GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

初めて日本へやってきた特地組の皆さんは日本の技術力に驚かされた。
衣食住、全て帝国を凌駕していた。
そしてこれから始まる外交と参考人招致に向けて準備を進めるのであった。




第十三話:日本常識が異世界に通用するとは限らない

ピニャ達は国会議事堂を少し離れ、別の会合場所である高級ホテルにいた。

そこには首相補佐官の白百合玲子と外務省の菅原浩二がいた。

 

これより、帝国と日本国との最初の外交が始まった。

 

―外交とは言葉による戦争と言ってもいい…

 たった一言で国の命運…今後の運命にも関わってくる。

 だがピニャは講和のために来たのではなく、あくまで仲介役として来たのだ―

 

 捕虜となった帝国側の重要人物を提案

 日本の交渉団の人数

 宿泊地や費用の支払い

 帝国側の交渉当事者の贈賄の額の確認

 要人の相互訪問に日本語の習得人材の派遣等々……

 

外交は順調に進み、最後に捕虜の収容者人数とその扱いの話へと進んでいく。

 

菅原「では最後に先の事件での捕虜の人数とその扱いですが、現在国内の無人島に設置した収容施設で保護しておりまして…総収容者数は約六千人です。」

 

ピニャ「(ろ…六千人!?そ、そんなに…)」

 

菅原「外見が人間では無い者達も多数おり、階級の高い軍人も多いようで正直扱いに苦慮しております。中にはザクによって精神的ストレスによる悪夢や幻覚、幻聴作用で未だに病院で寝たきりのままの者もいます。我が国としてはそちらの求めに応じる形で引き渡したいと思っております。」

 

ピニャ「(身代金が一体いくらになるのか想像すらできん…)」

その言葉にピニャは目頭を押さえ、俯く。

ピニャは生唾をゴクリと飲み込み、身代金の総額を声を震わせながら訪ねた。

 

ピニャ「み、身代金はいかほどに…?」

 

白百合「…は?あぁ、殿下ご安心ください。戦国時代ならいざ知らず、現在の我が国には身代金の習慣も奴隷制もございませんので。ですが、今回は金銭以外の『何らかの譲歩』を期待しております。」

 

菅原「殿下のためにもこの名簿の中で指名なされる若干名なら即時引渡しが可能です。」

菅原はそう言いながら名簿をピニャの前に差し出す。

 

ピニャ「(この情報があれば子弟を出征させている元老院議員や貴族との仲介がやりやすくなるな…)」

 

ボーゼス「あの、今回は無理かもしれませんが、一度彼らに会うのをお許しいただけますか?あと、その名簿の写しも必要になります。ピニャ様、差し出がましい事をして申し訳ありません。実はわたくしの親友の夫君がこちらに出征しておりまして…」

 

ピニャ「……そうか…」

 

菅原「わかりました、次にお越しの際に手配しましょう。名簿も後程翻訳した物をお渡しします。」

 

 

こうして日本と帝国との第一回会議は無事終了した…

 

 

 

 

 

 

同時刻、国会議事堂では…

 

日本公共放送局が義務的に放送している国会中継は、いつもなら面白味に欠ける番組なため低視聴率をキープしているが、某巨大掲示板サイトに『特地参考人招致実況スレ』と書き込まれ、その情報が拡散し公共放送局開局以来の高視聴率に達していた。

 

日本の豊島区に本社を構える某有名動画投稿会社や、港区六本木に日本本社を構える同じく某有名動画投稿サイトもこの機会を逃すまいと生放送を開始。それによってますます注目度はあがっていった。

 

この生放送は中国、ロシア、そしてアメリカの各大統領も見ていた。

 

そして、注目の三人が第一委員会室へとやってきた。

その意外な姿に議員たちは驚きを隠せないでいた。

伊丹、鷲谷、テュカ、レレイ、ロゥリィの順番に参考人用の椅子に着くと、参考人招致が始まった。

 

最初の質問者は幸原みずき議員だ。

彼女は野党に所属している議員で、大の自衛隊嫌いでもある。

MSの自衛隊配備や特地の自衛隊介入について何かにつけて講義していた。

今回の参考人招致で自衛隊の非を認めさせ、内閣を突き上げようと考えている。

 

彼女は椅子から立ち上がると、『特地民間人犠牲者100人』という文字が大きく書かれたフリップボードを机に突き立てる。

 

幸原「伊丹参考人に単刀直入にお尋ねします。自衛隊の保護下にあった避難民の四分の一、約100人が特地怪獣、通称ドラゴンの犠牲になってしまったのはなぜでしょうか?」

 

伊丹の経歴や、ニュースや新聞で優秀な自衛官だと聞いていたため、真面目な回答が来ると思っていた。だが相手はあの伊丹だ、当然のことながら伊丹の回答は…

 

伊丹「えーそれはドラゴンが強かったからじゃないですかねぇ。」

 

適当であった。

 

幸原「わ、私は自衛隊の方針や政府の対応に問題は無かったのかと訊いているんです!現場の指揮官として大勢の犠牲者が出てしまったことをあなたはどう受けとめているのですか!?その答弁はあなたの力量不足の責任転嫁なのではないですか!!」

 

ボードを何度も勢いよく叩き声を荒げ、息を荒くして伊丹を睨み付ける。

 

伊丹「大勢の方が亡くなったのは大変残念に思います、あと力不足を感じましたね…」

 

幸原「(よしっ、自衛隊の非を認めさせ――)」

 

伊丹「銃の威力に。」

 

幸原「…は?」

 

幸原は伊丹の予想外の答えに間抜けな声を出してしまった。

 

伊丹「ハッキリ言って豆鉄砲でしたよ、あの時105mmマシンガンですら避けられたのに64式でどうやって立ち向かえっていうんですか?あの場にジャイアントバズーカやビームライフルやメガ粒子砲とかあったらももっと早く大勢の人命が救えたのに…大体皆さんは軍事を悪だと言いますがあなたたちは軍事の何を知っているんですか?ネットやGPSも、軍が開発したものを民間用に改良したんですよ?それを知ってあなたたちは使うのをやめますか?」

 

伊丹の挑発ともとれる言葉に幸原と同じく自衛隊を嫌う野党議員たちからヤジが飛んでくる。

すると防衛副大臣の渡辺良三から補足説明が入る。

 

渡辺「特地から持ち帰った特地甲種害獣、通称ドラゴンの左腕のサンプルを解析した結果、鱗の強度はタングステン並。モース強度で言うとダイヤモンドに次ぐ「九」、それでいて重さは七分の一です。更に報告によると口から超高温の火炎を吐くことが確認されています。いわば空飛ぶ戦車です。彼が64式小銃を豆鉄砲と言った事もうなづけます。そのような状況下で犠牲者をゼロにするのはいささか酷な話では無いでしょうか?」

 

的確な返答に幸原は、ここは一旦引くことにした。

 

幸原「分かりました…えーでは鷲谷参考人にお尋ねします。あなたは伊丹参考人が隊長を務める偵察隊のMSパイロットであることは間違いありませんね?」

 

鷲谷「はい、間違いありません。」

 

幸原「そしてあなたはドラゴンの出現時、105mm重機関砲を使用しドラゴンを撃退しようとしましたね?その時、周りに民間人がいるにもかかわらず機関砲を発射したことに問題はありませんでしたか?」

 

鷲谷「確かに私は105mmザクマシンガンを発射しました。ですがあの時私は周りに民間人がいないことを確認し、射線上も確認した上で攻撃を加えました。確かに民間人の犠牲者について問われると、何とも言えません。ですが今は残された保護民の将来をサポートするのが、今我々自衛隊の出来る最大の支援ではないでしょうか?」

 

先ほどの伊丹の発言に比べるとまともな回答である。

次は特地からの参考人に対象者を変える、最初はレレイから始まった。

 

幸原「日本語は分かりますか?」

 

レレイ「はい、少し。」

 

幸原「今は難民キャンプで生活されているそうですが、不自由はありませんか?」

 

レレイ「不自由?不自由の定義が理解不能、自由でないという意味ならヒトは生まれながらに自由では無いはず。」

あまりにも哲学的な返答に困惑した幸原は質問を言い直した。

 

レレイ「衣・食・住・職・霊、全てにおいて必要は満たされている。質を求めるとキリが無い。」

 

次に幸原は100名の犠牲者が出た自衛隊の対応に問題などは無かったかと、まるで自衛隊そのものが悪者のような意地の悪い質問を出した。

レレイは一瞬、なぜこのような質問をするのか戸惑いの表情を浮かべながら、質問の答えを返した。

 

レレイ「…ない。」

 

幸原「MS…モビルスーツによって何か問題などは起きませんでしたか?」

 

レレイ「…モビル…スーツ?」

初めて聞く名前に首をかしげるが、しばらく考え、あの緑色の巨人たちをジエイタイの人が時々モビルスーツと呼んでいたのを思い出し、あの巨人の種族名?がモビルスーツなのかと理解したレレイは、一旦の間を置いて質問の答えを返す。

 

レレイ「彼らはとても利口でジエイタイとも良い信頼関係を築いている。大抵の巨人やトロール、ゴブリンなどは頭が悪く、性格も粗暴な者達が多い。だが彼らモビルスーツは頭脳も良く、性格も温厚。彼らには数多く助けてもらった。問題どころか感謝しかない。」

 

そして質問者がレレイからテュカに移り変わる。

レレイには今後の通訳をしてもらうため、席にはまだ戻らずにいた。

 

幸原はまず、テュカの耳が本物なのか確認するべく耳の質問をした。

テュカはレレイに通訳で教えてもらうと、

 

テュカ「えぇ、自前ですよ。触ってみます?」

と言いながら耳をピコピコと動かした。

これに周りの議員や報道関係者は一斉にカメラのフラッシュをたく。

フラッシュが収まると、幸原は先ほどレレイにしたのと同じ質問を聞く。

この質問にテュカは苦しそうな表情を浮かべた。

 

テュカ「よく…わからない。その時は気を失っていたから……巨人については、彼らは私が今まで知る種族の中でも最も強いわ。彼らなら…きっと……お父さん……」

 

と最後辺りは少し小さく答えた。

そして…ロゥリィの番がやってきた。

幸原はロゥリィの格好を見て喪服だと勘違いし、家族を失った可哀想な少女と決めつけてしまう。

 

幸原「難民キャンプでの生活を教えてくれる?」

 

ロゥリィ「エムロイに仕える使徒として信仰に従った生活よぉ。朝目が覚めると生きる、祈る、命を頂く、祈る、そして夜になったら眠るぅ。まだ肉体を持つ身だからそれ以外のこともするけどぉ。」

 

幸原「い、命を…頂く?(食事の言い回しかしら?)」

 

ロゥリィ「そう、食べること、殺すこと、エムロイへの供儀、色々ねぇ。」

幸原には少し変わった宗教を信じる少女という勝手なイメージがインプットされてしまっている。

 

幸原「あなたのご家族が亡くなった原因として自衛隊の対応は問題なかった?」

 

レレイ「………質問の意味がよくわからないと言っている。ロゥリィの家族はもう――」

 

幸原「資料によれば、ドラゴンの襲撃を受けた際、避難民の四分の一もの犠牲者を出しておきながら、自衛隊員には死者どころかケガ人すらいません。身を挺して戦うはずの自衛隊員が、自身の安全を第一に考え、その結果民間人を危険にさらしたのではありませんか!?」

この質問にロゥリィは驚き、あっけにとられる。

そして、ロゥリィはこの質問を返した。

 

 

 

 

日本語で――――

 

 

 

 

ロゥリィ「あなたおバカぁ!?」

大声でマイクにしゃべったおかげでハウリングを起こし、その場にいる全員が思わず耳を塞いでしまう。

 

幸原「い、今なんと?」

 

ロゥリィ「あなたはおバカさんですかって尋ねたのよぉ、お嬢ちゃん。」

 

幸原「あ、あなた日本語が分かるのですか?」

 

ロゥリィ「そんなことはどうでもいいわぁ。イタミやワシヤ達がどうドラゴンと戦ったのか、それが知りたいのでしょぉ?イタミ達は頑張ってたわぁ、難民を盾にして安全な場所で戦ってたなんてことは絶対に無いわよぉ。そもそも兵士が自分の命を大切にして何が悪いのかしらぁ?彼らが死んだら、あなたたちのように雨風凌げる安全な場所でただ駄弁っているだけの人を一体誰が守ってくれるのかしらぁ?お嬢ちゃん?炎龍を相手に生きて帰ってくる、まずはその事を褒めるべきでしょうにぃ。それと避難民の四分の一が亡くなったとあなたは言ったけどぉ、それは違うわぁ。イタミ達は四分の三を救ったのよぉ?それどころか家、食事、水、仕事、彼らに必要な物全てを無料で与えた。そんなことまでする軍隊は私が知る限り、この世にはジエイタイしかいないわぁ。そんな事も理解出来ない元老院議員ばかりじゃこの国の兵士や巨人たちも苦労してるでしょうねぇ。イタミ達は誰にも出来ない事をやり遂げたわぁ、それがあなたのおバカな質問に対する答えよぉ、お分かりかしらぉ、お嬢ちゃん?」

 

幸原は自分より明らかに若い少女にお嬢ちゃん呼ばわりされ、更にはおバカさん扱いされたことに完全に頭に来たようだ。

 

幸原「お、大人に対する礼儀がなってないようねぇ…お嬢ちゃん?」

 

ロゥリィ「それってもしかして私のことぉ?」

 

幸原「そうです!他に誰がいますか!?特地ではどうか知りませんが、この国では年長者は敬うものです!!そういった習慣はないのですか!?」

 

ロゥリィ「これは驚いたわねぇ…たかが――」

ロゥリィの口が紫色に変わり、ハルバードを包んでいる布を解こうとした。

今ここで彼女を止めないとイタリカの二の舞になる!!

そう思った伊丹はロゥリィを椅子に戻らせ、幸原の重大な勘違いを正すため質問台につく。

 

伊丹「えー皆様、我々は時として年齢を武器に使うことがあります。ですが、外見と年齢がかけ離れている例がある事を忘れてはいけません!つまり…信じられないでしょうがこのロゥリィ・マーキュリーさんはこの場にいる誰よりも年長なのです!!」

 

幸原「一体いくつだと言うのですか!?」

 

ロゥリィ「961歳よぉ。」

その衝撃発言に皆目を丸くし、顔を青ざめさせる。

 

幸原「テュ…テュカさんは?」

 

テュカ「165歳。」

 

幸原「まさか!?」

 

レレイ「私は15歳。」

レレイだけは見た目と合ってるので安心したのか、ため息を漏らす。

 

レレイ「イタミ、かわって。代わりに説明する。私は門の向こうでは『ヒト種』と呼ばれる種族。寿命は大体60から70年前後。住民のほとんどがヒトである。テュカは不老長命のエルフ、中でも希少な妖精種で寿命は一般のエルフより遥かに長く永遠に近いと言われる。ロゥリィは元々はヒトだけど亜神となった時、肉体年齢は固定された。通常は千年ほどで肉体を捨て霊体の使徒、そして真の神となる。したがって寿命と言う概念が無い。」

 

レレイのとんでも特地説明に度肝を抜かれた議員たちやテレビやパソコンの前の視聴者は硬直していた。

 

幸原は自分よりはるかに年上の者…と言うよりかは神に対してとんでもない事を言ってしまった事にショックを受け、この後質問する予定だった原稿やフリップボードを片づけ、そそくさと自分の席へと戻っていった。

 

 




どうも、最近ソース焼きそばにはまっているメガネラビットです。

この間シン・ゴジラ観に行きました!
物凄かった!!あの要素をもしかしたらこの作品で使うかもしれません。

今月中にもう一話投稿出来て良かった(;´・ω・)フゥ…
もうそろそろ夏休みも終わります、思えば長かったようで短かった…
楽しい夏休みでした…(´;ω;`)

解説コーナー…うぅ…( ノД`)シクシク…

〔MSによるトラウマ〕

そりゃ見知らぬ世界に放り込まれて戦わされたと思った、MSで一方的にやられるんだからトラウマにならない方がおかしい。
ちなみにMSの活躍で原作より銀座事件の犠牲者は少ないです。

〔某有名動画投稿会社〕

一体何tubeなんだ!何ニコ動画なんだ!!

〔幸原みずき〕

この人って漫画版だと完全に蓮ほ…ゲフンゲフン!!
アニメ版だとやはりまずかったのか結構な美人に描かれてましたね。
まぁコテンパンに論破するのは変わらないんですがwww

〔特地犠牲者数〕

こちらもMSの活躍で原作より少ないです。

〔モビルスーツ=種族名〕

レレイさん、合ってるけど違う

〔テュカさんの敵討ち〕

安心してください!(敵)討ちますよ!!

〔ロゥリィの自衛隊評価:特大〕

我が日本の技術力はァァァァァァァアアア!!!!!!!!
世界一ィィィイイイイ!!!!!!!!できんことはないィィーッ!!
ザクの体はァァアアアアアアア───ッ!!
我が日本国民の最高知能の結晶であり誇りであるゥゥゥ!!
つまりすべての兵器を越えたのだァアアアアアアアアアアアア!!
特地のお嬢さん方!人種はちがえど わたしはあなたたちのような礼儀ある者に敬意を表す!
すぐれた者のみ生き残ればよい!



以上解説コーナーでした。

次回は9月に投稿予定です。
早く漫画も買い足さなければ…(-_-;)


次回もお楽しみに!!
それでは!!( `ー´)ノシ

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