手違いにより協定違反を起こしてしまったピニャ一行は、謝罪と今後の協定についていの会談を行った。
そしてピニャ達は日本がどういう国なのか、どういった世界なのか知るべく、門をくぐり抜けることを決めるのであった。
第三偵察隊がイタリカから戻って次の日の朝…
旧コダ村の難民キャンプに建てられたアルヌス共同生活組合の事務所で、テュカとロゥリィ、栗林と倉田と富田が話していた。
話の内容は、今日テュカを日本に参考人招致のため連れていくという内容だ。
テュカ「門の向こうに行くの!?」
栗林「そう、こっちの世界には『ヒト』以外の種族が住んでいることを伝えるためにね。レレイも一緒に連れていく。」
テュカ「確か門の向こうってニホンの街なんだよね。楽しみー!」
テュカが自分の命を救ってくれた異世界の人達の故郷がどんなところなのかワクワクしていると、事務所にレレイがやってきた。
レレイはまだ寝間着姿のまんまだ。
テュカ「あ、レレイ。おはよー、昨日は部屋に戻ってなかったけどどうしたの?」
レレイ「泊めてもらった。」
あえてどこにとは言わなかった。
すると先ほどからスティック菓子をポリポリと食べていたロゥリィが、自分は行ってはいけないの?と聞いてきた。
栗林たちは最初こそ少しだけはぐらかすような回答をしたが、ロゥリィの気迫に負け、伊丹隊長に連絡を取った。
OKが出たのは言うまでもない。
こうして、レレイ・ロゥリィ・テュカのいつもの三人組が参考人招致に行く事になった。
そして一時間後…門を包んでいるドームのそばで、伊丹と鷲谷の二人は汗をだらだら出しながら待っていた。
こちらの季節はほぼ夏だが向こうの季節は冬で、こちらとはあべこべになっている。
そんな暑い日差しが照り付ける中、二人は待っていた。
そしてようやく一行がやってきた。
伊丹「遅いぞー、なーにやってた?」
富田「すみません、支度に時間がかかってしまって。」
どうやら着替えに若干時間がかかっていたらしい。
テュカは冬服だが、レレイはさほど変わった点は見つからない。
ロゥリィもハルバードの刃の部分が布で覆われているが、それ以外は変わってはいない。
するとロゥリィが布のことに関して文句を言いだしてきた。
ロゥリィ「ねぇ、これはずしちゃだめぇ?邪魔なんだけどぉ。」
栗林「だーめ!向こうには色々と決まりがあるの!そんな刃物むき出しのまんまじゃ捕まるわ!置いていってほしいくらいよ!」
ロゥリィ「神意の
栗林「じゃあ我慢して!」
今回は栗林と富田が護衛同伴として行く事になっている。
そしてようやく伊丹達が出発しようとしたとき、目の前に政府高官が乗るような黒塗りの乗用車が止まった。
助手席から降りてきたのは柳田だ。そしてその後ろに乗っていたのは…
ピニャ達だった。
柳田「ピニャ・コ・ラーダ殿下とボーゼス・コ・パレスティー侯爵公女閣下、それとノーマ・コ・イグルー侍従武官のお三方がお忍びで同行される、よろしくな。」
鷲谷「柳田ぁ、聞いてないぞ!」
柳田「あれ、そうだっけ?市ヶ谷会館と伊豆には連絡してあるけど?まぁ、二泊三日の臨時休暇、たっぷり楽しんでこいよ。」
伊丹「あのねぇ、このお姫様たちに俺が一体どんな目にあわされたか分かってんの?」
柳田「誤解なんだろ?笑って水に流せよ、女々しいぞ。」
伊丹「全く笑えねぇって…」
柳田「いちいち気にするな、殿下には帝国との仲介役をしてもらう。その為に我が国のことを知っておきたいという要望も当然だろ?」
鷲谷「だからってなんで俺たちと一緒なんだよ。」
柳田「しょうがないだろ、通訳できる人材がまだ少ないんだから。」
そう言うと柳田は少し分厚くなった封筒を伊丹に渡した。
中身はどうやら現金のようだ。
柳田「狭間陸将からだ、娘っ子達の慰労に使えってさ。」
伊丹は受け取った封筒の中身を確認し、いくら入っているのかを確かめると懐にしまい、全員を引き連れてドームの中へと入っていった。
ドーム内に設置された指紋認証装置や3D顔認証装置を通り、門の中へと入っていった。
暗く長いトンネルの中を進み続け、ようやく外の明かりが見えてきた。
そこから冷たい風が肌に吹きつける。
長い事暗い所に居続けたせいで一瞬目がくらむがそれもつかの間、彼女たちの目の中に飛び込んできた光景……それは……
摩天楼だった…
天に向かってそびえたついくつもの巨大な建物…
一面ガラス張りのものから、円柱形のもの、宮殿風造りの巨大な時計のついたものまで数多くである。
ボーゼス「これは…壁?それともこれが巨人の家?」
ピニャ「…いや、中に人の姿がある!」
レレイ「どうやら、限られた土地に高い建物を作って有効的に活用している。」
ロゥリィ「イタミの国はそれだけ狭いのぉ?」
レレイ「それか人口がとても多いかのどちらか。」
ノーマ「これが人の家だとすると、巨人たちの家はいったいどれほどのものなのだろうか…?」
空を見上げれば巨大な黒い鳥――羽田空港に着陸する旅客機――が彼女らの上を悠々と飛んでいた。
ピニャ「あれは巨人たちを乗せていた鉄の鳥だ!!」
ボーゼス「いえ、それらよりもはるかに大きいと思われます!」
レレイ「あれは人も乗せるらしい、しかも10人や20人の比ではない。」
ピニャ「…我々帝国は、このような優れた技術を持った国家を相手に、戦争を始めてしまったのだな……」
日本の
すると…
駒門「情報本部から参りました駒門です。皆さんの案内とエスコートを仰せつかりました。」
と自己紹介をした謎の男性がやってきた。
冬物の分厚いロングコートに黒い七三分けの髪、無機質な目の男性がニヤリと不気味に笑う。
その様子を見て伊丹と鷲谷はすぐに感づいた。
鷲谷「おたく…公安の人でしょ?」
駒門「やっぱり…分かりますか?」
伊丹「アンタの周りに漂っている空気とオーラが他の人と何か違ってんだよね。生粋の自衛官が全員おたくみたいになれる職場なら情報漏洩なんかしないでしょ?」
駒門「くっくっく…流石は銀座の三銃士の一人だ。こちらでアンタたちの事を調べさせてもらいました。鷲谷秀人、大学では工学部に所属し、21で自衛隊に入隊。その後は大学で学んだ知識を生かして一般
鷲谷「余計なお世話っすよ。」
駒門「伊丹耀司、平凡な大学を平凡な成績で卒業後、一般幹部候補生からブービーで三尉に任官。ビリの奴はケガしたからで本当はアンタがビリ。勤務成績は不可にならない程度に可。業を煮やした上官によって幹部レンジャーに放り込まれる。何度か脱落しかけるもバディに迷惑かけまくって金魚のフンのようにぶら下がって修了…」
伊丹「よくもまぁそこまで調べたもんだ…」
駒門「その後は習志野に異動して万年三尉のはずが…例の事件で昇進。同僚からは『オタク』『ホントの意味で月給ドロボー』『反戦自衛官の方が主張が分かるだけまだマシ』…コテンパンな評価だねぇ…くっくっくっ…」
事実なので何も言えない伊丹はポリポリと頭を掻きながら聞く事しか出来ない。
すると駒門の顔が急に険しくなる。
駒門「…そんなあんたがなんで『S』なんぞに?」
――S……正式名称は特殊作戦群、英語省略名はJGSDF Special Forces Group、この名前は一部の人は聞いたことある名前だろう。陸上自衛隊初、かつ唯一の特殊部隊である。
訓練や任務内容、銃火器や装備等は創設時から一切公表されていないが、将来的にはアメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレーやデルタフォースと同様、他国における特殊偵察や直接行動、情報戦などの多様な任務を遂行可能な世界水準の特殊部隊を目指しているといわれる……
そう、伊丹は特戦群なのである――
伊丹は頭を押さえため息を一つつくと、特戦群になった経緯を説明した。
伊丹「…聞いた話なんですが、働き蟻の約二割は怠け者なんですって。その二割を取り除くとあら不思議、残った八割の中から二割の怠け者が生まれるそうです。最初は屁理屈で言ったつもりなんですけどねぇ…そしたらどうやって上に伝わったのか、優秀なものを集めても二割が怠けるなら最初から怠け者を入れておこうという話になっていって…」
駒門「んで気づいたら
伊丹「そうっすねぇ、まぁ大半の理由は年末の三日休日を止めるって言われたから何としてでもそれだけは阻止したくって…無我夢中でやったら入ったって感じっすね…」
同人誌即売会力、恐るべし…
そんな気が抜けるような入隊理由を聞いていた一同の中、一人だけ絶望と驚愕の表情を浮かべる人物がいた。
栗林だ。
伊丹が話し終わると同時に走り出し、フェンスにしがみついて泣きながらうわ言をブツブツとしゃべり始めた。
もはや現実を認めたくないといった感じだ。
そんな様子を見て駒門は腹を抱えて笑い出したが、すぐに姿勢を正すとピッと敬礼をする。
流石は公安といった感じだ。
駒門「アンタやっぱりただ者じゃないよ、働き蟻の中で怠け者を演じられるアンタを俺は尊敬するよ。」
そう言って駒門は他の公安の人と一緒にどこかへ行ってしまった。
一同は国会行きのバスに乗り込むが、先ほどの衝撃発言が忘れられないのか栗林は後部座席でまだブツブツと言っている。
ノーマ「ワシヤ殿、彼女はいったいどうしてしまったんだ?」
鷲谷「ほっといてあげてください。今はそっとしておきましょう。そのうち治ります。それで、隊長。このまま国会に行きます?」
伊丹「いや、まだ時間があるしテュカの服もこのままじゃあまり良くないだろ。飯食った後、スーツ買いに行くぞ。まずは飯だね、そこ右に曲がって。」
一同を乗せたバスは銀座の街の中を走っていく。
一方特地組の皆様方は銀座の街並みに驚きを隠せない。
レレイ「すごい人の数…」
ロゥリィ「ここは市場なのかしら?」
テュカ「お祭りでもやるのかしら…あ、あれ見て。」
テュカは道に立てられた一本の木を指さす。
その木には電飾やきらびやかな箱や玉などがついている。
そして時期は冬、そうクリスマスツリーだ。
だがクリスマスツリーなんて知らない彼女たちにはそれが何のためにあるのか、何のために飾られているのか見当もついていない。
レレイ「木に装飾が施されている。」
ロゥリィ「何かの儀式かしら?」
そして一行が最初に到着したのは、人気牛丼チェーン店『牛野屋』
富田「なんで…牛丼なんですか?」
伊丹「参考人招致までは出張扱いだから、一食500円までしか出ないんだよ…」
栗林「世知辛いっすねぇ…」
鷲谷「はぁ…久しぶりに日本に帰って来て、最初に食った飯が牛丼って…まぁ美味いからいいんだけど…」
伊丹「文句なしだ、鷲谷。それにこの辺じゃコーヒー一杯で500円超える所もあるし…」
鷲谷「でも、お姫様に牛丼食わして大丈夫なんでしょうか?」
伊丹「普通に食ってるからいいんじゃね?」
そんなお姫様たちはというと…
ピニャ「なかなかいけるな。」
ボーゼス「お肉が柔らかいですわ。」
ノーマ「甘辛く煮込んだ牛肉とふっくらと炊き上げたご飯、恐るべし…二ホンの食文化…」
ピニャ「どうやらニホンの人間は卵を生で食べるらしい…」
ノーマ「生卵!そういうのもあるのか…」
結構満足していた。
次に一行が向かったのはスーツで有名な『洋服の愛山』
栗林「おぉ、スタイルがいいとスーツも似合うわねぇ。ロゥリィとレレイはどうする?」
レレイ「不要」
ロゥリィ「私も、これ神官の正装だもの。」
伊丹「(テュカはこれでよし、レレイも民族衣装っぽいし大丈夫だろう。ロゥリィは…ゴスロリ風民族衣装で誤魔化しておこう…)あ、領収書は自衛隊でお願いします。」
一方、お姫様方は…
ピニャ「この服の生地と仕立て…妾達の物より数段上だ…相当高価な物に違いない…」
ボーゼス「それをこれほど扱っているとは…よほどの豪商ですわ。」
ノーマ「どうやったらこのような仕上がりの良い生地が出来上がるのか…しかもこれは低層階級の者でも買える値段らしい…」
ピニャ「なんだと!?」
驚いていた。
これで全ての準備が整った一同は国会へと向かった。
警視庁の横を通り、国会議事堂の敷地内へと入っていく。
ピニャ「(ここが二ホンの元老院…)」
伊丹「じゃ富田、あとよろしくー」
富田「分かりました。」
伊丹達は先に降りて国会へと入っていく。
ピニャ「妾達も降りるのではないのか?」
富田「別の会合場所に向かいます。一応殿下は日本には来ていないことになっておりますので。」
ピニャ「承知した。(いよいよだ…)」
まもなく、帝国と日本による最初の会合が始まる……
皆様どうもお久しぶりです。
ようやく参考人招致までやってきました。
長かった…
一話仕上げるのに一か月もかかってたら、これ終わる頃には10年とか経ってるんじゃないだろうか…(-_-;)
段々不安になってきている今日この頃…
解説に行きましょう。
解説コーナー
〔鷲谷の経歴〕
鷲谷は高校卒業後、大学に行き工学部に所属。
そこで学んだロボット工学の技術を生かして自衛隊のMS適性試験に合格。
その後はパイロットとしての道を歩む。
結構いい経歴の理由は、MSIGLOOでヅダを巧みに操縦していたから、もしかしたらMSの操縦は上手いんじゃないのかなと思って。
〔ノーマ「生卵!そういうのもあるのか…」〕
有名な孤独のグルメからのセリフ
以上、解説コーナーでした。
次回は国会参考人招致編です。
あのムカつく幸原みずき議員をボコボコにしてやりましょうwww
次回は八月に投稿予定です。
夏休みに入りましたのでいつもより早く多く投稿出来ると思います。
それではまた次回、お会いしましょう
ではまた次回!!( `ー´)ノシ