GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

イタリカ攻防戦、交渉、交易などを終え、イタリカから帰るはずだった第三偵察隊は途中、薔薇騎士団と遭遇。
誤解が誤解を呼び、伊丹達を敵だと認識したボーゼスたちは伊丹を暴行してしまう。
そして伊丹救出のため、また再びイタリカへと戻っていったのだった。




第十一話:皇女、アルヌスへ ※挿絵有

メイドたちとの自己紹介を終えた一行は、休憩のため持ってきていた菓子類とメイドたちが淹れてくれた紅茶でお茶会を行うことにした。

イタリカを盗賊達から救ったおかげであっという間に場は和み、それぞれ会話を始めている。

 

盗賊達との格闘戦闘、絶滅したはずのメデュサの生態、異世界の服の生地やMSの大群のことについてなど、全員楽しそうに会話をしている。

 

伊丹「なごんじまったなぁ…というわけで状況はさっき話した通りだ。」

 

富田「この状況じゃあ無理に脱出する必要はありませんね。夜が明けたら曹長達呼んで普通に出ますか。」

 

伊丹「そうだな、鷲谷、おっさんに連絡しといて。おやっさん達には悪いけど、ここは『文化交流』ということで。」

 

鷲谷「了解。」

 

その後は全員で記念写真を撮ったり、また会話を始めたりと思い思いの事をする。

 

 

 

 

そんな彼らがいる部屋のドアの前でただ一人たたずむ女性がいる。

 

伊丹を暴行し手荒くあしらった張本人、ボーゼスだ。

 

彼女は先ほどまで身に着けていた重苦しい鎧を脱ぎ、淡い紫色のネグリジェのような薄手の色っぽい服を着ている。

 

豊満な胸と引き締まった腰回りの肌が、薄い生地の向こうにうっすらと見える。

 

 

――まさか自分が痛めつけた男に身を捧げるなんて――

 

 

だが、これも帝国とピニャ様のため……

 

覚悟を決めたボーゼスはゆっくりと…扉を開けた…

 

 

 

ボーゼスの目に飛び込んできた光景…それは……

 

 

昼間逃げたはずの伊丹の部下が、メイドたちと仲良くお茶会をしている光景だった。

会話に夢中になっているせいで、周りの者達はボーゼスが部屋に入ったことに気づかない、と言うよりかはただ気づいていないだけなのだが、ボーゼスにとってはそれが無視されたことだと勘違いし、胸の内に激しい怒りを覚えた。

 

そしてその怒りの矛先は伊丹に向けられた。

 

ツカツカと早足でそばに近寄ると手のひらにありったけの力を籠め、その渾身の一撃を伊丹の左頬に叩きこんだ。

 

 

バチィン!と手のひらと頬の肉が勢いよくぶつかる音が部屋中に響き渡り、その瞬間、伊丹は心の中で思った…

 

 

伊丹「どうして俺だけいつもこうなるの!?」

 

と……

 

 

 

 

 

その後、栗林と富田の二人に軽く取り押さえられたボーゼスを連れて、広間へと移動した一同。

 

そして全員の目の前には、顔面蒼白で今にも気絶しそうな表情を浮かべたピニャがいる。

そしてピニャは恐る恐る口を開いて問いただした。

 

ピニャ「……で?その顔の傷はどうした?」

伊丹の顔には先ほどボーゼスに引っ叩かれ赤く腫れあがった跡のほかに、猫が引っ掻いたような傷がある。

 

しばしの沈黙が流れるが、この空気の重みに耐えられなくなったのか、ボーゼスが小さな声で言った。

 

ボーゼス「………わ…わたくしが…やりました……」

 

その言葉にピニャはまるでこの世の終わりのような顔をしながら頭を抱え、俯いてしまう。

 

ピニャ「この始末……一体どうしてくれよう……」

ピニャは必死に頭を悩ませると、富田がレレイを介して伝える。

 

富田「あー…自分たちは隊長を連れて帰りますので…」

 

レレイ「そちらのことはそちらで解決してくれ……と言っている。」

その言葉にピニャは慌てる。それもそのはず、協定を結んだその日に協定違反を起こしたのだ。

しかも、伊丹を目に見えるほど暴行を加えたのだから、慌てない方がおかしい。

このままアルヌスに彼らを帰せば、どんな報告をされるか分からない。

帝国の未来を左右する事態だ。ピニャは必死にもう少しここに居て欲しいと交渉するが…

 

倉田「お誘いはありがたいんですが、伊丹隊長と鷲谷二尉は国会に参考人招致されてまして、今日にはアルヌスに帰らないとやばいんです。」

 

レレイ「イタミとワシヤは日本の元老院に報告を求められている。それ故に今日には急ぎ戻らなければならない。」

その言葉にピニャは更に驚愕する。

 

ピニャ「(げ、元老院だと!!こんな小部隊の隊長と巨人の調教師が、エリートキャリアの人間だったのか!?二人の報告一つでジエイタイと巨人たちが動き出す可能性が!!このまま黙っていかせてはならない!!)」

 

 すると何を思ったのか、ピニャは急いで立ち上がり、とんでもない事を言い始めた。

 

ピニャ「で、では―――妾もアルヌスへ同道させてもらう!!此度の協定違反、タカ団長か上位の指揮官に正式に謝罪しておきたい。よろしいか?イタミ殿。」

 

伊丹「え!?えーっと…招致まで時間があまりないですし車内も狭いので、殿下とあと一人か二人ほどでしたら……」

 

ピニャ「了解、感謝する。メイド長、妾の従兵を呼んでくれまいか?」

 

富田「隊長、いいんですか?」

 

伊丹「あれぇ?姫様が護衛や従兵なしでは断るかなーと思ったんだけど…」

そんな伊丹の考えなんかお構いなしにピニャは話を進めていく。

 

ピニャ「ハミルトン、妾の代行と代官の選任を任せる。パナシュとボーゼスは治安維持を頼む。アルヌスへは妾一人で行く。」

 

そんなとんでもない事を部下が黙っているわけも無く…

 

ボーゼス「おっ、お待ちください!!殿下を一人で敵地に行かせるわけにはゆきません!」

 

パナシュ「私達も同行を!」

ピニャは冷静に考え、確かに一人で行くのは危険と判断したのかボーゼスを連れていくことにした。

 

するとノーマが近づき、自分も行くと言い出した。

ピニャは理由を問いただした。

 

ノーマ「殿下、私も一緒に同行してもよろしいでしょうか?私はワシヤ調教師殿に命を救われました。騎士として礼を言わなければ気が済みません。」

 

ピニャ「分かった、そこまで言うならお前も連れていこう。」

 結局、ピニャの他にボーゼス、ノーマの二人が一緒に行く事になった。

 

身支度が終わり、朝日が完全に昇りきった朝の8時頃、三人は不安を胸に抱きながら高機動車へと乗り込んだ。

 

 

 

 

イタリカを出発してから1、2時間ほど経っただろうか。

ピニャが車の揺れで吐き気を催していた。

 

そんな時、ボーゼスが窓の外を見て叫ぶ。

 

ボーゼス「…殿下!アルヌスです!!」

 

ピニャ「もう着いたのか!?聖地とはいえ元はただの丘だったはずだが…」

 

ノーマ「麓を掘り返していますよ。丘の上にあるあれが、ジエイタイの砦か…」

 

道中、ハイポート走をする自衛官達や骨組みだけの訓練用スケルトンハウスで訓練をする自衛官達、射撃訓練をする自衛官達を見送っていく。

 

ピニャ「あの杖…イタミ達が持っている物と同じ形だが、ジエイタイの兵は皆、魔導師なのか?」

 

ボーゼス「もしかしたら、ジエイタイには希少な魔導師を大量に養成する方法があるのかもしれません。」

するとレレイが詳細な説明を始める。

 

レレイ「違う、あれは魔導ではない、『ジュウ』あるいは『ショウジュウ』と呼ばれる武器。原理は炸裂の魔法が封じられた筒で鉛の塊を弾き飛ばしている。」

 

ピニャ「武器であるなら作ることが出来る…とするとすべての兵に持たせることも…」

 

レレイ「そう、彼らジエイタイはそれを成し、『ジュウ』による戦い方を工夫し、今に至っている。」

ピニャは黙々と訓練をする自衛官達を見て、恐怖を感じていた。

 

――戦い方が根本的に違う――

 

――我々の今までの歴史の中で磨いてきた戦意と戦技を用いた戦列も…

 

彼らの持つ『ジュウ』の前ではただの無意味なものにしかならない――

 

レレイ「だから帝国軍も連合諸王国軍も敗退した。」

ピニャはチラリと傍らにある64式を見る。

 

ピニャ「戦況を一方的にしないためにも是非とも『ジュウ』を手に入れなければ…」

こんな状況に置かれてもまだ戦おうという強い意思がある。だがレレイに無意味と一蹴された。

レレイが杖で窓の向こうを指すとそこに映っていたのは、特地仕様74式戦車とザクの合同訓練の様子だ。

 

74式にはアメリカから送られてきた戦車市街地戦生存性向上回収キット(TUSK)と第二次大戦時に独軍(ドイツ軍)も使用していたシュルツェン(追加装甲板)と有刺鉄線、更には追加のスモークディスチャージャーも付いている。

 

ザクの方もシールドと頭部とコックピットの周りに追加装甲を付けている。

足にはミサイルポッド、シールドの内側にはシュツルムファウストが2本マウントされており、ヒートホークも腰に装備されている。

 

よく見ると74式とザクに日本刀が首に刺さり血を流している炎龍のイラストが描かれていた。

74式とザクが轟音を轟かせながら進んでいく光景に、三人は驚きを隠せない。

 

レレイ「『ショウジュウ』の『ショウ』とは小さいという意味。それなら対になる大きい銃がある。実際に巨人たちが持っているのがそれ。」

 

ピニャ「コダ村の連中が言っていた『鉄の逸物』と同じ物なのか…?鉄の天馬、鉄の象、鉄の鳥、あんな物を作る職人などドワーフの匠精(しょうせい)にもいない!あれはまさしく異世界の怪物………なぜこんな連中が攻めて来たんだ…?」

ピニャの呟きに何を今更と言った感じでレレイは一言…

 

レレイ「帝国は…鷲獅子(グリフォン)の尾を踏んだ。」

その一言にボーゼスがレレイを睨みながら一喝する。

 

ボーゼス「帝国が危機に瀕しているというのに、その言い草はなんですか!!」

だがレレイは表情を崩さず、その言葉に返す。

 

レレイ「私は流浪の民、ルルドの一族。帝国とは関係ない。」

 

テュカ「はーい、私はエルフでーす!」

 

ロゥリィ「フッ…」

三人のまるで関係ない他人事のような表情と返答にボーゼスは奥歯を噛みしめて悔しがる。

 

ピニャ「(帝国は国を支配すれど…人の心までは支配できず…か…)」

 

そんなやりとりをして、営門を通り駐屯地に到着した三人だったが、彼らの目には駐屯地の光景はまさしく異様に見えるだろう。

 

しばらく進むとMSが何機も並んで整備を受けている整備場が見えてきた。

 

作業着で身を包んだ大勢の整備員が、ガスバーナーや工具を片手に整備点検をし、関節部分に油を差し、泥や硝煙反応によってついた火薬汚れなどを洗い落としている。

 

だが三人から見れば何をしているのか見当もつかない。

MSが並んだ整備場を少し進むと、通常のザクと一緒にホワイト・オーガーとヅダが並んでいた。

 

【挿絵表示】

 

ボーゼス「殿下、あれを…」

 

ピニャ「あぁ…イタリカで見た、白の巨人と青の巨人だな…」

 

ノーマ「彼ら(巨人)はここで体を休めているのでしょうか?」

 

ボーゼス「あの恐ろしい力を持つ巨人が微動だにしていませんよ…」

 

ピニャ「ジエイタイの調教師はあの巨人を手なずける方法をよほど熟知しているらしい…」

 

三人はあらためて自衛隊の強さを思い知った。

 

 

 

その後、ピニャ達三人は狭間陸将との今回の協定違反についての話し合いのため、本部へと案内された。

途中ピニャは伊丹に説得の機会を設けようとするが、逃げられてしまった。

 

そして狭間との話し合いを行ったが、柳田からの痛い質問がいくつも投げられ、冷や汗をダラダラと流しながらも無事に会談は終わった。

 

 

 

 

 

 

その夜……

 

月が紅く輝き、窓から部屋に差し込む光がとても美しく幻想的だ。

そんな部屋の中でピニャとボーゼスの二人は、今後のことについて考えていた。

 

ボーゼス「……連中はやはり協定違反を開戦の口実にするつもりでしょうか?」

 

ピニャ「いや、そうであれば我々の訪問を受け入れ、このように丁重に扱ったりはしないだろう。……妾には分からない。文化や世界が違い過ぎて、彼らがどのような理由で戦っているのか見当もつかん。それを知るためにも……」

 

ピニャは黙って外の門を包んでいるドームを見つめる。

その視線に気がついたのか、ボーゼスは少し慌てた表情を浮かべ始める。

 

ボーゼス「…ピニャ様?ま、まさか!?」

 

 

 

 

 

 

ピニャ「…………行くしかあるまい……」

 

 

 

 

 

 




どうも、メガネラビットです。
皆様、疑問に思っている人も多いでしょう。
なぜ、10日間にも及ぶ大型連休があるにもかかわらず、投稿出来なかったのか?と…

お答えしましょう、ヅダ描いていたからだ!

…本当にすみませんでした!!!!<m(__)m>
一生懸命描いたのでそれで許してください。


解説コーナー

〔ノーマ同伴〕

今後の戦いが結構変わるかもしれない重要な人物

〔ヅダの挿絵〕

一生懸命描いた、後悔はしていない。反省はちょっとしてます…(-_-;)

ボーゼスとピニャのお二人は、私のリア友に描いていただきました!
↓その方のTwitterのURLです。どうぞ、ご確認を。
https://twitter.com/0us329262c22471

ちなみに私もやっています。いつもくだらない事ばかり呟いていますがw
https://twitter.com/ryoto0309


さてと…今の所はさほど大きく変わっている様子はないな…よし!次回は少し変えていってみよう。

というわけで皆さん、今回も閲覧ありがとうございます<m(__)m>
次回も楽しみに待っていてください。




次回は出来るだけ早く投降できるよう努力いたしますので、では、また次回会いましょう!
それでは!( `ー´)ノシ

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