GATE 自衛隊彼の地にて、ザク戦えり   作:兎の助

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前回のあらすじ

イタリカという交易都市で翼竜の鱗を換金してもらうことになったため、第三偵察隊が送迎を頼まれた。

だが街が盗賊団によって攻撃を受けている事を知り、急きょ街の防衛に参加するのであった。



第八話:イタリカ防衛作戦準備

 伊丹達はイタリカの現状をピニャたちに説明され、このままでは交易はまともに行えない。そういうわけで急遽、第三偵察隊も防衛戦に参加することになった。

 伊丹達は一度攻撃を受けた南門、鷲谷は西門の守備を任された。

 それとなぜか伊丹は顎を打った衝撃で、特地語が頭にインプットされ本を必要としなくても会話が出来るようになった。

 

 イタリカはテッサリア街道とアッピア街道の交点に位置する巨大な交易都市で、人口は五千人を超え北門は切り立った断崖と川に面している。

 現当主は今年十一歳になるミュイだが、前当主が急死し、他家に嫁いでいた長姉と次姉がミュイの後見人を巡って話し合いから取っ組み合いの喧嘩にまで勃発。更には帝国の異世界戦争出兵に参加した両家の当主が戦死。フォルマル家にかまう余裕の無くなった両家は兵を全て引き揚げ、結果不正がはびこり治安が悪化。

 フォルマル伯爵領にいた兵士たちも元から少ないため、そこを盗賊たちに襲撃され、現在に至る。

 

ハミルトン「あれが噂になっている緑の巨人と緑の人ですか、炎龍を倒したっていう…いいんですか? あんな怪しい連中を中に入れて?」

 

ピニャ「贅沢は言っていられない、使える者なら何でも使うまでだ。」

 

ハミルトン「それにあの緑の巨人、酒場での噂は聞いていましたがあれほど大きいとは…」

 

ピニャ「そうだな、妾もさすがに驚いた。城壁を超えるほど大きいとはな…だが安心しろ、ハミルトン。あの巨人は西門にまわした。この南門にはあの緑の人しか配置しない。あんな巨人が門の周りでうろちょろしてたら来る盗賊共も来なくなってしまうからな。」

 

 そう言いながらしばらく巨人を見ていたが、突如巨人の胸の部分が開き、中からモスグリーン色のピッタリとした服と前面部分が黒い蟲甲のようなもので覆われた兜を被った人が出てきた。

 謎の人物は巨人の手の上で一度伸びをし、城壁の上に降り階段を下っていく。

 二人は目の前の光景に呆然とし、周りの民兵や正規兵も同じような反応を見せる。

 

鷲谷「なんか俺、変な目で見られてない?」

 

栗林「多分MSから降りたからじゃないかな?」

 

鷲谷「あっ…」

 

伊丹「え、えっと…皆さん、ご安心ください!!彼は巨人を調教する調教師です!!皆さん、ご安心を!!」

 

 伊丹は咄嗟に無理矢理な設定を作って、周りに説明した。疑心暗鬼になりながらも何とか理解してくれたのを確認し、一同はホッと胸をなでおろした。

 

栗林「鷲谷、ちゃんと考えてから行動してよね。」

 

鷲谷「へへへっ、悪りぃ悪りぃ。」

 

ノーマ「巨人の調教師殿、西門までご案内します。」

 

鷲谷「よろしくお願いします。」

 

 鷲谷はザクに乗り込む、ノーマに案内され西門へと移動した。

 たどり着くとまず先に周りの篝火を片づけてた。全ての篝火を片づけ終えた頃にはかなり日が落ちており、辺りが暗くなっている。

 鷲谷は一旦ザクの中に戻り、LEDライトをノーマに手渡した。

 

鷲谷「これは懐中電灯と言います。辺りが暗いのでこれを使ってください。」

 

ノーマ「おぉ!あ、明るい!?これを貸してくれるのか?」

 

鷲谷「はい。それと兵士は全員東門の防衛にまわしてください。」

 

ノーマ「そうか、(うけたまわ)った。」

 

 ノーマは周りの兵士たちに東門に行くように指示を出し、自らも東門へと歩いて向かった。

 その間、道は明るく歩きやすかったそうだ。

 鷲谷は再びUAVを飛ばして盗賊団の位置と戦力を確認した。伊丹に敵の斥候(せっこう)が来ていること。敵の数は500~600、多くて700ほどいることを報告する。

 するとロゥリィが伊丹の通信機で鷲谷に話しかけてきた。

 

ロゥリィ《ねぇ、ワシヤァ。ワシヤにとって守るってなあにぃ?》

 

鷲谷「え?守る、ですか?」

 

ロゥリィ《貴方は巨人の調教師で、本来は帝国の敵でしょぉ?そんな貴方がどういう理由で戦いどういう理由でこの街を守るのか、気になったのよぉ。エムロイは戦いの神、戦うことには必ず理由があるわぁ。その理由が嘘だった場合、魂を汚すことになるのよぉ。》

 

鷲谷「………やっぱり自分は国民を守り、国を愛する自衛官です。確かに自分は国民を守るために戦いますが、人を助けるためにも戦います。たとえそれが敵国の街だったとしても、この街の人達には何の関係もありません。それに…人を助けるために理由がありますか?」

 

ロゥリィ《イタミとほぼ一緒だけど、人を助けるためには理由はいらないってところが気に入ったわぁ。》

 

鷲谷「お気に召していただけて光栄です、神様。」

 

 そんな会話をしているうちに1時、2時と刻一刻と時間は過ぎていった。そして3時になったその時、東門と西門に無数の火矢が降り注いだ。

 MSには無害だが、東門の兵士たちにとってはまさしく地獄の雨となっている。

 

鷲谷《数は騎兵が100!!火矢による集中攻撃を受けています!》

 

倉田「〇三〇〇、夜襲には絶妙な時間だな。で、戦力の大半を東門に集中させて、少数の部隊でMSを足止めか…よくまぁ考えたもんだよ。」

 

桑原「盗賊といっても元正規兵だそうですし。」

 

伊丹「東門からの応援要請は?」

 

桑原「まだなにも。」

 

伊丹「そうか…鷲谷、とりあえず敵勢力を排除してくれ。」

 

鷲谷《了解!》

 

 鷲谷はバズーカを構え、騎兵隊に向けて引き金を引いた。騎兵隊との間はかなり離れていた為、一発では仕留めきれないが、280mmバズーカ砲弾は爆風だけで馬ごと吹き飛ばすことが出来る。

 鷲谷は砲身に新しい砲弾を装填し、再び構えて撃つ。MSに騎兵だけで勝つのは到底不可能だろう。だが彼らはあくまでも引き付け役。

 問題は東門の本隊だ。いくら西門の人員をまわしたとはいえ、大半以上は武器を持ったことすらない民間人だ。陥落するのは時間の問題だ。

 

ノーマ「ひるむな!押し返せ!!弓兵、放てぇ!!」

 

 弓やボウガンを使って盗賊を押し返そうとするが、盾を上に構え弓矢からの攻撃を防いでいる。

 更にはセイレーンの精霊魔法によって矢がすべて無力化されている。昼間に戦った同じ相手とは思えないほど速い速度で、城壁に取りつきはしごをかけてやってくる。

 

 盗賊達は必死に街を守ろうとしている街の者を嘲笑うがごとく、ニヤニヤと不気味に笑う。そう、この者達はここに死に場所を求めてきているのだ。

 

―これこそが戦争、敗走し身を落とせども我らは戦士…

 

 

 分かりやすい敵の殺戮、分かりやすい自分の死…

 

 

 これこそ我らの戦争、エムロイへ捧げる賛歌!!―

 

 

 

ノーマ「クソッ!生意気な!盗賊如きが城市を陥そうなど!!」

 

 次から次へと上ってくる盗賊を倒していくが、流石のノーマでも歯が立たない。

 更に不運な事に、倒した敵の死体に足を取られ躓き、後ろに倒れた。

 この機会を逃すまいと、盗賊達は一斉にノーマへと襲い掛かる。死を覚悟したノーマだったが、腰に何か固いものがあるのにふと気がついた。

 それは先ほど、鷲谷に渡されたLED懐中電灯だった。

 

ノーマ「(これを使えば!)」

 

 ノーマはそれを盗賊達の顔に向けてスイッチを入れた。突然目に飛び込んできた眩い光に盗賊達は驚き、目を押さえた。その隙に彼は急いで城壁上から降りていった。

 

 

 

 




皆さん、どうも。メガネラビットです。
早速ですが解説コーナーに行きます。

解説コーナー

〔鷲谷の職業:巨人の調教師〕

だっていきなり巨人の体の中から人が出てくるんですよ?そりゃあ驚くでしょ(-_-;)
これによりアルヌスの丘にいる緑の巨人は全員調教師付きという設定が出来上がってしまいました\(^p^)/

〔ノーマの生存ルート〕

なぜ生存させたのか?理由は単純。名前にイグルーが入っているから(-_- )
だって結構重要キャラに見せておいて、あっさり死んでしまうんですもの。
(;´・ω・)えっ?ノーマの出番これだけ?
何かやるせない気分になったから、生存させておいた。

〔西門足止め作戦〕

西門にも敵勢力を配置しないと鷲谷がすぐに東門に救援に駆けつけて一掃してしまうと思いまして。
そこで西門にも少数ながら敵を配置しておくことで、足止め工作を行いました。




次回は盗賊団蹂躙劇が巻き起こります。お楽しみに!
それでは( `ー´)ノシ

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