GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

日本での買い物に満足した一行は、日々の疲れを癒すために箱根の温泉旅館へとやってきた。
そこには温かい温泉と食事と共に、冷酷な工作員の特殊部隊が待ち受けているとも知れずに…


第十六話:歓迎されざる者

防衛省広域指揮運用センター、その指令室では嘉納と統幕作戦室長の竜崎一史一等陸佐が箱根の温泉旅館『山海楼』にやってきた伊丹達とは別のお客様(敵工作員)お出迎え(排除)するため作戦司令を行っていた。

目の前には女性オペレーターが特戦群の隊員に情報を送っている。

モニターには敵工作員とみられる武装した三人の人影が四角で囲われており、上にはそれぞれA1,A2,A3と表示されている。

 

すぐ近くには同じく四角で囲われた特戦群の隊員が二名いる。

下にはGWAZINE01,02と同じように表示されており、上には『♀』を逆さにしたようなマークがついている。

二人とも銃口を目標に向けており、いつでも射撃が出来る体制を整えていた。

 

オペレーターA「グワジン、北北東150に熱源三。十時から十一時、目標A(アルファ)-1,2,3とする。」

 

グワジン「こちらグワジン、目標Aを捉えた。」

 

オペレーターA「対応03、よろし?」

 

グワジン「了解。」

 

他のオペレーターも別の隊員に指示を出している、その指示には一切の迷いも躊躇のかけらもない。

有効的かつ周囲の敵の仲間に異変を悟られないよう的確な命令を出して、相手を確実に屠るための命令を出している。

 

オペレーターB「ザンジバル、ポイント3へ移動。」

 

オペレーターC「チベ、新たな熱源二。三時、距離…」

 

オペレーターA「クリア!グワジン、目標A-1,2,3排除。」

 

この様子を見て嘉納は現代の戦い方にあっけにとられていた。

 

嘉納「正直言って、今の戦争がこんなんだとは思わなかったぜ。ここから見る限りじゃ、まるでシュミレーションゲームみたいだ。」

 

竜崎「そうですね。昔のような真正面から全力でお互いがぶつかり合うような戦争は映画の中か、途上国のものになりましたからねぇ。現代戦はアフガニスタンのような警察活動とゲリラ戦が混ざった不正規戦と、イラク戦争のような敵の要点のみを一気に粉砕する作戦に大別されます。今回の作戦で行われているのは前者に当たります。」

 

嘉納「ふむ、来賓たちはどうしている?」

 

竜崎「えー、ただ今露天風呂を満喫中のようです。録画しますか?」

 

嘉納「許可する…じゃねーよ。」

 

中央のモニターにはドローンから映像が送られてきており、危険な事態が迫っているとも知らずに特地御一行は、日本の露天風呂の美しさに見とれている様子がはっきりと映っている。

 

そんな和気藹藹(わきあいあい)とした場所に近づく輩について、竜崎が詳細な説明を始めた。

 

竜崎「現在『特戦』が警護する『山海楼』に未確認の武装集団が接近を試みている状況です。装備を見る限り、国内の民間デモ集団では無い事が確認されています。」

 

嘉納「特殊作戦群か…確か伊丹もそうだったな。」

 

竜崎「はい、ですが特戦群と言いましても戦闘のプロばかりとは限りません。毒物や心理戦といった特技をもって隊員となっている者もいます。」

 

嘉納「伊丹は?」

 

竜崎「危険をいち早く察知する能力、つまり…逃げ足です。」

 

嘉納はその言葉に顔をしかめる。

 

嘉納「なんだそりゃ、俺が見た資料じゃ射撃はもちろん、格闘戦に心理戦、空挺に潜水、爆発物も扱えるって書いてあったが?」

 

周りの隊員はそれを聞いて下を見ながら肩を震わせ、クスクスと笑っていた。

それもそのはず、なぜならそれは…

 

竜崎「大臣、その資料は破棄してください。それは欺瞞情報、冗談です。嫌味も含まれていますが。」

 

嘉納「おいおい、嫌味かよ…。」

 

竜崎「奴は怠けることが自分の仕事と勘違いしているようで…群内でアニメや漫画を布教したりしています。しかも捕まえようとすると忽然と姿をくらまし、今まで奴を捕まえたことがある人間はいません。」

 

嘉納「なんだそりゃ…伊丹がすごいのか特戦のレベルが低いのか…」

 

竜崎「痛しかゆしです。」

 

そんな事を話している間にも特戦群の隊員は次々と敵目標を倒している。

 

オペレーターD「ドロス、目標B(ブラボー)-8,9,10を排除。目標B集団は後退を開始。集団A、Cも同じく後退をしています。合流するつもりのようです。」

 

嘉納「うーん…連中は何を考えているんだ?」

 

竜崎「恐らく守備の薄いポイントを見つけているのではないでしょうか?我々の守備が想像以上で混乱しているのでは?」

 

嘉納「そいつらの顔、確認できねぇか?何か嫌な予感がする。」

 

竜崎「まだ状況は終了していませんが、何をお考えで?」

 

嘉納「もちろん政治だよ。俺は政治家だからな。」

 

竜崎「分かりました。ドロスの部隊に目標B-8,9,10の顔を確認するように伝えてくれ。」

 

オペレーターD「了解。ドロス、先ほど排除したB-8,9,10の顔を確認してください。」

 

ドロス01「こちらドロス、了解。」

 

ドロス02「なぁ、こいつら妙に装備良くね?」

 

ドロス01「今どきのサバゲーマーもこんな感じだぜ?」

 

ドロス02「マジで?ゲーマーに偽装を?とにかく確認しないとな。こちらドロス、これよりライトを使い確認する。」

 

そう言いながらバックパックから携帯偽装網を取りだし、排除したB-8の死体と自分に覆い被せる。そして9mm拳銃のフラッシュライトで目標B-8の顔を確認した。

その顔を見てドロスは驚愕の表情を浮かべた。

 

ドロス02「こちらドロス!どうなっている!?目標B-8は黒人!繰り返す!黒人だ!!」

 

嘉納「なっ!?」

 

驚きの報告はまだ続いた。

 

ドロス01「こちらドロス、黒人だけじゃない!目標B-9はロシア人だ!!あぁ、クソッ!最悪だ、B-10は中国人!!」

 

竜崎「大臣!どうすれば!?」

 

嘉納「今すぐ首相官邸に繋いでくれ!エージェントに黒人が混ざってる国なんざ同盟国(アメリカ)しかいねぇだろ!!しかもロシアや中国と手を組んでるだなんて、最悪だ!!」

 

指令室が騒然としている頃、首相官邸ではディレル大統領からの電話に本位が対応していた。

彼のその手元には分厚く積み上げられた何か(・・)の資料があった。本位はその内容を見て、冷や汗をかいている。

 

本位「だ……大統領、この資料をどうやって…!?」

 

ディレル「私は日本語は読めないので本当かどうかは分からないが、どうやら大臣や官僚の不正・汚職・裏献金といった政治関連の事が書かれているそうだ。我が方の調査機関が日本の新聞社に持ち込まれる寸前に押さえたんだが…その声色を聞く限り本物のようだな。危ない所だったな、表沙汰になれば不祥事が相次ぐ君の内閣のとどめの一撃となっていただろうね。」

 

本位「(クソッ!何が目的だ?この野郎…)あ、ありがとうございます、大統領。」

 

ディレル「なぁに、友の窮状を救うのは当然だろう。そこでだ、モトイ。ちょっと頼みがあるんだが、いいかな?」

 

本位「(来たな…MSのことか?)MSのことでしたらその件だけは…」

 

ディレル「大丈夫だよ、もっと別のことだ。今、そちらに特地から高貴なご身分の方がお忍びで来ているらしいじゃないか。そこで、是非彼女たちを我が合衆国にご招待したい。」

 

本位「ど、どうしてそれを…」

 

ディレル「その資料と同じ筋からね。それでだ、そちらは真夜中なので失礼なのは承知だが直接招待しようとうちの『送迎員』を送ったんだ。あぁ、そういえばジェガノフと董も『送迎員』を送ったって言ってたな。」

 

本位「それは…いささか強引ではないでしょうか?」

 

ディレル「なぁに、満足する分け前を期待する側の少々のお節介だと思ってくれ。だが残念な事に周りのガード(特戦群)優秀(邪魔)でまだ面会できてないんだ。なんとかならないかな?私と君との友情の証(・・・・)として、モトイ。」

 

本位「(チクショウ…どこまでいっても傲慢な奴だ…)……分かりました、いいでしょう。しかし私にできるのはガードをどうにかする事までです。彼女たちが招待を拒否したからといって責任転嫁するのだけはやめていただけますね?」

 

ディレル「あぁ、もちろんだとも。ジェガノフと董にもそう言っておくよ。彼らはしつこいからね。」

 

本位「では成功をお祈りしております。おやすみなさい、大統領。」

 

ディレル「私も嬉しいよ、ではおやすみ。まぁこっちは今からブランチだけどね、ハハハッ!」

 

そう言い残してディレルは受話器を置いた。

その顔はとてもうれしそうな表情をしており、椅子に深々と座り込んでコーヒーを一口飲んだ。

 

ディレル「まさかMSの情報を探して出てきたものが、こんな形で効力を発揮するとはな。」

 

ホワイトハウスで喜んでいるディレルとは対照的に、本位は悔しがっていた。

だが内心安心もしていた。彼はガード(特戦群)をどうにかするとは言ったが来賓を渡すとは言っていないのだ。

 

すると間髪入れずに今度は嘉納から電話がかかってきた。

本位は先ほどまでつけていた受話器を再び耳に当てると、作戦中止の命令を下した。

 

嘉納「作戦中止!?一体どういうことですかい総理!!大統領(ディレル)に何言われたか知らねぇが――」

 

本位「こらえてください、嘉納さん……私だって悔しいんです!だけどここまで内閣のスキャンダルを握られては仕方ないんです……」

 

嘉納「だからって…」

 

本位「待ってください、確かに私は特戦群をどうにかするとは言いました。ですが来賓を引き渡すとは言っていません。今ここで私が政権を投げ捨てれば、握られた秘密は無価値のものとなります。」

 

嘉納「本位さん、あんた…そんなことしたら……」

 

本位「わかっています、私の政治家人生はこのためにあったのかもしれません…嘉納さん、後を…MSを…日本を頼みます!」

 

本位はそう言い残し、静かに受話器を置いた。

泣いているのを悟られないように…

 

嘉納「あんの馬鹿野郎…腰抜けのくせに最後は粋がりやがって…」

 

だがまだ命令は下していない…何も知らない特戦群の隊員はオペレーターの指示通りに敵を倒している。

 

サラミス「Damnit(畜生)Ambush of enemy(敵の待ち伏せだ)!」

 

ハイデッガー「サラミス!闇雲に撃つな!!」

 

アメリカ工作員のサラミスがサイレンサーの付いたMP7の引き金を引くが、敵がどこにいるのか分からないため、サラミスの行為はまさしく自分の居場所を敵に知らせている自殺行為のようなものだ。

隊長のハイデッガーが射撃を止めさせるが、間もなくサラミスの頭に大きな穴が開き、脳漿を辺りにぶちまけながら絶命した。

 

ハイデッガー「マゼラン、ホワイトベース、一時後退!(自衛隊の特殊部隊がいるなんて聞いてないぞ…)」

 

ハイデッガーの命令通りに残りの隊員は南南東に後退を始めるが、特戦群はそれを見逃すはずが無く、オペレーターが近くの沢に向かうように指示を出す。

 

オペレーターA「A-6~10は南南東に後退、ムサイは二時方向の沢に向かってください。」

 

ムサイ「了解。」

 

すると待ち伏せされているとも知らない敵工作員部隊が沢に降りてきた。

そこを狙い、撃った。

弾丸はまっすぐ飛んでいき、マゼランとアナンケの命を刈りとった。

 

ハイデッガー「マゼランとアナンケがやられた!(クソッ!何が日本人(ガード)の装備は拳銃だけだ!最新の装備を使ってるぞ!!まずは手足を狙ってくる?ダブルタップで確実に頭を狙ってきているじゃないか!!USMCFR(海兵隊偵察部隊)にいた俺でさえ手玉に取られている…)」

 

なんとか全滅を避けて、他の工作員部隊と合流することが出来た。

この作戦にはアメリカ(CIA)のほかに中国(国家安全部)ロシア(対外情報部)も参加している。

彼らも自衛隊の特戦群によって半数がやられており、すでに疲弊しきっていた。

 

すると対外情報部保有スペツナズのザスローン部隊隊長のマカロフが撤退案を具申した。

 

マカロフ「おい!ここは撤退してもう一度機会をうかがった方がいいんじゃないのか?」

 

チャック「だめだ、この作戦は米露中三ヶ国同時大統領命令だ。ん?ちょっと待て……」

 

総合隊長のチャックが無線を聞いている時、すぐそばに特戦群の部隊が配置についていた。

全員、引き金に指を当ていつでも撃てる状態だった。

 

ヨーツンヘイム「こちらヨーツンヘイム、位置についた…」

 

ムサイ「ムサイ、いつでも撃てます…」

 

グワジン「こちらグワジン、射撃準備完了…」

 

全員が照準器を覗き込み、引き金を引こうとしたその時……

 

オペレーターA「ゲームの主導権は彼らに渡った。繰り返す、ゲームの主導権は彼らに渡った。各位状況を中止し、待機位置に復帰せよ。」

 

その通信を聞いて全員引き金をから指を離し、待機位置まで後退した。

 

チャック「よし、上で話はついた。予定通り護衛の自衛官を排除し、来賓を迎え入れるぞ。部屋は買収した仲居に確認済みだ。」

 

マカロフ「おい待てよ!それじゃあ俺たちの仲間が半分()られたのも予定通りだって言いたいのか!?」

 

チャック「自衛隊の特殊部隊がいたのは想定外だった。だけど、お前たちがもう少しまともに動けてたら、上が切り札を使う前に突破できたんじゃないのか?」

 

マカロフ「なんだと貴様!?」

 

マカロフがチャックに殴りかかろうとした時、中国国家安全部の張偉(チャン・ウェイ)がそれを止めた。

 

張「おいやめろ!少し頭を冷やせ。アメリカも少し物言いがきつすぎるぞ!」

 

チャック「ふん、中国にもまともな奴はいたようだな。よし、作戦を開始するぞ。ロシアは先頭に行け、中国は後方を警戒。俺たちは左右を警戒する。さぁ行け。」

 

一触即発の状態ながらも作戦を開始した工作員部隊は山海楼へと向かった。

その山海楼の一室では、先ほど酔った栗林のアッパーを食らって気絶していた伊丹が起きてきた。

 

伊丹「いてぇ…栗林のやつ、もろ食らわせやがって…ん?」

 

ふと広縁のほうに目をやると、そこにはロゥリィの姿があった。

伊丹は酒と氷の入ったバーボングラスを片手に持つロゥリィの美しさに度肝を抜かれていた。

その美しい肌や髪は月に照らされ、まるで一種の芸術作品のようにも思える程だ。

頬は赤く火照り、浴衣の掛襟が解けて鎖骨や胸元などが見えている。

そこにいるロゥリィは少女という見た目にも関わらず大人びた雰囲気を醸し出していた。

性欲を持て余す男性が見ればエロチシズム性質を呼び起こさずにはいられなくなるだろう。

伊丹の視線に気がついたロゥリィが右手の人差し指をクイクイと動かすと、若干酔っているのも相まってフラ~っと近づこうとする。

だがそれはいつの間にか伊丹の胴体を抱いていたレレイによって意識を戻される。

伊丹はレレイの腕を離させると、風邪をひかないように布団をかける。

 

最初は二十代のロゥリィの姿を拝みたいとか、陞神(しょうしん)したら姿形は自由に変えられるとかそんなことを話していた。

だがロゥリィが一番気になっていたことはそんな事では無かった。

 

ロゥリィ「そんなことよりぃ、この近くで誰か戦っているでしょお?」

 

ロゥリィは外での戦いにすでに感づいていたようだ。

 

ロゥリィ「おかげで全然眠れないわぁ、蛇の生殺しよぉ。どうしてくれる?わたしに殺らせるかぁ、ヨージがなんとかしてよぉ。」

 

伊丹「な、なんとかって…なにをでしょうか…」

 

ロゥリィ「言わなきゃわからなぁい?例えばあの‟てれび”ってゆーのでやってたのとかぁ?」

 

どうやらこの旅館のテレビには、プリペイドカードを入れると18歳未満の方はご視聴が出来ない内容が映るチューナーが使われているようだ。

どうやって彼女たちがそのカードを入手したのかは不明である。

 

伊丹「観たの?えーっと…こっちの世界には児童福祉法という法律があって子供を対象にそんなことしたら――」

 

ロゥリィ「あら?私がこどもぉ?」

 

伊丹「見た目は完璧に子供でしょうが!世間様はそういうのを許さないんだって!元ヨメもいるんだぞ!」

 

伊丹は必死に椅子を後ろにずらして逃げようとするが、あっという間に目の前まで迫られてしまう。

 

ロゥリィ「ここに世間様なんていないわぁ、それにぃそういう仲になったからって周りに言いふらす趣味なんてないしぃ。」

 

ロゥリィの体が少しずつ伊丹の体に密着していく。

少女の柔肌が伊丹の鍛え上げられた筋肉に触れていくたびに、鼓動が早く強くなっていくのを感じる。

 

ロゥリィ「ホントにぃわたしが…こどもにみえるぅ?」

 

伊丹「(断じて否!!なんてったって九百年分の『経験』値が!!体が…勝手にっ!ここで決めゼリフなんかつぶやかれたら――)」

 

ロゥリィ「……ねぇえ…」

 

ロゥリィがその決めゼリフを言おうとしたその時…

 

鷲谷「隊長、起きてますか?」

 

既に私服に着替えていた鷲谷が、ふすまを開けて部屋に入ってきた。

その瞬間を見てしまった鷲谷と二人の間に異様な空気が流れ始め、間を持って鷲谷が口を開いた。

 

鷲谷「隊長、いくら九百歳越えの合法ロリだからと言って手を出すのちょっとどうかと…」

 

伊丹「違うんだ!まずは話を聞いてくれ!!」

 

鷲谷「分かりました、話なら後で聞きます。ところで…どうして僕はロゥリィに睨まれているんでしょうか…」

 

ロゥリィ「あともうちょっとだったのにぃ!」

 

鷲谷「すいません…ってそんなこと話している場合じゃなかった!早く逃げましょう!すぐ近くまで敵の工作員が来ています!!」

 

伊丹「んな急に言われたって皆を起こさなきゃならないし…第一どこから逃げるのさ?」

 

鷲谷「う~ん…」

 

二人が悩んでいるその時、先ほど邪魔されてご機嫌斜めだったロゥリィが今度はニヤニヤしながら二人に話しかけた。

 

ロゥリィ「ねぇ、それって私が倒しちゃダメぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊丹達が泊まっている部屋の隣には大きな日本庭園が広がっている。庭には大小様々な岩があり、灯篭がぼんやりと輝いている。池には赤と白と黒の配色が美しい錦鯉が優雅に泳いでいた。

そんな芸術的な庭に不似合いな団体が入ってきた。

黒や迷彩柄のBDUの上にタクティカルベストを羽織り、そのポーチの中には弾薬が詰まった予備弾倉やサイドウェポンなどを入れている。

頭部はニット帽やバラクラバを被り、首回りにはアフガンストールを巻いている。

 

それぞれの手には国籍が特定されないように自国以外で製造された銃を持っている。

クリス・ヴェクターやカールグスタフM/45、MP5K PDWにステアーTMPなど様々である。

 

その中の一人、ハイデッガーはこの作戦を怪しんでいた。

 

ハイデッガー「(CIA(カンパニー)やロシア、中国の戦闘要員が一夜にして半滅だ…情報不足な上に作戦や編成が乱暴すぎる。上の連中は何を考えているんだ…)」

 

そんな事を考えながら部屋の窓の前まで近づき、仲間が開けて部屋に突入しようとしたその時…

 

何かが窓ごと仲間の体を横に真っ二つにした。

上半身が宙を舞い、下半身は糸が切れたように力なく崩れる。

月で照らされて輝く血液、信じられないものを見るような仲間達の表情。

 

そして窓を突き破って何かが岩の上に降り立った。

それに反応して銃のフラッシュライトをその何かに向けた、そこにいたのは…

 

ロゥリィ「みなさまぁ、こんな夜分にご足労様ぁ。ウフ♡」

 

着物姿のロゥリィだった。

その瞬間、ロゥリィの目の前にいた隊員たちは先ほどの仲間と同じように首や胴体を巨大なハルバードで切り落とされた。

 

吉姆(ジム)「阿阿阿!!」

 

ボール「HOLY SHIT!!」

 

辺りには味方の悲鳴や怒号が銃声と混じり合い、弾丸が飛び交う。

その中からは少女の高笑いも聞こえている。

隊員は一心不乱に手持ちの銃で応戦するが、彼女はそれを物怖じもせず突き進んでいく。

 

タンク「ルナ2ダウン!現在、謎の敵性人物と交戦中!!」

 

張「去死吧你、怪物(くたばれ、ばけもの)!!」

 

キャノン「なんなんだ!あの女は!!」

 

マカロフ「クソッ!日本の庭は死角が多すぎる!!」

 

ロゥリィ「ほらほらこっちよぉ!!」

 

キャノン「HeT(やめろー)!!」

 

総合隊長のチャックは先ほどロゥリィに胴体を切られ負傷し、出血多量状態で意識が朦朧としていた。

 

チャック「(あぁ…くそっ…どうなってんだ!!)…こちらルナ2、作戦は失敗した…」

 

オペレーター「どうした!?日本の攻撃か?それなら上で解決してあるはずだ!」

 

チャック「…違う…キモノ姿の…少女が…仲間を次々と…あぁ…ぐふっ!」

 

オペレーター「どうした、応答しろ!ルナ2、応答しろ!!何があった!?」

 

ハイデッガー「(くそったれ!何なんだあの化け物女は!!どう見ても自衛隊の要員じゃない!もしかしてあれが目標の来賓か!?冗談じゃない!あんなのを連れて帰る事なんて無理だ!!)」

 

相棒のロジャーはKSGをロゥリィに向かってぶっ放している。

だがそれは木や岩に当たるだけで、目標のロゥリィには全く当たっていない。

 

ロジャー「DAMNIT!F○CK YOU!ハイデッガー、作戦は失敗だ!!ずらかろうぜ!!」

 

ハイデッガー「馬鹿やろう!敵から目を離すな!!っ!?ロジャー!後ろだ!!」

 

ロジャー「え?」

 

ロジャーがふと後ろを振り向く。

彼が最後に見た光景は、幼い少女が自分に向かって斧を振り下ろす瞬間だった。

次の瞬間、彼の首と胴体は離ればなれになり、首がコロコロとハイデッガーの前を転がる。

ハイデッガーは自分の相棒が目の前で殺された事による怒りと恐怖心で、もはやまともな状態では無かった。

気づいた時には、彼はサイレンサー付きマグプルPDRを雄叫びを上げながら乱射していた。

 

ハイデッガー「…こんのっ…化け物がぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ロゥリィは咄嗟にハルバードを盾にして弾を全弾防いだ。

そして弾切れを見計らって突撃し、ハルバードを横に払った。

彼はギリギリでそのハルバードを避けて、池に落ちた。

 

近くにいた安全部の仲間が応戦する。

 

ハイデッガー「邪魔するな!こいつは俺がっ…っ!?」

 

そして自分の体に違和感がある事に気づいた。

右腕が無かったのだ。

彼は残った左腕でスプリングフィールドXDをホルスターから引き抜きロゥリィに向かって撃ち続けた。

だが血が体から抜けていき、視界が徐々にぼやけていく。

そして、ハイデッガーは意識を永遠に闇へと落とした。

 

後に残ったのは、見るも無残な姿になった庭とそこに転がる数々の死体。

頭が、腕が、足が、胴体が、まるでそこら辺の石のように転がっている。

 

 

そしてその中でただ一人、戦いの余韻に浸っているロゥリィが岩の上で佇んでいた。

身体中に敵の返り血を浴びており、その顔はとてもとても嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 




どうも、大変永らくお待たせしました、メガネラビットです。

いやー、THE ORIGINの4話目が11月19日配信決定になりましたね!
私、大変ウキウキしておりますw
特に主題歌が良い感じ!森口博子さんの『宇宙(そら)彼方(かなた)で』が良い歌!!

特にPVのラル大尉と黒い三連星のやり取りが痺れる!!

ラル「うさぎが近づいてきた…」

オルテガ「いよいよ!」

マッシュ「ヒュー…」

ガイア「ウサギ狩りかぁ!!」

かっこいい!!しかも俺のこと呼んでくれてる!!(違う)
興奮冷めやらないないですが、解説コーナーと行きましょう。

解説コーナー

〔作戦名:レインボー作戦〕

作戦名は混合特殊部隊ということでレインボーシックスから取りました。
自分が好きでよく使用しているオペレーターは防衛はミュートとスモーク、攻撃はサーマイトです。

〔特戦群の部隊名と工作員のコードネーム〕

ガンダムの宇宙戦艦とMS、MPから取りました。
少しでもガンダム要素を増やしたかった結果ですw
(実を言うとFate見てないから全然知らなかっただけなんだけどね…(-_-;))

〔国家安全部と対外情報部の人物〕

COD:MWのマカロフとBF4の張偉を出しました。

〔二人っきりの空間に鷲谷乱入〕

三角関係…修羅場…気まずい雰囲気…
俺ならまず耐えられない(-_-;)

〔死神ロゥリィ、降臨〕

どんな大国が戦闘のエキスパートを従えようとも、彼女には勝てないだろう。
核爆弾でも落としやがれってんだ(紅の豚感)MSで戦って互角かな?





てことで解説コーナー終了。

次回は来月辺りになると思いますが、就職に向けての活動もありまして、少し更新が遅くなるかもしれません。
それでも待っていてくれるという、まるでブッダやガンジーのような心が物凄く広いお方がいたら待っていてくれると有難いです。

それではまた次回お会いしましょう!
それでは( `ー´)ノシ

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