ本当の英雄は帝国軍と戦ったMSとそのパイロットなんですけどね…」

 

伊丹「鷲谷…このやり場のない怒りはどこにぶつけたらいい?」

 

鷲谷「隊長、今は(こら)えて下さい。」

 

そんなこんなで全ての準備が整い、ファットアンクルにMS三機と議員達への手土産品が乗った荷車、数名の外交官と評価試験員二名、第三偵察隊の隊員とMSパイロット二名が乗り込んだ。

ファットアンクルは左右のティルトローターを回転させ、離陸体制を整える。

 

柳田「んじゃ伊丹、後は任せたぞ!!」

 

伊丹「おう!任されて!!」

 

ファットアンクルはゆっくりと地面から離れ、無事離陸した。

 

伊丹「イタリカで一度給油のため着陸します。そこから先は帝都近郊の山中に降りて一日半馬車で移動します。皆さんまさか革靴じゃないですよね?」

 

藤堂「大丈夫ですよ、伊丹さん。ここにいるほとんどがアフリカや中東で経験済みですから。」

 

彼らを乗せたファットアンクルは基地へと向かうヤオの頭上を通過して行った。

 

ヤオ「鉄の逸物…空飛ぶ剣…空飛ぶ箱舟…そして鋼鉄の緑の巨人…ここまで来ると緑の人は何でもありだな…」

 

 

 

 

だが彼女は未だ、絶望が待ち受けている事を……知らない……

 

 

 

 

 

 

 

 




皆さん、スラマッパギィ!どうもメガネラビットです。
新年初のサバゲーを終えてただ今絶賛筋肉痛ですw

新年を迎えて一月中に二話も投稿、順調に進んでいます。
この調子で続けていきたいですねぇ。

解説コーナー

〔堀之内ダイブ〕

ダイブ癖はこの頃より前から

〔飛行時通信〕

エスコンをイメージしてみました。

〔アジア諸国全部相手にしても勝てるMS〕

ガンダムがいないだけでザクってこんなに最強兵器になるんだね……

〔多那城梶〕

フェデリコ・ツァリアーノさん初登場!
今後の重要キャラです。

〔和賀佐並木、槲手緋尾井〕

モニク・キャディラックさんとオリヴァーマイさんです。
やはりMSIGLOOと言えばこの二人じゃないと。




さて次回はヤオさんが右往左往悪戦苦闘するお話です。
頑張れヤオ。

それではまた次回お会いしましょう!
それでは( `ー´)ノシ

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