混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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先週から書いてて余裕だハッハッハッと言ってたけど、やっぱり当日書くことになってるよ……

そのかわり改稿は進んだんだから!! 
反映はさせてないけど

今回は説明回です。今やっと日本編の半ばに入った所かな。



13-9 気

 

 修業と言っても何も筋トレから始める訳じゃ無い。1週間では筋トレから初めては遅い。そして俺とアリサは基礎はそれなりに出来ている。

 だから今回の修業の内容は力を発揮する技、コツだ。

 

「ラインは初めてだから最初に教えるのは気の種類についてだ。アリサは心の中で答えながら聞いていろ」

 

 頷くアリサを見て、師匠は話を始める。

 

「“気”というのは君たち魔法師で言う魔力と似ている。だが魔法師とは違い、我々は魔術によって魔法を構築していない。だからある意味誰しも出来る事だ。だが高みに登る事は容易では無い。

 一方、魔法は万人向けに作られた物だ。多くの者が習得出来るように。だから学べばある程度まで出来るはずだ」

 

 確かに魔法は軍ごとに細かい違いはあるが大まかな部分は同じだ。そして個人の差は魔力の注入量と魔力コントロール、そして術式の展開の早さだ。

 

 魔法を色に例えるとみんな赤色でそこに1人1人光沢や濃い薄い等の違いが有るだけだ。赤という分類に含まれる事には変わり無い。

 そして魔法の習得は時間が掛かるものの大体習得出来る。

 難易度の高い魔法はまた話が違うが。

 

 師匠は話を続ける。

 

「魔法に対して、“気”は決まった形は無い。人それぞれ違う。だからこそ習得出来るかは運次第だ」

 

 魔法は術式の数だけあると言われているが、気は人の数だけあるのか!? 

 

 とてつもない物に挑戦しようとしている事に感動し、己の体が震える。

 

「ここまでは大体分かったか?」

 

 ここまでの話を理解出来たか聞いてくる師匠。

 大体分かった。気は魔法のように勉強すれば出来る物では無く、感覚で掴む物だと。まあ何とも曖昧な物だろうか。

 

 頷いた俺を見て、話は次の段階に入る。

 

「さて、さっき“気”に種類があると言ったな。大まかに分けて、2種類ある。それは“動気“と“静気”。まあ言うなれば、動気が肉体強化魔法や治療魔法、静気が探知魔法などだ」

 

 俺達魔法師は属性毎にしか分けていない。もちろん攻撃魔法と補助魔法には分けているが、俺達とは違う分け方なのだろうか。

 

「動気と静気の分け方は気の流れが能動的か受動的かで分けられている。

 ”動気“は全てが自分から気を練り、消費する物だ。もちろん消費は大きいが効果がはっきりする物が大きい。

 それに対して”静気”は自ら気を練らず、相手の気の流れを読む物だ。

 そして我ら柳生は”静気“を主としている」

 

 なるほど、気の流れる方向で分けているのか。柳生は戦闘向けでは無さそうな静気らしいがどういうことだ?

 

 その疑問はすぐ直後に解消された。

 

「だからと言って、静気だけを使う訳では無い。動気は肉体強化に必要だから基本だ。それを極めた物が、歴史に名を残してるだろう?」

 

 日本史だろうか? 余り詳しく無いからな……

 

「織田信長とかですか?」

 

 魔王と呼ばれた彼なら火炎魔法を使いそうだが……

 

 だが柳生は横に首を振る。

 

「信長は違う。彼はかなりの常識人であり、普通の者だったらしい。彼は魔法という存在を信じなかった。いや頼ろうとしなかった」

 

 まるで会ってきたかのような口ぶり。まさかその自体の人じゃないよね? 

 

 そんな心情が顔に出てたのか、アリサに笑われる。

 うるさい。

 

「で、動気を極めたのは“本多忠勝”だ。彼は徳川家康の部下として各地で何度の激戦したが傷を負ったことが無いという噂だ。

 だがこれは噂では無いと我々は考えている。そう、動気を極限までに高めるとその防御力は刃を通さず、そして攻撃力は一振りで人を何人もなぎ倒す。

 今のように高速な戦闘、魔法が知られてない、その当時は無双だったのだろう」

 

 鉄の鎧を全身に着て突っ込んで来るのか。それもこちらには剣や弓しかないのに。そして疲れない無尽蔵な体力。唯一早い鉄砲でも鉄は貫通出来ない。

 なんて恐ろしいんだ。

 

「もちろん彼よりも我々は強い。何故なら我々には歴史の重みがあるからだ」

 

 約500年の歳月を経て魔法も大衆化、簡略化、高性能化されている。そして気も同じく改良されているのだろう。

 その歴史の重みを受け止めなければ過去の人達に笑われてしまう。

 

「そして静気、これは心を水面のように静めて、敵の気配を感じるのが主だ。ライン、お前を察知したのもこれだ」

 

 探知魔法とは何が違うのだろうか。

 

「探知魔法とは感知出来る条件、範囲が違う。探知魔法は魔力を飛ばして、魔力がある者に反射して返ってきた物を察知する。いわゆるソナーだ。範囲は広いが、魔力を隠している者には不可能だ。そう実力者には効かない。

 だが、気はどんな者にも消すことは出来ない。戦場に居る者は殺気や生きたい願望が気配として出るのだ。まあ見つからないとしたら感情を持たないロボットとかだが……まあ良い。

 欠点は範囲が狭い、そしてこちらが落ち着いてないといけない事だ。水面に波風立ってたら石を投げ入れても分からないだろう?」

 

 探知魔法はこちらの状況関係なく使えるが、精度が悪い、また味方と判断が出来ない。

 そして気配探知は精度が高いが、範囲、条件が厳しいのか。

 ……お互いに欠点を埋めるように使えば良いのでは?

 

 顔を上げると、珍しく師匠は満足そうに微笑んでいた。

 

「そう、お前には気配探知を覚えて貰う。魔法と気、この2種類を手に入れた者はそうそう居ない」

 

 西洋と東洋の融合……それは新たなステップに進む為に今まで歴史の中でもしてきた事だ。それを俺がやるというのか……

 

「……そうだな。とりあえず、心の冷静さを保つ練習だな。ライン、アリサに抱きつけ」

 

「ーーは?」

 

 この人はーー師匠は何を言っているのだろうか。そんなことしたらボコボコにされるのは目に見える。俺にドMに成れと言っているのか?

 

 もちろん動揺してるのは俺だけでは無く、アリサも面白いぐらいに動揺していた。初めて会った時は余裕しゃくしゃくで抱きついてきたのに……

 

 俺がアリサに体ごと振り向き、膝行(しっこう)ーーひざがしらをついて移動する事ーーにて目の前まで行くとアリサは体をビクリと震わせる。

 

「えっ? ……ホントにやる気なの?」

 

 アリサは涙目で師匠にチラチラと視線を送るが、師匠は目をつぶってしまった。

 アリサの思いには鈍感なんだな。

 

 助けてくれない師匠に諦めがついたのか、覚悟を決めたアリサ。

 もう表情にはさっきの狼狽えは見えない。

 

「い、行くわよ?」

 

 お互いに震える腕を交差させながら次第に近づいていく……

 

 お互いの顔が吐息が掛かるぐらいになった時、大きな音で意識がそらされてしまう。

 

 そっちを見ると、眼鏡を掛けた山口が怒りで体を震わせながら、近づいてくる。

 そして俺の胸倉を掴んで立ち上がらせる。

 

「お前ぇ!! アリサさんに何をしてるんだ!!」

 

 何って、師匠に言われた修行だが……文句があるなら師匠に。

 

「いや、師匠に言われてやってるだけだが」

 

 するとなすりつけたか思ったのか更に激高する山口。

 

「柳生さんに……罪をなすり付けるとは……恥を知れ!! このよそ者が!!」

 

 流石に俺もカチンと来て、反撃しようかと思っていた所で師匠の仲裁が入る。

 

「山口、辞めろ。ラインは俺の指示通りやってるだけだ」

 

 師匠の低い声が道場内を響き渡る。

 すると山口は手をさっと離し、師匠に対して敬礼する。

 

「ーー失礼しました!! 柳生さんとの指示とは知らず……」

 

 言い訳がましいが、師匠の表情は変わらず、続きを促す。

 

「それで、用はなんだ?」

 

「はっ。作戦の細かい部分を話し合いたいと将軍が」

 

「……分かった。今行く」

 

 腰を上げて、立ち上がり山口と共に道場を後にする師匠。

 

 取り残された俺とアリサはお互いを意識してしまって何とも言えない雰囲気に困惑するだけだった。

 


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