GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

特地参考人招致に呼ばれた伊丹達。
幸原の執拗な質問に苦戦しつつも、最後はロゥリィ達の衝撃発言で一気に場は静まる事となった。



第十四話:妨害

国会参考人招致、そして日本と帝国との外交も無事終了し、このまま特地へと帰る…わけにはいかず、今日は市ヶ谷で一泊していく予定だ。

だがバスは某国(・・)の工作員が妨害するというタレコミがあり、危険性が高いので急きょ地下鉄で移動する事となった。

案の定、バスは足止めを食らった。

 

工作員が囮に引き寄せられている時、伊丹達は地下鉄丸ノ内線のホームにいた。

 

伊丹「(バスが狙われてるから移動手段を変えるのは分かるけど…こんな格好した女の子連れてたら怪しいタレント事務所のプロデューサーみたいだ。視線が痛てぇ…)」

 

鷲谷「それにしても、本当にバスが襲われるんですかね?」

 

伊丹「分かんねぇ、けど公安の人達からの情報だから大丈夫じゃね?」

 

鷲谷「う~ん…まぁ、重要人物だけ乗せたバスで移動するより、民間人が大勢いる地下鉄の方が連中もうかつには手は出せないでしょうね。こんな街中でドンパチなんて出来ないと思いますし。でもその分…」

 

伊丹「近づかれやすくなるか…まぁ怪しい奴が来たら、栗林がどうにかしてくれるでしょ。」

 

鷲谷「国際問題に発展しないとイイんですけど…」

するとやってきた電車の中で富田たちと合流した。

 

伊丹「富田、栗林、ごくろーさん。」

 

富田「急に四ツ谷から地下鉄に乗って移動するって言われたんで慌てましたよ。バスを囮にするなんて話聞いてなかったんで。」

見ると富田の腕をボーゼスがしっかりと抱きしめている。

お嬢様方も初めての地下鉄に怯えているようだ。

 

富田「丸の内線が走り出したら急に怯え始めまして…カタコルーベ(地下墓所)か、地の奥の魔窟にでも連れて行くのかって…あっちじゃ地下を走る乗り物なんて無いですから…」

ロゥリィも怯えているが、彼女は別のことで怯えていた。

 

ロゥリィ「地面の下はハーディの領域なのよぉ…あいつやばいのぉ。二百年前もお嫁に来いってぇ、しつこくってしつこくってしつこくってしつこくって!!」

 

伊丹「それでなんで俺にしがみついてんの?」

 

ロゥリィ「あいつ男嫌いだからハーディよけになるかもしれないでしょぉ。」

そんな事を話していると霞ヶ関駅で駒門が乗ってきた。

 

駒門「よぉ、予定を早めて箱根に向かうぞ。」

 

鷲谷「バスの方は?」

 

駒門「見事にひっかかったよ。移動手段の変更を知らなかった時点で情報漏洩者は二人まで分かった。情報を提供している奴をつきとめるために泳がせている。色仕掛け(ハニートラップ)にでもかかったんだろうが、我々がそれを知っていれば問題はない。」

 

伊丹「ふーん、そんなもんですかねぇ。」

 

駒門「まぁ、お前さんも気をつけろよ…ってその好みだったら大丈夫か、某国だってこんな容姿(ロリ)の工作員は養成していないよ…ん?いや待てよ、最近報告に出た件…あの少女コールガール組織ならあるいは…」

そんな事を話していると、ロゥリィが早く降りたいと言ってきた。

どうしても我慢出来ないらしく、仕方なく銀座駅で降りることとなった。

 

伊丹「てな訳で駒門さん、俺らここで降りるよ。」

 

駒門「えっ!?ちょっ、ちょっと待てよ!こっちにも色々段取りってもんが――」

 

鷲谷「いいやん、一駅分くらい歩いたって。」

すると先ほど乗っていた丸の内線が架線事故の影響で運休した。

このまま乗っていたら足止めを食らっていただろう、伊丹の判断が功を奏した。

 

伊丹「敵さん、地下鉄まで止めてする目的は何だと思う?」

 

駒門「威力偵察、示威行動…デモンストレーションって言ったところか。いつでも『お客さん』に手を出せるって警告だろう。だがバスと地下鉄、二度失敗している。そろそろ直接手を出してくるだろう。例えば――」

その時、フードを被った男がロゥリィのハルバードをいきなりひったくったが、なぜかその男は逆にハルバードに押しつぶされ気絶していた。

 

駒門「まったく、なにやってんだ、こいつは?いきなりこけやがって…」

 

伊丹「あっ、それは――」

 

駒門「あ、なんだ?」

駒門がハルバードを持ち上げようとした次の瞬間…

 

ペキンッ!

 

腰の骨をやってしまった。

 

駒門「こっ、腰がぁ~…と、とりあえず今日は、いっ、市ヶ谷会館へ…」

 

伊丹「了解しました…」

そう言って駒門は救急車に乗せられ運ばれていった。

 

伊丹「……JRで秋葉原寄ってからメシを――」

 

栗林「とっとと市ヶ谷に直行してさっさとホテルに行きますよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し都心部から離れた住宅街、そこにある二階建てアパートの一室…

明かりが点いていないので一見誰もいないように見えるが、そこにはメガネをかけた女性が一人震えながらペンタブで同人誌を描いていた。

彼女の名前は葵 梨紗(あおい りさ)、同人誌作家だ。

眠気を押し殺し、食事も我慢して…と言うよりももう食料が無いのを我慢して次の同人誌即売会の新刊を描いている。

 

梨紗「ケータイもガスも止まった…そろそろ水道もやばい…パソコンが止まったら破滅だからなんとしても電気代とネット代は死守しなくちゃ…てか腹減ったぁ…」

部屋の気温は外と同じくらい寒く、息を吐けば白くなるほどだ。

 

梨紗「この冬の同人誌即売会を乗り切れれば、シリアルと豆乳だけの極貧生活からもおさらば…明日までには入稿しないと…」

すると玄関口が開く音が聞こえ、寒風が一つ入ってくる。

振り返るとそこには伊丹の姿があった。

 

伊丹「エアコンぐらいつけろよ、寒いぞこの部屋。」

梨紗は伊丹の中学時代の後輩でよく知っていた、まさしく天の助けと言えるタイミングだろう。

 

梨紗「せ、先輩!!ご…ごはん…」

 

伊丹「はいはい、そんな事だろうと思ったよ、ほら。あー、皆構わず入ってくれ。急で悪いけどかくまってくれよ、俺の知ってるとこで人目につかないのお前んちしかなくてさ。」

梨紗が顔をあげ伊丹の後ろにいるロゥリィ達を見る。

すると先ほどまでの疲れや眠気はどこへやら…

一瞬にして元気になり、一番好みのロゥリィに向かってダイブしたが、ロゥリィはそれをギリギリで避け、伊丹の後ろに隠れる。

 

伊丹「梨紗、落ち着けって。実はホテルから焼け出されちゃってな…」

 

梨紗「えっ?火事?」

パソコンでその情報を調べてみると、『市ヶ谷会館でぼや騒ぎ、放火か?』と書かれていた。

そのすぐ横の関連記事には目の前にいるロゥリィの写真が掲載されていた。

 

梨紗「……ホンモノなのね…コスプレじゃなく…うふ…うふふ…うふフフふ怖ふふ腐腐腐ふふふ怖怖ふ………」

 

ロゥリィ「ここにもハーディがいたぁ~~」

 

テュカ「ねぇ、なにコレ?」

 

伊丹「あーこれは…俺の『元』嫁さんだ。」

 

一同「え…えぇ~~~~~!!!!」

予想外の発言に今日一番驚いた一同であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

食事を済ませ、全員寝袋にくるまって寝ていた。

伊丹は梨紗に事の状況を説明した。

 

伊丹「――というわけ。」

 

梨紗「フーーン、なーんでそんな危ない話に私を巻き込むかなー。」

 

富田「そうですよ隊長、元奥様とはいえ民間人を巻き込むのは危険すぎます。それに駒門さんを放り出してきてよかったんですか?」

 

鷲谷「あの状態(ぎっくり腰)じゃ足手まといになるだけだし、ここまでくると駒門さん自身が怪しくね?」

 

富田「駒門さんが情報漏洩を?」

 

伊丹「いやその周りがさ、ここで何かあれば…って、あって欲しくはないけど俺たちが尾行されてるって事だ。」

 

鷲谷「んで?明日の予定はどうします?」

 

伊丹「せっかくの休日までつぶされてたまるか。買い物して温泉行くぞ。宿なんか飛び込みでなんとかなるよ、金も陸将からたんまりもらってるし。じゃ富田、四時に起こしてくれ。」

 

鷲谷「それじゃおやすみ~…」

こうして最初の一日が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、アメリカ、

ホワイトハウスの大統領室にはモニターを見ながらコーヒーを飲むディレルが、優雅に椅子に座っていた。

 

ディレル「…ふむ、工作員による三回の妨害が全て失敗し、更には対象者を逃すか…」

 

グラハム「申し訳ありません、大統領。目標が予測不能な行動をするもので…」

 

ディレル「まぁいい、場合によってはこちらが何とかしよう…それと、例の情報は?」

 

グラハム「それについてもまだ分かっておりません…やはり無いのでは…?」

 

ディレル「そうだな、私の考えすぎかもしれない…だが日本は未だによく分からない、それこそ我々の数年…いや数十年先の技術力を持っている。新兵器や新技術を開発しているかもしれない。もう少しだけ調査を進めてくれ。」

 

グラハム「了解しました。」

そう言うとディレルは通信を終了した。

そしてホットラインの受話器を手に取ると、ある人物に電話をかけた。

その人物とは…

 

ジェガノフ「…全く誰だね?こっちは忙しいんだが――」

 

ディレル「あぁ、そちらは夜だったね、すまない。」

ロシア連邦大統領、ジェガノフだ。

ジェガノフは予想外の相手に驚きを隠せないでいたが、冷静さを何とか保っていた。

 

ジェガノフ「ディレル…何の用だ?」

 

ディレル「なに、少し相談があってだね…日本の特地の『お客様』のことについてだ。」

その言葉にジェガノフの顔はより一層険しいものとなる。

 

ジェガノフ「知っていたのか、我々の工作員がいることを?邪魔だから我々に手を引けと?」

だがディレルから返ってきたのはこれまた予想外の言葉だった。

 

ディレル「いやいや、その逆だよ。我々と手を組まないか?」

 

ジェガノフ「どういうことだ?」

 

ディレル「日本は島国、我々アメリカや君のロシアより国土は小規模…しかし技術力や科学力は我々のそれを大きく凌駕している。日本が新兵器や秘密兵器などを隠していてもおかしくはない。特地の方々を我がアメリカにご招待したいが、それが原因でうかつに手が出せない。そこでだ、君と協力してぜひご招待したいと考えている。」

 

ジェガノフ「それでそれは私にメリットはあるのかね?」

 

ディレル「もちろん『お客様』は君の方にも一人お送りするよ。それに君にとってもMSなどの情報は欲しいだろ?」

 

ジェガノフ「……分かった、協力しよう。」

 

ディレル「それでこそだ。西と東、大国同士お互い仲良くやろうではないか。」

 

ジェガノフ「そうだな、そろそろいいか?私はこれから夕食(ディナー)なんでな。」

 

ディレル「そうか、私はこれから昼食(ランチ)だ。それと中国の董にも聞いておいてくれ。恐らくアイツも増えすぎた国民を特地に送りたいと考えているはずだ。詳しい事はまた明日。それではお互いの成功を願って。」

ジェガノフは受話器を置き、あごに手を置いて考え始めた。

 

協力…聞こえはいいが、それは被害を最小限にするための策でしかない。

チラリと時計を見ると、受話器を手に取りジェガノフは董につなげた。

 

董「なんだね!私はこれから寝る所――」

 

ジェガノフ「董、少し話がある。」

 

董「ジェガノフ大統領、どうした?こんな夜更けに。」

ジェガノフは少し間を置いて、董に先ほどの話をした。

 

ジェガノフ「ディレルが日本の特地来賓者のことについて相談してきた。連れて帰るから協力しろとな…」

 

董「ディレルが?なんでまた。」

 

ジェガノフ「なんでも、日本の技術力に対して注意を払っているようだ。恐らく奴は面倒な仕事を我々に押し付けて、最後の美味しい所を独り占めしようとする気だ。ここは一つ、東側同士で手を取らないか?」

 

董「そうだな、欲の皮の突っ張ったあのアメリカ人に良いように使われるのは癪だし…良いだろう。」

 

ジェガノフ「よし、ならここは一旦協力したふりをしよう。それでいいな?」

 

董「あぁ、こちらも出来る限りの支援はしよう。それではまた明日、おやすみ。」

 

ジェガノフ「あぁ、いい夜を…」

ジェガノフが董と話し終え、再び受話器を戻す。

すると丁度いいタイミングで夕食の知らせが入る。

 

ジェガノフ「今日のメインは何だ?」

 

シェフ「小牛のステーキにございます。」

 

ジェガノフ「……ライスを用意できるか?」

 

シェフ「ライスですか?」

 

ジェガノフ「あぁ、久しぶりに…()が食いたくなった。」

 

 

 

 

 




どうも、学校が始まって若干憂鬱なメガネラビットです。
だるぃ……

漫画を二巻新たに買い足しました。
これで当分の間は大丈夫だと思います。
それにしてもゾルザルはやっぱりクソ野郎ですね(#^ω^)
私がこの十本の指で制裁を加えてやりますのでお楽しみに(´ω`#)

解説コーナー

〔前回に引き続きセリフの無いノーマさん〕

最近ノーマが段々空気化しつつある…(-_-;)

〔カタコルーベ〕

カタコンベともいう。
現在もフランスのパリの地下には、現存する世界最大のカタコンベがある。
私がそれを知ったのはCOD:MW3だったな。
自分が住んでいる町の地下に大量の骨が埋まっていると考えると…ゾッとする…

〔アメリカとロシアと中国の共同作戦〕

以後作戦名は‟レインボー作戦”と呼称します。
レインボーシックスの動画見て思いついた。

〔その裏で東側同盟を築くロシアと中国〕

ディレルは知らない…
喰らう立場だったのがいつの間にか喰われる立場になっていたことに…

〔ジェガノフの夕食〕

米は米国…つまりアメリカ…





オリジナルストーリーを今回作りましたが、こんなんで大丈夫でしょうか?(-_-;)
段々不安になってきた…(;´・ω・)

次回は買い物&箱根温泉旅館編満喫編です。
戦闘編はその次になります。


では皆様、また次回お会いしましょう
それでは( `ー´)ノシ


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